イプスウィッチ【19位】×クリスタル・パレス【17位】
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エースの一撃で残留争いのライバルを制する
ともに残留争いの真っ只中の両チームの一戦。序盤は激しいチェイシングからスタート。覚悟が見られる立ち上がりとなった。
特に前からの意識が強かったのはイプスウィッチ。枚数を合わせてのプレスで敵陣からタイトに当たっている守備を行っていく。
パレスはプレスを交わして前進しつつ、大外のオーバーラップも活用するなど幅も使うことで変化をつけていく。相手のプレスをある程度鎮圧した後は、縦パスを入れながら背負える選手を探すような形でインサイドに起点を作れるかどうかを確かめていた。
時間経過とともに押し込む機会が増えたパレス。イプスウィッチは左右に動くデラップのロングボールを活かしての起点勝負。速攻の際には前線の起点としてすっかり頼りになる存在だ。
保持においてはデイビスを片上げする形の3-2-5に変形していたが、この変形はパレスの守備にマッチする形に。あまり効果的な変形にはならなかった感がある。そのせいかプレスの圧に対してショートパスで脱することができないイプスウィッチ。試合はパレスが優勢。高い位置からの回収からポゼッションでWBを活用し、サイドからクロスを上げる形からじわじわとチャンスを作っていく展開となった。
後半は互いに押し込むところからブロック崩しを交互にターンで行う展開。イプスウィッチは前半ほど無理なプレスを控え、ミドルゾーンから後方をきっちり守る形にシフトした感がある。
イプスウィッチは攻撃でも手応えがある状態。前線のタレントはボールを持って前を向ければ面白いプレーはできる。その状況を整えられるケースは前半よりも明らかに多かったので、その点で前半よりは対抗できる状態だった。
だが、パレスはファストブレイクから先制点をゲット。相手を外してカウンターを見事に完結させたマテタがパレスに貴重な先制点をもたらすことに。
あとがなくなったイプスウィッチは地道にサイド攻撃を継続。左サイドはオーバーラップを活用した裏抜け、右サイドはハッチンソンの単騎での突撃からチャンスを作りにいく。もちろん、ファストブレイクはデラップの担当である。
パレスも得点直後に先制点を再現したようなマテタのカウンター以降は押し込まれた状態をはねかえせず。終盤はサンドバックとなることを受け入れる展開となった。
だが、それでもパレスは逃げ切りのミッションを達成。残留争いのライバル相手に貴重な3ポイントを積み上げることに成功した。
ひとこと
イプスウィッチは悪くないのだけどもどうも競る展開をものにできずに勝ち点を積み上げられていない。
試合結果
2024.12.3
プレミアリーグ 第14節
イプスウィッチ 0-1 クリスタル・パレス
ポートマン・ロード
【得点者】
CRY:59′ マテタ
主審:クレイグ・ポーソン
レスター【16位】×ウェストハム【14位】
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獅子奮迅のハーマンセンが新体制に初勝利をプレゼント
ついにファン・ニステルローイが就任を果たしたレスター。スタンドで見守っていた前節は惨敗だったが、ベンチに入る初戦となる今節は結果が欲しいところだろう。
雲行きが怪しくなっているロペテギが率いるウェストハムは高い位置からのチェイシングでスタート。だが、レスターはこれをあっさりとひっくり返して先制ゴールをゲット。ヴァーディが抜け出しからわずか2分でゴールを奪い、あっという間にファン・ニステルローイに就任初ゴールをプレゼントする。
ウェストハムは3-2-5で保持をベースに反撃。先制点を奪って以降も中盤が積極的に食いついてくるレスターを動かしながら反撃に打って出る。
押し込んだ後も手応えはあり。サイドからボーウェンの抜け出しからチャンスを作っていく。しかしながら、GKのハーマンセンが大活躍。ファインセーブの連発でウェストハムのチャンスを積んでいく。
レスターも攻撃に出れば悪くはない。左サイドのタメを軸にカウンターを打ち込むことができており、サイド攻撃自体は機能していた。
時間の経過とともにハーマンセンの仕事は増えるばかり。押し込む局面を増やし、レスターの反撃の機会をどんどん塗りつぶしていく形でウェストハムは攻勢を強めていく。が、打開ができないままハーフタイムを迎える。
