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「Catch up Premier League」~Match week 32~ 2023.4.21-4.23

目次

アーセナル【1位】×サウサンプトン【20位】

エティハド前の急ブレーキ

 レビューはこちら。

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 あっという間に失点を喫したアーセナルの光景を見るのは今季2回目だ。デザインプレーで失点をしてしまったボーンマス戦とは異なり、この試合で個人のミスにフォーカスが当たるシーン。ラムズデールが強引にインサイドにつけたパスからあっさりと失点を喫する。

 立ち上がりからペースが悪かったのか、それとも失点に動揺したのかはわからないが、アーセナルは失点後のパフォーマンスもよろしくはなかった。バックラインでのパスミスということでサウサンプトンは強気でプレスをかけてくるスタンスだったし、トーマスやガブリエウといった主力の面々もナーバス。バックラインからのミスからピンチを迎える場面もあった。

 ウォルコットとアルカラスのしたたかな2トップの起用は大当たり。バタバタする相手の逆を取る冷静さを持っていた2人の起用により、サウサンプトンは落ち着いて試合を進める。

 特にウォルコットのゴールは彼の持ち味である。オフザボールの長所が存分に生きたものだった。パスミスで受ける状況は悪いが、ガブリエウの対応にはもう少し粘る余地はあった。インサイドを絞めつつ、ウォルコットに自分より外で受けさせる動きを取らせることは必死だった。

 アーセナルにとって救いだったのは両サイドのWGが1on1を作ることができたこと。サウサンプトンは前からのプレスを行うことでプレスバックによるダブルチーム結成は遅れる。アーセナルはこのWGの質的優位を活かし、マルティネッリの追撃弾を奪うことに通用する。

 1点を取ることができた展開を受けてサウサンプトンはバックラインが重心を下げながら、アーセナルのWGに2人で対応することを優先するように。サウサンプトンはサイドの蓋に注力する代償として、高い位置からのボール奪取に苦戦するようになる。

 後半、サウサンプトンは5-3-2へのシフト。だが、3センターの横幅をつくアーセナルのポゼッションに対して、スライドが間に合わないという判断に至ったのか、2トップの一角に入ったウォルコットがベンチに確認をとり、5-4-1に変更する。

 5-4-1に対してはアーセナルはなかなか相手を動かすことができない状況に。きっかけが掴めないアーセナルは終盤に猛攻をスタート。右サイドからウーデゴールが追撃弾を奪うと、最後はサカが同点のゴールを決めて見せた。

 奇跡の逆転を目指して終盤はひたすら攻め込むアーセナル。だが、最後まで猛攻は実ることはなし。サウサンプトンがなんとか同点の状況を維持し、勝ち点1を分け合う結果になった。

ひとこと

 アーセナルはこれで3試合連続ドロー。手痛い取りこぼしではあるが、内容的には少し間に合わなかったのはエンジンがかからない分仕方ないといったところだろう。

試合結果

2023.4.21
プレミアリーグ 第32節
アーセナル 3-3 サウサンプトン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:20′ マルティネッリ, 88′ ウーデゴール, 90′ サカ
SOU:1′ アルカラス, 14′ ウォルコット, 66′ チャレタ=カー
主審:サイモン・フーパー

フラム【10位】×リーズ【16位】

左サイドからの2ゴールの貯金でヒヤヒヤの逃げ切り

 ようやく未勝利の沼から脱出し、勝ち点を40台に乗っけることができたフラム。今節の相手は残留争いの沼からいまだに抜け出せずに苦しんでいるリーズである。

 ボール保持でのアクションからスタートしたのはアウェイのリーズ。バックラインにロカがポジションをサイドに取ったり、最終ラインに落ちたりなどしてショートパスから繋いでいく。メリエを中継点として多用するなど、リーズは低い位置からのポゼッションに積極的だった。

 フラムは前からのプレスは無駄に人数を割かずに4-4-2をキープ。その代わり中盤で張った網にリーズがかかるのを待つ。ミドルゾーン、サイドに寄せるようにリーズの保持を追い込み、ボールを奪い取ったらSBの裏に素早くボールを送るという形でフラムは反撃。サイドの人数をかけたリーズの攻撃を封鎖し、思うような前進を許さない。

