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「FIFA World Cup QATAR 2022 チーム別まとめ」~ガーナ代表編~

目次

第1節 ポルトガル戦

■完勝ムードが一転、薄氷の勝利に

 グループHではイタリアとの潰し合いを制し、激戦の欧州プレーオフを勝ち上がったポルトガルが登場。開幕節の相手は未だここまで勝利がないアフリカ勢最後の砦であるガーナだ。

 ポルトガルの基本的なフォーメーションは4-3-3である。CBはGKを挟むように立ち、距離をとっている。SBは両サイドとも高い位置を取り、大外を担当する形である。WGのポジションに分類されるのはブルーノ・フェルナンデスとジョアン・フェリックスではあるが、彼らのプレーエリアがややインサイドであることと、IHがオタビオやベルナルドという広い範囲でのプレーが可能な選手であることからややベースのフォーメーションは分かりにくかった。後ろはCB+アンカー、大外はSB、トップはロナウドで中央はそれ以外というニュアンスがより実情に近いと言えるだろう。

 そんなポルトガルに対して、ガーナは5-3-2で対抗する。ガーナのWBはポルトガルのSBを意識したポジションを取ることが多く、ガーナの最終ラインとは異なる高さでプレーする機会が多かった。ポルトガルにボールを持たせることを許容してはいたが、全体のプレーエリアもそこまで低くはなくベタ引きという印象とは違う。

 余談であるが、今回のW杯はベタ引きの5バックを基本線として敷いてくるチームはいなくなったように思う。一番近かったのはイランだけど、そんな彼らでも前に出る意欲は高かった。理由はいくつかあるんだろうけど、おそらく撤退した状態から少ない人数で陣地回復ができる選手がそうしたプランを取りたくなる国にはいないということなのかなと思っている。

 さて、話を戻そう。ボールを持てることとなったポルトガル。中盤の人員の入れ替えという乱数はあったものの、ガーナの守備に対してはズレを作ることはできない。ガーナのインサイドは堅いままでそもそも相手を動かすアクションを行うことができず。狭いスペースに突っ込んではボールを失うといったことの繰り返しである。

 大外のレーンは1on1を制することも、多数の選手を活用しながら抜け出す選手を作ることもできないポルトガル。相手を外しきれないクロスは山なりの軌道を描くボールばかりだった。それでもインサイドにロナウドがいればそれなりに有効なのだけど。

 一番のチャンスはトランジッションである。中盤でボールを奪ってからのカウンターこそポルトガルの得点のチャンスと言えるだろう。保持ではあまりうまくいっている感じはしなかったポルトガルだが、敵陣でロストしたボールを即時奪回することはできており、ショートカウンターの機会を作るところまでは辿り着いていた。

 逆にガーナのボール保持は非常に苦しんでいたと言えるだろう。前線がマンマークで高い位置から捕まえにくるポルトガルに対して活路を見出せずにいた。特に中央方向のパスはポルトガルに厳しく咎められており、危険な形でのカウンターの呼び水となってしまう。かといって、長いボールは勝ち目がない。百戦錬磨のルベン・ディアスを出し抜くのはそう容易ではない。

 トーマスに時間を与えることができれば、最後に安全に展開できるがその形を持っていくのに苦戦。そうした中でガーナの光になっていたのはインサイドハーフのクドゥス。最終ラインは難しくとも、中盤相手であれば優位は取れる。力強いターンでボールの収めどころ兼前進のポイントとして機能していた。

 スコアレスで迎えた後半は前半よりはフラットな展開。ポルトガルは引き続きプレッシャーを高い位置からかけ続けてはいたが、ガーナはその圧力にはだんだんと慣れてきた印象。ボールを持つことは前半ほど難しいことではなかった。

 そうした中で先手を奪ったのはポルトガル。PA内でロナウドが倒されたことに対してPKが与えられる。判定は非常に微妙。接触はなくはないが、自分がガーナ人であれば間違いなく文句はいっていたと断言できる。PKを奪ったロナウドが自ら先制点をゲット。GKにはノーチャンスのコースに蹴り込み心臓の強さを見せる。