後半もボールを持つのはウェストハム。サリーして3バックに変形することでポゼッションをさらに安定させていく。
前半よりはポゼッションを阻害することができるようになったレスター。2人投入の直後に追加点をゲット。ブオナノッテのサイドチェンジを使ったところから最後はエル・カンヌスが仕上げて追加点を奪う。
ようやく押し込むフェーズが安定するようになってウェストハム。セットプレーも含めて決定機を量産するが、またしても立ちはだかるのはハーマンセン。ファインセーブでウェストハムの反撃を許さない。
ロングカウンターの負荷が高まるレスターは途中投入のダカが仕上げの3点目をゲット。左サイドからのカウンター独走で対面のCBをおいていき、嬉しい復活ゴールを手にした。
ウェストハムはフュルクルクが終了間際にゴールを決めるが、3失点での敗北。ファン・ニステルローイの初陣となったレスターが勝利を飾った。
ひとこと
レスターは勝利したものの、バカスカピンチを迎えていたので前途洋々の船出というわけではなさそうだ。
試合結果
2024.12.3
プレミアリーグ 第14節
レスター 3-1 ウェストハム
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:2‘ ヴァーディ, 61′ エル・カンヌス, 90′ ダカ
WHU:90+3′ フュルクルク
主審:ジョシュ・スミス
サウサンプトン【20位】×チェルシー【3位】
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手足なしの状況にステーフェンスが追い打ち
ハーウッド=ベリス、ダウンズ、ディブリング。今のサウサンプトンで重要な選手を各ポジションごとに挙げたのではなく、これはこの試合におけるサウサンプトンの出場停止選手。手足をもがれた状態でチェルシーを迎える一戦となる。
序盤は悪くはなかった。左サイドを軸に攻撃的な姿勢を見せるサウサンプトン。前線の高い位置まで出ていくウォーカー=ピータースを食い止めるのにチェルシーは苦戦。早々にアリボが決定機を迎える。
だが、チェルシーも押し込まれた状態から簡単に反撃に打って出ることができる。サイドからのキャリーであっという間に陣地回復をすると、セットプレーからディサシが先制ゴールをゲット。GK付近に上げたボールを叩き込んで試合を動かす。
しかし、サウサンプトンもすぐに反撃。左サイドに暗躍するウォーカー=ピータースからアリボがゴール。立ち上がりからきっかけを見せた左サイドの起点からニアのディサシを釣り、あっという間に同点に追いつく。
この勢いに乗りたいサウサンプトンだが、いつも通りの安いビルドアップのミスから失点。「背後にマーカーが付いているアンカーにパスをつけるな」とセント・メリーズ・スタジアムのロッカールームに掲示を貼っておくべきだろう。
チェルシーはここからの試合運びは安定。間延びしたライン間のパーマーへの縦パスから一気に前進。押し下げると、セットプレーからチャンスを量産する形で押し込んでいく。中盤の守備がややルーズな側面もあったが、それを上回るチャンスでサウサンプトンを焼き尽くす。右サイドのマドゥエケのゴールでチェルシーは前半のうちに3点目を決める。
苦しむサウサンプトンはセットプレーの攻撃でステーフェンスが退場。ロメロのせいで「ククレジャの髪は掴んでOK」という認識が付いてしまったのだろうか。VARからのリコメンドであっさりと退場に追い込まれてしまった。
これ以降は特にこの試合で語ることはない感じ。サウサンプトンはなかなか厚みのある攻撃をもたらすことができないし、チェルシーは問題なく押し込んでいく。後半はサイドからのキャリーでサイドを崩していくという今季のチェルシーにしては比較的に珍しい形で攻撃を続けていく。
チェルシーは後半にも追加点をゲット。コロコロとゴールに転がるエンクンクのシュートを最後の最後でパーマーが横取りし4点目を決める。最後は交代で入ったサンチョが仕上げ。大量5得点を挙げる。
手足がない状態から10人に追い込まれたサウサンプトンは当然のように大量失点。チェルシーに楽々と勝ち点3を持って行かれてしまった。
ひとこと
まぁ、そりゃこうなるわなぁ。
試合結果
2024.12.4
プレミアリーグ 第14節
サウサンプトン 1-5 チェルシー
