Fixture
プレミアリーグ 第29節
2024.4.23
アーセナル(1位/23勝5分5敗/勝ち点74/得点77 失点26)
×
チェルシー(9位/13勝8分10敗/勝ち点47/得点61 失点52)
@エミレーツ・スタジアム
戦績
過去の対戦成績
過去5年間の対戦でアーセナルの7勝、チェルシーの4勝、引き分けが2つ。
アーセナルホームでの成績
過去10回の対戦でアーセナルの5勝、チェルシーの3勝、引き分けが2つ。
Head-to-head from BBC sport
- 2021年8月のエミレーツでの2-0での勝利がチェルシーにとって直近9試合の公式戦でのアーセナル戦唯一の白星。
- チェルシーはハイバリー時代の2001-03以来のアーセナルホームでの試合連敗の可能性。
スカッド情報
- 打撲でウルブス戦を欠場した冨安健洋には復帰の可能性。
- 膝の負傷をしているユリエン・ティンバーが唯一の確実な欠場者。
- 病気を患ったコール・パルマーは欠場が濃厚。
- マロ・グスト、ベン・チルウェルは当日判断。クリストファー・エンクンク、ロベンと・サンチェス、レスリー・ウゴチュクはトレーニングに復帰。
Match facts from BBC sport
- 今季のホームのリーグ戦は16戦12勝だが、負ければ2年ぶりのホームのリーグ戦連敗。
- 2024年のリーグ戦は13戦11勝(D1,L1)
- 15のクリーンシートは他のチームよりも少なくとも5多い。
- レアンドロ・トロサールはキャリアハイの得点数を記録。
- ブカヨ・サカは直近6試合のリーグ戦でブライトン戦のPKが唯一の得点。それ以前の先発した6試合では7得点を挙げていた。
- プレミア直近8試合負けなし(W4,D4)。ここ6試合はいずれも複数得点。
- 2023年2月以来の2試合連続のリーグ戦クリーンシートを狙う。だが、直近12試合のアウェイでのリーグ戦ではクリーンシートを記録していない。
- 15試合終了時点でアウェイでは27失点を記録しており、1990-91以来最多の水準。
- 今季リーグ戦で52失点を記録しており、昨季のトータルをすでに超えている。
- 2000年9月以来のアウェイでのリーグ戦3試合連続ドロー中。
- マウリシオ・ポチェッティーノはサウサンプトンとトッテナムの指揮官としてエミレーツのアウェイゲームで勝利したことがない(D4,L3)
- コール・パルマーはフロイド・ハッセルバインク(00-01)とディエゴ・コスタ(14-15)以来3人目のチェルシーでのデビューシーズンでプレミアリーグで20得点を記録した選手。
予習
第32節 シェフィールド・ユナイテッド戦
第33節 エバートン戦
FAカップ 準決勝 マンチェスター・シティ戦
今季ここまでの道のり
予想スタメン
@
展望
好調なハイプレス回避と安定感に欠ける試合運び
アストンビラ戦から続く中2日の4連戦。10日間で4試合というハードなスケジュールのトリを飾るのはチェルシーとのビッグロンドンダービーだ。
ここ数年の輪廻から脱せず、浮き沈みの激しいシーズンとなっているチェルシー。しかしながら、直近の試合を見てみるとリーグ戦最後の敗戦は2月上旬。およそ2ヶ月リーグ戦では負けなし。出入りの多い安定感に欠けるスタイルながらも、粘り強い戦いを続けている。
リーグ戦の直近の試合であるエバートン戦ではようやくクリーンシートを達成しての大勝をマーク。その一方で今季の大目標であるFA杯のタイトルは週末に失っている。6位までは見えるテーブルに置いて、欧州カップ戦出場にギアを入れ替えられるかが問われる中2日での試合となっている。
今季のチェルシーのサッカーを一言で表すのであれば、揺らぎが非常に大きいことである。マンチェスター・シティから勝ち点を奪うこともできるし、シェフィールド・ユナイテッドに勝ち点を与えることもある。それが今のチェルシー。どのチームにも傷を負わせることができるが、どのチームにも足を掬われることもある。
シーズン終盤にかけて主に得点力の観点で戦績が安定しているのは攻撃のルート構築が整っているからだ。大量得点で勝利したエバートン戦やリーグに引き分けを勝ち取ったシティ戦で見せたハイプレスの回避は参考になるだろう。
まず注意したいのはCFのジャクソンを使ったポストプレーである。パワーとスピードを兼ね備えているCFはカウンターにおける起点としては抜群の働きを見せている。開幕当初は自らが抜け出すことに力を使っていたが、シーズンが進むにつれてポストプレーで味方を解放するプレーを会得。強豪チームに対抗するための強力な武器になっている。
