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「ブローダーセン起点のビルドアップを考える」~2026.4.5 J1百年構想リーグ 第9節 川崎フロンターレ×浦和レッズ レビュー

プレビュー記事

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レビュー

バタバタの序盤戦

 共に調子が上がらず、サポーター同士がフラストレーションを溜めていると考えられる状況での一戦。等々力での両軍の対戦は、タイトル争いとはまた異なるナーバスさを持った対決となった。

 試合は序盤から動きが多い流れ。先にゴールを奪ったのは浦和。左サイドからのFKから抜け出した根本が先制点を仕留める。川崎にとって誤算だったのは丸山。ラインを下げるアクションを一足早くしてしまったせいで、根本はオンサイドになってしまった。

 ラインの決め方がどういうルールなのかはよくわからないが、このシーンだけを見るとオナイウの動き出しに対して早く動いてしまった丸山のエラーのように見える。どこに責任の所在があるかは別としても、このラインのズレが致命的だったのは間違いないだろう。似た位置から放たれた11分のFKに対してはきっちりオフサイドを取れていた(原判定はどうかわからないが、映像を見る限りはオフサイド)ので、狙いとしてはこういう形でファーサイドの浦和の選手を引っ掛けたかったのだろう。

 記録的には6分のラグこそあるが、その時間のほとんどをVARによるオフサイド確認に使ったことを踏まえれば、「直後」という表現をして差し支えないだろう。直後に三浦のクロスから川崎は同点に。ほとんど得点の可能性のないクロスだったが、ボザが対応を誤ってしまい自軍のゴールにボールを入れてしまったような場面だった。

 結果的には得点につながったが、この場面での三浦のクロスというのはなかなかな選択。本来であればもう少し枚数をかけながらクロスを入れていきたかったところだろう。

 2つの得点が入りながらも、より目立ったのは序盤の浦和のバタバタ。先に挙げた11分のFKの直後にボザが負傷退場。すでにウォームアップの後に宮本を欠いている浦和としては、実質試合開始13分ほどで2人のCBをスカッドから失うことになってしまった。

降りるMFへつけるパスの是非

 いろんなことがありながら、ここから仕切り直しの様相があったのがボザの交代が完了した15分前後くらいだろう。互いにボールを持ちながら戦い方を模索していくスタートとなった。

 川崎の保持はオーソドックスな陣形から。いつもよりも山原はビルドアップに低い位置で関与するケースが多かったように思えたが、特徴的だったというほどではないかもしれない。

 4-2-3-1から動かないとなると、相手の守備陣形からすれば無理なく噛み合わせられる形。川崎は三浦とマルシーニョの上下関係を入れ替える形から少しずつ揺さぶりをかけていく。ボールを持った大外のマルシーニョから中央のマイナスにボールを落とすか、あるいは左サイドから追い越す三浦を使うかのところでギャップを作っていく。

 左サイドにはエリソンが流れることで長いボールを引き出しにいくアクションも。やや低い位置で受けるマルシーニョによって生まれたギャップを突くようにサイドに流れながら広いスペースで勝負。急造となった浦和のDFラインに対して、広いスペースから揺さぶりをかけていく。

 もう1つこの試合のポイントとして挙げたいのは、ブローダーセンからのショートパスでの組み立ての頻度を増やしたこと。ブローダーセンから背中向きのインサイドのMFへの縦パスが、いつもよりも多かった。

 個人的にはこのトライはとても良かったように思う。43分に柴戸が脇坂にファウルをした場面では、放送席から「リスキーなパスだった」という見解が出ていたが、この意見には賛同できない。もちろん、相手を背負いながら降りてくるMFに対してパスをつけるのは御法度。そういう意味では28分の橘田への縦パスなどは相当リスキーではある。この場面で「リスキーなパスだった」というコメントが来るのは理解できる。

 ただ、脇坂が降りて受けたシーンでは柴戸の潰しもオナイウの挟み込みもいずれもワンテンポ遅れている。そして脇坂には山原という明確な逃しどころがあった。これを踏まえれば咎められるべきはパスを出したブローダーセンではなく、受けた脇坂であるべき。脇坂ならば明らかに捌ける間合いだし、捌けないのであれば降りるプレー自体の効果が薄い。

