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「鬼門に理詰めで立ち向かう」~2024.5.12 プレミアリーグ 第37節 マンチェスター・ユナイテッド×アーセナル プレビュー

目次

Fixture

プレミアリーグ 第37節
2024.5.12
マンチェスター・ユナイテッド(8位/16勝6分13敗/勝ち点54/得点52 失点55)
×
アーセナル(1位/26勝5分5敗/勝ち点83/得点88 失点28)
@オールド・トラフォード

戦績

過去の対戦成績

 直近5年間の対戦でマンチェスター・ユナイテッドの3勝、アーセナルの6勝、引き分けが3つ。

ユナイテッドのホームでの成績

過去10回の対戦でマンチェスター・ユナイテッドの4勝、アーセナルの2勝、引き分けが4つ。

Head-to-head from BBC sport

Head-to-head
  • ユナイテッドが直近16試合のホームのリーグ戦のアーセナル戦で敗れたのは2020年11月の1回だけ(W19,D5)。
  • アーセナルは9月の裏のカードでは後半追加タイムのデクラン・ライスとガブリエル・ジェズスのゴールで勝利しており、06-07以来のシーズンダブルの可能性。
  • アーセナルの直近6試合のアウェイでのユナイテッド戦の勝利は全て0-1のスコア。

スカッド情報

Manchester United
  • ブルーノ・フェルナンデス、スコット・マクトミネイは復帰予定。
  • マーカス・ラッシュフォードにも復帰の可能性があるが、メイソン・マウントは新たな怪我で欠場する。
Arsenal
  • ブカヨ・サカと冨安健洋にはフィットネスの心配がある。
  • ユリエン・ティンバーには開幕節以来のベンチ入りの可能性がある。

Match facts from BBC sport

Manchester United
  • 48試合の公式戦で18敗しており、19敗した77-78以来の多い敗戦数。
  • リーグ戦13敗は89-90以来最も多く、この年は16敗しての13位。7位以内を逃した最後のシーズン。
  • 公式戦81失点は70-71年(82失点)以来の数。
  • 今季のプレミアにおいてはリードしている時間よりもビハインドの時間の方が多い。
  • ホームでのリーグ戦9敗になれば直近50年では初めてクラブワーストの記録に並ぶことになる。
  • マーカス・ラッシュフォードは直近4試合のスタメンのアーセナルとのリーグ戦で6得点に関与(4G,2A)
Arsenal
  • 38試合制のシーズンにおいて27勝を達成すればクラブ記録となる。
  • 2024年の16試合のプレミアにおいて勝ち点を落としたのはエティハドのシティ戦での引き分けと、ホームのビラ戦の敗戦だけ。
  • 8試合プレミアのアウェイゲームでは負けがなく、うち7試合は勝利を挙げている。これは2016年に12試合無敗を達成したヴェンゲル時代以来最も長い記録。
  • アウェイでのリーグ戦で10のクリーンシートを達成しており、13を達成した90-91以来最も多い。
  • リーグ戦では88得点を決めており、90得点を挙げた60年前以来最多。
  • しかしながら、現在トップ8にいるチームに対するアウェイゲームには今季1つしか勝っていない。4月のノースロンドンダービー。
  • 直近4シーズンのその年最後のアウェイでのリーグ戦のうち、3つは無得点で敗れている。
  • ウィリアム・サリバはマックス・キルマンと並びフルタイム出場を続けるフィールドプレイヤーの1人。

予習

第29節 シェフィールド・ユナイテッド戦

第35節 バーンリー戦

第36節 クリスタル・パレス戦

今季ここまでの道のり

予想スタメン

展望

どこまでを仕方ないとするのか

 37節にして暫定とはいえリーグテーブルの首位に立っているアーセナル。少なくともこの試合に勝てば最終節まで優勝の可能性は残すことができる。ただし、37節は昨シーズン、シティ・グラウンドで優勝の可能性を消された節でもある。Match factsの項でも述べたが、昨季をはじめとして近年のアウェイでの最終戦は鬼門となりつつある。そんな相性の悪いタイミングで迎えるアウェイゲームはこれまた単体でも分が悪いオールド・トラフォード。アーセナルの37節は鬼門中の鬼門に挑むことになる。

 とはいえ、このデータを鵜呑みにして前を向けるほどユナイテッドの状況は良くない。ここにきて怪我人が続出しており、スカッドのやりくりは厳しさを増している。ブルーノが復帰することでパレス戦のような最悪の事態は免れそうだし、マクトミネイやラッシュフォードといった面々の復帰も期待される。

 その一方で非常事態に陥っている最終ラインには戻ってくる選手は居なそうな感じ。ヴァラン、マグワイア、カンブワラは欠場が確定でおそらくリサンドロ・マルティネスもショート。CBはエバンスとカゼミーロのコンビ継続しか選択肢はなさそうである。両SBのワン=ビサカとダロトも含めてバックスはほぼ選ぶ余地はなさそうである。

 スタイルとしては自陣からのショートパスがベースになる。オナナを軸に大きく開くCBの間にCHが降りてくる。SBも低い位置に入るなど、後方に枚数をかけてのビルドアップを行っていきたい志向が見て取れる。確かに枚数が多い分、インサイドでフリーになる頻度は増えているのだけども、そこから先の設計が見えてこないのがユナイテッドの難点。絞ったSBがフリーになればそこからWGで仕掛ける!とかはできそうだけども、特にそういう流れが仕込まれているわけでもない。

