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レビュー
守備側優勢の立ち上がり
終了間際にジョゼ・アルバラーデでもぎ取ったハヴァーツの決勝ゴールを手土産にエミレーツに帰還したアーセナル。クラブ史上初の2年連続準決勝の舞台に向けて重要な90分を迎えることになる。
まずは立ち上がりにプレスに出ていくことで勢いを見せていくアーセナル。スポルティングが狙うのはマドゥエケの背後。サイドフローする守田など、このサイドから前進を狙っていくが、アーセナルのスライドとプレスバックはここに関しては上。自在な前進を許さない。
1st legに比べると、スポルティングに対してアーセナルは無難に対応できていたといっていいだろう。大きかったのはスポルティングの左サイドに対してかなり守備の整理ができていたこと。個人的に素晴らしかったと感じるのは、この日はRSBに入ったモスケラ。降りていくゴンサウヴェスに対して強気にプレスに出ていくことで、簡単に起点を許さなかった。
重要なのは降りていく選手へのケアに加えて、背後を取るアラウホのケアもできていたこと。1st leg(そしてボーンマス戦)ではクリティカルな狙い目となっていたRSBの背後をモスケラでカバーできた点は大きい。スポルティングの横断の狙いを潰しつつ、降りるアクションも咎めることができたモスケラの存在感は地味ながら非常に大きかった。
一方のアーセナルの保持はゆったりとした形。大きく動くことはせず、時折SBを自由化しながらバグを作りにいくが、インカピエやモスケラといった面々であるため、極端にポジションを動かすことはない。あくまでMF陣がサイドに流れるためのスペースを作る意図がベースにあるように見えた。特に左サイドはカタモが自陣に引いて受ける機会が多い分、ギャップを作りやすかった。
ただ、アーセナルはなかなか前線の選手が前を向くことができない。中盤の選手が降りるアクションをした場合はずらすことができていたが、前に張っている選手には強い圧力がかかり、前を向けない場面が続いた。
トップに入っているギョケレシュも前を向くことがままならず、比較的プレッシャーが弱いサイドのマドゥエケも苦戦。多少前を向けても相手を引きちぎる馬力が出せず停滞し、こちらも守備側が優勢だった。
序盤は交互にポゼッションを行う両チーム。一度持てば長く保持できるが、なかなか前を向く状況を作れないまま時間が経過していった。
裏パスは一発狙いに終始
やや1st legと同じ流れになったところから、アーセナルは少しずつ揺さぶりをかけていく。構えたプレスから時折ハイプレスを織り交ぜるなど、テンポに変化をつけていく。
だが、スポルティングは1st legに比べてハイプレスを落ち着かせる術を学んだ印象。とはいえ、アーセナルもプレスをひっくり返されるわけではなく、抜けられても引き分けの展開に持ち込める。アーセナルのプレスの真骨頂は、仮に外されても素早く陣形を整えられる点にある。
保持においてアーセナルはハーフスペースの裏にボールをつけていく形で勝負。ここはこの試合においてリスクを取ったポイントでもある。左のハーフスペースに顔を出すスビメンディがアクセントになっていた。
ただ、全体的には強引さが先立ったとも言える。エゼがスビメンディに縦パスを通した場面のようにクリーンな形であれば可能性はあったが、このシーンでもディオマンデとイナシオの対応は間に合っていた。
縦パス自体の質は高かった一方で、その後のプレーで時間を作れたかは微妙。さらに後方からの縦パスは一発で裏を狙う形になるため、守備側にとっても対応しやすいものとなっていた。
エゼは縦パスで存在感を見せたが、横断の精度にはやや欠けていた。サイドアタッカーの調子も含め、もう少し正確に繋げていれば、より勝負しやすい局面はあったはずだ。
マルティネッリのクロスに対してはスポルティングDFが余裕を持って対応。逆サイドのマドゥエケもボーンマス戦で見られたような“悪いなりのキープ”が影を潜め、危険なロストにつながりかねない場面もあった。
このロストこそがスポルティングにとっての狙い目。ポジトラからの攻撃はアーセナル攻略の数少ない糸口となっていた。
前半にスポルティングが作った決定機は2つ。ラヤのビルドアップを咎めたゴンサウヴェスの場面と、スアレスのラインブレイクからアラウホのクロスをカタモが合わせたシーンくらいだった。
スコアは動かず、アーセナルがリードを保ったままハーフタイムへ。
非保持での解決に辿り着かず
後半もアーセナルは前からプレス。スポルティングは引き続き落ち着いて対応し、ゴンサウヴェスと守田の連携や、ヒュルマンドを経由した展開で前進していく。
サイドからは形を作れるが、インサイドへの侵入は難しい。前半同様、シュートは外側からに限定されていた。
アーセナルとしてはアウトサイドで簡単に1on1負けしなかった点が大きい。アラウホ、カタモに対してインカピエとモスケラが崩れなかったことで、セットプレー以外では決定的な侵入を許さなかった。
攻撃面ではマドゥエケにやや改善が見られたが、まだ本調子ではない印象。中盤からのトランジッションやライスの飛び出しなど、きっかけはあるが質が伴わない。
特に問題だったのは「受けた後」。フリーの味方を使わずミドルを選択したり、判断の遅れで囲まれる場面が目立った。ただし、そのミスを帳消しにするプレスバックの速さは相変わらずだった。
時間が進むにつれて苦しくなったのはスポルティング。ボールを奪い返せず、中盤も間延びし始める。
交代でクエンダを投入するも流れは変わらず。むしろスペースが生まれたことでアーセナルは攻めやすくなる。
ダウマンの反転や、トロサール・ジェズスのリンクプレーで時間を使いながら試合をコントロール。トロサールのロストは危険だったが、最後は枠外で事なきを得る。
1点を守り切ったアーセナルが準決勝進出を決めた。
ひとこと
「1点のリードがある」状況を最大限に活かした試合運びだった。より攻め切りたかった気持ちはあるが、このスコアであれば時間を進めること自体に価値がある。リスクを抑えつつプレスから反撃を狙うという姿勢は適切だった。
もちろん、仮に同点に追いつかれていた場合、この内容では厳しかっただろう。ただ、この試合においては「リードを守る」ことが最優先。その意味では終始適切な振る舞いができていたと言っていい。
試合結果
2026.4.15
UEFAチャンピオンズリーグ
Quarter-final 1st leg
アーセナル 0-0 スポルティング
アーセナル・スタジアム
主審:フランソワ・ルトゥグシェ