Fixture
プレミアリーグ 第9節
2023.10.21
チェルシー(11位/3勝2分3敗/勝ち点11/得点11 失点7)
×
アーセナル(2位/6勝2分0敗/勝ち点20/得点16 失点6)
@スタンフォード・ブリッジ
戦績
過去の対戦成績
過去10回の対戦でチェルシーの4勝、アーセナルの7勝、引き分けが1つ。
スタンフォード・ブリッジでの成績
過去10回の対戦でチェルシーの4勝、アーセナルの3勝、引き分けが3つ。
Head-to-head from BBC sport
- アーセナルは直近7試合の公式戦のチェルシー戦で欠場。それ以前の25試合で挙げた勝利と同じ数。
- トップリーグでの対戦においてアーセナルがチェルシーに4連勝を達成すれば173回の両チームの対戦で初めてのこととなる。
- アーセナルが記録したチェルシー戦のリーグ戦3連勝はフランク・ランパード、グレアム・ポッター、トーマス・トゥヘルの3人の異なる監督相手に挙げたもの。
スカッド情報
- 3試合の出場停止となっていたマロ・グストは復帰。2ヶ月の離脱が続いていたリース・ジェームズはトレーニング復帰し、当日判断で復帰の可能性を残す。
- アクセル・ディザジとニコラス・ジャクソンは代表での負傷により出場が微妙。
- アーマンド・ブロヤ、トレヴォ・チャロバー、カーニー・チュクエメカ、ベン・チルウェル、クリストファー・エンクンク、ウェズレイ・フォファナ、ロメオ・ラヴィアは負傷により欠場。
- ブカヨ・サカとレアンドロ・トロサールは当日判断。ウィリアム・サリバにも負傷欠場の可能性がある。
- 現状ではユリエン・ティンバーが唯一の確実な欠場選手。
Match facts from BBC sport
- 昨年9-10月の4連勝以来のリーグ3連勝を狙う。
- 直近2試合のリーグ戦で6得点を挙げており、それ以前の6試合の合計よりも1多い。
- しかし、クラブとしては2回目のプレミアでのホームゲーム3連敗の危機に陥っている。前回は1993年であり、0-2で敗れた3連敗目の対戦相手がアーセナル。
- 8月にルートン・タウンに3-1で勝利した試合が直近11試合のスタンフォード・ブリッジのプレミアリーグでの唯一の勝利(D5,L5)
- マウリシオ・ポチェッティーノはプレミアにおけるホームでのアーセナル戦に負けたことがない(W3,D3)。
- リーグ戦6勝2分、16得点6失点という数字は03-04の”インビシブルズ”の8試合終了時のスタッツと完全一致。このシーズンの9試合目の相手はハイバリーでのチェルシー戦で2-1で勝利している。
- トップリーグで初めて開幕4試合のアウェイゲームを無失点で全勝するチームになる可能性。
- プレミア無敗継続中の2つのチームのうちの1つ。6失点はマンチェスター・シティと並んでリーグ最少。
- 15試合のプレミアでのロンドンダービーで無敗(W11,D4)。これはプレミアにおいてのリーグ最多記録。
- ミケル・アルテタは8試合のプレミアでのチェルシー戦で5勝(D1,L2)を挙げている。勝率としては62.5%でこれよりいい数字を残しているのはケニー・ダルグリッシュ(76.9%)とペップ・グアルディオラ(64.3%)だけ。
- カイ・ハヴァーツとガブリエル・マルティネッリは出場すればプレミア通算100試合出場達成となる。
予習
第6節 アストンビラ戦
第7節 フラム戦
第8節 バーンリー戦
今季ここまでの道のり
予想スタメン
展望
前線に余裕を与えるメカニズム構築が間に合うか?