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:11′ アリボ
CHE:7′ ディザシ, 17′ エンクンク, 34′ マドゥエケ, 76′ パーマー, 87′ サンチョ
主審:トニー・ハリントン
マンチェスター・シティ【5位】×ノッティンガム・フォレスト【6位】
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強みを押し出し懐かしい光景に
今現在プレミアで最も連敗を重ねているチームはシティという状況を24-25シーズンに見られるとは思わなかっただろう。苦しむシティにとって今節は勢いのあるフォレストというのもなかなか不穏である。
シティはグリーリッシュをIHにおいてドクと併用するという形を採用。形自体は3-1-6ベースの攻略であるが、キャストを入れ替えることで左サイドの破壊力を強化する。
先制点の場面はこの試合のシティを象徴していると言えるだろう。左サイドのオーバーロードから隙を作り、ファーサイドに飛び込んだデ・ブライネが合わせてベルナルドの先制ゴールを呼び込む。
左サイドの強化が功を奏したといえばそうなのだが、この場面でポケットに突撃したのはギュンドアン。得点したベルナルドはもちろんのこと、グリーリッシュにグバルディオルまでボックス内に入っている。後ろは3枚で受けることになっており、ネガトラの備えは脆弱。
もっとも、アンカーの位置にギュンドアンが構えていても機動力で置いて行かれる場面が多々。いずれにしてもカウンター対応には問題があったということだろう。
それでも2得点目も左サイドのユニットから時間を作り、フリーのデ・ブライネがゴールを生み出すなどこの日は前偏重の布陣の攻撃力を最大化することで、プラス収支を生み出していた。悪いところが良くなったというよりは偏重システムのいいところを押し出すことでもぎ取ったという印象だ。
逆に言えば、フォレスト側にシティの隙を仕留める力がなかったということでもある。ウッド、エランガにはそれぞれのチャンスがあったがシュートで息の根を止めることができなかった。
後半、フォレストは3バックに変更。守備的にというよりは降りる前線に対してチェイシングをきっちりかけるためという感じ。保持においてもムリージョのキャリーを促すなど、より主体的にボールを動かしていく。
だが、シティには主体的に向かってくる相手を仕留めることができる武器がある。ドク、ハーランドの速攻でフォレストのゆったりとしたポゼッションを押し返すと、あっという間に3点目を仕留めて見せた。
この3点目を見てフォレストは撤退ムード。ウッドとギブス=ホワイトを下げることに次節に備える構えを見せる。これにて試合は終戦モード。シティが終盤を前に試合を決着させるという久しぶりに見る光景で試合をクローズした。
ひとこと
勝利はもちろん重要だが、弱みを弱みのままに解決したことは否めないシティだった。
試合結果
2024.12.4
プレミアリーグ 第14節
マンチェスター・シティ 3-0 ノッティンガム・フォレスト
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:8′ ベルナルド, 31′ デ・ブライネ, 57′ ドク
主審:マイケル・オリバー
ニューカッスル【11位】×リバプール【1位】
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サラーの驚異的なリカバリー
停滞する2位以下を引き離し絶好調のリバプール。今節は大物食いに定評があるニューカッスルのホームスタジアムに乗り込んでの一戦となる。
ボールを持つのはリバプール。いつものように2CB+2CHをベースとするポゼッションからボールを動かしていく。ニューカッスルは4-5-1のフラットでライン間を圧縮することで受け止めにいく。
リバプールはサイドからボールをキャリーしつつ、折り返しでブロックの外からミドルを放っていく。ニューカッスルはその手前でボールを取り上げてカウンターに移行するのが主な攻撃のプランだった。
変化があったのはニューカッスルのプレスの姿勢である。高い位置からマンツー気味に相手を捕まえるアクションをすることで敵陣でのボール奪取を増やしていく。いつものリバプールであれば、このプレスも外せたかもしれないが、この試合では安易に蹴ることで相手にボールをプレゼントする場面が目立った。
