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「FIFA World Cup QATAR 2022 チーム別まとめ」~ウルグアイ代表編~

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第1節 韓国戦

■勝てそうで勝てない難敵が韓国に立ちはだかる

 混戦が予想されるグループH。サウジアラビア、日本と連日のアジア勢の勢いに乗りたい韓国が迎えるのは南米の常連国であるウルグアイだ。

 韓国のフォーメーションは4-2-3-1がベース。保持では2CHのうち、チョン・ウヨンがアンカーのように振る舞い、2CB、GKと共に4枚を中心にビルドアップを行う。インボム、ジェソンも必要とあればビルドアップに参加。この辺りは相手の様子を見ながら枚数調整といったところだろうか。

 大外の幅取り役は左右ともにSB。サイドハーフはともに絞り、ファン・ウィジョのそばでプレーすることが多かった。

 ウルグアイのプレスの先導役はCFのスアレス。運動量に不安のあるベテランを最前線に抱えるということは高い位置から追い回すことを繰り返すのは難しいということでもある。量的に制約が付いているウルグアイはミドルゾーンに構える4-1-4-1である程度韓国にボールを持たせながら迎え撃つ。

 そのため、韓国のボール保持の局面は比較的安定はしていた。ただし、ゴールに迫ることができるかどうかはまた別問題。相手のプレスの人数の掛け方の割には、韓国のIHがやや降りすぎてしまうため後ろが重くなっていたし、大外のSBの打開力は独力で相手を出し抜けるほどではない。サイドでは1枚相手を剥がせることがあったとしてもバルベルデやヒメネスが爆速でカバーに飛び込んでくるので、実質無力化されてしまう。

 3トップもビルドアップに絡めないとなれば、韓国がエリアに入り込むことに苦戦するのは必然だろう。ファン・ウィジョのこの試合唯一の仕事をするチャンスは、前半に唯一生まれた韓国の決定機をゴールに蹴り込むことだった。だが、30分以上ボールに触ることができなかったウィジョはこのボールをふかしてしまう。

 韓国にとってはこのウィジョの決定機のように低いクロスを上げる形の方が期待値が高いのだけど、そうしたクロスはウルグアイが全て跳ね返すようにサイドに押し込んでいる。なお、ハイクロスは全てCBが跳ね返してくれるので完全に許容するというメリハリぶりだった。頭を越すクロスはどうぞ!でも鋭いやつは許しません!という距離感でウルグアイは韓国をサイドに追い込んでいた。

 ウルグアイのボール保持はCBに加えてアンカーのベンタンクールが参加する形。ただし、ベンタンクールは韓国の2トップの間に常駐するわけではなく、2トップの外側に立つことも多い。その場合は併せてベシーノやバルベルデが2トップの間に立つように動く。

 だが、ビルドアップの基軸はショートパスではない。序盤の前進の主役となったのはヒメネス。ロングフィードからの抜け出し一発で、前線にチャンスを供給する。バルベルデなどがレシーバーとなり、フィードからそのままシュートに持っていく。プランとしては前後分断に近い。

 韓国のボール奪取の狙い目になりそうなのは最終ラインのややサイドから中央に刺すパス。ウルグアイはこのパスがやたらと甘い。何度かこのパスから決定的なピンチを迎えかける。奪われたら危険な形になりやすいパスが多いウルグアイだったが、その分帰陣もやたらと早く韓国の速攻を許さない。敵陣まで運ぶ機会は韓国の方が多かったが、決定機はウルグアイの方が多いという前半だった。

 迎えた後半、両チームとも得点を目指してテンポをアップを行っていく展開に。先にチャンスを迎えたのは韓国。だが、シュートでゴールを脅かせるタイミングで足を伸ばしてきたのはヒメネス。シュートモーションに対して先に倒れすぎたか?と思ったところからもうひと伸びするスライディングで韓国のチャンスを未然に防いでみせる。