 もう1つビルドアップで注文をつけたいのは右CBの松長根。降りるCHにボールをつけるプレーを行う場合、ボールを逃がすところを受ける前にある程度定めておく必要がある。川崎のCHは右利きが揃っているので、後ろ向きで利き足でワンタッチで叩くということを踏まえると、右サイド側にボールを逃がすこととなる。

 降りる選手へのプレスの強さ、パスの精度次第ではあるが、基本的にマーカーを背負っているMFへのパスは一定のリスクが伴う。それでもこのプレーを行う意義としては、ワンタッチで捌いた先から運ぶことができてこそ。そういう意味ではこの試合では松長根の運ぶアクションには物足りなさを感じた。

 28分の橘田からパスを受けたシーンでは、パスワークの時点でマーカーである渡邉を剥がすことができなかったので仕方がない。だが、直後の29分の山本からのパスを受けた場面ではボールを運び、前がかりになった浦和の陣形にパスを差し込んでほしい場面。トライして失敗する方がまだマシで、スローダウンしてしまうのであれば意味がない。

 松長根のパスのスキルは目を見張るものがあるのは確かだが、運ぶアクションを入れずに相手の足を止めないままパスを入れるせいでインターセプトを招くシーンも少なくない。この場面では逆に急ぐべき場面でスローダウンしてしまっている。足元がうまいCBではなく、ビルドアップができるCBになるにはまだまだ状況に応じたプレー判断が必要になってくるだろう。

 いずれにしてもブローダーセンからCHにパスをつけるトライは良かったと思う。相手の保持に対するプレス回避をショートパスで行うことはこのスカッドであれば必要なことだと思うし、そこにおいてボトルネックとなりそうなブローダーセンには一定の評価を与えたいところ。脇坂に柴戸が出ていったように、前がかりの守備を行っている浦和相手であれば、もう少しショートパスからのチャンスメイクはできてほしい感じはあった。

 サイドの攻撃においては38分過ぎの山原の動き出しなど、久しぶりに右サイドでらしい動きが見えた印象。ビルドアップも含めて少ないながら欲しい動きが出たというのが、この試合における内容面での一番の収穫だったように思う。

 浦和の保持もショートパスから。川崎の4-4-2のミドルブロックに対して、手前に引き出しながらライン間に縦パスを入れていく。特に狙い目になっていたのはアンカー脇。42分のようにこの位置に入ったサヴィオが反転して自ら前を向くことで加速していくというのが一番の成功パターンだと言えるだろう。

 川崎のミドルブロックは時間経過とともにだいぶ間延びしており、途中交代となった植木も縦パスでは存在感を見せていた。浦和の保持に注文をつけるのであれば、ライン間で受けたサヴィオ以外の選手の受けた後のプレーのクオリティが低かったこと。後半の場面で後述するが、川崎のCBはやたらラインを下げがちだったので、もう少し色々できてほしかった感がある。

 いずれのチームにおいてもアタッキングサードにおいて決定打が欠けているのは否めず。試合は序盤の得点のみの1-1でハーフタイムを迎える。

逃げ切る資質不足を露呈した浦和

 後半、いきなりチャンスを迎えたのは浦和。左サイドのハーフスペースでパスを受けたサヴィオからのポストで横断に成功。左サイドから進撃すると、クロスから金子がネットを揺らす。

 結果的にゴールはオフサイドで認められなかったが、この場面は1列低い位置で受けた関根からの対角のパスが通ったことが大きかった。このパス一本で大きく盤面を変えられてしまった。

 56分には同じく左サイドからのクロスで今度こそ金子がゴールをゲット。個人的にはオナイウに簡単に加速を許してしまったCBコンビが微妙なところ。松長根がデュエルでオナイウに明らかな後手を踏んでいたので、下がりたくなる気持ちはわかるのだけども、遅らせた結果、同数程度でしかボックス内で受けさせないのであれば、あまり遅らせる意味もない。