ショートカウンターの機会が増えるニューカッスルはそのまま先制点をゲット。ビッグマッチに置いてバフがかかるイサクらしい豪快なシュートでケレハーの守るゴールを打ち破る。
機能的な前進ができないリバプールは以降も苦戦。相手に捕まるケースが多く、ニューカッスルを外して敵陣に入る形を作ることができない。
後半もニューカッスルは優れた入り。ハイプレスで敵陣でのプレータイムを増やしながら支配的に試合を進めていく。だが、割り切ってWGに託すというやり方もできるのが今季のリバプールの強みでもある。サラーに前進を託す形で前線で時間を作ると、カーティスの飛び込みから追いついてみせる。以降も押し込むことが決定機を連発する。
しかし、ニューカッスルも反撃。先程カーティスを逃してしまったトナーリが右サイドで起点となり、見事な横断を完結。最後はゴードンのゴールで勝ち越しに成功。リバプールは2CHがフリーズしてしまい、全くフィルターとして機能しなかった。
だが、この日のサラーはここからが凄みがあった。交代で入ったアレクサンダー=アーノルドのアシストを受けてあっという間に同点ゴールを決めると、さらに勝ち越しゴールまで。試合を一気にひっくり返す。
これでリバプールの完全な勝ちパターンに入ったはずだったが、最後にニューカッスルはセットプレーから同点に。ファーに流れたボールに対してケレハーがゴールマウスを開けてしまい、そこにシェアが角度のあるコースから打ち込んでみせた。
締まりが悪かったリバプール。ただ、見方を変えれば苦しい出来の中でなんとか勝ち点をもぎ取ったと見て取れる90分だった。
ひとこと
サラー、恐ろしいな。
試合結果
2024.12.4
プレミアリーグ 第14節
ニューカッスル 3-3 リバプール
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:35′ イサク, 62′ ゴードン, 90′ シェア
LIV:50′ カーティス, 68′ 83′ サラー
主審:アンディ・マドレー
エバートン【15位】×ウォルバーハンプトン【18位】
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ようこそセットプレー・フェスティバルへ
立ち上がりはエバートンがロングボールでスタート。キャルバート=ルーウィン目掛けての長いボールでまずはお手軽な前進を狙う。
エバートンは非保持でも積極的な姿勢を披露。噛み合わないフォーメーションにも関わらず、強引に枚数を合わせながら高い位置からのチェイシングで勝負をかけていく。
ウルブスはショートパスでこのプレスを脱することができるかどうかが重要なポイント。サイドから裏返すイメージを持ちながらエバートンの高い位置からのプレスに対抗する。
ウルブスはショートパスから、エバートンはロングボールからというシンプルな構図。その展開を動かしたのはセットプレー。ヤングの直接FKが刺さりエバートンが先制。確かにこのキックは見事ではあるが、ウルブスの壁の作り方があまりにもお粗末すぎた故の失点。ヤングのキックはしたたかという表現の方が適切だろう。
ウルブスもストランド・ラーセンのような前線の強引なプレーから打開を図るが、この日はとにかくエバートンのセットプレーが猛威を振るった日だった。FKからのターコウスキのシュートはマンガラのオフサイドで無効となったが、そのマンガラがセットプレーで自ら仕留めて追加点を決める。
エバートンは得点を重ねてもまだまだハイプレスを敢行。ウルブスはショートパスを使いながら横断からチャンスメイクを狙っていくが、時間経過とともにエバートンの圧力に屈するように。保持で左右に揺さぶりながら、クロスまで行くことでウルブスのゴールに迫っていく。ウルブスはプレスで相手を追いかけることもできず、反撃の糸口をつかめないままハーフタイムを迎えることとなった。
後半の頭はウルブスが左右に振って押し込むが、その状況をひっくり返したのはまたしてもエバートンのセットプレー。後半の主役はキャルバート=ルーウィン。圧倒的な高さで優位をとって、ウルブスのボックス内で猛威を振るっていく。
勇気を出して飛び出していたジョゼ・サの手もキャルバート=ルーウィンの頭に届かずに苦戦。結果的にババを引いたドーソンが2つのオウンゴールを献上するという地獄のような展開になってしまった。
