Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第16節
2023.6.3
ヴィッセル神戸(1位/10勝3分2敗/勝ち点33/得点32/失点1)
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川崎フロンターレ(9位/6勝3分6敗/勝ち点21/得点19/失点18)
@ノエビアスタジアム神戸
戦績
近年の対戦成績
直近5年間の対戦で神戸は2勝、川崎は8勝、引き分けが2つ。
神戸ホームでの戦績
直近10戦で神戸の3勝、川崎の4勝、引き分けが3つ。
Head-to-head
- 川崎は公式戦の神戸戦で直近7試合無敗、かつ3連勝中。
- 川崎が神戸相手に得点できなかったのは2017年の9月のスコアレスドロー。
- 以降の公式戦12試合で連続得点。神戸の無得点もこの間は2試合だけ。
- 神戸ホームでのリーグ戦は直近6試合で川崎は無敗(W3,D3)
- 神戸が川崎より上の順位でこのカードを迎えるのは2011年9月以来12年ぶり。
- 直近2試合のこのシチュエーションは神戸が連勝中。
スカッド情報
- 酒井高徳、菊地流帆、飯野七聖が離脱中。
- 山川哲史は長期離脱を示唆。川崎戦に間に合わないのは確実。
- 本多勇喜も離脱だがこちらは早期復帰が見込まれる。大崎玲央の出場も不透明か。
- ジェジエウは左膝外側半月板損傷により長期離脱。
- 田邉秀斗は左膝側副靭帯損傷で長期離脱。
- 高井幸大、永長鷹虎はU-20W杯から帰国済み。
- マルシーニョは左太もも裏の肉離れにより3ヶ月の離脱。
予想スタメン
Match facts
- 公式戦7試合無敗。うち4試合がクリーンシート。
- ホームゲームは4連勝中でうち3試合がクリーンシートでの勝利。
- ビハインドになった試合では勝ち点は取れていないが、リーグ戦でビハインドになったのは2回だけ。
- 立ち上がりの15分で失点がないリーグ唯一のチーム。
- 川崎は7失点でリーグ最多。
- 枠内シュート数(80)が2番目に多く、枠内シュート率(43.7%)はリーグトップ。
- 大迫勇也はここまでの得点関与がリーグトップ(11G,3A)。武藤嘉紀は鈴木優磨と並び2位タイ(6G,6A)
- 大迫から武藤へのアシストは2つ、武藤から大迫へのアシストが3つ。
- 勝てば今季2回目のリーグ戦連勝。
- アウェイゲームは現在公式戦3連敗中。
- いずれも2-1での敗戦。
- 今季出した4人の退場者のうち、3人はアウェイゲームでのもの。
- 首位とのリーグ戦は直近7試合で6勝。
- 2017年以降、アウェイでの首位相手のゲームは4戦全勝。
- 神戸は宮代大聖がキャリア初めてリーグ戦のゴールを決めた相手。
- 小林悠はこのカードで11得点を挙げておりトップスコアラー。
- スタメン出場した直近11試合の神戸との公式戦で12得点に関与(9G,3A)
予習
第13節 広島戦
第14節 柏戦
第15節 FC東京戦
展望
シンプルゆえに打ちにくい対策
毎年、優勝争いにはダークホースといえるチームが名乗りを上げるのがJリーグの風物詩。今年は神戸がその枠に収まりそうだ。開幕前に神戸が躍進すると予想していた人はあまり多くはなかったはずである。
しかしながら、そうしたイメージはフロントや監督人事にまつわるごたごたから来るもの。戦力を見渡せば各セクションにバリバリやれる日本代表経験者をずらりと並べているのだから、シンプルな戦力の話で言えば彼らが上位に名を連ねるのは何もおかしな話ではないように思える。
いろんなことが見る側の目を曇らせているだけであり、純粋な戦力値で言えばリーグでは上。それがこれまでのダークホースと神戸が異なるところである。
神戸が今季組んでいるプランも非常にシンプル。戦力値の高さを生かしたものになっている。神戸というか、今リーグで最も調子がいい選手といってもいいくらいのパフォーマンスを発揮しているのが大迫。当然、神戸のプランも彼を軸に組まれることになる。
神戸のバックラインは保持において深さを取るアクションをしないこともない。だが、基本的な優先事項は大迫を目がけたロングボールである。バックラインがプレッシャーを受けた際はとっとと前に蹴りだすことが徹底されており、そこに迷いはない。
すると、大体は前線で収まる。ピタッと収まらなくともセカンドボールの回収が優秀。3センターや武藤がデュエルでボールを奪い取ったり、あるいは大迫自身がコントロールしながら相手のDFを引きちぎって前を向く。