10月の中断の段階でリーグ戦は10位。ポチェッティーノ新監督が就任したてということもあるし、新監督の候補者選びも絞り込みに時間がかかったことを踏まえれば、多少の出遅れには情状酌量の余地はあるのは確か。それでもリーグ一本のチェルシーが二桁順位という成績なのは寂しさがあるのもまた確かだろう。
新監督のもと、多くの選手を入れ替えたというチーム状況が示唆する通り、序盤戦は怪我人と付き合いながら、戦力のスクリーニングを行ったという感じ。ここにきて少しずつ結果が出始めているように、だんだんと序列の精査は進みつつある。
昨年からの課題であるのだがチェルシーの大きな問題の一つはアタッカーの軸が決まらないこと。今季の序盤戦を経てこの部分は整理できた。
前線の軸の1人は間違いなくスターリング。爆発的な加速力からのドリブルを軸としたチャンスメイクでチームを牽引。高額な年俸ゆえに厳しい目を向けられることも多い選手だが、彼がいなければチェルシーの勝ち点はさらに少ないものになっていただろう。左右どちらもこなすため、WGの相棒を選びやすいというのもスクリーニングの段階でスターリングがプレータイムを伸ばすことができた一因でもある。
もう1人はジャクソン。累積警告によるサスペンションの流れからここ2試合はスタメンを譲ってはいるが、それでも序盤戦のチェルシーの攻撃を牽引した1人として間違いないだろう。プレミア初年度ながら相手を吹っ飛ばせるパワーとスピードを兼備。フィジカルのポテンシャルは相当高いものである。
攻撃の軸が定まってきたのは朗報だが、思うように得点が伸びないことは問題として依然残っている。ここまではリーグ戦8試合で11得点。ただし、そのうち7点はルートンとバーンリーという昇格組相手のもの。この固め打ちを除いた数字はやや寂しいものである。
実際のところ、この2人を中心としたチャンスメイクは十分にできているし、その中には決定機といえるものもある。それでいて得点が伸びないのがチェルシーの現状だ。
スターリング、ジャクソンを中心とした攻撃で最も気になるポイントはフィニッシュの際にシューターに余力が残っていないケースが多いことだ。スターリングは1on1からのドリブルでスピードに乗ってのフィニッシュ。ジャクソンは相手に体をぶつけながら振り切っての裏への抜け出しが非常に多い。
よって、構造的に自由を与えてもらっているというよりも彼らのフィジカル能力でシュートを作るスキを作り出しているという表現の方が近いように思う。なので、シュートを打つ瞬間にスピードに乗ることや、多少無理な体勢でシュートを打つことが多い。形としては決定機に見えても、チャンスメイクから突破が一息で駆け抜けている感が強い分、フィニッシャーに余裕がない状況が多いのだ。これがチェルシーの問題点だと思う。
フラム戦のムドリクのゴールはそういう意味では光になったといえるだろう。コルウィルのオーバーラップをうまく活用したおかげでムドリクはゴール前でフィニッシュにフォーカス。いい意味で力が抜けたシュートを放つことができた。手前の崩しの段階で無理をさせずにフィニッシャーを別に作ること。
スターリングやジャクソンにもそういう状況を作れればおそらく得点はもっと伸びるだろう。逆に言えば、彼らのスピードと馬力は現段階でチャンスメイクとしては十分に機能しているわけだから、フィニッシャーとタスクを都度分担できればより効率的なスコアが期待できる。
中盤にエンソとカイセドがいるのだから彼らを配球役としてうまく活用できれば難しいお題ではないはず。だが、現状ではパフォーマンスはまだ安定しているとは言えない。フラム戦ではいい形からのゴールが生まれても、直後のバーンリー戦はスターリングの力技でねじ伏せた感が強く、一息を入れての攻撃という観点ではフラム戦と同じクオリティではなかったように思う。