 しかし、ガーナもやられっぱなしではいない。73分のアンドレ・アイェウの同点ゴールは非常に見事。相手のポジションを釣りまくるオフザボールの動きを連発し、綺麗にゴール前まで繋いで見せた。

 だが、ポルトガルはここから再び反撃に。カウンターから右サイドを走り抜けたジョアン・フェリックスが勝ち越しゴールを決めてリードを奪う。さらに2分後には2点目と綺麗に左右対称の左サイドからカウンターを発動したポルトガル。今度のフィニッシャーは途中交代のレオン。ガーナを突き放す3点目を畳み掛けていく。

 これで試合は決まりと主力をそそくさと引き上げさせるポルトガル。しかし、ガーナが89分に2点目となるゴールを挙げるとここから試合は一気にスリリングな展開に。追撃弾で勢いに乗るガーナにはもう恐れるものはない。ポルトガルは勢いを抑えるのに精一杯。

 中でもハイライトはラストシーンだろう。GKのコスタがキャッチしたボールを地面におくと、背後に忍んでいたイニャキ・ウィリアムズがボールを盗みに行く。だが、これは盗みに行く過程で足を滑らせてしまい未遂に終わる。

 正真正銘のラストプレーまで冷や汗をかかされたポルトガル。完勝ムードが一変する薄氷の勝利だったことには違いないが、裏のカードが引き分けに終わったことを考えれば大きな勝ち点3を手にしたと言えるだろう。

試合結果
2022.11.24
FIFA World Cup QATAR 2022
Group H 第1節
ポルトガル 3-2 ガーナ
スタジアム974
【得点者】
POR:65′(PK) ロナウド, 78′ フェリックス, 80′ レオン
GHA:73′ アンドレ・アイェウ, 89′ ブカリ
主審:イスマイル・エルファス

第2節 韓国戦

■左サイドを軸にした後半の猛攻は実らず

 旋風を起こしたアジア勢だったが、日本とサウジアラビアが敗れて一段落。無敗を維持する最後の砦となったのがH組の韓国である。そんな韓国は前線3枚を入れ替え。大幅にメンバーを入れ替えた日本を彷彿とされるスターターとなった。

 ガーナは前節の5バックから4バックにシフトチェンジ。ポルトガルと比べれば韓国とは十分に組み合えるという判断だろう。5バックを使った後のチームが4バックに移行した際に最も難が出やすいのはCB-SBのスペース。このスペースに出て行きすぎたり、あるいは放置しすぎたりなど判断のギャップが生じることが多い。

 立ち上がりの韓国はこのギャップを利用。右サイドのハーフスペースを狙い撃ちしながら深さを作っていく。三角形を作ってのパス交換で優位を取り、エリア内にボールをつなぐことに成功する。ガーナがクリアした後のCKもしっかりとデザインされていた韓国。序盤は攻勢に出たのは彼らの方だった。

 しかし、ガーナは前節ほど苦しい戦いになったわけではない。韓国はポルトガルと違い、ボールをロストした後の即時奪回に熱心なわけではないので、ボールを取った後に落ち着いてボールを持つことができた。

 4バックにしたガーナは前節はIHだったトーマスが降りてくるアンカーロール的な振る舞いを増やすように。韓国は2トップがトーマスを受け渡しながら守るミドルプレスを維持していく。ポルトガルほど支配的でない韓国のスタンスに対して、ガーナもまたショートパスからの前進をすることができていた。

 先制したのは序盤に主導権を握れなかったガーナ。セットプレーからの混戦を制して叩き込んだのはサリス。均衡を破る一撃をお見舞いする。

 勢いに乗るガーナは流れの中から追加点をゲット。ジョーダン・アイェウのクロスから完璧に抜け出したクドゥスが合わせてさらに突き放す。アンドレ・アイェウとクドゥスの2人が仕掛けたラインの駆け引きに韓国のバックラインは屈してしまった。

