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「Catch up Premier League」~Match week 21~ 2023.1.21-1.23

目次

リバプール【9位】×チェルシー【10位】

CL出場権はさらにおぼろげになる

 ともに勝ち点は28。優勝争いどころかCL出場権にも黄色信号が点っている両チーム。負けてしまえば光はさらに儚いものになってしまう。なんとしても上を追撃する足がかりにしたい一戦と言えるだろう。

 試合開始早々にネットを揺らしたのはチェルシー。セットプレーに反応した選手はことごとくチェルシー側という悪夢のようなセットプレーを披露したリバプール。この場面はオフサイドで許されたが、ブレントフォード戦の悪夢が蘇るような危ういセットプレーの守備で幕開けとなる。セットプレーに関してはこの場面以外にもリバプールの守備陣は何度もチェルシーの選手にフリーでのタッチを許しており、いつ失点のトリガーになってもおかしくない出来だったと言えるだろう。

 ボール保持の局面はどちらもぐぬぬという感じだった。チェルシーのシステムは保持と非保持で大きく役割が変わる形であり、上記のフォーメーションがしっくりこない人がいても不思議ではないという感じ。ボール保持では左のSBのククレジャを高い位置まで上げて3バック化し、ジョルジーニョとホールが中盤で並ぶ。大外はククレジャとツィエクが担当し、ハーフレーンにマウントとギャラガーが入る形となっていた。

 このチェルシーの可変に対して、リバプールは前節のブライトン戦と似た傾向を見せる。右のWGであるサラーがインサイドに絞って守備をするが、そのサイドの大外の選手(=ククレジャ)のケアが甘く、ここに誰が出ていくかが不明瞭。しかし、チェルシーはブライトンとは異なり、このサイドまでクリーンにボールを届けることができない。あるいは届けようとせず、フリーのククレジャを使おうという気がハナからなかった。

 他に前進の手段があれば別にいいのだが、裏を狙うタイミングが少し早く、縦に速いボールはやや淡白さが否めない感じ。ブロックの外から精度の高いボールを蹴っていたツィエクのフィーリングは悪くなかったが、基本的には受け手が一杯一杯になっている場面が多かった。

 対するリバプールの保持も苦しいところがあった。チェルシーの非保持はマウントが前線、ホールが左ワイド、中盤にジョルジーニョとギャラガーが並ぶ4-4-2であるが、前の6人の守備の間延びが非常に大きく、簡単にライン間のスペースを空けていた。

 特にギャラガーの行動範囲の広さは気になる部分で、追いかけ回す割にはボールを奪いきれずにリバプールに空いたスペースを使った侵入を繰り返される羽目に。同サイドに圧縮しようとする意識が強かったチェルシーの中盤より前の守り方だが、リバプールはすり抜けながら逆サイドまで簡単にボールを運ぶことが多かった。

 ただ、リバプールの課題はこの同サイドにおける崩しのバリエーションである。右のアレクサンダー=アーノルドがいないという事情は割り引かなくてはいけないが、外からクロスを狙う形はやや精度を欠く。サイドから押し下げてジョルジーニョを中央から引っ張り出すなど、バイタルが空いた場面こそあるが、中央へのパスが繋がらないため台無しになってしまう場面もしばしばである。

 相手の守備の陣形の欠陥はあるが、そこを使おうとした時にため息が出るような簡素なミスが出てしまうというのはリバプールだけでなくチェルシーの保持に共通する難点。好調ではない分、目を瞑らなくてはいけないのだろうが、どちらも相手の守備ブロックのソリッドさを考えればもっとチャンスは多くてもいいはず。セットプレーではチェルシーの方が明確に有利だったが、流れの中ではどちらも残念さが先立つボール保持だった。

 後半、リバプールは腹を決めたプレスで着火。チェルシーのビルドアップ隊はこれをかわし切ることができず、リバプールにハーフコートゲームを許してしまう。押し込みながら勝負に出るが、バックラインが体を張るチェルシー。低調な試合の中でもリズムを崩さないチアゴ・シウバは流石である。

 55分が過ぎるとリバプールのプレスは徐々に弱まっていき、チェルシーが前進できるように。この時間に出てきたのがムドリクである。デビュー戦としてはサポーターに期待を持たせられるものだったのではないか。オープンスペースでのスピードで相手をおいていけていたし、エリア内での細かいボールタッチも苦にしていなかった。右サイドのツィエクからのクロスをファーで待ち構える形での2回のチャンスのどちらかを決めていればサポーターの心を掴んでいただろう。

 ただし、ボールを持っていない時の顔を出すタイミング、消えるタイミングはどちらも難あり。連携には時間を要すかもしれない。また、守備は献身的ではあるが、ボールを狩りにいくプレーはシャフタールのCLではあまり見かけなかったので、チームがプレスからリズムを握ろうとする際には少し悪い意味で気になるかなというところ。もっとも、若い選手なのでこの辺りの向上はこれから見込める部分ではある。

 リバプールで存在感を放っていたのはヌニェス。ロングカウンター、サイドにボールがある時の抜け出しのセンスは相変わらず抜群。シュートは確かにこの日も苦しい形だったが、いない状態ではシュートに持っていくのすら難儀だったので、リバプールからすれば明らかに必要な存在と言えるだろう。

