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「新しい切り口の意義」~2026.3.1 J1百年構想リーグ 第4節 川崎フロンターレ×水戸ホーリーホック レビュー

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目次

レビュー

左右で異なるサイド攻撃の課題

 立ち上がりにまず見られたのはロングボールの応酬。特にGKからのリスタートには両チームとも時間をかけてロングボールを選択。明確に繋ぐのではなく、前線のターゲットマンを狙って前進を図る。

 川崎のターゲットになったのは左のハーフスペース付近に構えるロマニッチ。水戸は左サイド大外まで流れることもあった渡邉などがターゲットになる形で前進を図る。

 ロングボールの応酬から抜け出して異なるアプローチを探っていこうとしたのは川崎。ショートパスから動かしにいくトライを敢行する。ギャップを作りにいったのは3CHのところ。前節とCHを総入れ替えし、スタメンに入った山本と大関は脇坂と連携しながら3枚になることで水戸の4-4-2ブロックに対して浮く選手を作る。

 相手が追ってこなければ純粋に浮いた彼らを使えばいいし、水戸のCHが強引にプレスに出てこようとするのであれば、その背後のスペースにマルシーニョ、ロマニッチなど縦パスのレシーバーを忍ばせることで背後に縦パスを通しにいく。

 CHの中で別格感があったのは山本。ボールを置き直すアクションやターンから前を向く駆け引きに成功。半身で縦パスを差し込んだり、体重移動一つで逆を取ったりなどで前進のきっかけを作っていく。

 相棒の大関に関してはなんとも評価がわかれるところだろう。試合の展開もある話であるが、あまりにも組み立てへの顔出しが少なかった前節のCH陣に比べれば前進に寄与はしていたようには思う。脇坂のポジションチェンジがより機能的になるのも魅力ではある。

 ただ、少ないタッチでシンプルに縦につけて欲しいところで結構こねてしまったり、あるいは駆け引きの過程でボールを失ってピンチになったりなどマイナスが生じる場面も。敵陣でも味方の動き出しにパスが合わず苦しい場面もあった。

 前節に比べてCHは脇坂とともに3CH気味に組み立ての貢献度を増していた一方で、ブローダーセンは組み込みにくさがある。ショートパスでリスクがあるプレーを排除し、基本的にはロングキックを選択。そのロングキックに関しても精度が足らず、ロマニッチに届かないこともしばしば。CFの収めるスキルとは別のところで機能性が下がることもあった。

 水戸は川崎のCHにギャップを作られるのを嫌い、徐々に2トップが川崎の中盤をケアするように。となるとプレッシャーを受けにくくなるのは川崎のCB。今節復帰した佐々木と谷口から前線へのダイレクトなフィードでチャンスを作りにいく。

 マルシーニョの動き出しやロマニッチへのロングボールなど動き出しは良かった川崎。だが、この日はダイレクトに前にパスが通っても得点にはつながらず。この辺りはメンバーを入れ替えた影響が如実に出てしまっているようにも思える。良くも悪くも独力で行ってこいができるエリソンや伊藤がいない分、少ない人数で攻撃を完結するという点ではうまくいかなかった。

 もっとも、CHが浮いて前進ができた分、いつもに比べればボールと一緒に全体の重心を上げながら前進することができた川崎。サイドを幅広く使いながら押し上げることがここまでのシーズンに比べるとかなり多く、SB(特に三浦)の攻め上がりからチャンスを作る場面が見られた。

 しかし、その上で押し込む攻撃でも問題点があったのがこの日の川崎。SBのオーバーラップの活用に関して左右異なる性質の問題が発生する。左サイドはシンプルで大外で受ける三浦のクロスの精度が足りない。サイドチェンジからフリーで受けるシーンが多かった三浦だったが、本人も試合後のインタビューで認めていた通り、この日のキックの精度はイマイチ。横断先のSBからのクロスは仕上げ的な役割を担うことが多いが、その仕上げのところが不十分だった。

 右サイドで気になったのは連携面。紺野と山原の連携がなかなか向上しない。一番気になったのは紺野が仕掛けようとする時に山原が影響を与えることができず、完全に捨て駒になっていること。

 4分のシーンを例に挙げて説明したい。紺野はペナ角付近に立ってボールを持っている。対面には2人の相手選手、自らの後方斜め後ろには山原がいる。

 この山原は紺野から見れば死角。パスコースを作っているわけでもない。もちろんボールを受ければクロスを上げることはできるだろう。ただ、川崎はインサイドに高さがあるチームでもクロスの入り方にうまさがあるチームでもない。大外レーンから上がってくるであろうロブ性のクロスは相手のDFからすれば比較的対応しやすいボールだろう。

