Fixture
明治安田 J1リーグ 第節
2024.5.6
アビスパ福岡(9位/3勝6分2敗/勝ち点15/得点9/失点9)
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川崎フロンターレ(16位/3勝3分5敗/勝ち点12/得点15/失点14)
@ベスト電器スタジアム
戦績
近年の対戦成績
直近5年間の対戦での福岡の2勝、川崎の7勝、引き分けが1つ。
ホームでの戦績
直近10戦で福岡の3勝、川崎の6勝、引き分けが1つ。
Head-to-head
- 直近の対戦では川崎が福岡に5連勝中。
- ここ4試合ではいずれも川崎が3得点を挙げており、うち3試合は4得点。
- J1での対戦においてホームチームが得点を決めなかったことが2000年の等々力以来一度もないカード。
- 福岡の直近4試合のリーグでの川崎戦勝利はいずれもホームゲーム。
スカッド情報
- ナッシム・ベン・カリファはベンチ外が続く。
- 宮大樹はおよそ1ヶ月間出場がない。
- 宮城天、車屋紳太郎、大島僚太は離脱が続く。
- 三浦颯太、丸山祐市も負傷のため欠場。
- 小林悠は広島戦で負傷交代。
- チョン・ソンリョンは広島戦のウォーミングアップ中に腰を負傷。
- 高井幸大は代表活動のため不在。
予想スタメン
Match facts
- 柏とともに失点も得点もここまで一桁なチーム。
- 公式戦直近7試合無敗だが、うち5試合は引き分け(PK戦含む)
- 今季の勝利は3試合ともいずれも1-0。
- 勝利した3試合はいずれもトップハーフのチーム相手のもの。
- シャハブ・ザヘディはシュートのうち21%が得点になっており、2桁シュートを打っている選手の中で最も数値が高い。
- 紺野和也が福岡移籍後に決めた得点は全てアウェイで決めたもの。
- 4試合得点なしの後、2試合連続複数得点中。
- 開幕戦以来、アウェイでの勝利がない。
- 勝てば5ヶ月ぶりのリーグ戦連勝。
- 今季ここまで立ち上がり15分の得点がない。
- 今季ここまで勝利した試合はいずれも脇坂泰斗が得点を決めている。
- マルシーニョは福岡相手に4試合で4得点を挙げており、出場した試合は全て勝利。C大阪と並び、最も多くの得点を決めている相手。
予習
第9節 磐田戦
第10節 東京V戦
第11節 G大阪戦
展望
フォーメーションは据え置きの原点回帰
未勝利のまま終わった4月を抜けて、迎えた5月の初戦で6試合ぶりのリーグ戦勝利。川崎は久しぶりに等々力で勝ち点3を確保する喜びを噛み締めた。休む間もなく中2日で迎える今節。対戦するのは福岡である。
今季の福岡の特徴はなんといってもロースコアであること。得失点の数を合計すれば柏に次いで少ない数字になっており、基本的には得点も失点もあまり多くはない展開になっている。
昨季の長谷部監督のチームは前から積極的にプレッシャーをかけるスタンスに移行しており、昇格シーズンに見せた4-4-2ミドルブロックの強固さで勝負するチームから変化を遂げていた。前線のプレスのスイッチに呼応するように運動量が抜群なCHがボールを刈り取りに行き、攻撃においては山岸、紺野、金森の3人のコンビネーションを軸に中央を壊していく。まずは構える、そしてサイドからのクロス勝負という福岡のパブリックイメージを壊すようなチームだった。
今季のフォーメーションは引き続き3-4-2-1である。しかしながら、どちらかといえばスタイルの方向性は昇格初年度に回帰している印象を受ける。守備のプレス開始位置は中盤になることが多く、シャドーの選手たちは前に出ていくよりも自陣側のスペースを埋める意識が高い。後方のブロックは人数を余らせつつ、防波堤を築き中央のスペースを消し続ける。
ボックス内では体を投げ出す守備でシュートをブロック。押し込まれていてもサンドバック状態になっているという感覚は薄く守れているはずである。
非保持の局面に限定すれば昨季とは違うが、これはこれで悪くはないとは思う。気になるのは保持の局面である。ロングカウンターの形を連発できるのであればいいのだけど、別にそういったポジトラを強く意識しているわけではなさそう。そういう意味で非保持のスタイルが保持とくっついているかと言われると微妙なところである。
保持では直近の試合では4-4-2ベースのチームとばかり戦っていることもあり、3バックの数的優位を生かしながらワイドにボールをつけることが多い。しかしながら、ここからの打開策にはかなり苦戦のあとが見られる。サイドにボールがあるときはオフザボールで動くアクションこそサボってはいないものの、その動きをホルダーと合わせて有効な形に昇華できている感じはしない。
細かいパス交換をしているうちにミスが出てしまい、カウンターからピンチを迎える場面も少なくはない。前線のメンバーがかなり入れ替わったので、この部分の連携の構築は難しい部分はあるのかもしれないが、岩崎あたりがあまり得意ではなさそうなパス交換から相手を動かすトライをしてはロストするのを見ると少し切ない気持ちになる。