 交代選手の活躍で終盤に期待がかかる展開だったが、80分付近の互いに3人ずつ交代したあたりからは再び試合はトーンダウン。ともに勝ち点3を狙うチームとしてはやや寂しい迫力に欠けた終盤に。どちらも浮上のきっかけとなる勝ち点3は掴めなかった両チーム。CL出場権はまた少し朧げな存在になってしまった。

ひとこと

 余裕を持った形での決定的なチャンスというのは流れの中ではあまりなく、引き分けは妥当。パスを繋ぎながらゴールまで水を運ぶ途中でこぼしてしまう!という感じのシーンの連続でどちらのチームも調子の悪さが浮き彫りになったと言えるだろう。

試合結果

2023.1.21
プレミアリーグ 第21節
リバプール 0-0 チェルシー
アンフィールド
主審:マイケル・オリバー

レスター【15位】×ブライトン【7位】

ソリッドな守備に十分な対抗策を示したブライトン

 降格圏が見えてくる順位に立っているレスター。主力選手をキープしてでも戦力を維持しているという方針を踏まえても、絶対に落ちるわけにはいかないだろう。今節の相手は好調のブライトンだが、なんとか勝ち点をもぎ取りたいところだ。

 レスターはデューズバリー=ホールがスタメンに復帰。彼が前に出ていく4-4-2のプレッシングでレスターは4-1-4-1から変形したいつものプレスを行う。ブライトンの保持に対してレスターのブロックは色気をほとんど見せず、きっちりと撤退を優先。なるべく中央のスペースを空けない形でブライトンの縦パスを入れさせないようにコンパクトな守備を敷く。

 ブライトンは外を回る形からチャンスメイクを行う。右のワイドのマーチのところにCH、ララーナ、グロスが関与し、クリーンに彼にボールを渡す形を作り、エリア内にクロスを放り込んでいく。だが、ブライトンは高さがあるわけではなく、クリティカルなクロスも合わなかったため、マーチのサイドからの突破では先制点には至らなかった。

 対するレスターの保持はカウンターが中心。ただ、ショートパス中心の組み立てにおいても、低い位置でボールに関与できるデューズバリー=ホールが復帰したことで、普段ほどのノッキングは感じさせないものだった。

 レスターのカウンターの成否を分けるのはエリア内に人を残しながら抜け出すことができるかどうか。レスターは動き回るブライトンのSBの背後から裏に抜ける場面が多かったのだが、ヴァーディがサイドに流れて抜ける役をやってしまうとエリア内に人が残らない状況になってしまう。カスターニュへのロングボールからプラートが抜け出した形のように、ヴァーディがゴール前に待っていれる状況を作れれば、チャンスになる。きっちり固めてロングカウンターを徹底することでいつもよりはソリッドなゲームを展開していたレスターだった。

 時間の経過とともにブライトンは幅を使った攻撃を展開。低い位置のカイセドやマック=アリスターから左右にボールを振り、三笘とマーチの両翼からレスターを攻め立てる。徐々にレスターは望まない形でラインを下げる機会が増えていってしまう。

 すると仕事をしたのは三笘。右サイドからのサイドチェンジをエストゥピニャンのサポートを借りながら左の大外で受ける。カットインでコースを作った三笘はゴールの右隅に素晴らしいスーパーシュート。繋いで大外に持っていく過程や続々と三笘にドリブルのコースを空けるように動き直すブライトンの選手には三笘への信頼がきっちりと見えた。

 対するレスターもサポートを受けたWGが結果を出して追いつく。ワイドから1on1をぶち抜いたバーンズから逆サイドのオルブライトンが詰めてゴールをゲット。最近はバーンズがこんなにクリーンな1on1をする機会がなかったことを踏まえるとデューズバリー=ホールの貢献度の高さは流石である。

 タイスコアで迎えた後半はより構図がくっきりしたものに。レスターはローラインを徹底してカウンターに専念。ブライトンがボールを持って徹底的に攻め続ける展開になった。

 ブライトンの攻めの中心になっていたのは三笘。動き直しの巧みさと斜めのコースの取り方でギャップを作り、左サイドから違いを演出する。抜ききってのマーチへのラストパスは実質アシストと言ってもいいだろう。ブライトンの伝統芸能が炸裂したふかしたマーチのシュートにブライトンのファンをがっかりさせたことだろう。

 レスターは専念しているロングカウンターがなかなか刺さらずに苦戦。だが、なんとか勝ち取ったコーナーで勝ち越しゴールをゲット。ファーに待ち構えていたバーンズがヘディングで決めて貴重なリードを奪う。ワンチャンスを活かしたレスターがこの試合で初めて前に出る。

 これでレスターは守備に専念。ガッチリと守備を固めて逃げ切り体制に入る。その目論見を破壊したのはファーガソン。年明けあたりから彗星の如く現れたストライカーがブライトンの救世主に。大外からのクロスを頭でなんとか合わせて厳しいコースに押し込むことに成功する。

 ソリッドな守備を見せてブライトンを追い詰めたレスター。コンパクトなブロックに対して最後まで抵抗してみせたブライトン。色は違えどどちらも見所がある試合だったと言えるだろう。

ひとこと

 デューズバリー=ホールの復帰は非常に大きい。レスターの残留争い脱出のキーマンになる可能性はある。あと三笘はやばい。

試合結果

2023.1.21
プレミアリーグ 第21節
レスター 2-2 ブライトン
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:38′ オルブライトン, 63′ バーンズ
BHA:27′ 三笘薫, 88′ ファーガソン
主審:トーマス・ブラモール