 ということで水戸からすると、紺野の外に立つ山原は放っておいていい存在。ボールがもし出ていったとすればその時に捕まえに行けばいい。ということでこの場面は紺野に2人の相手選手の注意が向くのは必然。放っておいていい選手がいるのであれば、他の選手への注意は向く。

 攻撃側目線であればダブルチームで相手が対応してくれば、むしろこれを利用したい。紺野にマークが2人集まるのであれば、SBにはフリーで受けられるチャンスが広がることになる。ボールを受けるために動くことで保持側は非保持側のダブルチームを罰する権利を本来は持っているはず。

 だが、この試合ではこのように相手に簡単に放っておかれている選手がそのまま盤面に影響を与えられないことが多かった。水戸が紺野に2人マークをつけている理由が山原を放っておいていいからなのだとしたら、紺野が1対1で勝負できるような土俵を整える必要がある。紺野も山原もお互いの位置を利用する素振りが少なかった。

 この2人に限らず、川崎のサイドアタックは特に上記の場面が多い。ホルダーがペナ角あたりにいて、同じサイドのサポートがホルダーの外のレーンの斜め後ろになっているケース。外側の後方であればネガトラの予防にもならないし、相手にも無視されるしで、あまり高い位置をとっている意味がないように思えてしまう。

 右サイドの懸念は、試合の流れから浮いてしまう味方ができてしまっていること。そして、そういう味方を作ってもなお全てをやり切るクオリティが紺野に備わっていなかったことになるだろう。

整理しきれなかった左サイドの守備

 先に述べたようにこの日の水戸の保持はまずはロングボール攻勢。狙いは山原とか三浦など空中戦に難がありそうなSBが相手。逆に谷口や佐々木といった川崎のCB相手だと少しハードそうな様子だった。

 西川からのリスタートもロングフィードから。この後の振る舞いを見ると、西川は明らかに高いスキルでショートパスをつなぐことができるGKだったので、まずはリスクを少なくゴールまで狙えるのであれば高さでミスマッチになりそうなところを利用してみようといったところのように見えた。スローインも前に前に進んでいく擬似ロングボール的であり、序盤の水戸の狙いは徹底していた。

 とはいえ、川崎のCBはきっちり跳ね返すことに成功。ロングボールでは難しそうだなと悟った水戸はショートパスの割合を増やしていく。川崎はハイプレスで対抗。パスコースを制限しながら相手にインサイドへのパスを誘うようなプレスをかけつつ、マルシーニョが右足側から西川にプレッシャーをかける。

 結果的に脱出される機会が多かったが、川崎としての手応えは悪くなかった。まずは仮に右サイド側に水戸の展開を許しても、そこからの加速は限定的。マルシーニョの二度追いが効いており、高い位置でボールを止めることができてきた。

 加えて、センターのユニットによるアンカーの受け渡しのクオリティも十分。これであれば水戸がインサイドにチャレンジングなパスを出した時に咎められる可能性がある。リスクもある程度少なめという状況で、ここまでの試合でほぼ可能性を感じなかったハイプレスのリズムを川崎は作ることができていた。この点は明確にエリソン→ロマニッチの入れ替えの影響だろう。

 水戸は明確にアドバンテージを取ることはできず、どちらかといえばCHが浮くことができた川崎がペースを掴む。水戸はラインを下げながら受けてしまい、川崎の保持が続くことに。

 その流れが少し変わったのは25分付近。川崎はビルドアップの過程で自陣側でのミスが増えてしまう。主に先に述べた大関周辺で怪しさが見られるように。水戸はパスミスのインターセプトを中心にカウンターの機会を得る。仮にミドルゾーンを突破できても裏へのパスを急ぎすぎた川崎はシュート機会を作れなくなるように。

 保持でも大崎がサリーして3バック化することで川崎のプレスを揺動。中盤で仙波が浮くことでアンカーから運ばれるシーンも出てくる。

 30分から40分はどちらのものでもないなという感じであったが、前半の終盤にかけて流れを掴むのは水戸。敵陣に入っていくと縦方向のパスの出し入れから川崎の守備を揺さぶる。仙波を浮かせて配球してもらう事をベースとする戦い方。多くの選手が仙波に落とすことを前提に降りるアクションから縦パスを引き出していた。

