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「FIFA World Cup QATAR 2022 チーム別まとめ」~カナダ代表編~

目次

第1節 ベルギー戦

■序盤の猛攻を受けきり強かに勝利したベルギー

 4日目の最後はグループFからベルギーが登場。突破の本命である彼らだが、序盤のこの試合の主役はベルギーではなく対戦相手のカナダの方だった。

 比較的、初戦は慎重な入りをするチームが多い中、この試合のカナダの立ち上がりは異彩を放っていたと言ってもいいだろう。高い位置からのプレッシングから縦に鋭いカウンターなど、カナダは強度に全振りするかのようなスタート。その強度はベルギーを飲み込んでしまう勢いだった。

 特に強烈だったのはワイドの選手のスピード。左のデイビスはお馴染みだろうが、右サイドのラリアもなかなかのインパクト。システム的に右サイドはジョンストンがSBロールをする分、WBのラリアが高い位置で働くことができたのも重要なポイント。ベルギーはこちらのサイドのマッチアップがアザール、デ・ブライネという守備の規律を大事するタイプではなかったため、オーバーラップしたジョンストンに押し出されるようにラリアが抜け出す形でアタッキングサードに入り込むことができていた。スピードだけでなく構造的にも攻め込むことができていた。

 両WBの勢いを引き継ぐように、3トップもアタッキングサードで躍動。シュートを放ち、ベルギーのゴールマウスを脅かす。しかし、そこに立ちはだかったのはクルトワ。平時のシュートだけでなく、ハンドから得たPKまでストップ。強力な壁としてカナダの前に立ち塞がる。デイビスにとってはなんとしても決めたいチャンスを逃してしまう形であった。

 強度に飲み込まれたベルギー。守備においては対面の選手をシンプルに捕まえられない状況が続き苦しい展開ではあったが、クルトワに助けられてなんとか序盤の苦戦を凌ぐ。

 バックラインの3枚+中盤の3枚でのベルギーのビルドアップはカナダのプレス隊に対して、1,2枚多い状況が多かった。攻撃の主役になったのはデ・ブライネ。ベルギーの攻撃の起点のほとんどは彼のドリブルからスタート。攻撃が機能していなかったわけではないが、ここまでのチームの中でもかなり個人への依存が高い状況だったのはやや気になるところである。

 それでも先制点をゲットしたのはベルギー。アルデルワイレルドのフィードから抜け出したバチュアイがゴールに押し込む。後方で数的優位を作れていたベルギーとしてはフリーの選手を作れることと、カナダの高いラインをうまく利用した格好。ホルダーをフリーにするハイラインは危ないという定石を活用してしたたかに先手を奪う。カナダはCBのヴィトーリアの対応が少し気になった場面だった。

 リードを奪われたカナダは後半強気の立ち上がり。マンマークの成分を高めながらベルギーに高い位置からプレッシャーをかけていく。前半ほど余裕がなくなったベルギーではあったが、その分スペースができた中盤でフラフラするデ・ブライネのボールを受けるスキルの高さはさすが。一度ボールがつながりさえすれば、敵陣深くまで間違いなく運んでくれるという信頼度の高さもリードしているチームにとっては大きなポイントになる。

 ベルギーは非保持においてはアザールを明確にワイドにおく5-4-1に変化。噛み合わせを重視し、前半にやられていたサイドのケアを手厚くする。カナダは前半振り切ることができていた1対1でのスピード勝負で徐々に優位に立てないように。この辺りは前半の立ち上がりでエネルギーを使った影響も否めない部分だろう。

 加えて、愚直に裏を狙いすぎたのもカナダにとってはあまりいいことではなかった。直線的に急ぎすぎてラインの裏を執拗に狙うチームは、この大会では苦しむ傾向が強い。カナダのこのパターンにハマってしまった格好。2枚選手を交代し、4-1-4-1にしてからはややコンビネーションから一息おきながら攻め込むシーンも増えたが、ベルギーのゴールを再び脅かすには少し時間が足りなかった。

 序盤の劣勢を凌ぎきり、先制点を掠め取って強かに試合を運んだベルギーがカナダのフレッシュさをいなして開幕戦に勝利。大舞台での存在を高めてきた経験の賜物なのだろうか。

試合結果
2022.11.23
FIFA World Cup QATAR 2022
Group F 第1節
ベルギー 1-0 カナダ
アフメド・ビン・アリー・スタジアム
【得点者】
BEL:44′ バチュアイ
主審:ジャニー・シカズウェ

第2節 クロアチア戦

■先制点の懸念と数年の停滞を吹き飛ばす圧巻の攻撃陣

 敗れてしまえばカタールに続き2チーム目のグループステージ敗退になったしまうカナダ。絶対に負けられない一戦となる。初戦がドローで、3戦目にベルギーとの試合を控えるクロアチアにとっても状況としては似たようなもの。互いに勝ち点3を奪い合うサバイバルマッチだ。