サウサンプトン【20位】×アストンビラ【11位】

取り消しのダメージは甚大

 前節、エバートンとのシックスポインターを制したサウサンプトン。依然として順位は最下位だが、14位までの勝ち点は詰まっておりあと1つの勝利で降格圏を脱出できる可能性は十分にある。今節は欧州カップも降格圏も無縁の無風地帯で過ごしているアストンビラとの一戦である。

 序盤は比較的テンポが速い試合だった。このテンポを牽引していたのはサウサンプトン。4-2-3-1から4-4-2にシフトし、ビラのバックラインにプレスをかけていくと、中盤もこれに連動するように前がかりに圧力をかけて行く。

 サウサンプトンのここ数試合で見られた5-3-2にはどこか後方が連動しきらず、いたずらにラインが高くなっている状況が続いてしまった感があったが、この試合では中盤の連動した押し上げが効いていた。よって、時間を奪われたビラのバックラインは蹴りながらエスケープするシーンが目立った。

 サウサンプトンは保持においても比較的縦に速く動くアクションが多く、保持においてもスピード感は失われなかった。前線だけでなく、SBのウォーカー=ピータースも積極的に抜け出す動きを見せており攻撃のアクセントに。ちなみにだが、ビラの方もモレノのオーバーラップからのラインブレイクは攻撃参加の有効打になっていた。

 試合は10分もするとだいぶ落ち着くように。それでも両チームの攻略の手段はラインブレイク。裏抜けからゴールに一気に迫る部分で両チームは勝負を仕掛けていく。

 この部分で優位に立ったのはアストンビラ。裏抜けという出口は両チームとも変わらないのだが、違いがあるのはその手前の段階である。裏抜けの選手にパスを出す選手がどれだけ余裕を持ってプレーできるかである。

 この試合のサウサンプトンのプレスは確かに中盤までは連動していた。だが、DFラインの押し上げは不十分であり、ライン間が空いてしまうこともしばしば。断っておくが、単に押し上げないDFラインが悪いと断罪しているわけではない。中盤や前線が追い回し過ぎてしまっている可能性もあり、そこはチームの約束事に帰属する部分。どこでエラーが出ているのかはチームの内部でなければわからない。

 ただ、ライン間が空いてしまっているのは事実ではある。ラムジー、ブエンディアとビラのSHは比較的インサイドでのプレーを好む面々であり、彼らがライン間に侵入する役割を担っていた。カマラが相棒に定着してからよりフリーダムな攻め上がりが目立っているルイスも高い位置に顔を出すことが増えるように。

 ライン間に侵入する選手を作ることで前半の途中からビラのワンサイドの展開になっていく。危険な位置でのセットプレーのチャンスもちらほら見られ、サウサンプトンは防戦一方。ドローンが侵入したせいで試合が一時中断してもこの流れは継続し、ビラは攻め続けた。

 ドローンで変わらなかった流れはハーフタイムを挟んでも変わらない。ワトキンスに向けて裏に蹴るビラに対して、処理を誤ってピンチを迎えるサウサンプトンという後半頭のプレーは構図が変わらないこと見ている側に突きつけているかのようだった。

 しかしながら、サウサンプトンも徐々に反撃。きっかけになったのは右サイド。孤軍奮闘を続けるエドジーに加えて、ウォーカー=ピータースのオーバーラップにより、右の大外から起点ができるように。前節もゴールに結びついているウォーカー=ピータースの攻撃参加とウォード=プラウズの抜け出しを軸にサウサンプトンが60分を目安に巻き返す。

 そのウォーカー=ピータースの攻撃参加からネットを揺らすことに成功したサウサンプトン。右サイドの侵入から深さを作り、空いたバイタルからウォード=プラウズがミドルを放ってネットを揺らす。しかし、これは直前のプレーでエルユヌシがファウルを犯しており、得点は取り消されることに。

 この取り消し以降は再びペースを握ったアストンビラ。ルーズになっているライン間から起点を作る形を再開すると、セットプレーからワトキンスがゴール。オフサイドが怪しいシーンではあったが、こちらはゴール認定。ピンチの後に迎えたチャンスをきっちりとものにする。

 以降はキャッシュを入れて5バックに移行するビラが守備固め。攻めあぐねたサウサンプトンにとっては、後半追加タイムに迎えたジェネポのシュートが貴重な同点のチャンスだったが、これもマルティネスに防がれて終戦。サウサンプトンは前節の勢いを活かしての連勝を成し遂げることはできなかった。

ひとこと

 サウサンプトンからすればゴール取り消しは一言物申したくなるだろう。ビラの押し込みに耐えながらの展開の中での得点だったこと、それ以降の主導権の失い方を見るとガックリとしてしまう影響の大きい判定だったように思える。

試合結果

2023.1.21
プレミアリーグ 第21節
サウサンプトン 0-1 アストンビラ
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
AVL:77′ ワトキンス
主審:マイケル・サリスベリー

ウェストハム【18位】×エバートン【19位】

ランパードに引導を渡すボーウェン

 第21節に設定されたこのカードが降格圏内での対戦になると想像した人はあまり多くないだろう。抱えている戦力やクラブの規模を考えれば、降格は悪い意味でのサプライズになってしまう両チームの対戦である。

 フォーメーションはどちらのチームも3-4-2-1を採用。ミラー型のフォーメーションの組み合わせであり、前からのプレッシングを積極的に行いやすい形ではあるが、どちらのチームもプレッシングは控えながら様子を見る。プレスの開始位置はミドルゾーンでバックラインにはボールを持たせていく格好だ。

