
プレビュー記事

レビュー
確立した2つのファストブレイクルート
2026年初のリーグ戦ミッドウィーク開催となった第7節。遠征の遠さを考える必要がないのは百年構想リーグが持つカジュアルさでもあり、寂しさでもある。
ロングボールを中心としたバタバタとした展開ではあったが、川崎は明確に優位。ゆったりとポゼッションで試合をコントロールしているわけではないものの、縦に速い展開を確かな精度で前進させることができていた。
1つ目のルートはCHの脇に位置する脇坂。SBの山原を起点に、東京VのCHの外側のレーンでボールを受けにいく。普段は降りるアクションも見せる脇坂だが、この試合では明確に前にとどまり、得点に近い仕事を担おうという意識が見られた。
基本的に脇坂は相手のMFラインの背後での仕事が多く、このエリアで前を向くことで攻撃を加速。裏のエリソンや大外のマルシーニョにボールを当てながらフィニッシュ局面へとつなげていく。
もう1つの前進のポイントはエリソンのポスト。井上を背負って収め、確実に落とすプレーを高い確度で遂行していた。脇坂とマルシーニョはその落としを回収できるよう、絞りと高さを意識したポジショニング。前線では紺野のみ役割が異なり、右サイドで幅を取る役割を担っていた。
序盤の川崎の攻撃は、脇坂・エリソン・マルシーニョを軸とした2つのファストブレイクルートに集約される。先制点はまさに狙い通り。トランジション気味の局面から、やや裏に動きながらポストしたエリソンの落としをマルシーニョが受け、脇坂へ横パス。最後は幸運も重なりゴールに結びついた。
マルシーニョの横パスについては、前節後の質問箱で「ペナ角での横パス(特にマイナス)は制限すべきでは?」という声もあった。ミスが多いのは事実で、意図も理解できる。
ただし、WGがラインを押し下げた状態からのマイナスの横パスは、このゴールのようにバイタルでフリーの選手へ供給できる確率が高い。成功すればミドルやラストパスに直結する有効な手段である。やり切る方向に舵を切るべきと答えたが、この試合では見事に体現してくれた。
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背中を通されたとしても・・
川崎の保持に対して東京Vのプレスは普段よりも連動が甘かった。大幅なメンバー変更の影響もあるだろうが、今季らしいスイッチ連動型のプレスが見られなかった。エリソンに対してある程度やられてしまうのは仕方ないのかもしれないが、ブローダーセンへのプレッシャーを強めて供給精度を乱せば、デュエルそのものを発生させない守り方もあったはずだ。
また、コンパクトなブロックを優先するのであれば、CH背後のレーンで脇坂に自由を与えすぎたのも問題。出て行かない判断をするならば、より明確に管理すべきだった。エリソンルートはともかく、少なくとも脇坂への縦パスルートは遮断したかったところだ。
保持においても東京Vは苦戦。前線の染野がいないというのは明らかに一大事(理由は不明)なのだが、東京Vはロングボールでまるで染野がいるような前進を狙っていた。
個人的にはこれは悪い方向に出てしまったかなという感じ。今季の中でも川崎はロングボール対応に最も余裕があった試合と言っても問題なく、丸山と谷口の迎撃はとても安定。山本や橘田の挟み込みやセカンドボール回収も含めて大きな問題もなく対応ができていた。
守備からリズムを作れず、ロングボールも効かないという状況もあり、東京Vは10分が過ぎたところから徐々にショートパス基軸のポゼッションにシフト。平川や新井が降りるアクションからボールを引き出していく。
ショートパスにシフトするのであれば当然川崎の2列目をプレスで引き出す形は狙っていきたいところ。エリソンがトップの場合はプレスバックへの動きが鈍いので、脇坂のカバーが間に合う前に外循環してCHを開ける形が必勝となる攻略法になる。
しかしながら、これも機能しなかった印象。14分のシーンのように、紺野と山原の連動が遅れて脇坂のプレスバックが間に合わない状態で森田が完全に空いた状態は正直盤面が見えていればパスを入れない理由がないくらいなのだが、結局は1列後ろにプレーして川崎にとっては怖くない状況に収束した。

時間帯的にはやや後ろの話になるが、GKにプレスをかけるマルシーニョの背中を使えたシーンなどからはもう少しスピードアップをしたかったはず。その先で一旦落ち着いてしまい、川崎のブロックがセットされる状況を待っている状況だとなかなか旨味がない。マルシーニョはマルシーニョで逆サイドからボールを受けるGKに対しては右足から切りに行くか、二度追いを間に合わせるかのどちらかはしたいところであった。