 先にネタバレをしてしまうと、この試合はクロアチアが圧勝する。のだけど、手放しで「クロアチアすごいな!めっちゃ強いな!」と賞賛することができないのは開始早々に決まったカナダの先制点のせいである。起点となったカナダのGKからのフィードはそこまで狙い澄ましたものではないのだけど、クロアチアのバックラインが自動的にロングボールに対して下がった対応をしたせいで簡単にカナダの前線はスペースを得ることができていた。

 ボールが収まったカナダはサイドに展開し、ファーのクロスを入れてあっさりと先制。前節は勢いを持った入ったものの手にすることができなかった先制点を早い時間帯に得ることに成功する。

 クロアチアのバックラインの淡白な対応はこのシーンに限らない。バックラインはカナダの前線にアプローチするよりもリトリートを優先。そのせいでクロアチアはMF-DFラインが間延びしており、かなり簡単にカナダにチャンスを与えていた。グバルディオル、ロブレンの対応ははっきり言って不可解であり、この部分だけでも決勝トーナメントでは致命傷になるレベルと言えるだろう。試合が進むにつれて落ち着いた部分ではあったが、彼らの能力が低いわけではないので、なんでもそもそもそうなった?の部分がよくわからない怖さはある。

 しかしながら、この日のクロアチアは守備面での懸念をあっさりと打ち消すレベルのボール保持を見せる。カナダは2トップが中盤の受け渡しをしながらCHと連携し、相手を捕まえにいくがこの部分で劣勢に陥ってしまったのがクロアチア優勢の原因だろう。

 モドリッチ、コバチッチ、ブロゾビッチの3人のCHはクロアチアの中でかなり自由に動き回る裁量を与えられている。どの選手も低い位置でプレーができる選手であり、ビルドアップにおいては比較的均質的。それぞれがポジションを入れ替えても無理なくプレーをすることができる。

 そうした均質性ゆえにクロアチアのCHはポジションの入れ替えに寛容である。彼らの実績もそうした自由度の高いプレーの許容に寄与しているのは間違いない。この動きに対してカナダの中盤はついていくことができなかった。受け渡すのか、ついていくのか?の判断の連続に完全に後手に回ってしまい、クロアチアは中盤がフリーでボールを受けることができていた。

 中盤がフリーで持つことができたことで自在に前線に展開ができたクロアチア。左サイドに張るペリシッチもかなり高いパフォーマンスを見せたと言えるが、なんと言ってもこの日輝いていたのはクラマリッチ。右に張るというよりはストライカータスクで圧倒的に輝きを放っていた。

 クラマリッチはボールを収めると卓越したボールコントロールでカナダの守備陣を無力化。難しいボディコントロールから際どいコースのフィニッシュまでなんでも来い!というイケイケのものだった。動き直しを繰り返しでフリーになり続けるモドリッチを相棒に、カナダ陣内で大暴れを続けてみせた。

 アタッキングサードでの攻撃の流麗さだけで言えば、この日のクロアチアは大会最高クラスだったと言える。後半もこのペースは変わらず、クロアチアは流れるような攻撃で得点を重ね続けている。

 カナダの守備は(前半のクロアチアほどではないにせよ)確かにコンパクトさに欠けていたとはいえ、ここまでやられるのは完全に想定外。この日のクロアチアに当たってしまったのは不運で片付けてもいいレベルなように思う。後半は3バックにシフトしたことでやや押し返すことができていたが、それでもクロアチアペースをひっくり返すことができなかった。

 守備への若干の不安を見せつつ圧倒的な攻撃力でカナダをペシャンコにしたクロアチア。不安定さを伴う爆発力がトーナメントでどう転ぶかは読みにくいが、EUROやW杯第1節で感じた消化不良感を払拭する躍動したフットボールを彼らが見せたことだけは確かである。

試合結果
2022.11.27
FIFA World Cup QATAR 2022
Group F 第2節
クロアチア 4-1 カナダ
アル・バイト・スタジアム
【得点者】
CRO:36′ 70′ クラマリッチ, 44′ リヴァヤ, 90+4′ マイェル
CAN:2′ デイビス
主審:アンドレス・マトンテ

第3節 モロッコ戦

■序盤の勢いと手札の豊富さを見せたモロッコ

 2位と3位は直接対決の潰し合い、目の前の対戦相手はすでに敗退が決まっているカナダ。明らかにグループFのポールポジションに立っているモロッコは非常に立ち回りが難しい立場である。グループ首位という立場に慣れている国ではないという経験値的な側面でも尚更舵取りがデリケートである。

 突破を十中八九手にしたモロッコが選んだプランは非常にアグレッシブなものだった。カナダの4バックに対して、立ち上がりから思いっきりプレスをかけていく。いきなりエネルギーを燃やすプレスを仕掛けてくるチームが少ない大会だけにカナダは面食らったのだろう。バックラインにCBが少ない4バックを採用したこともあり、モロッコのプレッシングはかなりカナダに刺さる。

 そして、生み出されたのは先制点だ。カナダの連携ミスからあっさりと先制したモロッコ。時間がないバックパスを受けたGKのボージャンが貧乏くじをひき、パスミスしたところをツィエクが無人のゴールに押し込んでみせた。