 ボール保持において比較的前進のルートを見出すことが出来ていたのはアウェイのエバートンの方。彼らの攻撃は結局イウォビとグレイが前にスペースがある状態でフリーでボールを持てればOKという方針である。そのためにはサイドから前進し、相手の陣形を片側サイドに寄せる必要がある。サイドに相手を寄せて、逆サイドの空いたスペースにイウォビかグレイに立ってもらいここまでサイドチェンジでボールを運ぶ。これがエバートンのプランである。

 一方のウェストハムはそうしたボール保持での方針はなかなか見えてこない。サイドから縦に進んでアタッカー勝負!と行きたいところだが、ポジション移動を多くするわけでもないので、なかなかフリーの選手を作ることができない。

 しかし、ウェストハムにはミドルゾーンからボール奪取という反撃の手段が残っている。自陣からの前進は難しくとも、敵陣での相手のミスに漬け込むカウンターから前進の機会を得るようになる。押し込み返しの手段を手にしたウェストハムはセットプレーの流れから先制点をゲット。一度は跳ね返されたボールを再び放り込み、抜け出したボーウェンが押し込むことに成功した。

 そして、2点目はボール奪取から。中盤でイウォビがロストすると、右サイドをアントニオがターコウスキをぶち破って爆走。クロスを再びボーウェンが仕留めて追加点を奪う。

 2点のリードを得たウェストハムはここから安全運転をスタート。無理にプレスにはいかずにブロックを組んでエバートンを待ち受ける。これまでのウェストハムであれば、こうなれば必勝パターンであるのだが、今季のウェストハムのブロック守備は残念ながらそこまで信用は出来ない。

パケタの背後、斜めのボールへの対応など、明確な弱点や後手に回る対応をリトリートでも補いきれず。エバートンの保持に対してはそれなりにピンチを迎えていた。それでもロングカウンターという反撃の手段を持っていたことはよかったことかもしれないが。

 この日のエバートンは縦に推進力はなかったので、ブロック守備の攻略に打開のポイントを絞る展開になった。3-5-2のWBをイウォビとマクニールという非常に尖った人選でウェストハムのゴールに襲い掛かっていく。

 初めは順調に圧をかけていたエバートン。しかし、60分を過ぎるとエバートンの攻撃は急激にトーンダウン。押し込むことは出来ているが、そこから先の攻め手がなくなってしまう。むしろ、得点の匂いはひっかけた後のウェストハムのロングカウンターの方が強いくらいであった。

 保持のプランはミスで崩壊。攻撃的なシステムにしても届かずにシックスポインターに敗れたエバートン。ランパードにとってはエバートンを指揮する最後の試合になってしまった。

ひとこと

 ビエルサ、マジかよ。やめとけよ。

試合結果

2023.1.21
プレミアリーグ 第21節
ウェストハム 2−0 エバートン
ロンドン・スタジアム
【得点者】
WHU:34‘ 41’ ボーウェン
主審:スチュアート・アットウェル

ボーンマス【17位】×ノッティンガム・フォレスト【13位】

結果以外は全てが対照的

 昇格組同士の両チームだが、ここまでの軌跡は非常に対照的。監督交代をきっかけに伸ばした無敗記録で得た貯金を使い果たしそうになっているボーンマスと、長い降格圏内での時間に終止符を打ち、久しぶりに安全圏を謳歌しているフォレスト。補強の多さ、監督の去就、そして今現在の勢いまでもあらゆる部分が対照的である。

 立ち上がりからいつもの通りの前進の手段を実践していたのはフォレストの方。ライン間のギブス=ホワイトを軸にオーバーラップを促すSBから押し下げて敵陣に侵入。ライン間で待ち受けるギブス=ホワイトがボールを受けることができれば、かなりの確率でチャンスになるのが今のフォレストである。

 押し下げからファウルを獲得し、セットプレーからネットを揺らしたフォレスト。だがこれはオフサイド判定で認められず。好調の立ち上がりを生かすことができない。

 一方のボーンマスはゼムラのサイドをあげる3バック型の攻撃を志向。しかしながら、保持はそこまでつなぐ意識はなく、とっとと前線のCFにロングボールを当ててしまうというプラン。ロングボールからのセカンドボールの競り合いをフォレストに拾われてしまい、カウンターを打たれるなど前進の確実性はイマイチである。

 ただし、ロングボールに対する2列目のアクションは悪くなかった。特に、右のSHの新加入のワッタラは面白い。ムーアへのロングボールを素早く拾うと逆サイドにスムーズに展開。アンソニーとゼムラのタンデムが活用されている平襟に展開。そこから再びエリア内に迫る形でフォレストのバックラインを脅かしていく。

 ボーンマスの先制点のきっかけもムーアのロングボールをきっかけにしたワッタラから。この形で右サイドを抜けると、最後に待っていたアンソニーがこれを仕留めて同点とする。いつもに比べれば両サイドできっちり前進の武器ができる分、ボーンマスは充実した攻撃が出来ていたといっていいだろう。

 一方のフォレストはイエーツの負傷で選手交代を使うことに。代わりに入ったダニーロが中盤の深い位置でロングボールに対して劣勢になるなどイマイチ波に乗れないのも痛かった。ダニーロ以外で突っこみたいのはウッド。ジョンソン、ギブス=ホワイトと機動力のある面々の前線にうまく絡んでいけず、こちらも新加入ながらブレーキになってしまった。ワッタラとは対照的なフォレストの新戦力の出来になってしまった。