 リーズはサイドを変えてフラムの守備陣形を横に揺さぶることはできなかったが、奥行きを使うことはできていた。サマーフィルがサイドに引っ張り出したリームと対峙した場面など、サイドに引っ張り出せばスピードの部分でリーズに分がある。得意な形からセットプレーを得てフラムのゴールに迫っていくリーズであった。

 一方のフラムも低い位置からボールを保持していく。ワイドを活用しながら着実にリーズを押し下げていく。サイドに気がいったと感じたら中央ではすかさずウィリアンが降りてきてボールを受けて運ぶ。リーズに対して保持の時間はフラムの方がやや長かった。それでも序盤はセットプレーの頻度がフラムが多かったことを除けば互角と言えるだろう。

 30分すぎになると徐々にフラムが優勢に。リーズのアタッカー陣がスペースでスピード勝負を挑める場面は減り、フラムが一方的に押し下げて左右からのクロスで勝負する場面が増えるようになった。カウンターからも決定的なチャンスはあったが、リーズはウーバーの懸命なスライディングによりこれを阻止。前半はスコアレスで折り返す。

 後半、試合はリーズの守備の積極性が増したことで激しい展開に。サイドへの封鎖のタイミングを早め、ポジトラの強度を上げて素早いカウンターから攻勢に出る。

 これに対してフラムも対抗。ウィリアンのスラローム的なドリブルからリーズの守備を切り裂いていく。攻守の切り替えが多く、見応えのある展開を制したのはフラム。左サイドのウィリアンのクロスからファーで待ち構えていたウィルソンがゴールを叩き込む。

 勢いに乗るフラムはさらに追加点をゲット。同じく左サイドのウィリアンとロビンソンの2人から上げたクロスへの対応をメリエがミスってしまい、ボールはペレイラの前に。これを無人のゴールに押し込んで点差を広げる。

 これで試合は決まったかに思えたが、リーズはここから反撃。フラムの最終ラインの裏を積極的についていくことでレノに厳しい対応を迫っていく。あわやゴールという場面はいくつかレノに凌がれたが、79分にバンフォードがついにネットを揺らすことに成功した。

 終盤は接触プレーで負傷者がやや目立つ展開になり、両チームは違った意味でヒヤヒヤする流れに。懸命に勝ち点奪取に向けて攻撃を仕掛けるリーズだが、得点が入る前の勢いは少しフラムによってトーンダウンさせられた印象だ。

 逃げ切りに成功したフラムが連勝に成功。リーズはまたしても勝ち点の上積みに失敗してしまった。

ひとこと

 悪くない時間帯もあっただけにせめて1ポイントは欲しかったリーズ。フラムは2点のリードを奪うまでは見事だったが、ゲームクローズの粗を咎められなかったことは幸運とすべき展開だったように見える。

試合結果

2023.4.22
プレミアリーグ 第32節
フラム 2-1 リーズ
クレイブン・コテージ
【得点者】
FUL:58′ ウィルソン, 72′ ペレイラ
LEE:79′ バンフォード
主審:ピーター・バンクス

クリスタル・パレス【12位】×エバートン【17位】

停滞感先行のスコアレスドロー

 ボール保持の時間を多く過ごしていたのはクリスタル・パレス。バックラインが慎重な保持からスタートし、隙があればエバートンのライン間にボールを刺していくという形。そのためにはまずは2トップの外を迂回しながらエバートンの隙を探っていく形である。

 対するエバートンの前進のプランはシンプル。ロングボールの的となっているのはショーン・ダイチには待望だったであろうキャルバート=ルーウィンである。ロングボールには絶対的な強さを持つエースの復帰により、エバートンの前線の収まりは段違いにアップする。

 だが、エバートンはこの形をうまく活かせず。ボールを収まった後の前進のパターンを用意できずに苦戦する。ガーナーあたりはもう少しゆっくりとボールを前に進めたかった感じがしたが、エバートンのボール保持はやたらと忙しくなってしまっていた。

 30分にはようやく保持の時間を確保することができたエバートンだが、パレスのブロック守備を前にどのようにボールを動かすかの迷いが先行。ポゼッションの回復が主導権の回復にはつながらなかった。

 対するパレスも思い通りの攻撃ができていたとは言い難い。いい形で右サイドにボールを入れることができず、オリーズの存在感は非常に希薄。苦しい状況でも無理やりボールを前に運ぶ役割を果たしてくれるザハの存在が恋しくなるように。42分にようやく右サイドにいい形で入るまではパレスの攻撃は空振りが続くこととなった。