 時間の経過とともに再度保持側がロングボールに走ることで膠着する後半。キム・ミンジェの負傷で様子を見る必要があるなど、韓国側にはテンポを上げきれない要因もあった。

 試合が均衡する中で存在感を見せたのは両軍の交代選手である。韓国はCFに入ったギュソンが投入早々にポストからチャンスメイクをするなど流れの中での攻撃に寄与。消えていたファン・ウィジョとは異なり、いきなり攻撃のアクセントになって見せる。ポストを叩くシュートなど短い時間でフィニッシュでもヒーローになるチャンスすらあったほどである。

 ウルグアイ側で存在感を放ったのも同じくCF。こちらはお馴染みのカバーニである。献身的な前プレ、プレスバックはもちろんのこと。鋭い縦パスでもあっさり収めながらボールを前に進める力は流石の一言。短い時間ながらスアレスやヌニェス以上のインパクトを残したといっていいだろう。

 そんな彼らも最後まで得点をあげることはできず。韓国にとっては連日の大物食いのチャンスだったが、ドローでフィニッシュ。苦戦しつつも要所でのプレスバックの速さを見れば「ウルグアイに勝てそう」なチームは多くとも、「ウルグアイに勝ち切る」チームが少ない要因をまざまざと見せられたなという気持ちになった一戦だった。

試合結果
2022.11.24
FIFA World Cup QATAR 2022
Group H 第1節
ウルグアイ 0-0 韓国
エデュケーション・シティ・スタジアム
主審:クレマン・トゥルパン

第2節 ポルトガル戦

■保持の引き出しと最終局面の武器で質の差が

 勝てば3チーム目のグループステージ突破チームの仲間入りを果たすポルトガル。対戦相手は南米の常連であるウルグアイ。初戦は韓国を引き分けに引き摺り込んだ彼らを相手に連勝を決めることができるだろうか。

 序盤からボールを持つ機会が多かったのはポルトガルの方である。彼らの4-3-3に対峙するウルグアイのフォーメーションは3-5-2。高い位置からプレスをかけようとすればバッチリと噛み合わせが合うフォーメーションである。

 よってポルトガルは積極的な移動でズレを作ることをしていた前半となった。もっとも、こうした動きは第1節のポルトガルでも見られていた部分。相手のフォーメーションにどこまで合わせたものであるかは不明である。

 ズレを作ることが多かったのはアンカーのネベス。バックラインの左側に落ちる動きで相手から離れてフリーになる。ネベス以外にもブルーノ、ベルナルドなどがフリーになる動きを模索するのも前節と同じである。バックラインの中でズレができると、前線に積極的に蹴っていくのがこの日のポルトガル。ロナウド、フェリックスをロングボールのターゲットとしてボールを動かしていく。

 サイドに流れるロナウドをフォローするように高速でオーバーラップするメンデスは攻撃の厚みをもたらすのに重要な存在。負傷交代してしまったのは残念極まりないと言えるだろう。

 一方のウルグアイの狙いはトランジッション一本。ボールを引っ掛けることができれば一目散にゴールに向かっていく。32分のベンタンクールの決定機は最後のタッチが見事だっただけに決めたかったところであった。ただし、この日のポルトガルはそこまでショートパスの本数が多くなかったため、高めの位置で引っ掛けてショートカウンターまで移行できるのは稀である。

 個人的にはウルグアイはもう少しボールを持ちながら試合をコントロールしてもいいかと思った。ポルトガルのプレスは繋ぐ余裕がないほど強烈なもののようには思えなかったので、ウルグアイはもう少し前節のようなボールの繋ぎ方をしても良かったのかもしれない。

 そうした余裕があれば、たとえばカンセロとマッチアップするヌニェスのようにもう少し優位が取れそうな場所を落ち着いて攻めることができたはず。前半のウルグアイはそうした攻め筋を存分に活かせたようには見えなかった。