 ビハインドのまま後半を迎えたフォレストはショートパスで相手を引き出すところからトライを再開する。だが、ボーンマスのトランジッションは良好。フォレストの保持を跳ね返し、ポゼッションでいなしながら時間を稼いでいく。

 ギブス=ホワイト、ジョンソンの負荷が高い状況が続いていたフォレストは前線にサリッジを投入。すると、このサリッジが躍動。右サイドを抜け出したジョンソンに合わせてゴールを奪う。

 終盤に追いつかれる悔しいドローになったボーンマス。こちらはフォレストとは逆に交代選手に効果的な働きができる選手がおらず、ジリ貧だったのが痛かった。

ひとこと

 新戦力の活躍の有無や交代選手の運用など直接対決でも対照的な両チーム。同じなのは試合終了後のスコアだけだった。

試合結果

2023.1.21
プレミアリーグ 第21節
ボーンマス 1-1 ノッティンガム・フォレスト
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
BOU:28‘ アンソニー
NFO:83’ サリッジ
主審:アンディ・マドレー

クリスタル・パレス【12位】×ニューカッスル【4位】

本拠地でまたも勝ち点キープに成功

 チェルシー、トッテナム、マンチェスター・ユナイテッドと年始から強いチーム相手との試合が続くクリスタル・パレス。今節の相手はニューカッスル。まさしく息を着く暇もないくらい厳しい相手が続いている。

 試合は予想通り、ニューカッスルがボールを握る展開に。クリスタル・パレスは4-2-3-1で中盤を噛み合わせつつ、ニューカッスルのバックラインにはボールを持たれることを許容する。サイドにもきっちり人がついていく形で対応する。

 このクリスタル・パレスの守り方に対して、ニューカッスルはきっちりと攻略法を提示することができていた。まずWGが大外の低い位置まで降りる。この動きにパレスのSBがついていく。するとこの動きに連動するようにIHが同サイドのハーフスペースを抜けていく。

 いわゆるハーフスペースの裏抜けという動きである。このニューカッスルの動きにパレスのバックラインはついていけず。SBとCBの間をひたすらMFが駆け抜け続けるという形でニューカッスルが押し込みながらエリア内に迫っていく。

 パレスは時間が経過するとハーフスペースを埋めるようにCHが裏に抜けていく選手についていく。すると今度はニューカッスルのWGの出番。CHが開けたスペースに大外から切り込むようにカットインしていく。相手を見ての動きができているニューカッスルのプランはとても実直。保持から押し込む形はあまり得意ではないとは思うのだけど、そうした部分も克服しつつあるというか、きっちりと攻略法を見つけて実践していく部分はチームとしての地力の強さを感じる部分であった。

 パレスはなんとかやり返したいところだが、なかなか糸口をつかめない。ロングカウンター一発!というパレスのお手軽プランはニューカッスルに簡単に弾き返されてしまっており、押し込まれた時の鉄板パターンは通用しない。

 ロングカウンターが跳ね返されることを踏まえると、楽をせずショートパスを使いアタッカーが前を向くアプローチを実践していることはパレスの悪くなかった点。ニューカッスルはそこまで即時奪回を重視していたわけではなかったので、保持の時間に呼吸をすることができていた。

 後半もペースは同じ。ニューカッスルが先制点を狙い、クリスタル・パレスはなんとか凌ぐという展開が続いていく。同サイドの裏抜け、WGの旋回、そして難しいならば逆サイドにサイドチェンジという形で薄いサイドを作りながら攻略を狙っていく。やることは後半も同じく、再現性のある定点攻撃を実践である。

 押し込みながら決定的なシュートを放たれつつ、エリア内で粘り続けるクリスタル・パレス。なんとか耐え続けると、65分以降は中盤でのプレスが効くようになる。ボール奪取が中盤からできるようになったパレスは2トップのエドゥアールとマテタを使いながら、前半と異なる2トップの毛色でニューカッスル相手に反撃を行う。4-4-2に移行した前節と異なり、ハウが4-3-3を維持する形でイサクを投入したということはニューカッスルとしてはパレスのカウンターに脅威を感じていたということだろう。

 終始、ニューカッスル優勢で進んだこの試合だったが、パレスはなんとか粘り切りドロー。本拠地でマンチェスター・ユナイテッドに続き、上位陣から勝ち点を取ることに成功した。

ひとこと

 実直に試合を進めるニューカッスルはもちろん強さを感じる内容だったが、クリスタル・パレスも復調気配。まだまだ続く強豪との連戦に耐えて、中位をキープしたいところだ。

試合結果

2023.1.21
プレミアリーグ 第21節
クリスタル・パレス 0-0 ニューカッスル
セルハースト・パーク
主審:クレイグ・ポーソン

マンチェスター・シティ【2位】×ウォルバーハンプトン【16位】

ネベスの起用法と地雷が爆発した後半

 ミッドウィークは苦手なトッテナムに逆転勝ち。中2日という厳しい日程ではあるが、首位のアーセナルにプレッシャーをかけるということを考えるとこの試合に負けるわけにはいかないだろう。

 シティのボール保持はルイスがいるバージョンにおけるスタンダードになりつつある後方で3-2ブロックを組む形。ウルブスは中盤の3枚はマンマーク気味に守っていたが、ルイスが中盤に登場するとウルブスのマークが曖昧になるため、シティは中盤に呼吸できる場所ができている状態だった。