 後半も試合はなかなか動かない。エバートンはキャルバート=ルーウィンへのロングボールを軸に組み立てる。競りかけるだけでも十分効果があるロングボールはパレスを押し下げる効果があるが、相変わらず打開の一手にはならない。

 一方のパレスはサイドまでボールを運ぶことができてはいるが、そこからの単調なクロスが延々とエバートンに跳ね返される展開が続いていく。試合はどちらの主導権でもなく早めのクロス×ロングボールの応酬でチャンスがないまま、ただただ時間が過ぎていく状況が続いていく。

 80分のエバートンのホルゲイト退場すら、この試合の起爆剤にはならず。保持が多いパレスならばこの状況はおいしいかなと思ったが、エバートンが10人だなと痛感するようなシーンは特に訪れず。数的優位を活かせないまま試合は淡々と進んでいき、スコアレスドローでの試合終了のホイッスルを聴くこととなった。

ひとこと

 数的優位すら試合を動かさない膠着。両チームの停滞感が漂ってくるスコアレスドローだった。

試合結果

2023.4.22
プレミアリーグ 第32節
クリスタル・パレス 0-0 エバートン
セルハースト・パーク
主審:ジョン・ブルックス

リバプール【8位】×ノッティンガム・フォレスト【18位】

三度目の同点ゴールは叶わず

 なかなか成績が安定せずに、CL出場権が近づかないリバプール。今日も今日とて、アレクサンダー=アーノルドをインサイドに置く3-2-5にトライする。

 だがボールの落ち着けどころは外。フォレストはいつも通りのナローな3トップを形成するため、サイドに張る選手はボールの収めどころになる。

 やはり3-2-5の投入は左サイドの崩しの強化なのだろうか。IHが高い位置をナチュラルに取ることができるこの仕組みから、リバプールは左サイドを重視した形を作る。トップのガクポも左に流れる機会を作りながらサイドの崩しに絡んでいく。対角のパスの成分はリーズ戦よりも少なめ、同サイドをきっちり崩すことに力を入れる展開となった。

 フォレストはボールを奪ったらガンガン前に進み、サイドの裏を駆け上がっては直線的なクロスを繰り返す。文字にしただけでわかると思うが、フォレストの攻撃はあっという間に終わる形である。

 試合は一方的にリバプールがボールを持ちながら試合を進めていく。フォレストの対応で気になるのはクリアの小ささである。サイドからの人数をかけたクロスやセットプレーからエリア内に放り込まれるプレースキック。こうしたリバプールの攻撃に対して、フォレストはクリアを試みるが距離が出ない。よって、リバプールは気持ちよく二次攻撃を繰り出すことができていた。

 押し込むことができたせいか、40分にはサイドからインサイドに止まっていたはずのアレクサンダー=アーノルドが右のサイドハーフから抜け出す形を作れたリバプール。中盤でのゲームメイクで支配力を発揮し、前線への飛び出しを行う時間を作るという両睨みがアレクサンダー=アーノルドの中盤活用の理想系なのかもしれない。

 後半早々にボールを持ち続けたリバプールが先制。右サイドでガクポの反転を起点にチャンスを作ると、セットプレーから先制。ファビーニョの折り返しからジョッタが決めてついにリバプールが試合を動かしていく。

 失点で火がついたのかフォレストはセットプレーを軸に反撃していくように。すると左サイドで体を張ったアウォニイから逆サイドへの展開を見せて、攻め上がったネコ・ウィリアムスがゴール。伏兵のゴールは古巣への恩返し弾。試合はすぐに振り出しに戻る。

 しかし、再びセットプレーから試合を動かすリバプール。ジョッタのゴールでまたしてもリバプールが前に出る。フォレストの対応はかなり甘かったと言わざるを得ない。胸トラップからの反転の余裕をPA内で与えてしまえば、失点はさもありなんという感じだろう。

 それ以降はリバプールが保持の時間を増やしながら支配する。だが、ロングスローからギブス=ホワイトがまたしても同点ゴールをゲット。リバプールにフォレストが喰らい付いてくる。

 しかしながら、この日はリバプールのセットプレーがガンギマリ。アレクサンダー=アーノルドからサラーのボールで3回目のセットプレーのゴールを生み出す。

 最後はありったけのストライカーを投入したフォレスト。だが、3回目の同点弾を決めることができず。三度のセットプレーでフォレストを振り切ったリバプールが辛くも勝利を飾った。