紺野や湯澤といった出口がはっきりしたクロスであれば、攻撃のルートは問題がなくなっている。これはひとえにザヘディのおかげだろう。相手のDFに対して優位を取れるフィニッシャーにシンプルなクロスを上げることができれば、ゴールの可能性は十分。セットプレーが絡めば奈良、グローリといった長身の選手は増える。GKが処理できない場所にクロスを送り、折り返しをエースに繋いで得点に!というパターンが作れれば、守備側にとっては防ぐのはハードとなる。
エースのザヘディはJでも指折りの技術の高いシューターである。難しい体勢からでも威力が高いシュートを枠内に飛ばすスキルが非常に高く、この部分ではJではナンバーワン候補。少ないチャンスやアバウトなシュート体勢でも得点を決めることができているのはこのエースの存在が大きい。
ただし、周りとの連携で崩していくという意味ではまだまだ構築中という感じ。崩しのプロセスにおいて彼を使った必殺パターンがあるわけではなさそうである。
ローブロック起因の少ないチャンスを活かせるストライカーと後ろの硬度は十分。大量の引き分けに基づく無敗記録はまさに今の福岡のスタイルをよく示している。苦手な局面ははっきりしているが、そうした局面を表に引き出さないためなかなか負けない。継続フォーメーションでのローブロック回帰が今季ここまでの福岡を見た印象である。
異なる展開が課題の進捗を問う
ここ最近の川崎の試合を見てみると、勝敗に関わらずボールを持たれる展開が多かった。C大阪、横浜FM、浦和、広島あたりには相当ボールを持たれる時間が長かった。
それに比べれば今節の川崎は今までよりもボールを持つ時間が長くなる公算が強い。福岡はプレスの位置が低く、自陣側にブロックを敷いてくるチーム。川崎はここ数試合とは異なる展開を強いられることになるのではないかと個人的には見ている。
そうなれば、上福元をGKに据える意味は出てくるだろう。背後からボールを回し、福岡のシャドーを手前に誘導する。福岡はWBとCHが前にスライドすることで後方支援を行うが、井手口がいない分威力は流石に据え置きである。連動は甘く、アウトナンバーとなったバックラインから中盤に前を向かせることは可能だろう。川崎は上福元を絡めたビルドアップでCHに時間を渡したいところ。
後方の人選の迷いどころはジェジエウを起用するかどうかだろう。ザヘディの存在を考えれば、ボックス内の護衛役としてはジェジエウがいた方がいいが、後ろからのパスワークで中盤に時間を渡すという点を重視するのであれば、佐々木はCBにステイさせた方が好都合である。スターターのCBの人選には注目だ。流れを大事にする監督なので、個人的には大南と佐々木で進んでいくと予想する。
アタッキングサードでの攻略はこれまでの試合よりは静的なものになることが予想される。前節はゴミスのCF起用により深さを作ることができたが、サイドでの関係性を作りながらのフリーランの連携は不十分。4-3-3に回帰して三人称の攻撃を有効活用できるところまでは戻すことができなかった。浦和に比べると福岡は後ろに人数を変えているし、ブロック自体もコンパクトなので、もう少し1人の動きを周りが活用できなければ、苦しいものになる。
そういう意味で試されるのは右サイド。家長を軸とした連携の構築は急ぎたい。特に瀬川は正念場。大外を家長に任せることができれば、自分は動き出しからDFとの駆け引きに挑むことができる。大外で正対よりはおそらくこの動きの方が向いている。個人の動き出しの質の整理と脇坂との連携については磨き上げたいところである。
中央のブロックでは福岡のCB陣との局地戦がキーになる。前に出てくる意識が濃いグローリ、田代、奈良といった面々の背後を使うことができれば面白い。この辺りはマルシーニョの裏抜けに期待したい。タイスコアくらいであればこれくらいは意識できるスペースは背後に存在するように思う。
左サイドは守備面が気になるところ。福岡はカットインの紺野と外を回る湯澤のどちらからのクロスも大きな武器になっている。紺野も当然いい感じであるのだが、最近は湯澤のシンプルクロスも好調。広島戦では東をボコボコにすることで優位を気づいていた。マルシーニョ、遠野が前に出て行き過ぎてしまうため、ファン・ウェルメスケルケンが晒されている頻度が高いのが最近の川崎の日常。ハイプレスの段階で晒されてしまうこちらのサイドからシンプルにザヘディにクロスが上がってしまうとしんどさがある。守備では隙を渡したくない。
総じて、今までの試合よりも攻守にディティールが問われる静的な展開になると予想できる。川崎が先行すれば試合はオープンになるだろうし、エリソン、山田、山内といったそういった展開が得意な選手も控えている。逆に福岡が先行すれば、より崩すのはハードになる。こうなると詰んでしまう可能性は十分にある。浦和戦の先制点のように狭いスペースからようやくゴールが生まれたのは個人的には大きいと思う。否が応でもそうした展開が問われる展開で、密集打開という課題の到達度を測る一戦になりそうだ。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)