サイドからなんとかキャリーした東京Vはここからセットプレーラッシュ。CKを軸に攻撃を続けていくが、仕留めきれないでいると、逆にカウンターからエリソンがファストブレイクに成功。マルシーニョと2人で強引にこじ開けに成功し、川崎はさらにリードを広げる。
以降は東京Vの保持が増えていく展開に。川崎は東京VのCBにボールを持たせることを許容する代わりにCHの管理を強化。SHがプレスに出て行くとしてもインサイドを封鎖することが確認できてから。縦もカットする形になっており、川崎としてはうまく東京Vの保持を追い込むことができていた。
保持に回ればカウンターフォーカスで脇坂ルートとエリソンルートの2つのパターンを軸に前進。トランジッションに狙いを定めてさらに追加点を狙っていく。
45分に東京Vがネットを揺らしたシーンは縦に追い込まれながらもうまく交わした形。鹿島戦ではうまく刺さっていた谷口の逆サイドへスライドしてのカバーだったが、このシーンでは入れ替わられてしまい、あっさりとゴールまで運ばれてしまった。オフサイドにより無失点で勉強できたのは大きかったなと感じたシーンだった。
流れを変えにくるも大人に対応
後半、2枚の交代に打って出たのはビハインドの東京V。シャドーに福田と山見を入れて早めに展開を変えにくる。この交代により奪ったところからの推進力がアップ。
東京Vは縦に積極的にパスを入れて行くように。山本悠樹の脇への縦パスから侵入したシーンが最もクリティカルだったが、逆サイドでも山見が左のハーフスペースに入ってくる動きを狙い、橘田と駆け引きを繰り返す。前半に川崎が脇坂を使って狙っていたスペースを逆に東京Vが狙って行く形を取る。
山見は少し強引でも突破にいけるし、福田はオフザボールのシャープさで動き出しながら。2人のシャドーが噛み合う形で生まれた決定機もあり、確実に流れは変えたと言っていいだろう。
前半は全く刺さらなかった白井のポストも、セカンドボールを拾いに行くアクションを合わせることで前半よりは前に進めるように。高い位置で起点ができたことにより、サイドの奥を取ってミドルなど少しずつ東京Vらしい攻撃を見せていくように。
低い位置でも縦関係を作りながらの細かいポストや田邊のキャリーなど、前半よりはスピード感を持って敵陣に入ることができるように。スピード感を持ってボールを前に進めている。
その一方でバチっと体を当てることができればやはり川崎優位。デュエルとなれば川崎が東京Vの勢いを食い止めることができていた。
保持に回った際には紺野の幅を使った攻撃に出るなど、前半よりは直線的にゴールに向かうシーンを減らしながら試合をコントロール。派手さはないが、確実に東京V相手に盛り返していく。テンポを落としながら試合をコントロールできているように見えたのは成長とも言える。
後方のアクシデントでSBで先発した松長根は久しぶりのCB起用となったが、安定したプレーを披露。その一方でサイドに引っ張られた時はアジリティで後手を踏む場面もあったし、LSBではオーバーラップができるもののノッキングするという課題も。個人的には山原と左右逆で見たいが、もしかすると長谷部監督は山原を右から動かすつもりはないのかもしれない。
選手交代の度に前がかりな陣形を組んだのは東京V。最後は平尾の投入で4-4-2にシフトしたが、ややこれはブレーキになった感じ。極端にマンツーで嵌めていたわけではないから、陣形を噛み合わせたことがダイレクトに効いた感じはしないけども、ハーフスペース付近で相手の背中を取れていた山見と福田がやや外に開いてしまったのがもったいなかった。
後半をまとめると、選手交代をした東京Vがまろやかにリカバリーをした一方で、川崎も要所で取り返しに成功。均衡した戦いになってきたが、2点のリードを得ている川崎の方が理想の試合運びをしたということになるだろう。
試合は2-0で川崎が勝利。開幕戦以来、1ヶ月半ぶりの3ポイントを手にした。
あとがき
前線の個性を活かした速攻で先行するという理想的な試合を運びをしつつ、エリソンを前線に抱えながらある程度のクローズした守備とゆったりとしたポゼッションから時計を進められた試合のコントロールはとても良かった。
相手が大幅にメンバーを入れ替えたことを考えるとこれでオールオッケーとはならないのだけども、勝とうが負けようがこのようにできることを増やしながら手強いチームになって行くしかないし、それを勝ちながらできればいうことはない感じ。少し大人な試合運びもそうだし、マルシーニョの横パスアシスト(実際にはついていないかもしれないけど)もそう。2026年の川崎がようやく歩みを始めたことを実感できる90分だった。
試合結果
2026.3.18
J1百年構想リーグ
第7節
東京ヴェルディ 0-2 川崎フロンターレ
味の素スタジアム
【得点者】
川崎:9′ 脇坂泰斗,23′ エリソン
主審:長峯滉希