上位勢相手にも食らいつく試合を見せることができるのはこのカウンターにフォーカスした動きが非常にコレクティブだから。後方からのサポートランのコースどりは非常に見事。決定力には少し難があるが、カウンターからチャンスの機会をどの相手に対しても安定して供給できているという点は確かである。
ジャクソンのポストプレーをサポートするのは後方からわずかでも前に向くことができれば縦パスを刺すことができるカイセド、エンソのCH陣、さらには右の大外をフォローするグスト。どんなカウンターでも前線まで顔を出すことができる強度があってこそである。
仕上げの局面ではパルマーが目下絶好調。PKを多分に含んだ20得点という数字は評価が難しいが、チャンスメーカーとしての貢献度と掛け合わせれば二桁とれる時点で十分に傑出した存在だと個人的には思う。単にチャンスで巡ってきたボールを押し込むのではなく、1枚剥がして距離のある場所から正確な強度と精度で撃ち抜くことができる決定力は素晴らしいものがある。カウンターよりも静的な局面においてはグストとともにさらに重要度が増す存在である。
懸念点はやはり安定感である。シーズンの中での波のような話だけでなく、1試合の中でもチェルシーはジェットコースターのようなチームだ。試合の中で牙を向く時間が全く作れないことは稀だが、試合を90分間制御しきることは難しい。
特に前半良かった内容がハーフタイムを挟んで一変し、後半はしっちゃかめっちゃかというケースはよく見られるものである。CB陣のプレー選択にその傾向が特に強く、ディサシやバディアシルの保持局面でのプレーセレクションには過度なリスクテイクの傾向がある。ちなみに直近のシティ戦ではチャロバー、シウバが先発起用されている。
CBだけでなくチームとして押し込まれた時の振る舞いの不安定さは見受けられる。リーグにおいて素晴らしい成績を残すことにおいては、完成度を積み上げること以上に足枷になりうる部分。軸として見えてきた攻撃の形を支える地盤の安定感を増やすことは来季の復権のためのファクターになるだろう。
ゲームコーディネートで差をつけたい
チェルシーの守備の局面の振る舞いは正直あまりこれといったものの印象はない。直近のFA杯のシティ戦を踏まえると、WGを前に残し、シティのWGとの1on1を受け入れるような前後分断の4-2-4を講じていた。
そのため、シティのWGにボールが入った時にはかなり陣形は手薄。その代わり、カウンターに移行する時は前にWGが残っている分、枚数が足りないことはないという仕組み。WGの守備時の高さを調整しながら(後半はより積極的なプレスバックを課していた)試合を進めていた。
この形がそのままアーセナル戦に焼き直されるかはわからないが、WGを自陣まで戻さないという部分は割とどの試合でも意識されているように見える。その分、ハードワークを課されているのはギャラガー、エンソ、カイセドといったCHのキャラクターが強い選手たち。ボールサイドへのスライド、最終ラインへのカバー、そして前線のプレスへの支援など多岐に渡る役割が託されている。
よって、まずはアーセナルはチェルシーのWGと対峙するSBが浮く可能性が高いため、ここをきっちりフリーマンとして活用することが大事。WGを追い越すアクションはいつも以上に有用になるかもしれない。そしてWGとSB、そしてIHが絡むサイド攻撃に対して、チェルシーの中盤がどのようなプレーを志向するかを確認しておきたい。
おそらくボールサイドによるアクションはしてくるはずなので、サイドを素早く変えながら薄いところを作ってのブロック攻略に挑む形を作りたい。チェルシーのSBは対人に強い選手が多いので下準備はしっかりと、そしてカウンターへの移行を防ぐためにも攻撃の終わらせ方は通常以上に意識をしておきたい。
カウンター対応に関してはグストとパルマーの主戦場であるアーセナルの左サイド側が肝になる。キヴィオルはよくやっているが、相手のレベルが上がると1試合に数回は致命的な抜けられ方をしてしまう部分がある。なお、パルマーとグストはそれぞれ病気と怪我で出場が不安視されている。合わせてこちらサイドはチェルシー側の人選も気になるところである。
ただ、正直こうした局面や構造的な勝負よりも一番重要なのは試合運びの部分だと思う。最大出力で言えば上位陣と戦うこともできるチェルシーに対して、アーセナルがこれだけの勝ち点差をつけることができているのは試合運びの安定感が大きい。
まずは中2日の連戦が続くアーセナルがシンプルにどれだけ回復をしているか。そしておそらくコンディション面では不利になる中でも試合運びの点でチェルシー相手にシーズン通りの差をつけることができれば、十分に上回ることは可能なはず。チェルシー側の不用意なリスクテイクをプレッシングをベースに咎めながら、今季最後のミッドウィークの一戦を制したい。