ヤマル・ブーストでスペインが順当な逆転勝利
開催国・ドイツへの挑戦権を賭けて戦う一戦。優勝候補のスペインが対峙するのはGS最終節でポルトガルを下して、滑り込みでのGS突破を果たしたジョージアである。
ジョージアのフォーメーションは5-3-2。後方からのスライドには積極的ではないということでスペインがSBを安全地帯として、ボールを動かしながら勝負を仕掛けていく。サイドからボールを運び、立ち上がりからジョージア陣内でブロック崩しにトライする。
いつもの大会とスペインが異なるのはワイドのアタッカーが存在すること。預けて仕掛けられる大外の解決策があるのは大きい。それに甘えないのもスペインの良さ。きっちりインサイドを覗きながら縦パスを入れての進撃も視野に入れる。MFはライン間で縦パスを引き出しつつ、WGの仕掛けから放たれるクロスに飛び込む役割を両立しなければいけなかった。
押し込みながらゴールを脅かすスペインに対し、ジョージアは自陣からのカウンターで跳ね返しにかかる。ドリブラーが時間を作り、横断を駆使して敵陣に押し込んでいくというのがジョージアの鉄板パターン。得点シーンが最も分かりやすい形。左サイドでクヴァラツヘリアとキティシュヴィリがポイントを作り、右の大外のカカバーゼまで展開すると、ファーのクヴァラツヘリアを狙ったピンポイントのクロスがル・ノルマンのオウンゴールを誘発。ワンチャンスを活かしたジョージアが先行する。
以降もジョージアはこのパターン。ドリブラーが根性で時間を作り、横断から押し下げる状況を作るのがスペインの保持に対する対抗策となっていた。
スペインは失点以降は少しバタバタしたが、すぐに立て直し。ただ、長い距離からのミドルがかなり増えており、ラポルトのミドルなどはシュートを打つ前にもう少し手数を加えたい感もあった。
ただ、ミドルシュートそのものが悪いわけではない。きっちりと整えることができればいうまでもなくミドルは大きな武器だ。それを証明したのはロドリ。サイドに散らし、WGでできた深さを自らミドルで使うという流れはまさしく名人芸。深さを使って自分で使うというワールドクラスの地産地消でスペインはタイスコアに引き戻す。
ジョージアはこの一連のプレーでアンカーのキティシュヴィリが負傷。アンカーからの配球が難しくなり、少ない時間とはいえ前半の残り時間に攻撃が組み立てられないままハーフタイムを迎えたのが気がかりとなった。
後半頭、前半と同じく押し込む展開で大活躍したのはヤマル。外で起点になり、中で突っ込みFKを獲得するなど大暴れ。最終的にはそのFKの流れからゴールも演出。右サイドからのクロスは間合いを外したタイミングで完璧にフリーの選手にピタリ。この上ない質のクロスで一気に逆転まで持っていく。
ジョージアはカウンターからのキレは十分にあるものの、やや攻撃としては直線的。押し上げが効かず、ホルダーが自分で抜け切らないといけない状況となる。横断から厚みのある攻撃を行いたいが、なかなか実装することができない。
スペインはリード後は非常に落ち着いた試合運び。ポゼッションでの時間の消費はお手のもの。さらにはジョージアのカウンターを跳ね返したところからの速攻からも手応えがある展開に。
光を放ったのはWG。右サイドのヤマルの誘発したオウンゴールはわずかにオフサイドだったが、速攻からのニコ・ウィリアムズの豪快なゴールで試合はほぼ決着となった。
先制こそ許したものの、以降はほぼ完璧な試合運びを見せたスペイン。後半はヤマルの良きパートナーとして躍動したオルモが仕上げの4点目を決める大勝で順当にベスト8に駒を進めた。
ひとこと
ジョージアも持ち味を見せたが、失点してなお落ち着いていたスペインは見事。押し込むスタイルに凶暴なWGがかけ合わさった怖さを存分に発揮した。
試合結果
2024.6.30
EURO 2024
Round 16
スペイン 4-1 ジョージア
ケルン・スタジアム
【得点者】
ESP:39′ ロドリ, 51′ ルイス, 75′ ニコ・ウィリアムズ, 83′ オルモ
GEO:18′ ル・ノルマン(OG)
主審:フランソワ・ルドゥグジェ