 ミドルゾーンからの侵入はアウトナンバーのSBではなく、ブルーノやメイヌーといったテクニカルなMFによって行われている節がある。それであれば、むしろSBは彼らの展開先であるサイドのフォローに入ったほうがいい気もするが、ビルドアップでのタスク割が微妙にある分、役割がピンボケしている感は正直否めない。

 ポゼッション志向っぽいこうした崩しをサイドで仕上げる完成度もそこまで高くはない。どちらかといえば縦に速い攻撃には鋭さがある。縦にスピーディーな攻撃を担うガルナチョはシーズン終盤にかけて調子を落としてはいるが、底は脱した感もある。彼やホイルンド、復帰をするのであればラッシュフォードにとっとと渡してしまった方がベターな感じもする。

 ただ、それはテン・ハーグを呼んでまでやりたかったことなのかと言われるとなんとも。これだけ怪我人がいるから仕方ない!という気持ちもわかるし、これだけ怪我人がいたとしてももうちょい示してよ!という気持ちもわかるので、本当になんともいえないところである。

 保持で安定した前進の手段が見つけられないので、高い位置でのプレスに出ていくこともしばしば。しかしながら、これは中盤やバックラインの間延びにつながることもあるというコインの表と裏。バーンリー戦のように成功例もあるので効果はあると思うが、その分スカッドのやりくりがしんどい背後に負荷をかけることになっていることも確かである。

 ただし、まずいと思ったところにエポックメイキングな勝利を挙げるのもこのテン・ハーグのユナイテッドの特徴でもある。パレスに大敗した後の首位との一戦はまさしくこの立ち位置に位置付けられるゲーム。今季一番とも言える逆境で腹を括ったユナイテッドは理屈じゃない怖さがあるのも確かだ。

ハヴァーツへの対応から攻略法を逆算する

 理屈じゃない怖さがある場面においては、今季のアーセナルはひたすら理詰めで攻略していきたいところ。今現在の状況であれば、おそらくアーセナル優位は動かない。この前評判通りに狙っていけるポイントを冷静に狙い続けたい。

 まずはCBコンビだろう。カゼミーロ、エバンスの両名は特に広い範囲を守ることになればかなり苦しい対応になる。ユナイテッドは撤退守備ベースになると前進の手段を見出せるかは怪しいので、ハイプレスに来る時間はどこかしらで出てくるはず。まずはハヴァーツでロングボールの駆け引きをしたいところである。

 パレス戦ではアンカーのメイヌーがマテタへのロングボールをケアしていた。パレスはアーセナルと異なる布陣なので、ハヴァーツへのロングボールにアンカーが対応するか、それともCBが対応するかはわからないが攻略法はどちらに対しても用意しておきたい。

 アンカーが対応する際には中盤の前後分断が進むため、メイヌー周辺に落としを受ける選手を作り、CBを前後で挟み撃ちする形を作りたい。落としを受ける役割はウーデゴールやライスであれば理想だが、彼らは低い位置に下がってユナイテッドの中盤を手前に引き寄せて前後分断を促進する役割に注力してもいいと思う。

 その代わり、1列前に入るのはSB。特に左のSBはこの役割にピッタリだろう。出ていく意識が高いカゼミーロの前に立てばその背後をWGがつく形からチャンスを作ることができる。前節、的確な列上げサポートを見せた冨安はもちろん、ジンチェンコにもこの役割を託すことはできるだろう。

 ハヴァーツにCBが対峙する場合は左右に流れながら積極的に動かしていきたいところ。シンプルに手前に降りるアクションだけでなく左右の背後に流れながら範囲を絞りにくくすれば、CBの対応はより困難になる。空けた中央のスペースをIHかWGでつくことができれば一気にフィニッシュまで行くことができそうである。

 CBとのマッチアップは素直に使いたい一方で、SBと正面からぶつかり合う形をとるとアーセナルにはドツボにハマる可能性はある。ダロト、ワン=ビサカは1on1でのタイマンであればアーセナルのWGと渡り合うことができる存在である。ここに素直に挑んでいくと跳ね返され続ける可能性はある。

 その一方で苦しい状況になると強引なタックルでPK献上をしやすいのもこの両SBの特徴。まずは中央をつっつくことでサイドでの対応を苦しくすれば突破のきっかけは見えてくるはず。サイドからではなく、中央を覗くことからスタートすること。そのために、自陣からビルドアップでなるべく中盤の前後への引き伸ばしを図ることが重要になる。

 非保持では素直にカウンターも含めて全てを受け切ることができることが理想。ブルーノをきっちり抑えることを意識さえできれば、バックラインは1枚を余らせる対応でなんとかなる感じもする。少なくとも立ち上がりは遠慮なくハイプレスに行くことでガンガン圧力をかけていくスタートを切っていいいのではないだろうか。急造DFラインで保持志向が強いとなれば、ミスを誘発できる可能性は十分にある。ただし、攻守ともに基本的にはリスクが高い手段をとっているのは確かなので、低い位置でのロストを避けることでユナイテッドの前進の手段を最小化していきたい。

 観客がいるオールド・トラフォード(2020年の勝利は無観客)はアーセナルにとっては鬼門。37節のアウェイ最終節も鬼門。鬼門中の鬼門で迎える最終局面の優勝争いは痺れるところである。理屈じゃない怖さがあるこの状況において、今季のアーセナルらしく理詰めで押し切る90分を演じたい。

【参考】
https://www.bbc.com/sport/football/premier-league

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