 ウルブスの守り方で特徴的だったのはアンカーのネベスがロドリのケアまで出てきてトップ下のような位置に出てきていたこと。普段のポジションとアンカーがアンカーをマークというのはたまにある話なので、一応ネベスもアンカー扱いでフォーメーションを書いたが、やっていることは実質的にはトップ下に近い振る舞いだった。ネベスを前に出した理由の個人的な予想は、シティのサイドのローテに付き合わされるよりはロドリのマンツーの方がまだネベスの機動力的にやれるという判断である。

 前から積極的にプレスに行ったウルブス。だが、シティのバックラインまでは圧力がかかっていなかったことと、中盤のルイスの受け渡しが曖昧だったことからシティの前進は結果的に可能に。

 しかし、ウルブスの中央は固いのでサイドから守備を破れるか?というチャレンジを行うことになるシティ。左のグリーリッシュは対面だったセメドが奮闘。ウルブスはなんとか同サイドからのピンチを凌ぎ続ける。シティ目線から言うと、右の方が有望。マフレズが右の大外でボールを持つと、ヒチャンが必ずヘルプに来るので、マイナスの位置が空く。このスペースにルイスが入り込み、フリーでファーに蹴り続ける。

 実質、シティのゴールはこのルイスのクロス待ちなところがあった。だが、実際にこのチャレンジを実らせたのはデ・ブライネ。サイドに顔を出すと一発でファーのハーランドまで届けて先制ゴールを呼び込むことに成功。ルイスに「おまえの役割こうだから」と教えるかのような一撃で、先制ゴールをお膳立てしてみせた。

 ウルブスは左サイドを軸にショートパスで相手を引きつけながら前進。中盤でポイントを作りながら抜け出すことができれば理想だが、途中で難しくなれば躊躇なく蹴るというスタンス。トラオレやヒメネスなど収まれば頼りになる選手は多いが、基本的にはショートパスでシティの中盤を広げた状態でヌネスの加速力を活用するのが一番確実性が高い。だから、ボールを引きつけながら動かすのだろう。引っ掛けてしまいそうな怪しい場面もあるが、そういうチャレンジをウルブスは積極的に行っていた。

 だが、当然ウルブスの前進の機会は限定的。少ない機会の中でロドリの警告を引き出したことを踏まえると、ウルブスのロングカウンターには巻き返しの可能性はあると言えるだろう。前半終盤に2度の決定機阻止があったコリンズの奮闘も功を奏し、試合は後半に興味が繋がれる1点差の状態でハーフタイムを迎えることとなった。

 ロペテギは後半頭から3枚替えを敢行。投入直後からサラビアはチャンスになるボールを受けることができており、期待感のある3枚替えだったと言えるだろう。

 だが、3枚替えの期待感とコリンズが繋いだ興味は1つのPK判定によって終了。ハーフスペースの裏抜けに出ていったギュンドアンをネベスが倒してしまう。前半の項で機動力を使わないためにトップ下的な起用をされた?と推察したネベスだったが、モウチーニョの投入でCHに戻った結果こうなってしまった。ある意味、CHにネベスを起用しなかった前半のロペテギを正当化するようなPK献上だった。

 続く3点目はウルブスのビルドアップミスから。前半に抱えていた地雷を次々爆発させるような失点の連続でウルブスは早々に終戦。ハーランドは今季4回目のハットトリックである。

 その後はややまったりした展開で時計の針を進める両チーム。早々にハーランドを下げたことからも少なくともこの試合はすでに決着がついたと捉えていたはずである。試合はシティが逃げ切って勝利。ウルブスは後半頭の出来が悔やまれる一戦となってしまった。

ひとこと

 前半の両チームともフラストレーションを溜めている感じはシティ×ウルブスというカードではお馴染み感がある。ウルブスのトップもこのカードではやたらヒメネスが似合っている気がする。

試合結果

2023.1.22
プレミアリーグ 第21節
マンチェスター・シティ 3-0 ウォルバーハンプトン
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:40′ 50′(PK) 54′ ハーランド
主審:デビッド・クーテ

リーズ【14位】×ブレントフォード【8位】

異なる保持の問題点

 他の残留争いをしているチームに比べれば、内容は悪くないものの結果がついてこないリーズ。強豪との試合が続いているわけではないので、ここで足踏みを繰り返していると日程が厳しくなってきたときに怖さがある。

 一方で残留争いとは無風のブレントフォード。明日の試合の結果次第では勝てば6位まで見えてくるというなかなかにロマンのある状況。強豪を倒し続けて波に乗っており、アウェイでのゲームとは言え勝ち点を確保しておきたいところである。

 共に普段着通りのフォーメーションで入った両チーム。低い位置からDFラインが広がりつつのビルドアップを行っていく。より、積極的にプレスに行ったのはホームのリーズ。完全なマンツーとは言わないが、高い位置からのボールのチェイシングでブレントフォードにロングボールを蹴らせていた。

 蹴らされてしまっているブレントフォードはどうも前進のメソッドが安定しない。バックラインから蹴って、拾って、サイドに展開という流れが確立できればいいのだが、セカンドボールを拾うのに手間取り、スピーディーにサイドにボールを預けることができない。