ひとこと

 セットプレーからの得点ばかりじゃ3-2-5の評価はまたしても先送りになる。3回もセットプレーから失点したら勝てないよ。

試合結果

2023.4.22
プレミアリーグ 第32節
リバプール 3-2 ノッティンガム・フォレスト
アンフィールド
【得点者】
LIV:47‘ 55’ ジョッタ, 70‘ サラー
NFO:51’ ウィリアムス, 67‘ ギブス=ホワイト
主審:マイケル・オリバー

ブレントフォード【9位】×アストンビラ【6位】

GKの交代を乗り越えてもぎ取った1ポイント

 連勝を伸ばし勢いに乗るアストンビラが次に挑む試練はブレントフォードのホームスタジアム。プレミア屈指の難所である。一方のブレントフォードはリーグ戦3連敗中。得意のホームでも直近の試合ではニューカッスルに敗れるなど、珍しくいいところがないゲームをしてしまった。彼らにとってもまた好調のビラを迎える一戦は試練になるだろう。

 この試合の立ち上がりはビラがライン間のブエンディアにボールを入れたところからスタート。これを咎められなかったブレントフォードはズルズル自軍の方までラインを下げてしまう。そのほかにもGKからのビルドでチャンスを作るなど、前半のビラは好調を持続してることをアピールできていた内容だったと言えるだろう。

 しかしながら、10分も過ぎると徐々にブレントフォードの泥臭さが試合を飲み込むようになった。地道な前進とセットプレー奪取で相手の流れを持続させないのは彼らの得意技。それだけではなく、この試合においては大外レーンでボールを持つアタッカーを追い越す機会を増やし、サイドで緩急をつけた崩しができていた。

 特に目立っていたのはシャーデ。スピード系が少ないブレントフォードのアタッカー陣の中で、機動力を持っている数少ないプレイヤーは抜け出しからサイド攻撃のアクセントとして機能していた。

 前半の中盤はどちらのものでもないだらっとした展開が続いていたが、こうしたペースは基本的にはブレントフォードペースだろう。ボールを持たれた時はリトリートを優先し、自陣まできっちり引く対応でビラの誘き出しには付き合わない。

 それならばとハイプレスで流れを引き戻そうとするビラだが、現状ではそこまで精度の高い武器ではない。だらっとした展開を動かせなかったビラはきっかけを掴むことができず、試合はスコアレスでハーフタイムを迎える。

 ハーフタイムで両チームは1枚ずつ交代。ブレントフォードの交代がトラブルかどうかは判断がつかないが、マルティネスを下げたビラの交代は間違いなくトラブルだろう。

 代わったオルセンはマルティネスに比べれば繋ぎに難がある。蹴り飛ばす場面が増えたアストンビラ。もちろん、これは跳ね返しには自信があるブレントフォードには願ってもない展開である。

 チャンスを迎えたのはシャーデ。一発で最終ラインの裏を取ると、オルセンの処理ミスから超がつく決定機が足元に。だが無人のゴールにシュートを沈めることができず。オルセンからすればミスに救われた格好になった。その後も同じように抜け出したムベウモが決定機をロスするなど、いつも以上に丁寧なチャンスメイクを心がけているにも関わらず、なかなかゴールに繋がらない。

 形はいいが決まらないというブレントフォードの悪い流れを払拭したのは頼れるエース。右サイドのムベウモからのクロスをファーのトニーが合わせてようやく先制点をゲット。後半の支配的な展開をようやくスコアに反映させる。

 だが、この先制点以降徐々にビラは保持からペースを取り戻す。ややプレスラインが下がってきたブレントフォードに対して、ビラはライン間に積極的に縦パスを入れることでチャンスメイク。序盤以降、失われた彼ららしい保持から崩すきっかけを探す。

 すると、終盤にこの猛攻の成果が実る。雪崩れ込むようにエリア内に駆け込んできたビラの選手たち。最後に決めたのはドウグラス・ルイスだった。

 もう1点という意思をすぐに固めたビラはタイムアップまで勝ち越しゴールを狙っていたが、ブレントフォードの厚い壁に跳ね返されてしまった。結局勝ち点は1止まり。追いつくことができたビラだが、連勝はここでストップすることとなった。