 チーム全体のネガトラが優れているチームであるならば、そこで勝負するという判断もできる(その側面でも川崎はもちろん成長の余地がある)のだけども、そこの勝算がないのであれば強く当たってほしい。それができないのであれば、次の対戦相手に対してはより致命傷になる可能性がある。もっとも、この試合でも失点しているのですでに致命傷なのだけども。

 トランジッションでのファストブレイク、オナイウへの長いボールなどダイレクトな展開が効いていた浦和。後半の頭は優位をきっちりスコアに結びつけた。

 このゴール以降はボールを持つターンが増えた川崎。浦和は時折片側のSHを下げて5-4-1で受けるなど、川崎にボールを持たせることを推奨するかのような振る舞いだった。

 プレビューでも書いたように、引いて受ける展開となれば浦和の守備は固さを出せるはずだった。だが、2人のCBがいないという状況であれば話は別。押し込む川崎はセットプレーからゴール。オナイウがボックスの守備に入ったため右サイドでぽっかりとフリーになった山本から上がったクロスを叩き込んだのはロマニッチ。川崎は同点に追いつく。

 オナイウが山本を空けてしまったことを抜きにしても、浦和のボックス内の守備はお粗末なものだった。スコアラーのロマニッチについていた根本はなぜかマーカーを離して守っており、簡単に競り負けている。なぜタイトにマークしなかったのかがわからない。また、神田のマーカーだった安居も、クロスが上がる前の段階でマークを外してトランジッションの準備をしている。

 後半にかけて浦和はポジトラの強度の高さが目立っていたが、こうしたリスク度外視の振る舞いを容認することで担保していたのであれば評価は変わってくる。少なくともリードしているチームが取っていいリスクではない。根本の動きに安居がマークを外したことが関係しているとは思わないけども、引いて受けてクローズしたいように見えた振る舞いと個々人のプレーにこれだけギャップがあれば、失点するのは必然だと言えるだろう。

 肥田野と安部を投入した浦和は勝ちにいく構え。ファストブレイクの強化で勝負をかけていく。川崎は同点ゴールからのギアアップができていなかったように見えたが、浦和が間延びを許容して攻撃に出てきた分、浮いた中盤から運べる場面もあった。

 どちらのチームも決定的なチャンスが作れない中で得点を奪ったのは川崎。途中交代で入ったMFのミドルシュートで決勝点を奪う。後半に中盤の交代カードを残すことができていた分、川崎は浮いた中央のスペースを有効に使うことができたという感はある。劇的なゴールで川崎はホームで開幕戦以来の勝ち点3を手にした。

あとがき

 内容面ではビルドアップやサイド攻撃のトライなど、いくつかの試みが見られたことが一番かなと思う。ただ、局面でのシャープさやプレー選択、精度はまだまだ低い。川崎に関して言えばファストブレイクの質が上がってこないと厳しいところがある。必ず得点にすべきとは思わないけども、少なくともシュートまではいけてほしいシーンの手前で引っ掛けてしまうことがあまりにも多い。

 また、CBのラインの低さも気になる。保持である程度守備機会を減らすというコンセプトだったら、ある程度ラインを上げて縦パスを防ぐ必要がある。丸山は失点関与、松長根はビルドアップの精度不足など、CBコンビはこの試合では課題先行だったと思う。

 久しぶりの勝利、劇的な逆転勝利はとても嬉しい。が、一つの結果で浮き沈みするようなレギュレーションでも立ち位置でもないことも確かだろう。浮かれていいような内容だったわけでもない。選手のコメントの毛色からもそれは明らかだ。いつも通り、できたこととできなかったことを精査して次の試合に向かっていきたい。

試合結果

2026.4.5
J1百年構想リーグ
第9節
川崎フロンターレ 3-2 浦和レッズ
U-vanceとどろきスタジアム by Fujitsu
【得点者】
川崎:9′ ダニーロ・ボザ(OG), 77′ ラザル・ロマニッチ, 90+4′ 河原創
浦和:3′ 根本健太, 56′ 金子拓郎
主審:福島孝一郎

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