 ウルグアイの繋ぐチャレンジは後半頭に。引っ掛けてしまってポルトガルのショートカウンターにつながってしまう。ボールを落ち着かせて繋ぐという部分ではこのトライは失敗に終わってしまった格好だ。カウンターにおいても右サイドの厚みが十分ではなく、相手のゴールまで攻撃が届かない状況が続く。

 チャレンジが狙い通りに決まったのはポルトガルの方。自在に左右に流れるブルーノが左サイドに登場。クロスを上げた先にいたのはロナウド。触ったか、触ってないかはぱっと見ではわからない状況ではあるが、ニアサイドでフリーランを行っていたゲレーロのおかげでロナウドはオンサイド。どちらにしても先制点は認められることになった。

 リードを奪ったポルトガルはウルグアイにボールを持たせるアプローチに素早く切り替える。WGはSBを徹底監視するリトリート第一主義になる。

 ウルグアイは右サイドを強化。カットインする成分をもたらすことができるペリストリに加えて、左のSHをベースポジションとするデ・アラスカエタもこちらのサイドに裏抜けを繰り返すことでチャンスメイク。シュートに迫る時間帯を演出することに成功する。

 ゴメスのポストへのシュートやデ・アラスカエタの冴えないフィニッシュなどウルグアイがこのチャンスを逃すと、流れは再びポルトガルに。ヒメネスがハンドを取られてポルトガルにPKが与えられる。

 このハンド判定は非常に微妙なもの。確かに体を支える手ではあるが、ボールが出そうなところにあえて支え手を出したように見えなくもない。支え手の項目にも「故意ではない限り」という但し書きがあるように、このプレーがあえてととらえられてしまえばハンドである。要は主審の解釈次第と言える場面だろう。この場面では故意に近いと解釈されたということだ。

 このPKをブルーノが決めて2ゴール目。その後もハットトリックに向けてシュートチャンスを貰い続けるブルーノだったが、思い出となる3ゴール目を決めることはできなかった。

 それでも混戦の各グループを見渡せば、決勝トーナメント進出を一足先に決めることができたのは恵まれている。ボール保持が効いていた時間帯の長さと、ゴールに向かう武器の豊富さで考えればポルトガルの順当な勝利と言えるか。

 一方のウルグアイはこれで2試合ノーゴールで無得点。他会場の条件付きでガーナ戦に突破の可能性を残すとはいえ、ここまでの戦いをみれば決して楽観視はできない状況だ。

試合結果
2022.11.28
FIFA World Cup QATAR 2022
Group H 第2節
ポルトガル 2-0 ウルグアイ
エデュケーション・シティ・スタジアム
【得点者】
POR:54′ 90+3′ フェルナンデス
主審:アンソニー・テイラー

第3節 ガーナ戦

■割り切れば負けたって喜べる

 ウルグアイの突破要件として挙げられる最低条件は勝利。その上でポルトガルと戦う韓国よりも優れた得失点差でガーナを倒さなければいけない。自力でできることはあるけども、他会場も絡んでくるというややこしい状況である。

 高い位置からプレッシングに行く両チーム。とりわけおりていく前線の選手たちに守備陣がついていってプレッシャーをかけていく姿が印象的だった。勝利と多くの得点が欲しいウルグアイはもちろん、引き分けでも突破の目があるガーナもこのハイテンポな戦いに付き合うようになる。

 この試合の前半の特徴はこの互いのハイラインを破った先にはかなり高い確率でチャンスが待っているということである。皮切りとなったのはヌニェスの抜け出しだったが、コントロールに手間取っている間にこのチャンスを逃す。

 すると、左右にボールを動かしながら敵陣に迫ることに成功したガーナがミドルの跳ね返りにつめたクドゥスが倒されてPKを獲得。オフサイドも絡んだややこしい判定だったが、OFRの結果ガーナがPKのチャンスを得る。ポルトガル戦でも見られたOFR帰りの主審を邪魔するスアレスとPKスポット荒らしのせめぎ合いはもはやグループHのお馴染みの光景と言っていいだろう。