ひとこと

 マルティネス→オルセンのスイッチで完全に試合の優劣はついたと思っただけに、先制点以降のビラのリアクションは見事だった。

試合結果

2023.4.22
プレミアリーグ 第32節
ブレントフォード 1-1 アストンビラ
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:65′ トニー
AVL:87′ ルイス
主審:マイケル・サリスベリー

レスター【19位】×ウォルバーハンプトン【13位】

分水嶺になりうる逆転勝利

 ボールを保持してのスタートをしたのはウルブス。いつも通りのCHの縦関係の形成と大きく広がるCBからサイドにボールを動かしつつ、安定したポゼッションでボールを持って試合を進める。

 レスターのケアは中盤が優先。その代わりミドルゾーンにボールを入れてくるウルブスのボールへのケアはかなり重点的。インサイドに入り込んで試合を進めたいウルブスのSHにはボールを入れさせず、カウンターからトップのヴァーディを生かしての決定機を生み出しにいく。

 レスターにこうした縦へのロングパスの成分が戻ってきたのはティーレマンスのスタメン起用の要素が大きいと言えるだろう。中盤でボールを奪った後に素早く縦に速いパスを出すことができる彼の存在はレスターの中盤において唯一無二。存在感を発揮していた。

 先制点は意趣返しというべきか、そんなティーレマンスへのウルブスのプレスからのもの。レミナのボール奪取からのショートカウンターからウルブスが先手を奪っていく。

 それ以降はウルブスが保持での支配力を強めていくように。先制点をきっかけにウルブスは優勢に試合を運ぶことができるようになっていた。インサイドに入るSHも徐々に繋ぎに入れるようになり、ウルブスの保持は一層の安定感を見せた。

 だが、そうした空気を吹き飛ばしたのはヴァーディの裏抜け。左のハーフスペースを抜け出したヴァーディがPKを獲得。今季は不発だった伝統芸能がついに火を吹き、試合を振り出しに戻す。

 後半はヴァーディは何故か交代してしまったが、交代で入った前線を中心にレスターはプレスを強めるように。ウルブスは前半のようなボール保持による安定感の創出ができなくなってしまっていた。

 だが、ウルブスには高さを維持するレスターの最終ラインの裏をとる。しかしながら、オープンな展開になればレスターはどんどんチャンスが増えていく傾向は想像がつく。ウルブスとしてはどこまで縦に急いで展開をオープンにするかの迷いどころとなっていた。

 フラットに戻った後半に決着をつけたのはレスター。ダカのポストを起点として左サイドに展開すると、クリスティアンセン→デューズバリー=ホールまで繋ぎ勝ち越しゴールをゲット。CFの地道な仕事がゴールまでの道を切り拓いた一撃だった。

 いつもであれば押し切られてしまう悪い流れをついに断ち切ったレスター。残留に向けて分水嶺になりうる大きな逆転勝利を手にした。

ひとこと

 CFが徐々に本領を発揮し出したレスターは怖い。

試合結果

2023.4.22
プレミアリーグ 第32節
レスター 2-1 ウォルバーハンプトン
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:37’(PK)イヘアナチョ, 75‘ カスターニュ
WOL:13’クーニャ
主審:アンディ・マドレー

ニューカッスル【4位】×トッテナム【5位】

あっという間の5得点、ニューカッスルがスパーズの4バックを一蹴

 トッテナムにとっては重要な1週間の幕開けだ。ここからニューカッスル、マンチェスター・ユナイテッドとの連戦。彼ら自身はもちろん、ブライトンやリバプールといったCL争いのフォロワーたちにとってもCL出場権争いを混沌に巻き込んで欲しいという願いが込められた一戦になるだろう。

 大一番に送り出した4バックはステッリーニなりに熟考を重ねてのメンバーなのだろう。しかしながら、「3バック慣れしているCBとポロとペリシッチのSBで4バックが成り立つのか?」というスタメン表を見た瞬間に感じる疑問にあっさりとぶつかってしまう。

 5バックのチームが4バックに移行する際に最も苦しむのは横の受け渡しである。ニューカッスルは序盤はそこを徹底的についてきた。その主役となったのはジョエリントン。1点目は左サイドから斜めのカットインで多くのトッテナムのDFの足を棒立ちにさせて、2点目は斜めのランでCBの背後をとり、あっさりとラインブレイクを決めて見せた。