 ブレントフォードのサイド攻撃は突破力で勝負というよりも、エリア内の空中戦の強い選手たちに向かってシンプルにクロスを上げることが求められている。この日のようにサイドに届ける段階で時間がかかってしまい、リーズのバックラインに枚数を合わせられてしまうと、できることは少なくなってしまう。苦し紛れに2トップに蹴らされたブレントフォードの攻撃はそこまで効果的ではなく、前進のプロセスに問題を抱えていたといっていいだろう。

 リーズは強度の部分でブレントフォードに好きにプレーさせず、自分たちのテンポで攻撃に打って出ることは出来ていた。特に機能していたのはトランジッション。ブレントフォードが前がかりに出て来た瞬間を狙い、MFの背後の2列目に刺す形は得点が期待できる陣形。

 しかしながら、リーズの2列目はここ数試合うまくいっている感がない。スピード感が失われているわけではないのだけど、カウンターは以前のような迫力がない。考えられる理由としては人数が多くカウンターで突撃している割には個々人の仕掛けで完結しがちということが挙げられる。各選手のボールを持った時の優先される選択肢はドリブルでゴールに向かう動きが多く、よりいい状況を味方に作る少ないタッチでのプレーは少ない。アーロンソンの不振も当然一因ではあるが、ロドリゴも含めた前線のキャラクターがやや個人主義に傾倒していることはやや気になる。

 遅攻では左サイドからブレントフォードの2トップ脇を起点に侵入するリーズ。だが、こちらも出口は最終的にニョントのドリブル。もちろん、切れ味は悪くないのだが、これ一本でエリア内にビシバシチャンス供給ができるほどの破壊力があるかは怪しいところである。

 リーズはアタッキングサードに侵入することに問題を抱えており、ブレントフォードは前進の安定性に問題を抱えている。それぞれが異なる難を抱える両チームはスコアレスで後半に突入する。

 後半、攻勢を強めたのはリーズ。ボールの刈り取りどころを中盤より前に設定し、前半よりも高い位置でボールを奪いきる部分に注力することで圧力をかけていく。左右のサイドから押し下げてバイタルからのミドルというパターンでシュートの山を築いていく。プレス強度も維持されており、後半の入りとしては非常にいいプランを実行できたように思う。

 一方のブレントフォードは前半からあまり大きな変更はなし。リーズのプレスをもろに食らってしまい、捨てるようにロングボールを蹴って相手にボールを渡してしまっていた。防戦一方で反撃の兆しが見えないブレントフォードは後半も苦しい戦いが続いてしまう。反撃の兆しが見えたのは終盤も終盤の85分。両チームがノーガードでカウンターを打ちあうようになってからである。

 だが、リーズもその時間まで試合の決め手を見出すことが出来ず。保持の過程で異なる難を抱えた両チームの一戦はスコアレスドローに終わった。

ひとこと

 動きのキレは悪くないのだけど得点が遠いリーズ。押し込んでも決定的な場面が少ないあたり、アタッカーの連携面が問題になっている可能性を指摘してみたが実際のところはどうなんだろう。ブレントフォードとしては久しぶりにピリッとしない日だったので、相手もピリッとしなかったのは幸運だったように思う。

試合結果

2023.1.22
プレミアリーグ 第21節
リーズ 0-0 ブレントフォード
エランド・ロード
主審:ピーター・バンクス

アーセナル【1位】×マンチェスター・ユナイテッド【3位】

攻め続けた成果をモノにする

レビューはこちら。

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 首位をひた走るアーセナル。ノースロンドンで宿敵の本拠地を制圧した後に迎えるのは、今季ここまでのリーグ戦で唯一敗れたマンチェスター・ユナイテッドである。

 日程的には苦しい戦いになったユナイテッドだが、悪くない立ち上がりからアーセナルのボール保持を強襲。カゼミーロがいない中でどのようにプレスを持続可能にするか?がこの日の課題だったが、前線のブルーノやベグホルストが自陣まで下がりながら守備をすることで中盤の守備負荷を軽減するプランをテン・ハーグは採用した。

 前節のアーセナルはトーマスが非常に自由だったことが保持の安定感を高めたが、ユナイテッドはトーマスを受け渡しながら常に監視。それでも果敢にチャレンジングなパスを狙い続けたトーマスだったが、ひっかけたところからボールを奪われて失点。絶好調のラッシュフォードが拾ったこぼれ球をドリブルであっさりと敵陣まで運び、ラムズデールの牙城をミドルで崩して見せた。

 だが、今季のアーセナルの強さはリバウンドメンタリティにある。失点後の素早い反撃は22-23のアーセナルのトレードマーク。左サイドの人数をかけた崩しから抜け出したジャカのクロスにエンケティアが合わせてすぐに同点に追いつく。ユナイテッドに明確に勝っていた押し込んでからの崩しとエンケティアのストライカータスクがマッチした見事なゴールだった。

 同点後はどちらのものでもない展開が続く。見た目でいえばシュート数とPA内の侵入数が多いアーセナルの方が優勢だろうが、ユナイテッドもロングカウンターから1つ外すことさえできれば一気に決定機となる場面を多く作っており、数字ほど両チームが過ごした前半に差はなかったように思える。

 迎えた後半、修正を先に施したのはアーセナル。攻守に不安定だったホワイトを冨安にスイッチし、ラッシュフォードと対面する選手を入れ替える形に。こうした個人のマッチアップの優劣が試合の展開に大きくかかわっていた前半を踏まえれば、アルテタが早めにここに手を打ったのはよく理解ができる。