 先制後もモロッコはプレスの手を緩めない。カナダはプレスに対してたじたじな状況が続きミスを連発。右サイドに追い込まれて苦しいパスの選択から相手にボールを渡してしまったり、中央のパスを刺すことを誘発させられ、モロッコのカウンターの餌食になるなどカナダにとってはどうしようもない時間帯が続く。

 モロッコがカウンターに転じた際にもカナダは間合いの合わないタックルを連発。ボール保持における混乱は最終的にボールを奪われた後にも伝播してしまったようなカナダのパフォーマンスだった。

 カナダは中盤を最終ラインに落とすことで徐々に保持の落ち着きを取り戻していく。モロッコもリードを奪ったことにより、プレッシングのテンポは徐々に落としていく。

 そうなればカナダにも十分に攻め手はある。サイドでのスピード感は手応え十分でモロッコの最終ラインの裏をとり、ゴールに迫っていくこともしばしばだった。プレッシングも敵陣深くから前線が追いかけ回す積極策を披露。今大会の初勝利のために、カナダはアグレッシブなスタンスでモロッコに対峙する。

 そうしたカナダの姿勢をモロッコは利用。高い位置からのプレッシングをひっくり返すように長いボールから抜け出して追加点をゲット。エン=ネシリのゴールでリードはさらに広がることになった。

 プレッシングでカナダのポゼッションの心を折り、ロングカウンターでカナダのプレッシングの心を折る。前半のモロッコは面白いようにプランがハマり、完全に主導権を握る。カナダが左サイドから幸運なオウンゴールで追い上げるが、全体的にモロッコが試合を支配していることに疑いの余地はないだろう。

 後半、カナダは攻めに打って出る。敵陣深い位置まで攻め込むことに加えて、インサイドへのパスのチャレンジを積極的に行っていく。大外のスピード以外の武器も積極的に使っていこう!というのがカナダのプランである。

 しかしながら、モロッコは落ち着きながら対応。引き締まった撤退守備でカナダの攻勢を許さない。インサイドへのパスはカウンターの起点するような前半の流れは見られなかったが、本当に通されたら嫌なところには通させないというスタンスだった。

 そんなモロッコにとって面倒だったのはセットプレー。CKからカナダは決定機を生み出し、モロッコはあわや追いつかれてしまいそうな場面が出てくるように。3枚替えでさらに勢いに乗るカナダ。一方的に攻め続けて同点とするチャンスも十分にあった展開と言えるだろう。

 だが、モロッコはカナダに同点ゴールを許すことはなかった。高い位置からのプレス、ロングカウンター、そして後半の撤退守備。90分であらゆる戦い方とプランへのコミットを見せつけたモロッコが順当な勝利でグループFの首位通過を決めてみせた。

試合結果
2022.12.1
FIFA World Cup QATAR 2022
Group F 第3節
カナダ 1-2 モロッコ
アル・トゥマーマ・スタジアム
【得点者】
CAN:40′ アゲルド(OG)
MOR:4′ ツィエク, 23′ エン=ネシリ
主審:ラファエル・クラウス

総括

■機動力一辺倒となった試合運びは反省点

 日本との親善試合で好パフォーマンスを披露し、やったろうじゃん!感をアピールしていたカナダ。初戦、序盤のハイプレスからの速攻の繰り返しでベルギー相手にPKを奪い取ることができた時は勢いは本物のように思えた。

 しかし、無慈悲なクルトワにPKを止められてしまうとここから流れが一変。殴り返せばいいんじゃね?と気づいたベルギーが前線のタレントを存分に生かして乱戦に持ち込まれてしまうと、破壊力で屈してしまう。

 続く2試合目に当たったクロアチアは近年最高の出来という不運。モドリッチ、コバチッチ、ブロゾビッチに大暴れされるというのは想定できても、クラマリッチに前線の起点とフィニッシャーとして無双されるとなるともう手の打ちようがない。カナダ側の緩さはあったが、次のベルギー戦でのクロアチアを見ると、この日の彼らの出来はやや別格感があった。

 敗退が決まったモロッコ戦では高い位置からのプレッシングにたじたじに。ベルギー戦の意趣返しといった形で猛烈なハイプレスを受けて、バックラインのパスミスを犯して失点。そのまま一気に畳み掛けられてしまい、手も足もでなかった。

 機動力やゴールに迫っていく部分は申し分なかったが、試合を落ち着いて運ぶといったところはやや物足りなかった印象。焦りながら攻め急いでしまうせいで試合運びが一本調子になってしまった。攻め手が機動力一辺倒になっていたのは反省点である。

 落ち着いたゲームメイクからの攻め手や、プレスに傾倒しすぎない守り方などチームとしての成熟度はここから高めていきたいところ。申し分のないタレント力で自国開催の4年後こそ、力を世界に知らしめるワールドカップにしたい。

Pick up player:アルフォンソ・デイビス
 押しも押されぬカナダの中心選手だが、クルトワにPKを止められてしまいチームの勢いを削いでしまう悔しい大会に。よりチームを強く引っ張れる存在となり、この舞台に帰ってきたい。

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