 苦しくなった韓国。時折、ロングカウンターから左サイドをソンが駆け上がるシーンが散見されるが、インサイドの攻め上がりが間に合っておらず、待っている間に挟み込まれてしまうなど有効打にならない。ポゼッションはできるか、ガーナの守備陣を攻め立てることはできず、得点とともにサイドからの崩しも沈黙してしまった印象。2点のビハインドを背負ってからは内容まで尻すぼみになってしまう。

 後半、劣勢だった韓国は選手交代とともにシステムを4-3-3に変更。前プレスの強化とサイド攻撃を手厚くする形にシフトする。ガーナが前プレにきた韓国のアンカー周りを使う攻撃をするなど、リスクはあったこのシフトチェンジ。しかしながら、2点ビハインドという状況であれば多少のリスクを負っても出力を上げられれば問題はない。左サイドからのクロスを軸としてエリア内に迫る機会を増やすように。

 すると、この左サイドのクロスから追撃弾を得た韓国。決め手になったのは交代で入ったイ・ガンイン。ターゲットが1枚という精度が問われる状況だったが、投入直後にこのクロスをバチっと決めてみせた。

 さらに韓国は左サイドからの攻撃で畳み掛けていく。ソンが対面のランプティを縛り付けると、外を回ったSBのジンスのクロスをギュソンが叩き込む。これでギュソンは2ゴール。左サイドからのクロスを軸に韓国は一気に追いついてみせる。

 ボール保持のところから呼吸をすることができずに韓国の攻勢を受け続けるガーナ。苦しい状況を打開したのはトーマス。中盤でターンを決めて前線にチャンスを供給する機会を得ると、左サイドのジョーダン・アイェウから外を回ったSBのメンサーがクロスを入れる。仕留めたのはファーに構えていたクドゥス。韓国の2点目のコピーとも言える形で3点目を奪い取る。

 ファン・ウィジョを投入し、前線の枚数を増やして総攻撃を仕掛けていく韓国。イニャキ・ウィリアムズのロングカウンターの反撃に遭いながらも攻め込み続ける。後半の頭の1枚しかターゲットがいなかった状況は一変。複数枚をエリアに入れ込む韓国に対して、ガーナのDFの対応はかなりギリギリだった。

 最後の最後まで得点のチャンスがあった韓国だが、ガーナのゴールをこじ開けるには一歩及ばず。後半の猛追も虚しく勝ち点を積むことができなかった。ガーナは後半は苦しい戦いだったが、攻撃的な韓国のサイドをひっくり返す形でワンチャンスをものにしてみせた。

試合結果
2022.11.28
FIFA World Cup QATAR 2022
Group H 第2節
韓国 2-3 ガーナ
エデュケーション・シティ・スタジアム
【得点者】
KOR:58′ 61′ ギュソン
GHA:24′ サリス, 34′ 68′ クドゥス
主審:アンソニー・テイラー

第3節 ウルグアイ戦

■割り切れば負けたって喜べる

 ウルグアイの突破要件として挙げられる最低条件は勝利。その上でポルトガルと戦う韓国よりも優れた得失点差でガーナを倒さなければいけない。自力でできることはあるけども、他会場も絡んでくるというややこしい状況である。

 高い位置からプレッシングに行く両チーム。とりわけおりていく前線の選手たちに守備陣がついていってプレッシャーをかけていく姿が印象的だった。勝利と多くの得点が欲しいウルグアイはもちろん、引き分けでも突破の目があるガーナもこのハイテンポな戦いに付き合うようになる。

 この試合の前半の特徴はこの互いのハイラインを破った先にはかなり高い確率でチャンスが待っているということである。皮切りとなったのはヌニェスの抜け出しだったが、コントロールに手間取っている間にこのチャンスを逃す。