わかっていても止められないセットプレー・フェスティバルにウルブスを引き摺り込んだエバートン。あらゆる形のセットプレーで得点を重ね、合計4得点の大勝でウルブスを退けることとなった。
ひとこと
いくらなんでもやりすぎと思ったけども、よそから見たらアーセナルもこんな感じかもしれないね。
試合結果
2024.12.4
プレミアリーグ 第14節
エバートン 4-0 ウォルバーハンプトン
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:10‘ ヤング, 33’ マンガラ, 49′ 72′ ドーソン(OG)
主審:マイケル・サリスベリー
アーセナル【2位】×マンチェスター・ユナイテッド【9位】
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無敗のアモリムはエミレーツでストップ
レビューはこちら。
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ここまで3試合無敗となっているアモリムのユナイテッド。彼らにとってエミレーツへの遠征はここまでの試合の中で最も大きな挑戦になるだろう。
ボールを持つのはアーセナル。コンパクトなユナイテッドの守備を広げつつの前進を狙っていきたいところだが、この日は前と後ろの接続役が不調。ビルドアップ隊とフィニッシャー隊を行き来するウーデゴールのボールタッチが乱れやすく、右の大外のサカにボールを渡すトーマスのパスもカットされてしまう。隙間でボールを受けようとするジンチェンコは悪くなかったが、左サイドはそれ以上のものを見せることができなかった。
一方のユナイテッドも保持に回ると後方に人数を揃えたビルドアップを敢行。大外のマラシア、ダロトとGKのオナナを活用し、アーセナルのハイプレスを広げつつ、マズラヴィでライン間の前進を狙っていく。
大外のWBのダイアゴナルランとホイルンドのポストがアタッキングサードの主役だったユナイテッド。序盤はこの動きは効いていたが、時間の経過とともにアーセナルの守備陣は対応が慣れるように。サリバとラヤの背後のケアとライスとトーマスのホイルンドの挟み込みによって、アーセナルはチャンスを封殺する。前半は両チームともチャンスが少ない展開となった。
アーセナルは後半、大外から背後に斜めのランを行うことでチャンスを作る。前半よりはトーマスのパスのフィーリングは良くなった。一方のユナイテッドも右にディアロを入れてジンチェンコとぶつけることで対抗。1on1で攻め切れるポイントを作りにいく。
押し込む頻度を増やしたのは保持の基盤を整えたアーセナル。すると、得意のセットプレーから先制。ニアに入り込んだティンバーのゴールで試合を動かす。
このゴールを受けてユナイテッドは前線にアタッカーを投入して4-4-2に移行。足元でボールを受けるケースが増えたことにより、アーセナルのDFとのマッチアップで優位が作れるかが争点となった。ディアロとジンチェンコ以外はその点で勝算は見えて来なかったし、そのジンチェンコも交代で下がってしまうと反撃のきっかけは一気にぼやける。
ラッシュフォードの不用意なCK献上から更なる追加点を仕留めたアーセナル。苦しい内容ながらも2つのセットプレーで差をつけての勝利。アモリムのユナイテッドに土をつけた。
ひとこと
ガブリエウがいなくてもセットプレーは強力だった。
試合結果
2024.12.4
プレミアリーグ 第14節
アーセナル 2-0 マンチェスター・ユナイテッド
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:54′ ティンバー, 73′ サリバ
主審:サム・バロット
アストンビラ【12位】×ブレントフォード【8位】
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構図をひっくり返すビラの猛攻
序盤から非常にコントラストがはっきりしていた試合だと言えるだろう。ハイプレスに出て行ったアストンビラはブレントフォードのバックラインにボールを持たせるつもりはなし。一方のブレントフォードの4-4-2は2トップが中盤を守備のスタート地点として様子見の構えであった。