 ウルグアイの妨害工作に屈したか、アンドレ・アイェウはこのPKを止められてしまうことに。ガーナは先手を奪う最大のチャンスを逃してしまう。

 するとここからペースはウルグアイに傾く。右サイドに抜け出したヌニェスからファーに折り返すと、スアレスのシュート性のボールを最後はデ・アラスカエタが押し込んで先制。32カ国のうち、ここまで唯一ゴールがなかったウルグアイがついに得点を奪う。

 押し込まれてしまったガーナはやや散漫な時間を過ごしてしまう。ライン間に縦パスを通される場面が目立つなど、この時間帯はソリッドな守備を構築するのに苦しんでいた印象だ。

 そんなガーナを尻目にウルグアイは追加点をゲット。ライン間のペリストリに縦パスを通すと、思わず目を奪われるような華麗な繋ぎで追加点をゲット。再びデ・アラスカエタが豪快なボレーでネットを揺らして見せる。

 ガーナはクドゥスのライン間での収めからシュートを狙っていくが、こちらはゴールまで辿り着くことができず。さらに得点が欲しいウルグアイにあわや3点目が入りそうな前半終了間際という流れになった。

 後半、ボールを持ちながらチャンスを迎えたのはガーナ。左サイドに交代で入ったスレマナがアクセントになり、ウルグアイの陣内で攻勢を強めていく。ボール保持の意識も高めたのか、後半のガーナは低い位置にトーマスを下ろすことで前半よりもきっちりとゲームメイクし、ウルグアイの2トップを丁寧に超えるシーンが目立つようになった。

 このままいけば突破となるウルグアイは無理にプレスに出ていかず、自陣をきっちり固めていく。ガーナはそれでも危険なシュートを放つが、わずかに枠をとらえないシーンにウルグアイが救われることも多かった。

 ウルグアイはロングカウンターからバルベルデが存在感を示すなど自陣深い位置からでも得点を狙えるポテンシャルを見せつける。ただ、基本的には後半のプライオリティは自陣できっちりとゴールを固めること。バルベルデがアンカーのトーマスにマークに付けるために中盤をダイヤモンド型にするなどの工夫を施した時間もあった。

 突破の状況を維持しながら時計の針を進めるウルグアイ。そんな状況を変えたのは他会場の韓国勝ち越しの一報だ。これにより試合は一気に活性化する。ウルグアイ、ガーナ共にゴールが必要な状況は非常に前がかりな状況を生み出し、攻撃は常に保持側が数的優位な状況でカウンターを撃ち続けるという展開が続く。

 そうした中で運命を分けたのはPK判定。前半のガーナにPKを与えられた判定も含めて、この試合のPK絡みの判定はことごとくウルグアイに不利な側に流れるものになっていた。

 ただ、ウルグアイはそうした外的な要因以外に、カウンターがやや焦りすぎていたことも指摘しておきたいところ。7対4みたいなカウンター時の明らかに数的有利な状況をろくに活かすことができず、やや淡白なフィニッシュに終始したことも事実。主審に頼ることなく何かを決めるチャンスを作り出すことができなかったのは紛れもなく彼らの責任である。

 突破の可能性が絶たれたことを先に悟ったガーナが12年前の恨みからかウルグアイの敗退に歓喜するという異様な状況になったスタジアム。共に敗退となったはずのスタジアムに広がった奇妙な光景もまたW杯が紡いできた歴史ということなのだろう。

試合結果
2022.12.2
FIFA World Cup QATAR 2022
Group H 第3節
ガーナ 0-2 ウルグアイ
アル・ジャヌーブ・スタジアム
【得点者】
URU:26′ 32′ デ・アラスカエタ
主審:ダニエル・シーベルト

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