 まさしく、その個人のマッチアップでアーセナルが引き寄せたのがアーセナルの2点目のゴール。右サイドの浅い位置からコースがない中でサカが放ったミドルはデ・ヘアを打ち抜く圧巻のスーパーゴールに。均衡した試合を素晴らしいワンプレーで切り拓いて見せた。

 しかし、ユナイテッドもセットプレーからやり返し。こちらもこの日攻守に大車輪の活躍だったリサンドロ・マルティネスのゴールで試合を振り出しに戻すことに成功する。

 65分が過ぎると、徐々にユナイテッドのプレッシングはトーンダウンしていき、アーセナルが攻め込む局面を崩せるかのワンサイドに押し込むゲームに。高い位置からの崩しの決め手になったのは左サイド。交代で入ったトロサールと後半は実質司令塔と化していたジンチェンコの2人でサイドを攻略すると、最後はエンケティアがこの日2点目のゴールを沈めて勝ち越しに成功する。

 90分のゴールで接戦を制したアーセナル。終盤のラッシュで勝ち点3を手繰り寄せ、優勝争いのライバルを蹴落とすことに成功した。

ひとこと

 3位以下とは2桁ポイント差がついたことでいったん現段階での優勝候補は2チームに絞られたといえるだろう。経験の浅いチームにとっては未知の領域は不安が付きまとうが、この日のようなパフォーマンスを続ければ勝敗如何に関わらず、ファンからの手厚いサポートを受けられるのは間違いない。

試合結果

2023.1.22
プレミアリーグ 第21節
アーセナル 3-2 マンチェスター・ユナイテッド
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:24′ 90′ エンケティア, 53′ サカ
Man Utd:17′ ラッシュフォード, 59′ リサンドロ・マルティネス
主審:アンソニー・テイラー

フラム【6位】×トッテナム【5位】

先制点だけが足りない完璧な前半

 マンデーナイトに迎えた一戦は5位をかけたロンドンダービー。シンプルに勝った方が5位という非常にわかりやすい一戦である。年始から好調を維持するフラムと色々と雲行きがあやしいトッテナムと直近の両チームの勢いは対照的。試合はこの両チームの現状をがっちり反映した内容になっていた。

 フラムのトレードマークであるハードなミドルプレスはこの日も健在。トッテナムのビルドアップを明確に苦しめていた。バックラインからのショートパスにこの日も積極的にトライしていたトッテナムだがいつも以上に苦戦。降りていくソンはあっさり囲まれて潰されるし、バックラインとCHの5枚のパス交換でもミスを連発。あっさりとフラムのカウンターを喰らってしまう。

 フラムはボール保持でも十分にペースを握ることに成功。こちらも積極的に高い位置からのプレスに出てきたトッテナムだが、フラムのビルドアップを前に無効化。ミトロビッチにボールを当てるポストから中盤で前を向く選手を作る形と自由に動き回るウィリアンを軸に、ハイプレスを裏返して前進する。

 フラムはある程度前に進むと、左右にボールを振りながらアタッキングサードに迫っていく。特に右の大外で待ち受けるボビー・リード目掛けてのサイドチェンジは有効。このサイドである程度押し下げつつ、フォローに入ったテイテイからクロスを上げてチャンスを構築していく。

 ボール保持とミドルプレスの両面でチャンスを作り続けるフラム。試合を完全に支配し、あとは先制点を取るだけ!という流れであった。だが、トッテナムはケインとクルゼフスキの推進力から単発で反撃の機会を探り、終盤に少しずつ持ち直す。

 すると、前半終了間際に一発で試合を動かしたのはケイン。強烈なミドルから文脈関係なしのゴールを叩き込んだ。セットプレーの流れから前線にトッテナムの選手が多く残っていたこともあり、フラムはこれまで厳しく行けていたライン間のソンにチェックに出て行けなかったことが失点に直結してしまった。

 後半の頭もフラムは軽快な立ち上がり。トッテナムのゴールに迫力十分で襲いかかっていく。だが、前半ほどの支配力を発揮できていたかというと別の話。トッテナムはロングカウンターからやり返す形で反撃に出れていたことで、比較的フラットな状況で試合は推移する。

 ケインにスムーズにボールが入り、右のクルゼフスキに展開することができれば、少なくとも敵陣までの進撃は期待ができる。トッテナムの攻撃が前半よりも澱みなく行われていたのはフラムのプレスの強度が落ちている証拠と言えるだろう。

 ただ、フラムもサイドのマイナスからアーリー気味にクロスを入れるという攻撃の形は持っていたので、十分に保持はやれていた。ミドルプレスをほとんど捨てて自陣に引くトッテナムに対して、前半と同じクロス攻勢でゴールに迫っていく。

 ソロモンを投入し、ボビー・リードを一列下げる。そのボビー・リードも交代してヴィニシウスを投入するなど最後は攻撃的な采配で展開を引き寄せたマルコ・シウバ。左右からクロスを入れて同点ゴールを目指していくが、ネットを揺らすことはできず。エースの一撃を守り切ったトッテナムが連敗阻止に成功した。

ひとこと

 タフな後半を凌げたことはトッテナムにとっては自信になったはず。ケインとクルゼフスキの依存の高さは気になるところではあるが、終盤まで気の抜けない接戦を久しぶりに制したことにまずは胸を撫で下ろしていることだろう。

試合結果

2023.1.23
プレミアリーグ 第21節
フラム 0-1 トッテナム
クレイブン・コテージ
【得点者】
TOT:45+1′ ケイン
主審:ポール・ティアニー

今節のベストイレブン

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