 トッテナムはとにかく奪われてからのカウンター対応でディレイでズルズル下がる場面が目についた。1失点目の動きもそうだし、3失点目のサールの動きもそうだろう。あれだけプレッシャーがなければマーフィーはまるで練習のようにリラックスして右足を振り抜けたはずだ。

 息をつく前にあっという間に安全圏のリードを奪ったトッテナム。そのため、プレッシングの強度はそこまで高くなかった。ラインを下げる様子もなかったため、トッテナムは右サイドから背後を狙う形でチャンスを狙っていく。

 しかしながら、トッテナムがチャンスを作ろうとすると、ボールを奪われた後にその期待値の3,4倍くらいクリアなチャンスをニューカッスルに作られてしまう。イサクの4点目は完全に3バックのノリで立つトッテナムの守備陣がぽっかり開けた「透明な3バックの左」のポジションから裏抜けしたものだった。

 そして、ダイアーが縦パスをソンに強引につけたことでショートカウンターを誘発し、イサクはさらに追加点をゲット。ステッリーニが4バックを諦めて5バックに移行するまでにかかった時間は23分。この間にトッテナムは5つもの失点を喫することとなった。

 5バックに移行した後も最終ラインの人数こそ揃ったが、ミドルゾーンでのプレスの空転ぶりには歯止めがかからないトッテナム。ショートパスからスペースを作られてファウルで後手を踏む。ニューカッスルがギアを下げても、ペースが引き戻されることはなかった。

 ロリス→フォースターという不穏な交代からスタートした後半も試合は緊張感からは縁が遠い展開に。それでも意地を見せなければいけないトッテナムは左サイドの裏抜けからチャンス。抜けたケインに対して、シェアが雑な対応をしたせいであっさりと出し抜かれてしまい、追撃弾を許す。

 リードをしているチームにとって、一度緩んでしまったネジを巻き直すことは難しいのだろう。強度が上がらないニューカッスルはここから徐々にトッテナムの攻撃を受け止める時間が増えるようになる。

 受ける場面が増えてきたことでネジを巻き直したいニューカッスル。最善の策はやはりフレッシュな交代選手を入れることだろう。その効果はテキメン。交代早々にアルミロンとウィルソンが仕事を果たし、試合は再び5点差になる。

 この得点でトッテナムの交戦ムードは鎮火。残り時間は結果に対して心を整える時間に。チャレンジャーのトッテナムを一蹴し、CL出場に向けた足場固めに成功したトッテナムだった。

ひとこと

 4バックをこのスカッドでやるのはあまりにもステッリーニは無謀すぎた。

試合結果

2023.4.23
プレミアリーグ 第32節
ニューカッスル 6-1 トッテナム
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:2′ 9′ マーフィ, 6′ ジョエリントン, 19′ 21′ イサク, 67’ウィルソン
TOT:49′ ケイン
主審:デビッド・クーテ

ボーンマス【14位】×ウェストハム【15位】

守備的布陣が実らずまさかの大差に

 残留争いの最激戦区の少し上にいる両チーム。沼の上からは上半身は出ていて、余裕を持って呼吸をできる状態くらいだろう。この両チームの一戦は差し詰め残留争い完全脱出ダービーといったところだろうか。

 いつもと風情を変えたフォーメーションを組んでいたのはボーンマス。4バックではなく後方は5枚である。以前にもこの形は採用したことはあったが、今回はWBの片方にスミスを置く形であり、前回よりも守備的な傾向が強い形である。

 今回のこのボーンマスの形ははっきり言えば裏目に出たといっていいだろう。ボールを持てない、前に運ぶことができない。そしてウェストハムにサンドバックにされる。苦しい状況の連続である。

 そして、先制点を決めたのは一方的に押し込んだウェストハムだった。2トップ脇からボールを運び、セットプレーからあっさりとアントニオが先制ゴールをゲットする。

 追加点もあっという間だった。右サイドのタヴァニアのロストからクロスをシンプルに上げてパケタがゲット。すぐに突き放しにかかる。

 ボーンマスは全く持って全体を押し上げられず。WBが攻め上がる時間を作ることができず。ソランケが全く時間を作ることができなかったのは非常に珍しい。強引に攻め上がったWBからクロスを上げるも、高さのあるウェストハムのバックラインに弾かれてしまい、クリティカルな攻め手にならない。