交代選手が入るとスクランブル感がアップするのもチェルシーの気になるポイント。仕方ないのだけど、個々人が持ち味を見せることでアピールを優先しているのかな?と思えるパフォーマンスで、選手を入れ替えるたびに個人勝負になっている試合も少なくはない。ジャクソンが90分を配分しながら戦うよりも猪突猛進いけるところまでタイプなので、試合中の味変は必須。そういう意味ではパルマーの目途が立ってきたのは大きい。
守備においては自陣をきっちり固めるところでは強さを感じる。その一方でハイプレスに関しての完成度は未知数といえるだろう。例のバーンリー戦においてはハイプレスからのファストブレイクで得点を重ねていたのは事実だが、バーンリーのビルドアップのクオリティの怪しさは否定できない。アーセナルに対して通用するかは別問題になるだろう。
得点を増やすためには高い位置から相手を捕まえる形を整備することは間違いなく有効な手段である。現状ではチェルシーはどこからでもチャンスを作れるチームではないので、ハイプレスが整えば大きな武器になるだろう。そのスキームを失点を増やさずに構築できるかがキーになる。
これだけの戦力があるのだから十分にポテンシャルがあるのは間違いない。あとはチームの組み立てがリミットに間に合うかどうか。ここから難敵が続く連戦で流れに乗れるかどうかはCL出場権争いに食い込むための大きな試練となるだろう。
攻撃の選択肢を削り取っていきたい
アーセナル目線で考えれば、まずはチェルシーの前線のアタッカーに当たり負けしないかどうかは重要なポイントといえるだろう。アーセナルのDF陣がジャクソン、スターリングのアジリティに対抗できれば、チェルシーの攻撃の幅はかなり狭めることができるはずだ。
CBの人選は気になるところ。サリバの負傷が間に合えばいいのだが、ここは不透明。ガブリエウと冨安は共に直近の代表戦でスタメンを張っているうえ。さらに長距離移動を強いられている地での試合を行っている。バックスの先発についてはわからない部分が多い。
ちなみにコンディション面で言えばチェルシーも不安がある。9月の代表ウィーク明けはカイセドが欠場、エンソが不調と南米組には甚大なダメージがあった。チェルシーもまた代表組のコンディションには気をもんでいるはずだろう。ライスを中心にシティ戦のように中盤を制圧し、チェルシーの攻撃に緩急をつけることは防いでいきたいところだ。
チェルシーの攻撃に厚みを出すためのポイントになっているのはSBの攻撃参加。それを許さないためにはWGを活用して、彼らをサイドから押し下げるプランを使っていきたいところ。同サイドのサポート役となるグストやコルウィルを押し込むことができれば、アーセナルはスターリングやジャクソンを孤立させることができる。
復帰が予想されるサカだが、対面はコルウィルとタフなマッチアップが想定される。ここはサポートを使いつつ打開していきたい。インサイドで受けるウーデゴールとのワンツーや、ウーデゴールのハーフスペースを囮に使ったサカ自身のカットイン、ホワイトの大外の追い越しなどおなじみの崩しの詰め合わせからチェルシーを揺さぶっていきたい。
ブロック守備にフォーカスされると堅さはあるチームなので、プレッシングを誘引してできるだけプレスを手前に引き寄せたいところ。特にムドリクやギャラガーは後ろとつながらない状態で前に出ていく状態が目に付く。 彼らが出てきた場合は積極的に活用していきたいところ。
逆にアーセナルがハイプレスに出ていくシーンでは狭いスペースに追い込みながら、少しずつ選択肢を削っていきたい。高い位置からのプレスへの耐性もまたチェルシーは未知数な部分であるし、早い段階で蹴ってくれるのであれば、アーセナルとしてもありがたい。
チェルシーがスクラップアンドビルドを繰り返しているため、局面での完成度を比較すれば今はアーセナルの方が力は上だろう。しかしながら、チェルシーにも一発の力は十分にある。なにより、このビッグロンドンダービーは近年劣勢を強いられていたアーセナルがブロック守備とロングカウンターを軸に下馬評をひっくり返しているカード。逆の立場で今度はアーセナルがうっちゃりを許さない強さを見せつけたいところだ。