Fixture
明治安田生命 J1リーグ 第21節
2023.7.15
横浜F・マリノス(1位/13勝4分3敗/勝ち点43/得点44/失点23)
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川崎フロンターレ(9位/8勝4分7敗/勝ち点28/得点24/失点21)
@日産スタジアム
戦績
近年の対戦成績
直近5年間の対戦で横浜FMは3勝、川崎は5勝、引き分けが3つ。
横浜FMホームでの戦績
直近10戦で横浜FMの3勝、川崎の4勝、引き分けが3つ。
Head-to-head
- 勝てば横浜FMはシーズンダブル。
- 2014年以来のこと
- 直近4試合の対戦はいずれもクリーンシートを達成していない。
- 直近5回の日産での川崎戦は3回がドロー。
- 等々力でのゲームは2012年以降、1回もドローがない。
- 首位で迎えるホーム川崎戦は過去に1回だけ。2013年でこの年は2-1で勝利している。
スカッド情報
- 飯倉大樹は右膝内側側副靱帯損傷により2ヶ月の離脱中。
- 角田涼太朗は右第五中足骨骨折により3ヶ月の離脱。
- 小池龍太は右膝蓋骨骨折により長期離脱中。
- 西村拓真は名古屋戦後に離脱を示唆。
- 小池裕太は天皇杯・町田戦で負傷交代。
- ジェジエウは左膝外側半月板損傷により長期離脱中。試合形式のトレーニングには復帰。
- 田邉秀斗は左膝側副靭帯損傷で長期離脱。
- マルシーニョは左太もも裏の肉離れにより3ヶ月の離脱。ランニングを開始。
- 小林悠は右ハムストリングの肉離れにより6週間の離脱。
- レアンドロ・ダミアンは左足関節捻挫により離脱。
予想スタメン
Match facts
- リーグ戦は7戦負けなし(W6,D1)
- 直近の公式戦では敗戦。連敗すれば2022年10月以来。
- ホームでのリーグ戦は今季無敗(W7,D2)。2つの引き分けはいずれも1-1。
- 44得点はリーグ最多であり、ホームゲームでは今季全試合のリーグ戦でゴールを決めている。
- 2022年10月の磐田戦が最後の無得点。
- エウベルは川崎戦4試合で3得点3アシストを挙げており、キャリアにおいて最も多くの得点に関与している対戦相手。
- アンデルソン・ロペスは15得点でここまで得点王。
- ゴール数/シュート数の割合もリーグトップであり、シュートをリーグでもっとも効率よくゴールに変えている選手。
- 直近8試合の公式戦で1敗だけ(W6,D1)。
- アウェイでの勝利はここまで全て1点差。
- 今の順位表のトップ5には6戦勝ちがなく、うちトップ3には全敗。
- アウェイでのリーグ戦は直近4試合で勝ちがない(D1,L3)
- 遠野大弥は直近20試合のリーグ戦出場でノーゴール。
- 約900分ほどゴールがない。
- 宮代大聖は直近2試合連続ゴール中。
- 3試合連続になれば自身のキャリア初。
予習
第18節 広島戦
第19節 湘南戦
第20節 名古屋戦
展望
展開を押し付ける力と持続力がよそとの違い
今回の神奈川ダービーのうたい文句は「BIG神奈川ダービー」らしい。こうしたプロモーションが打たれることは両チームの立ち位置とか、物事に対するオープンさとかいろいろなものが変わったのだなと思わされる。が、まぁそれについて深堀するのはこのプレビューらしくはない。
このプレビューらしくピッチのことに目を向ければ、川崎にとってこの一戦はリーグで一番強い奴に会いに行く試合である。名古屋も神戸も強いけども、肌感覚として横浜FMはその一段上を行くチームである。
上位3つは自分たちの型をきっちり持っている印象が強く、その出力はいずれも強力。横浜FMが神戸と名古屋を含めた他のチームよりも強さを見せているのはこれに加えて「試合の展開を自分たちの土俵に引き込むことができる引力」と「交代選手も含めたプランの持続性」の2つを兼ね備えているからだろう。
保持においてはショートパスをつないでもカウンターをつないでも相手からゴールを奪い取ることができる。ショートパスの際は4-2-3-1をベースにポジションを動かす。最も大きな動きを見せるのはLSBの永戸。相手のDFとMFのラインの間に入り込み、1列前でプレーすることが多い。
その分、左サイドの低い位置には渡辺が開いたり、エドゥアルドが広がったり、エウベルが下がったり。エウベルは横のレーン移動が活発ではない分、縦にはそれなりに動くことが多い。大外で正対さえできれば、多少位置が浅くでも敵陣に運ぶことはできるし、カットインでペナ角付近からファーへのラストパスやミドルシュートも持っている。
前線はこうしたドリブラーに合わせて常に裏をとれる隙を探すことができる。こうしたオフザボールの抜け目のなさは彼らの強みの1つである。マテウスは大外でのカットインだけでなく、バックラインとの裏をめぐる駆け引きも可能。エウベルがレーンを守って縦移動をするのとは対照的に、マテウスは高さを守って横移動をするイメージである。
裏抜けに気を取られると西村、永戸、藤田といった面々がライン間に侵入して縦パスを引き出す。名古屋戦の2点の藤田のゴールのように、前線基準にDFラインが守備を組んでしまうと、ライン間が間延びしてしまうのが悩ましい。
ブロックを壊す力というのは能動的に相手を動かしていく力があるということ。エウベルのように定点で勝負できるポイントと、選択肢を突き付けるような動き出しを繰り返すことができる横浜FMはJで最もブロック守備を組むのが面倒な相手であるといえるだろう。
前線が交代選手に代わればさすがにブロックを壊すスキルは目減りするが、カウンターにおいてはほぼ変わらない破壊力でゴールに迫ることができる。J1はだいたい終盤にはオープンになることが多いし、そもそも横浜FM相手にゲームテンポを落として試合を運ぶということ自体が難しいので、実質選手交代でスキルが落ちないという認識で問題ないだろう。
非保持においては4-4-2ベース。高い位置からのボールを奪うスタンスが基本。ただし、枚数を合わせてオールコートマンツーをするというよりは選択肢を奪っていって相手がパスをつなぐコースを限定してから刈り取る形がメイン。今季のオープニングゴールとして等々力で奪った西村のゴールや、湘南戦で舘からボールを奪い取ったゴールなどはこの代表例である。
中盤とSBも高い位置に出ていくことが基本。守備でもハイテンポなノリを持続することができるのは横浜FMが相手に自分たちのリズムを押し付けるのがうまい理由の1つとなっている。
不動のシミッチを作れるか?