 すると、左右にボールを動かしながら敵陣に迫ることに成功したガーナがミドルの跳ね返りにつめたクドゥスが倒されてPKを獲得。オフサイドも絡んだややこしい判定だったが、OFRの結果ガーナがPKのチャンスを得る。ポルトガル戦でも見られたOFR帰りの主審を邪魔するスアレスとPKスポット荒らしのせめぎ合いはもはやグループHのお馴染みの光景と言っていいだろう。

 ウルグアイの妨害工作に屈したか、アンドレ・アイェウはこのPKを止められてしまうことに。ガーナは先手を奪う最大のチャンスを逃してしまう。

 するとここからペースはウルグアイに傾く。右サイドに抜け出したヌニェスからファーに折り返すと、スアレスのシュート性のボールを最後はデ・アラスカエタが押し込んで先制。32カ国のうち、ここまで唯一ゴールがなかったウルグアイがついに得点を奪う。

 押し込まれてしまったガーナはやや散漫な時間を過ごしてしまう。ライン間に縦パスを通される場面が目立つなど、この時間帯はソリッドな守備を構築するのに苦しんでいた印象だ。

 そんなガーナを尻目にウルグアイは追加点をゲット。ライン間のペリストリに縦パスを通すと、思わず目を奪われるような華麗な繋ぎで追加点をゲット。再びデ・アラスカエタが豪快なボレーでネットを揺らして見せる。

 ガーナはクドゥスのライン間での収めからシュートを狙っていくが、こちらはゴールまで辿り着くことができず。さらに得点が欲しいウルグアイにあわや3点目が入りそうな前半終了間際という流れになった。

 後半、ボールを持ちながらチャンスを迎えたのはガーナ。左サイドに交代で入ったスレマナがアクセントになり、ウルグアイの陣内で攻勢を強めていく。ボール保持の意識も高めたのか、後半のガーナは低い位置にトーマスを下ろすことで前半よりもきっちりとゲームメイクし、ウルグアイの2トップを丁寧に超えるシーンが目立つようになった。

 このままいけば突破となるウルグアイは無理にプレスに出ていかず、自陣をきっちり固めていく。ガーナはそれでも危険なシュートを放つが、わずかに枠をとらえないシーンにウルグアイが救われることも多かった。

 ウルグアイはロングカウンターからバルベルデが存在感を示すなど自陣深い位置からでも得点を狙えるポテンシャルを見せつける。ただ、基本的には後半のプライオリティは自陣できっちりとゴールを固めること。バルベルデがアンカーのトーマスにマークに付けるために中盤をダイヤモンド型にするなどの工夫を施した時間もあった。

 突破の状況を維持しながら時計の針を進めるウルグアイ。そんな状況を変えたのは他会場の韓国勝ち越しの一報だ。これにより試合は一気に活性化する。ウルグアイ、ガーナ共にゴールが必要な状況は非常に前がかりな状況を生み出し、攻撃は常に保持側が数的優位な状況でカウンターを撃ち続けるという展開が続く。

 そうした中で運命を分けたのはPK判定。前半のガーナにPKを与えられた判定も含めて、この試合のPK絡みの判定はことごとくウルグアイに不利な側に流れるものになっていた。

 ただ、ウルグアイはそうした外的な要因以外に、カウンターがやや焦りすぎていたことも指摘しておきたいところ。7対4みたいなカウンター時の明らかに数的有利な状況をろくに活かすことができず、やや淡白なフィニッシュに終始したことも事実。主審に頼ることなく何かを決めるチャンスを作り出すことができなかったのは紛れもなく彼らの責任である。

 突破の可能性が絶たれたことを先に悟ったガーナが12年前の恨みからかウルグアイの敗退に歓喜するという異様な状況になったスタジアム。共に敗退となったはずのスタジアムに広がった奇妙な光景もまたW杯が紡いできた歴史ということなのだろう。

試合結果
2022.12.2
FIFA World Cup QATAR 2022
Group H 第3節
ガーナ 0-2 ウルグアイ
アル・ジャヌーブ・スタジアム
【得点者】
URU:26′ 32′ デ・アラスカエタ
主審:ダニエル・シーベルト

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