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「奪い取られた選択肢」~2019.3.17 J1 第4節 川崎フロンターレ×ガンバ大阪 レビュー

スタメンはこちら。

目次

【前半】
幅を封鎖せよ

 フォーメーションは互いに4-2-3-1。トップ下にはベテランの中村憲剛と遠藤保仁が鎮座するスタメンの対決となった。G大阪はルヴァンカップのリピート、川崎はデビュー戦となる山村を先発から起用した。

 川崎のボール保持はボックス型のCB-CHで前進を狙う。G大阪の並びとしては4-4-2気味。遠藤を筆頭にボールを誘導するような守備がうまかった。遠藤トップ下、倉田をCH、三浦をSBにずらしたこの日のフォーメーションは「川崎戦を念頭にルヴァンカップでテストした。」と宮本監督は話していた。おそらく、運動量に難のある遠藤はトップで方向を誘導し、守備の指揮を執る役割。より動ける倉田を4-4-2のCHにおいてブロック時の中央の決壊を防ぐという作戦ではないだろうか。三浦のSBはどこまで狙い通りだったのかは定かではない。もちろん決勝点は決めたけども。オジェソクも対人に強いプレイヤーだし、三浦は序盤、長谷川に結構手を焼いていたので、そこまでアジリティに自信を持っていたわけではなさそう。あえて狙いを考えるならば、小林or家長と対面するイメージだったのではないかなと。高さもあるし。膝の負傷によって小林が欠場してしまったけどもね。

 G大阪のプレスは比較的アグレッシブに。とはいっても、刈り取るようなプレスではなく、相手を誘導するようなプレスが多かった。特にウィジョと遠藤は相手のボランチに逆サイドへの展開をさせないように意識をしていたと思う。上述のようにG大阪のボランチは動ける倉田を使っているので、川崎のボランチに入ったときは積極的に撃退に来た。このようにG大阪のボールを誘導するような守備が、ボール保持時の川崎のバックスを悩ませていた。奈良や鈴木のような低い位置でのプレー選択のリスク管理が甘い選手が実際にミスもしていた。

 ワイドを使った展開がふさがれてしまった川崎はライン間攻略と裏抜けに頼ることになる。前者の攻めの中心になったのは知念のポストプレー。G大阪のMF陣は前へのベクトルが強かったので、DF-MF間のスペースをG大阪のDF陣が狭めきれないときがあった。したがって、知念は挟まれずにポストをすることができていた。彼は1人までなら背負える。しかしながら、知念とほかの選手の距離が遠く、彼をサポートできる選手は少なかった。また、長谷川は裏抜けやサイドでの1対1での突破で存在感を見せたが、彼が抜いたところで、エリア内の状況が芳しくないシーンがほとんど。アクセントになったのは遅れて上がってくる鈴木のオーバーラップくらいのものだ。G大阪はリトリートの判断が早く、川崎の選手が上がっていくよりもG大阪がブロックを組むことが早いシーンがほとんど。ブロックの攻略は序盤を除けばできなかったという評価になるだろう。逆サイドから左に顔を出すのがおなじみになってきた家長はこの試合も左にやってきたが、あまり効果的ではなかった。知念や長谷川は好調を維持しているが、だから?という様相である。横浜FM戦で露わになった課題は積み残したままである。

【前半】-(2)
ボールの持ち方というよりは

 G大阪のボール保持はあまり4-4-2を崩さないまま。時折、ボランチが最終ラインに落ちたり、遠藤が下りてきたりなどのシーンは見られたけど、そこに何か仕掛けがあるというわけではないように見えた。中央が空いていれば、ハーフスペースのアデミウソンや小野瀬にパスを出すこともあったはあった。しかしながら、優先度は高いとは言えず、川崎がプレスに行くと躊躇なく、裏のファン・ウィジョに向けて蹴りこんでいたのが印象的。ボール回しもサイドを経由することが多かった気がする。清水戦の映像を見たが、もう少し内側でボールを循環させているイメージがあった。G大阪サポの方はどう感じたのか気になる。

 これらのことから考えると、G大阪が注意していたのはボールの持ち方よりボールの失い方ではないだろうか。なるべく深い位置で失う、そして失うならなるべく中央ではなくサイドで。ファン・ウィジョやアデミウソンは対面相手に完勝するシーンは多くはなかったが、それでも彼らは川崎が陣形を下げざるを得ない程度には川崎DF陣と互角にやれていたと思う。奈良と鈴木を中心にウィジョとアデミウソンはなんとか食い止めていたが、G大阪からすれば、食い止められても川崎の陣形さえ下げてしまえばOKといったところだろう。おそらく、今の川崎で一番厄介なのはミドルプレスからのショートカウンター。山村と田中はフィジカルに特徴があるコンビで、G大阪としてはここで引っ掛けて下手なカウンターを食らうのは避けたい。被カウンター回避の意味でもウィジョへのロングボールは意味があったと思う。サイドを経由するボール回しも同じ理由だろう。中央でボールを奪うほうが川崎はボール奪取後にカウンターに動ける。

 後ろから組み立てることを川崎に許容させたのは大島の不在も理由の一つかもしれない。彼の身のこなしがあれば、G大阪のボランチのプレスが空転させられる可能性もある。山村や田中が前へのボールの供給において、特に悪かったわけではないけど低い位置で相手のプレスを空転させることができるボールの動かし方は大島の右に出るものはいない。川崎が持つ最も貴重な質的優位の一つだと思う。彼がいれば家長や中村はもっと高い位置で知念のサポートに回ることができたのではないだろうか。G大阪はボランチ経由のサイドチェンジはケア、サイドから前進されたらリトリートという流れで割り切っていた。川崎はその流れを変えられず、サイドから無心に攻めていた印象だ。

