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「勝ちに行ける強さ」~2024.4.9 UEFAチャンピオンズリーグ Quarter-final 1st leg アーセナル×バイエルン マッチプレビュー~

目次

Fixture

UEFAチャンピオンズリーグ
Quarter-final 1st leg
2024.4.9
アーセナル
×
バイエルン
@アーセナル・スタジアム

戦績

過去の対戦成績

 過去の10回の対戦でアーセナルの3勝、バイエルンの6勝、引き分けが1つ。

Head-to-head from BBC sport

Head-to-head
  • 直近3試合のバイエルン戦においてアーセナルは全て5-1という同じスコアで敗れており、これは欧州コンペティションにおけるクラブワーストタイの点差での敗戦。直近の対戦は2017年3月のホームでの対戦で、ホームにおける4点差での負けは公式戦におけるクラブワーストの点差。
  • CLのノックアウトラウンドでは5回目の対戦。過去4回はRound 16でいずれもバイエルンが勝ち上がり(04-05,12-13,13,-14,16-17)。

スカッド情報

Arsenal
  • ユリエン・ティンバー以外、新たな負傷者の心配はない。
Bayern
  • マヌエル・ノイアー、ヌセア・マズラヴィ、アレクサンダー・パヴロヴィッチ、リロイ・サネ、キングスレイ・コマンの5人は出場が微妙(ただし、クラブ公式の遠征リストにはいずれも名前が含まれている)

Match facts from BBC sport

Arsenal
  • 09-10以来のCLの準々決勝進出。この時は合計スコア6-3でグアルディオラのバルセロナに敗れている。
  • 7回のCL/ELの準々決勝において、準決勝に進めたのは2回だけ。
  • ブカヨ・サカは今季のCLの7試合の出場で7つのゴールに関与(3G,4A)でクラブハイ。過去に1シーズンで同等のスタッツを残したアーセナルの選手は15-16のアレクシス・サンチェス(3G,5A)
Bayern
  • 直近2試合のアウェイでのノックアウトラウンドではいずれも敗戦。今季のRound 16のラツィオ戦と昨季のマンチェスター・シティ戦。3連敗になれば2シーズンに渡ってバルセロナ、フィオレンティーナ、マンチェスター・ユナイテッドに3連敗を積み重ねた2009年-2010年以来。
  • ハリー・ケインはアーセナル相手に19試合の出場で14得点を挙げており、レスター(20)とエバートン(16)に次いで多くの得点を挙げている相手。

予習

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予想スタメン

展望

今のバイエルンを一言で表すのであれば?

 「同国対決はあるんだっけ?」「ここで決勝までの山が決まるんだ」
 抽選会を前に自分のTLを埋め尽くしていたこうしたコメントから、アーセナルがCLから遠ざかっていたことを感じるし、合わせてここの舞台に戻ってきたことも噛み締められる。そんな不思議な気持ちだった。

 バイエルンは起伏の激しい2024年を過ごしている。レバークーゼンとラツィオに連敗したタイミングで沈み、そこからマインツとダルムシュタットをボコボコにしつつラツィオにリベンジ達成して勢いに乗るも、そこからドルトムントとハイデンハイムに連敗して停滞。

 最後の連敗で完全にマイスターシャーレの行方が決まった感がある。レバークーゼンは最短で週末にシャーレを掲げることになる。ということでバイエルンはCLが唯一の今季残された目標となる。

 バイエルンの基本的なフォーメーションは4-2-3-1。スカッドはここに来て多くの怪我人が戻ってきているという報道。どの程度の状態かはわからないが多くの選手が遠征リストに組み込まれている。全員が万全と仮定するのであればパヴロヴィッチ、ノイアー、サネ(もしくはコマン)がスターターに名を連ねることになるだろう。