 20分になると少しずつボーンマスは保持の時間を増やす。だが有効打を打てていたのはウェストハムの方。右のボーウェンからゴリゴリと押し込む形でエリアに迫っていく。ボーンマスはパケタを前にグイっと押し出すウェストハムの4-4-2を前に打開策を見つけることができなかった。

 そして、セットプレーからライスが追加点をゲット。前半のうちに3点差をつけたウェストハムが完全に試合を決めてしまう。

 後半、ボーンマスはムーアを投入し4-4-2に移行。リズムを作りたいところだが、無用なファウルが足を引っ張ってしまい、押し込んでの攻撃が機能しない。さらなるアタッカーの増員で最終的にはアンソニーをSBに入りするが、最後までテンポを戻すことができなかった。

 引きこもってのロングカウンターに専念するウェストハムは72分に追加点をゲット。メファムのパスミスからまたしても右サイドからのクロス。これをフォルナルスがスコーピオンで決めて試合の最後を飾る。パケタのゴールが認められなかったのは本人にとっては残念だろうが、特に問題にはならないだろう。ウェストハムが大勝で残留争いから遠ざかることに成功した。

ひとこと

 ここまで一方的になるとは思わなかったが、言われてみれば全体的にウェストハムがボーンマスの上位互換な気もする。

試合結果

2023.4.23
プレミアリーグ 第32節
ボーンマス 0-4 ウェストハム
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
WHU:5‘ アントニオ, 12’ パケタ, 43‘ ライス, 72’ フォルナルス
主審:アンソニー・テイラー

今節のベストイレブン

マンチェスター・ユナイテッド【4位】×チェルシー【11位】

カゼミーロに導かれCL圏内を確保

 この1戦でチェルシー相手に勝ち点を取ることができれば、ユナイテッドの4位以内は確定。これをもってCL出場枠の4枠目の椅子は彼らのものになる。

 対するランパード政権は苦戦の真っ最中。就任以降の試合では多くが敗戦に追い込まれており、かつ勝ち点を取ったのはノッティンガム・フォレストとボーンマスの昇格2チームだけ。ある程度覚悟をしていたとはいえ、欧州カップ戦はおろかトップハーフすら届かない目標となっている。

 試合はボールを持つユナイテッドに対してチェルシーが4-4-2でプレッシングをかけていくスタイル。CBにはそこまでプレスに行くことはできず、押し込まれることは覚悟の上という感じだろう。ユナイテッドがショウを3人目のCBのように使うのもチェルシーのプレスのずれを作るのに役立っていた。これによりチェルシーは自陣の深い位置で守りに入るアクションが増える。

 カウンターでは十分好機がありそうなチェルシー。スターリングは前節からの好調を維持しているし、ホールは前節遅れ気味だったオーバーラップのサポートのスピードが改善する。

 しかし、先制点はユナイテッドが手にする。押し込むことで増えたセットプレーを生かしてカゼミーロが先手を奪う。こちらもスターリングと同じく前節と遜色ない仕事を果たす。勝負強さはやはりマドリーの血といったところだろうか。

 反撃に出たいチェルシー。ファストブレイクには兆しがありそうな感じだが、ポゼッションモードに入ると、一気に得点のムードは下がってしまう印象。右サイドのトライアングルもユナイテッドにコンパクトに封鎖されてしまい、実効性は低いものになってしまった。

 順調だったユナイテッドに水を差したのはアントニーの負傷。比較的大きそうなけがであり、なかなか彼の不在を簡単に任せられそうな人材もいない。来季の出遅れがないといいのだが。

 後半は試合展開がテンポアップ。より直線的な動きでさらなる追加点を目指して両チームが鎬を削る。この展開はどちらかといえばチェルシーの方が得点を取るためにきいてきそうな交代であった。

 しかしながら早い展開を生かしたのはまたしてもユナイテッド。フォファナにつっかけたブルーノがPKを獲得すると、これを自ら決めて3点目を奪う。

 さらにユナイテッドは5分後にハイプレスからさらなるゴールをおかわり。ラッシュフォードがゴールラッシュの最後をまとめて見せた。

 終盤にはフェリックスが一矢報いるも反撃はここまで。またしても敗戦を重ねてしまったランパードのチェルシー。ユナイテッドはCL出場権を確保することに成功した。

ひとこと

 タイトルとCL出場権の両立。テン・ハーグ政権は順調な1年目だったと総括できるだろう。

試合結果

2023.5.25
プレミアリーグ 第32節
マンチェスター・ユナイテッド 4-1 チェルシー
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
Man Utd:6′ カゼミーロ, 45+6′ マルシャル, 73′(PK) ブルーノ・フェルナンデス, 78′ ラッシュフォード
CHE:89′ フェリックス
主審:スチュアート・アットウェル