 というわけで
・知念のポスト、長谷川の突破の後の攻撃のデザインが不明瞭。
・G大阪のプレスで幅をとった攻撃が封じられる。
G大阪の攻撃で川崎のミドルプレスが回避。

 というあたりが川崎の前半の消化不良の要因と推察。

【後半】
変更したシステムの実効性の差

    ミッドウィークにACLを戦った川崎も、メンバーを落とさすにルヴァンカップを戦ったG大阪も疲労は懸念材料の一つ。後半の序盤はトランジッションの局面が減り、ボール非保持側が押し込まれる展開が続く。両チームとも中盤が後退するタイミングは早くなり、相手を引いて受ける場面が増えた後半の頭。先に押し込んだのは川崎だったが、小野瀬がウィジョに出した股抜きパスを皮切りにG大阪が猛攻を始めたというのが後半頭の流れ。G大阪攻撃の局面の方が危険度は高かった気がする。

    先に動いたのは齋藤学を投入した川崎。前半途中から前線にポジション移動(知念の孤立を防ぎたかった?)した山村を下げる。長谷川を残したということは、齋藤と長谷川の両サイドで幅を取り始めるのかな?と思ったら、齋藤はガンガン内側に入ってきてシドニー戦のやり直しのような展開が始まった。幅をとるんじゃないのか。

    立て続けの交代カードを切ったのは川崎で、長谷川→ダミアンで2トップに移行。横浜FM戦の4-4-2を振り返ると、CHが出足よく相手を捕まえられる際はショートカウンターが機能するが、そうでないときは中盤やその後ろで相手にスペースを与えるというのが教訓だったはず。ダミアン投入時の川崎のCHは3日前にフル出場したベテランの中村と8日間で3試合連続のスタメンをトップチームで初めて経験している田中のコンビ。まず、出足の良さは望めない。しかし、2トップは前に前に守備に行きたがるので、中盤は間延びする。手当として中村→下田の交代は必然だろう。しかし、それでもFW-MF間、MF-DF間の距離感の悪さは最後まで修正できたとはいいがたかった。結果として中央に移動したアデミウソンがバイタルでスペースを得ていたのは、川崎にとって最悪だった。

    劣勢に拍車をかけたのは守備時のSHのポジションの悪さで、対面相手のマークが甘い家長とボールに食いつきすぎて持ち場を離れることが多い齋藤はあまり守備の助けになっていなかった。このSHの対面の相手。SBからSBへのゴールが決勝点になったから皮肉なものである。大外からサイドを深くえぐられて突破、ニアでつぶれる動きをするウィジョに気を取られて、人数がいるのにグラウンダーのクロスがファーまで流れて失点。左右が違えば、先週マルコス・ジュニオールに決められたゴールのリプレイだ。

    G大阪としては片側サイドに川崎の攻撃を封じ込め、スライドを最小限にとどめたのがこの時間にご褒美となって帰ってきた印象。もともと超人的な脚力がある藤春もすごいが、逆サイドの三浦もあそこに走りこめたのは、川崎がボール保持の局面でG大阪を揺さぶることができなかったしっぺ返しだろう。リトリート後の川崎のボールの取りどころが不明瞭なのもあったけど。

    試合はG大阪が勝利。川崎は昨年5月以来の等々力での黒星となった。

まとめ

    宮本監督が課したミッションを完遂したG大阪イレブン。ここまでは出入りの試合が多く続いただけに、我慢を強いられる展開は今までとは少し違う部分もあっただろうが、選手、スタッフ、ファンが一丸となって目的を達成した。ウィジョやアデミウソン、小野瀬のような攻撃のタレントがいたからこその作戦ではあるだろうが、倉田や遠藤のようなベテランがきっちりそれを下支えしていたのが印象的だった。チームの頑張りのおかげで、東口は昨年の等々力に比べれば半分も仕事はなかったはず。勝因を挙げるならば、川崎のサイドチェンジを封鎖したことだろう。今季の川崎のサイド崩しの質を見れば、人数をかけられようと片側に寄せて囲ってしまうのが得策である。

    加えてショートカウンター回避のロングボール。川崎から「幅」と「ショートカウンター」いう選択肢を削り取ったのが正しいアプローチだったといえる。次節の神戸相手にはどういう手立てを講じるのか。今から楽しみだ。

    惜しかった!と感じた川崎ファンもいるかもしれないが、こうして一つ一つ振り返ってみると、術中にハマっている感じがするのは結構残酷である。「間」を封鎖された鹿島戦とかそもそも「裏」をほとんど使わなかったFC東京戦もそうなんだけど、川崎は選択肢が取り上げられると弱い。去年の広島戦のように、いくつか使い分けながらそれぞれの選択肢の可能性を広げられるような戦い方をするのが、川崎の強さだと思う。下の記事、懐かしさ満点。口調が今と違う。。

    しかし今季はとにかく選択肢をすぐ切り捨てる印象。特に「幅」は諦めが早い。右サイドが死んでいる・・・っていうのはすでにおなじみの光景になっている。難しい時期を過ごしているときに助けになるのはセットプレーのはずだが、そこから勝ち点を積むこともできず。終盤はアバウトなダミアンや知念へのボールはもっと多くてよかっただろう。
攻撃がどこから来るかバレている川崎は強くはない。攻撃がどこから来るかわからない川崎が再び顔を見せるまでは、我慢の戦いが続くことになりそうだ。

試合結果
2019/3/17
J1 第4節
川崎フロンターレ 0-1 ガンバ大阪
【得点者】
91′ 三浦
等々力陸上競技場
主審:木村博之

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