 前半の終盤に問われたのは川崎の左サイドの守備。1失点目、マルシーニョが飯田にハイプレスを抜けられたところから。自陣までの戻りが間に合ったように見えたシーンだったが、左サイドの陣形が乱れた分、ホルダーにチェックにいく選手を整理できず。大崎からのファーへのクロスで山原の外を回ったところから折り返されて、最後は加藤が仕留める。

 2失点目は同数できっちり噛み合わせていたところで1枚剥がされてしまったところから侵入を許したシーン。セットプレーでの流れで各選手のポジションが曖昧となり、ハーフスペースに突撃した選手を誰がマークするのかが整理できなかった。紺野と山原のところで述べた放っておけない選手を作ることの重要さを体現しているようなゴールだった。

 2つのチャンスをきっちりとものにした水戸。立て続けに2点のアドバンテージを取り、ハーフタイムを迎える。

エリソンのマッチポンプ

 後半、両チームはもう一回ロングスローから探り合い。そうした中でラインを下げる判断をしたのは水戸。SHは深い位置までの守備、CHはボックス内の跳ね返しに顔を出すなど低い位置での守備への参加を増やしていく。

 押し下げていく機会を得た川崎。中盤でフリーマンを作りながらサイドにつけていくところまでは安定していたが、その先がなかなか。サイドで試合から浮いている選手を作ってしまうという問題点は後半も健在で、なかなか展開を動かすことができない。

 60分手前に長谷部監督は選手交代を実施。前線3枚を入れることでWGでのギャップ作りを敢行。大外に攻めの起点作りに挑む。だが、川崎が押し込む攻撃を試行錯誤しているところで水戸は徐々に反撃。ポゼッションから川崎の前線を振り回していく。

 後半に交代で入った川崎の前線は前からのプレスがさらに怪しくなる。特にCFのエリソンはアンカー管理のところのミスが出てしまい、水戸のビルドアップを阻害することができない。ただ、むしろ水戸に川崎陣内まで運ばれることでむしろエリソンがカウンターで走れるスペースが出てくるというのはなかなかのマッチポンプだった。

 ボールを取り返すことができてもU字のポゼッションに終始し、なかなかボックス内に入り込むことができない川崎。そんな川崎の反撃のきっかけはあまり文脈がないところから。左サイドの三浦が上げたクロスが山下の手に当たってしまいPK判定。このPKをエリソンが仕留めて前に出る。

 水戸は5バックにシフトしつつ、プレスでラインを上げながら前に出ていく姿勢も見せて逃げ切りを図る。追撃弾から押し込む機会を取り戻した川崎はまたしても三浦がファーへのクロスを送ったところから同点。脇坂が仕留めることに成功し、土壇場で同点に追いつく。

 試合はそのまま終了。PKを全員が決めた川崎が勝ち点2を手にした。

あとがき

 2点のリードを取った水戸のプレー選択の影響が大いにあるため、後半に攻撃のターンが続いたことを守備のターンを減らす方向性の成功と受け取るのは明らかに早計。自分たちが押し込む力を手にしたかどうかはまた別の話である。

 ただ、引いて受ける相手に対しての今の川崎の課題が抽出できたのはいいこと。そもそも押し込めないこれまでの試合では分からなかったこともわかってきた。左右のSBを含めたサイドアタックの課題は特に注目点になるだろう。

 まず遊んでいる人(=高い位置にいる割には相手から管理されず自らがボールを受けても有効打にならない状態)を減らすことが最優先。相手が放っておいてもいいなと思う選手を減らすことから始めたい。その上で今度は相手を動かすオフザボールとか、オフザボールを利用したホルダーのカットインとかの話になってくるはず。

 そのオフザボールが最もできているからこそ試行回数を得ることができている三浦はキックの精度と向き合ってくれるはず。性質の異なるサイドアタックの問題が2週間後にどれだけ進歩を見せるかを注視したい。この試合で新しい切り口から抽出した課題は無駄にしたくない。

試合結果

2026.3.1
J1百年構想リーグ
第4節
川崎フロンターレ 2-2(PK:4-2) 水戸ホーリーホック
U-vanceとどろきスタジアム by Fujitsu
【得点者】
川崎:84′(PK) エリソン, 90+3′ 脇坂泰斗
水戸:45′ 45+4′ 加藤千尋
主審:椎野大地

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