神戸の強さの理由はこのスキームの精度だろう。並みのチームであれば、アバウトすぎると突っ込みたくなる前進ではあるが、大迫が前にいるチームであれば話は別。さらに攻撃を加速させる武藤の存在も加えれば、十分に計算が立つ頻度でアタッキングサードに迫ることができる。
囲まれてもファウルを奪うことができる大迫であるが、当然1枚であるほうがはがすのは楽。先制点を神戸が手にしてしまえば、相手は基本的には前がかりになるだろう。そうなれば、大迫はより楽に相手を背負うことができる。前がかりな陣形をひっくり返す際にはより威力が増すのである。
シンプルだけど、シンプルなだけにプランが成立したら止めることができない。それが今の神戸である。
定点攻撃のオプションとなるのは左サイド。汰木と佐々木がハーフスペースと大外からクロスを上げる機会をうかがい、大迫と武藤に向けてシュートチャンスを供給する。よって、バックラインが余裕を持っているときはWGに向けた対角パスもちらほらと。ここ3試合で言えば左サイドの汰木と佐々木からのチャンスメイクは神戸の重要な得点源である。
SBの攻め上がりはここまではあまり多くはない。少ない手数でも攻めきれるというのと、追いかける展開が少ないからだろう。初瀬がいるサイドは少なくとも必要になれば積極的に攻めあがってくるはずだ。
非保持においては大迫と武藤を前に置く陣形が基本。高い位置では普通に献身的にプレスをするので、守備免除というよりは前残りの様相が強いだろうか。武藤と逆サイドの汰木はより低い位置でラインを下げる。
大迫と武藤のプレス隊に加勢するのは左のIHを務める佐々木。ハイプレスの時はこの3枚で中央の選手をケアするとこから始まる。
リトリートは3センター+汰木+バックラインの8枚が基本。大迫と武藤も必要であれば戻ってくる。神戸は初瀬のサイドの守備が若干気になるので、相手はそのサイドから攻略の糸口を探ることが多いのだが、中盤のスライドでここをプロテクトするのがうまい。最低限の時間を稼いでボックス内の枚数をそろえる。
クロスの跳ね返し耐性には自信があるが山川、菊池、酒井までがいなくなるとどこまでクオリティを維持できるかはわからない。怪我人多数のバックラインのクオリティ維持は川崎戦に限らず、今季の優勝争いに踏みとどまれるかの大きな命題になるはずだ。
ハイクロスを優先するならば…
とにもかくにも大迫周りのマッチアップで優位をとらせないかどうかが最も重要である。直近3試合の神戸の対戦相手で唯一勝ち点を取ったのは柏。この3試合を見る限り、大迫をもっともうまく抑え込んだのは立田であり、それが勝ち点奪取に直結している感じがある。
車屋、大南には大きなチャレンジの日になるはずだ。収まった後のプレーとしては縦に急げるのであればそれが最優先だが、それ以外の場合はサイドに展開することも多い。川崎のCBはSBの裏をケアする形で出ていくことも多いと思うが、ここでクロスを上げさせないことも重要。柏の唯一の失点シーンは立田がサイドにつり出されてクロスを許したシーンにおけるものであった。
クロスのターゲットにおける武藤を登里で抑えるのはまず無理だろう。神戸はいつも以上に徹底的に狙ってくるはずだ。ただ、難しいのは自陣からの川崎の前進ルートにおいて、武藤の背後には相手のSBのケアが間に合わないことが多く、このギャップは使いたいという点。この部分は登里が最も適任である。
前線にバンバン蹴る展開は神戸にとってはおいしい以外の何物でもないので、川崎はショートパスからの解決策は用意したい。ワイドに開くCBで武藤を引き付けて、その背後を登里にフリーでボールを運んでもらいたい。中盤の山口がケアに出てくれば中盤にはたけばいいし、誰も来ないのであれば持ち上がってOK。理想としては相手の枚数がそろう前に攻略したいところ。
枚数が整った場合はクロス攻略が主体になる。前に大迫と武藤を残す分、クロスを上げるところまでは容易である。LWGの宮代の起用は継続でいいだろう。CBとSBの受け渡しが頻発する形でぽっかりと空いたところでフリーで合わせる形を狙いたい。
問題はハイクロス。飛び出しに怪しさのある前川をおびき出すためにもハイボールのクロスの選択肢は欲しい。ならばインサイドはダミアン。平地でいえば小林の駆け引きも捨てがたいがクロスを生かすという観点で言えば、この試合ではダミアンがはまる気がする。
ダミアンにとっても関西アウェイはかなり得意。首位相手に決定的な仕事を果たせばエースの復活祭としてこれ以上の舞台はない。チームの反撃のきっかけとエースの復活を神戸で果たし、上昇気流に乗せたい。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)