ブライトン【6位】×マンチェスター・シティ【1位】

デ・ゼルビの対シティマンツーリバイバル

 あと1ポイントでEL出場権が確定するブライトン。過密日程による疲労が深刻化する中で今節の相手となったのは王者であるマンチェスター・シティだった。

 前回のブライトンのシティ対策のアプローチは極端なマンツーマン主義。アーセナル戦でも見せて成功したマンツー主体のハイプレスをシティ相手に実践できるかどうかがキーになっていく。ちなみに前回のシティ戦ではマンツーをエデルソン→ハーランドであっさりこじ開けられている。

 ブライトンの選んだプランはマンツーのリバイバルである。ただし、後方のハーランドには1枚でマークするのは大変なので、マークを余らせたい意思は感じる。例えば、ベルナルドにファン・ヘッケがついていくのならば、グロスは自陣の深い位置でハーランドを挟めるような場所を取るとか。

 しかしながら、このやり方には当然欠点もある。単純なマンツーよりも都度個人の判断で出ていくかどうかを決めるので、ズレが発生しやすい。さらには後方ではハーランドを放っておけない事案が発生し続けていたため、ブライトンの守備者は前方への支援か、それとも後方の枚数確保を優先するかの選択肢を選ぶことになる。

 このズレをシティは見逃してはくれない。ベルナルドの降りるアクションでギルモアに陽動を仕掛けたり、グロスが絞る分フォーデンが大外でフリーになったり、あるいは後方からリコ・ルイスが加勢したりなど。シティは左サイドを中心にあれやこれやを仕掛けてくる。

 もとはといえば、ハーランドに2人つけないと無理!から始まっているデ・ゼルビのマンツーリバイバル。となると当然ハーランドに1人しかいない!というバグも発生しうる。

 先制点はまさしくその形を誘発する動きだった。ハーランドが柔らかいポストで味方に預けて動きなおすと、ファン・ヘッケを振り切って独走。余裕をもってフォーデンにラストパスをアシストする。ハーランド、降りてワンタッチを行った後の動きなおしがシーズンを通して非常にうまくなったように思える。

 一方のブライトンの保持は安全第一。後方で固定砲台となっていたスティールから一気に前線にフィードをつける。CFのウェルベックを狙うパターンもあったが、彼らの背後を取るようなWGに直接ボールを当てるやり方もあった。いずれにしてもグラウンダーではなくロングボール一発にこだわったのはいつものブライトンとの相違点だ。

 しかしながら得点につながったのはそうした工程省略型のアプローチではなく、自陣からのCBの持ち運びから。コルウィルのキャリーからライン間に入り込んだエンシソが距離のあるところから右足一閃でミドルを振りぬく。これがネットを揺らし、試合は振りだしに。

 先制点で勢いがついたかブライトンは攻勢に。三笘→ウェルベックなど徐々にお決まりのパターンが見えるようになってきた。

 後半もトランジッションが多く、相手へのプレス強度が高い試合を展開していく。特に非保持で強度を見せたのはシティの方だった。後方の強度はもちろんのこと、中盤のプレスバックと挟み込みの強度がなかなか落ちずに徐々にブライトンはシティに苦しめられるようになってくる。

 だが、シティもメンバー交代を行う上ではこの日の出来以外のプレータイム配分を考えている節があった。よって、選手交代後に緩やかに試合はトーンダウンしていった。

 それでもブライトンの攻撃は受け切り、かつ、プレス回避から余裕を見せたシティは終盤も試合をコントロール、これ以上、ブライトンにゴールに迫ることを防ぎ、試合はドローのままフィニッシュを迎えた。

ひとこと

 デ・ゼルビのワンツーのリバイバルは面白かった。プレスはほっとけないCFがいること起因で歪んでいたけども。この部分は仕方ないところだろう。

試合結果

2023.5.24
プレミアリーグ 第32節
ブライトン 1-1 マンチェスター・シティ
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BHA:38′ エンシソ
Man City:25′ フォーデン
主審:サイモン・フーパー

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