このままいけば、押し込むアストンビラがブレントフォードのブロックを動かすトライと、ブレントフォードのカウンターという構図になりそうな一戦。だが、ブレントフォードは機を見て敵陣ではハイプレスに出ていく構えを見せる。
自陣では徹底したリトリート、敵陣では思い切ったハイプレスの二段構えを見せるようになったブレントフォードだが、時間の経過とともに前者のカラーが強くなるように。そうなった理由はアストンビラがきっちりとブレントフォードのプレスを外しての前進ができたからだろう。ブレントフォードのプレスバックが間に合わず、リトリートの局面が消滅したことがブロック守備が見られなくなった原因と考えられる。
特にブレントフォードが苦戦していたのはアストンビラの前線の反転。とにかくロジャーズとワトキンスの両者を止めることができなかった。先制点を奪ったロジャーズは久しぶりの会心のミドル。2得点目はピノックを完全に置き去りにしたワトキンスが奪ったPKを自ら仕留めてさらにゴールを決める。
トランジッションの出来がバッチリだと、後方の攻め上がりも積極的になるという好循環はあるある。攻め上がったキャッシュのゴールで前半のうちに3点目を奪い取ってみせる。
ブレントフォードは3-2-5の保持から少しずつ反撃に打って出たいところだが、カウンターからの反撃で劣勢は継続。前半はほぼアストンビラのワンサイドで試合が進んでいく。
3点のビハインドで苦しむブレントフォードだが、後半もハイプレスで継続。そのハイプレスから好調のダムスゴーが1点を返す。しかしながら、以降はビラがゲームを支配。後半はカウンターベースで試合を進めることでブレントフォードの保持とプレスをひっくり返していく。
チアゴ、カルバーリョと前線を思い切って入れ替えていくブレントフォードだが、最後まで反撃のきっかけは掴めず。試合の波風を立たせることができないままタイムアップ。ホームのビラが前半の3得点でのアドバンテージを活かして勝ち点3を手にした。
ひとこと
シティの陰に隠れて実は苦しんでいたビラ。この勝利から上向くか。
試合結果
2024.12.4
プレミアリーグ 第14節
アストンビラ 3-1 ブレントフォード
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:21′ ロジャーズ, 28′(PK) ワトキンス, 34′ キャッシュ
BRE:54′ ダムスゴー
主審:ルイス・スミス
フラム【10位】×ブライトン【4位】
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天敵は9回目も越えられず
プレミアリーグ創設以降、8戦戦って勝利なし。ブライトンにとってはフラムは天敵のような存在となっている。上位を見据えられる順位となった状況で彼らには試練が立ちはだかることになる。
ブライトンは4-4-2をベースにしていたようにも見えたが、保持時においては3バックに可変。左サイドを片側上げすることでフラムのフォーメーションに対してズレを作る。保持時のフォーメーションは3-2-5が基本線となっていた。
ただ、序盤のブライトンがうまくいっていたとは言い難かった。中央を無理にこじ開けようとしたり、裏へのピーキーなパスが出るなど、攻撃があっさり終わることが多かった。
ブライトンにとって最悪だったのはフラムのカウンターが一発目で刺さってしまったこと。機を見て高い位置に出てきたフラムのプレス隊にフェルブルッヘンがまんまと捕まり失点。イウォビが先制ゴールをこじ開ける。以降もイウォビはロングカウンターからチャンスを作るなど、ブライトンに対して脅威となっていた。
先制点以降は長短のパスをベースに相手を外すフラムは保持の機会を回復。マンツー気味にプレスに行くブライトンに対して、イウォビの移動からフリーの選手を作り、ボールを一気に前に進めるきっかけを掴む。
だが、時間の経過とともに再びブライトンが押し込むように。きっかけとなったのはサイドに起点を作る動き。ペドロが左サイドに流れることでチャンスを作ると、三笘とエストゥピニャンとの連携からクロスを上げていく。
三笘はバックドアからアディングラに決定機を供給するが、ここはレノが立ちはだかってビッグチャンスをセーブ。押し込まれつつも1点のリードをきっちり守ったままハーフタイムを迎える。
後半はフラムのキックオフの仕込みがなし崩し的に成立したウィルソンのシュートシーンから。フラムはサイドから押し下げつつ即時奪回で回収を試み、波状攻撃を仕掛けつつポゼッションの機会を回復する。