川崎にとっては非常に難しい一戦になる。特にボールを持っていない時は気を遣う相手となる一戦である。ここまでは4-4-2ベースで非保持を進める機会が多く、CHがサイドに出ていきたい形にしてハーフスペースの裏抜けをつぶすことに執心する形がうまくいっていたが、横浜FMにはこのやり方は通用しないだろう。
というのも彼らはサイドでそういった仕掛けを行うことで中央が空くことを待っているから。それも特定の選手にバイタル活用を依存する名古屋と違ってどの選手がフリーで前を持っていても怖いという厄介さがある。
中央とサイドのどちらも崩されては厳しいが、サイドを守るために中央が空くのは言語道断なので、まずは中央をプロテクトすること。そのためにはシミッチをなるべく動かさずにIHとWGでサイドのカバーを全うすることが重要。先ほど出した図を再掲するが、シミッチが真ん中から釣りだされてしまうと、横浜FMはライン間の②の選択肢をより容易に活用することができてしまう。ライン間の選択肢をまずは潰したい。どちらかといえばここ数試合はシミッチの読みによって広い範囲を潰してもらっている感じがあるので、この部分はIHの踏ん張りどころになるだろう。
もう一つ提案したいのは大南のCB起用。中央のプロテクトとサイドの潰しの両立が可能で、かつ単騎カウンターをつぶすことができる大南はこの試合のように守備での機会が多い試合においては絶対的な柱となれる存在。直近のパフォーマンスを見ても川崎のCB陣の中では危機対応では図抜けた立ち位置になっている。保持でできることが限られているとしても起用したいところだ。
自陣での守備だけでなく、敵陣でのプレスの時間も設けたいので、IHには大島ではなく運動量がある瀬古を勧めたいところ。水戸戦のような簡単にすれ違う守備を横浜FM相手にしてしまえば即時アウト。課題はあるが、ここを解決できれば一気に序列を上げるチャンスでもある。
ボール保持に回った際にはまずはトランジッションで右サイドに起点をつくることを意識したい。永戸が動きやすいこちらのサイドで家長が裏をとりつつボールを収めることはそこまで想像は難しくはない。
この右サイドを起点に出来れば早い時間に先制点が欲しい。宮代、山田、遠野、瀬川などフィニッシュワークに絡む選手たちには一発であたりをひくことが求められる。ストライカーは決めればヒーローで、決めなければ・・・というのはビッグマッチの宿命である。
山田を温存するプランもなくはないが、ここは先発の起用を推したい。理由としては横浜FMには終盤の身を削った撃ち合いは通用しないことが想定できるから。絶対負けるとは言わないがストライカー不足で勝算が立つ相手とはとても思えない。であれば出し惜しみする意味はないだろう。CFは山田、左のWGは宮代という今のベストの組み合わせを送り出すべきである。
横浜FMにはちょこちょこ非保持では付け入るスキがある。例えば、前線のプレスに中盤でついていききれずに間延びすることは狙える。ある程度までプレスを回避できれば、カウンターに一直線で進めるルートがある。もし大島が先発するのであれば、トランジッションでこのパスを通すことに注力してほしい。
また、横浜FMの自陣でのブロック守備においては、ボールをどこに追い込みたいかが迷子になることがある。名古屋が得た先制点のように逆サイドへの横断をちらつかせながらミドルや中央のコンビネーション打開を狙うのは一つの手である。
ただし、川崎はきっちり外に選択肢を作り、マークを分散させることが重要。無理筋な中央の崩しは控えなくてはいけない。ほっておいてもチャンスを作る相手にカウンターの機会を進んで与えることはない。リスクとの天秤の感覚は常に持っておきたい。
ダービーというものの存在がやたらと問われそうなタイミングではあるが、今の川崎にはもっと重要なことがある。強いチームに立ちはだかることができるかどうかである。昨年の等々力での横浜FM戦のようにそれができればまだまだ自分たちは強いチームといえるし、そうでなければ「優勝を狙う」という選手たちのコメントは空虚になってしまう。
Match factsの項でも触れたが、今季の川崎は上位勢相手にからっきし弱い。去年の川崎が強くあれたのはここ一番での大きな試合で必ずライバルの邪魔ができたからである。
個人的にはダービーがどうとらえられるかなどどうでもいい。優勝を目指すコメントが選手からみられるかどうかも極論今はどうでもいい。ピッチのパフォーマンスから優勝というものが現実味を持って見通せるかどうかの方がはるかに大事だ。強くあれるかどうか。神奈川県の中だけでなく、Jリーグの中での立ち位置を示すために大きな意味を持つ一戦になるだろう。
【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)