 ちなみにCBは直近のリーグ戦ではウパメカノとキム・ミンジェがプレーしているが、ここは明らかにターンオーバー。現状の序列はデ・リフトとダイアーのコンビが上。ドルトムント戦での敗戦を受けて、彼らにチャンスが与えられたという見方もできなくはないが、ハイデンハイム戦でのパフォーマンスを見る限り、大一番でのスタメンを勝ち取る序列の逆転は難しいように見えた。よって、スターターは予想スタメンの図の11人で予想しておく。

 バイエルンの保持は2CBと2CHの4枚を軸にビルドアップを行う。CHは大きく動くことが許容されており、最終ラインに降りるアクションもしばしば。ゴレツカなどは左のCBの位置に入る3バック化。運べるミンジェの序列を下げた分、ここは幅取り役をMFに託すということだろう。

 もう1人の中盤である右のCHは中央にとどまるケースが多く、展開力を一手に引き受けるケースがある。プレッシャーが少なければ1人でゲームのタクトを振るうこともあるが、左のSHのムシアラが低い位置に降りて中盤からボールを運ぶケースが多い。

 バイエルンのSHはプレーエリアが比較的インサイド。右サイドにはWGタイプが置かれることもあるが、押し込める相手に対しては彼らもインサイドに絞るケースが多い。大外は基本的にはSBのもの。キミッヒならば偽のSBというイメージがあるだろうが、大外で上下動を行っている。

 ただし、直近のハイデンハイム戦ではキミッヒは中央とのレーンチェンジを見せる場面もしばしばあった。これはハイデンハイムが数を合わせて守る兆候が強かったというのと、CHによりマルチな性能を持つライマーがいたことが大きい。ライマーに代わってパヴロヴィッチが入ってくればまたテイストも変わるかもしれない。

 バックラインからの組み立ての手段は豊富だ。大外で勝負ができるWGとSBがおり、ムシアラを筆頭にライン間のスペースで前を向いて攻略できる選手もいる。さらには2トップのケインとミュラーはスペースメイクの達人。押し込んだ相手に対しても自在な動き出しと相互理解でレーンに関わらず、味方をフリーにする動きを行うことができる。

 カウンターも含めてあらゆる場面において、スイッチを入れるパスの手前の下準備を怠らないし、奥行きを取るフリーランはどの選手も欠かさない。そのため、抜け出しはクリーン。スピードスター以外の選手も相手を置き去りにした後にフリーの状態でプレーすることができる。

 今のバイエルンを一言で表すのであれば、幅、裏、間をバランスよく使いながらスペースを生かすことと作ることができる王道型のポゼッションチームという感じだろうか。

王道型をポイ捨てする可能性

 王道型のポゼッションチームはボールを奪い返す手段がつきものである。今のバイエルンはこの部分には少し甘さというかアーセナルがつけいる隙があると思う。極端に押し込んでいけば即時奪回は効くだろうが、ケインとミュラーの2トップは90分ハイプレスを続けながら、ペースを握る原動力になるのは少し難しい感じがする。プレッシングの追い込み方自体はとてもうまいのだけども、強度的な意味合いで。

 SHとCHもそうしたカラーは同じ。明らかなポカをするわけではないのだけども、稼働範囲的に無理が効くという感じはしない。その結果、バックラインに厳しい対応が迫られる機会が多く、一番身体能力的に優れているウパメカノが対応をミスっては退場という状況が続いている。その結果、バックスの人選は無理が効くよりもミスが少ないという観点で選ばれている。CBの人選にはバイエルンの2024年の文脈を感じるところがある。

 これまでのバイエルンを見る限り、プレッシングの回避に関してはアーセナルは自信を持ってやっていきたいところ。CBがきっちり幅を取り2列目を引き出しつつ、SBとCHにウーデゴールを含めた連携で中盤を外し、バイエルンのバックスに過負荷をかけていきたいところである。

