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「Catch up FIFA World Cup Qatar 2022 Asia qualifiers」~カタールW杯 アジア最終予選 グループB 第10節 日本×ベトナム~ 2022.3.29

■フレキシブルさと上下の揺さぶりなしでは・・・

 W杯出場を決めてメンバーを大幅に入れ替えた日本代表。吉田、山根を除いた9人を先発起用し、ホームで最下位のベトナムを迎え撃った。

 この試合における日本代表のチームとしての最も大きな変化は中盤の役割配分と言っていいだろう。守田、田中、遠藤の3人の組み合わせは入れ替わったとしても比較的シームレスに役割を入れ替えられるのが特徴。だが、この日の中盤は柴崎、原口、旗手の3人であり、均質的な役割を求めるのは難しい。おそらく、この日出た3人ができていない!というよりも、守田と田中が入ることによってできること!という認識なのかもしれない。個人的にはこれまでの日本代表の躍進を支えていたのは、中盤のフレキシブルさだと思っているので、それが取り除かれた時にどうなるのか?は個人的には見てみたかったところだった。

 というわけでこの日の3センターは前方と後方で分業制。旗手や原口には守田や田中に課せられていたビルドアップ参加は免除されて、前方に位置することを命じられた形となった。

 結果的には日本は中盤のフレキシブルさが取り除かれたことで一気に苦しくなった前半とだった。特に困った感があったのはIHの2人。原口と旗手の2人はワイドのCBの前で立ったまま硬直してしまい、WGのサポートがほとんどできなかった。

 原口がカットインで中に入りたがる久保との相性に苦しむのはよくわかるし、前半の終盤では折を見てサイドに流れたりなど、工夫を見せることができてはいた。

 左の旗手は個人的にはとても残念な出来だった。同サイドでコンビを組んだ三笘は個でも輝けるドリブラーではあるが、味方とのコンビネーションでさらにその輝きを増すタイプ。だが、この日は動きながら受ける動きが極端に少なく、ニアに抜ける動きで最終ラインを揺さぶったりなどの駆け引きが非常に少ない。そう言った要素はほとんどCFの上田に任せられていたように思う。ビルドアップのタスクが軽減されていた分、サイドでの崩しにはもっと貢献しないといけないし、クラブチームで共にプレーした経験のある三笘とのコンビならなおさらである。

 そのIHを含めて動きの少ない前線に対して、後方でゲームメイクを任された感のある柴崎は割と困っていた。日本はそもそもCBからゲームを組み立てる意識が薄いチームなので、シームレスな中盤が取り上げてしまうと、柴崎が頑張らないといけん!という構造になるのは当然の流れである。何本かは印象的な縦パスを通したが、ゲームメイカーとしてコンスタントな働きをするのは難しかった。そもそも柴崎にそういう役割が求められているのかは怪しいけど。ちなみにセカンドボール回収役としては思わぬ存在感を見せていた感じはある。

 前半をまとめると分業制で戸惑う中盤、孤立した三笘が無限ドリブルチャレンジに挑む左、久保と山根と原口が噛み合わせを見つけるまで時間がかかった右という感じ。そうしている間にセットプレーから大外のフリーに合わせられてベトナムにリードされてしまった!という感じであった。

 後半、右のワイドの役割が伊東純也に変わり、流れが日本ペースになる。4-2-3-1に変更したことで低い位置のタスクを原口と分担できた柴崎も少しやりやすそうになった。

 最終予選を通して見る限り、ベトナムのバックラインはこまめなラインの上下動に対応するのがすこぶる苦手。スピードに乗った状態で受ける伊東が右に入ったことでベトナムにラインの上下動を強いることができるようになったのも日本にとっては大きかった。裏を返せば、前半の日本のようにワイドの選手が止まって受けながら打開策を探る動きはベトナムにとっては守りやすい形だったということでもある。

 同点ゴールを決めたのは吉田麻也。高い位置でのインターセプトからエリア内に入っていく動き、こぼれ球への反応とパーフェクトな攻め上がりでFWみたいな顔をして得点を決めていた。

 この流れでとどめを刺したい日本。ポット2に入る可能性がわずかにでもあるならば勝ちたいし、6万人集まってくれ!と言ったからには勝ちたい。繰り返しになるが、ベトナムのブロックを壊すにはラインの上下動を強いる動きが欲しい。そのためには出たり入ったりの動きが有効である。すなわち、シームレスな動きができる中盤の出番である。低い位置でも高い位置でも仕事ができる守田と田中が、スコアラー役の南野とセットで入る。勝ちに行くのならば必然と言っていいだろう。

 守田や田中が入ったことで、どう動くか迷いがあった感のあった山根や中山が自由にスペースに走り出して行ったのは個人的には興味深かった。後方からボールを引き出しつつ、外に開いたりエリア内に入っていく動きを状況によって使い分けることができて、周りの動きもスムーズにするこの2人は現状の日本代表では別格ということだろう。

 ネットを揺らす機会は作るも、オフサイドやハンドに阻まれた日本は結局引き分けに終わる。ベトナムは時間稼ぎかと思いきや、本当に怪我していたGKの交代が結構衝撃的だった。ラスト数分でガンガンシュートが飛んできそう!という超絶難易度の状況で交代で入ったにも関わらず、普通の顔で飛び出してセービングをして見せたダン・バン・ラムが勝ち点ゲットの影の立役者である。

あとがき

■引き出しの中身を増やせるか

 最終予選お疲れ様でした。守田と田中のセット投入により、流れが変わった!というのはまんま最終予選の日本代表の一連だった。そうした柔軟性が取り上げられた時にどうするねん!という答えはベトナム戦では見つからなかった感じ。

 そもそも代表のBチームでコンセプトに沿ったスタイリッシュなサッカーをするチームが世界でどれだけあるねん!という感じもするが、このままでは本番に研究材料たっぷりで中盤3枚の消耗がエグい守田中システム一択で突っ込むことになるので、そうした状況を避けるための一手を残り数ヶ月で探すことになると言った感じだろうか。

試合結果
2022.3.29
カタールW杯アジア最終予選 第10節
日本 1-1 ベトナム
埼玉スタジアム2002
【得点者】
JAP:54′ 吉田麻也
VIE:19′ グエン・タイン・ビン
主審:イルギス・タンタシェフ

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