ブライトンも前半と同じく3バック変形から左はコンビネーション、右はアディングラのアイソレーションからチャンスを狙っていく。互角の展開の中で一瞬で作ったチャンスを生かしたのはブライトン。ペドロの抜け出しからのアクロバティックな落としをバレバが仕留めて同点に追いつく。
同点の流れからプレスを強めたブライトン。だが、フラムも左サイドから背後を取りつつ押し返す流れを作っていく。すると、フラムはセットプレーから勝ち越し。バッシーが触れたボールが幸運なオウンゴールをもたらす。
そして、仕上げはイウォビ。左サイドから強引にシュートコースを作って撃ち抜き、試合を決め切る一撃をお見舞いする。
またしても鬼門突破はならなかったブライトン。フラムに対する未勝利記録は継続することとなった。
ひとこと
前半も後半も要所で暴れたイウォビが素晴らしかった。
試合結果
2024.12.5
プレミアリーグ 第14節
フラム 3-1 ブライトン
クレイブン・コテージ
【得点者】
FUL:4′ 87′ イウォビ, 79′ オライリー(OG)
BHA:56′ バレバ
主審:ピーター・バンクス
ボーンマス【13位】×トッテナム【7位】
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中盤で落ち着きどころが見えてこないトッテナム
縦に鋭い攻撃を繰り出させたらどんな相手に対しても食らいついていくことができる破壊力を持っているボーンマス。こちらも高速でサイクルを回すこと一本槍で勝負するトッテナムとの一戦は想像通り縦に速い展開の応酬からスタートすることに。
試合は全く落ち着くことはなく、ドリブルやロングボールなどのつっかけ合い。クライファートのスピードで勢いを出すボーンマスに対して、早々にデイビスがカードが受けるなどトッテナムはやや受けに回った際に旗色が悪かった。古巣対決となるソランケが強さを見せることで根性で前進をする。
拮抗する一戦の中でセットプレーで先制ゴールを決めたのはハイセン。CKでファーに回り込んでフリーになるとあっさりとゴールを決めて見せた。
追いかけたいトッテナム。だが、押し込み切ってしまうとU字ポゼッションになり壊しどころがない。またボールの落ち着かせどころがなく、保持で全くテンポを作ることができない。中盤がなかなか動き直しをすることができず、縦のパスコースの予測が見えた状態でパスを出すので、簡単にボーンマスに捕まってしまう形になった。
ということでむしろ攻撃に打って出ることができていたのはボーンマス。カウンターからチャンスを継続的に作ることができており、追加点に近い状況に立っていた。
後半はややプレッシングがマイルドになったボーンマスだったが、手を緩めたわけではなくむしろトッテナムにアジャストした狙いの絞り方で受け手に強くプレッシャーをかけていく。トッテナムは中盤の司令塔不在が後半も響いてバタバタ。ボールの落ち着かせどころとして機能しそうなマディソンやクルゼフスキもなかなか有効活用できず。CKやペナ角からのクロスなど、瞬間的なキックスキルを活かすところからこじ開けにいく。
選手交代からリズムを変えたいトッテナム。途中から入ったソンは早々にゴールを決めるが、これはオフサイドで認められず。
押し込まれつつあったボーンマスは70分くらいから反撃。攻め上がりをきっかけにハイプレスに打って出ると、アダムスがボールを引っ掛けてエヴァニウソンがネットを揺らす。惜しくもオフサイドになったが、このシーンから再び攻めに打って出る。
終盤はむしろ追いかけるトッテナムよりリードするボーンマスの方が優勢。ソンのオフサイド以降、交代選手も含めて流れを作れなかったトッテナム。敵地で苦しい連敗となった。
ひとこと
人はそこそこ戻ってきていると思うトッテナムだけども、勝ち負け以前にらしいプレイができなかったのが気になるところ。
試合結果
2024.12.5
プレミアリーグ 第14節
ボーンマス 1-0 トッテナム
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:17′ ハイセン
主審:サイモン・フーパー
今節のベストイレブン
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