 バイエルンの直近の敗戦2つを紐解いてみると、ドルトムント戦は王道ポゼッションチームとしての押し込んだ後のフェーズとビルドアップの機能不全が大きく、ハイデンハイム戦はオープンな展開になった時の守備的な強度が問題になった感がある。この2つをアーセナルはどちらも活用したい。試合の中で表情を変えながら戦うことができるのは今のアーセナルが身につけつつあるところなので、この大舞台でそれを発揮できるかどうかが問われることとなる。

 アーセナルのベースとなるのはシティ戦。押し込んでばかりはいられないであろうバイエルン相手に必ず訪れる撤退守備のフェーズを強固な守備で凌ぎたいところ。

 ただし、バイエルンは大外に強力なWGを数多く用意しているチーム。シティがグリーリッシュで景色を変えかけたように、アーセナルが大外を1枚で守れるかどうか?というバランス構築は要調整だろう。SB、WG、そしてCHもしくはトップ下1枚での定点攻撃はバイエルンの得意技。サイドの深い位置へのランに対して、手前でDFラインを引き付けるパスワークを使って引き立てる動きは非常に効果的。より、オーソドックスで強力なサイドを破壊する武器を持ったチームに対して、外を薄く、中を手厚くで守るバランスをアーセナルが引き続き選択するのかは重要なポイントになる。左SBの人選もそうした意味では気になるところである。

 もう1つ、調整が必要なのはどのように勝ちにいくかのプランニングである。シティ戦では90分間素晴らしい守備を見せたアーセナルだが、グリーリッシュとドクが出てきてからの時間帯はなかなか点をとりに出ていける場面がなかったのも確かである。勝ち点で上回っていたシティに対しては負けないことが一番重要だったが、CLは基本的には相手を倒してゴールを奪い取らなければ次のラウンドには進めない。そうしたバランスの変化を見せられるかは重要なポイントだ。

 守備ブロックの強力さと意味ではシティに劣るバイエルンであれば、WGがバイエルンのSBの背後をポジトラで狙う形がめちゃめちゃ効きそうではある。この辺りはマルティネッリやサカといった「いってこい型WG」がどこまで復調しているかによるだろう。

 もう1つの狙い目はハイプレスの機能性だろう。ローブロックでのコンパクト志向は押し込まれる危険性が強い反面、ジョルジーニョの守備範囲の狭さを覆い隠すメリットがあった。ただ、より効果的な攻撃の機会を増やすのであれば、ウーデゴールやハヴァーツがスイッチを入れることができるようなシーンを増やす必要がある。

 そのためのキーマンはトーマス。ナローなスペースを壊すことにはジョルジーニョほど特化していないが、ローブロックとトランジッションを行き来しつつ、トランジッション成分を増やしてチャンスメイクの質を上げていきたいというCLで求めたい要素を実現するにはトーマスの存在は個人的には不可欠のように思える。

 アーセナルがこの試合で問われるポイントは2つ。シティ戦をベースに押し込まれた際のサイド攻撃の防衛に効果的な策を見出せるか、トランジッションの成分をより増やしてゴールに迫る形を作れるか。負けないチームから勝てるチームに進化するためにバイエルンは乗り越えなければいけない強力な相手である。

 ただ、もう一つ抑えておきたいのはトゥヘルの存在である。王道型ポゼッションチームというのはそもそも彼の柄じゃないように思う。トゥヘルの強みはワンマッチにおける対策色強めのプランの引き出しの多さ、それを実行するための戦力の瞬間的な最適化にある。連敗中、アーセナルのホームの試合、すでに退任が決まっている上にCL一点集中という要素は2024年に入ってからのバイエルンの型をぶっ壊した策を講じることを後押しするものである。

 追い込まれるほど不気味なトゥヘルが王道型を一掃したプランでエミレーツに乗り込んでくる可能性は十分にある。そうしたチームを受け止められる器量が今のアーセナルにあるかどうか?があるいは問われる展開になっても不思議ではない。

【参考】
https://www.bbc.com/sport/football/premier-league

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