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「Catch up FIFA World Cup Qatar 2022 Asia qualifiers」~カタールW杯 アジア最終予選 オーストラリア代表編

 オーストラリア代表、カタールW杯アジア最終予選の歩み。

目次

2021/9 招集メンバー

GK
マシュー・”マット”・ライアン(レアル・ソシエダ/スペイン)
ダニエル・”ダニー”・ヴコヴィッチ(NECナイメーヘン/オランダ)
ローレンス・トーマス(ソナーリュースケ/デンマーク)
ポール・イッツォ(クサンティ/ギリシャ)

DF
リアン・グラント(シドニーFC)
ライアン・マッガワン(クウェートSC/クウェート)
ブラッド・スミス(シアトル・サウンダーズ/アメリカ)
ライアン・ストレイン(マッカビ・ハイファ/イスラエル)
トレント・セインズバリー(コルトレイク/ベルギー)
ミロシュ・デゲネク(レッドスター・ベオグラード/セルビア)
アジズ・ベヒッチ(ギレスンスポル/トルコ)
カラム・エルダー(ハル・シティ/イングランド)
ベイリー・ライト(サンダーランド/イングランド)
ハリー・ソウター(ストーク・シティ/イングランド)

MF
アーロン・ムーイ(上海上港/中国)
ジェームズ・ジェッゴ(アリス・テッサロニキ/ギリシャ)
ダニエル・アルザニ(ロンメル/ベルギー)
デニス・ジャンロー(トゥールーズ/フランス)
トーマス・”トム”・ロギッチ(セルティック/スコットランド)
ケネス・ドゥーガル(ブラックプール/イングランド)
ライリー・マッグリー(バーミンガム・シティ/イングランド)
ジャクソン・アーヴァイン(ザンクト・パウリ/ドイツ)
アイディン・フルスティッチ(フランクフルト/ドイツ)

FW
マーティン・ボイル(ハイバーニアン/スコットランド)
アワー・マビル(ミッティラン/デンマーク)
アダム・タガート(セレッソ大阪/日本)
ミッチェル・デューク(ファジアーノ岡山/日本)

第1節 中国戦(H)

画像1

■本命たる所以を発揮

 日本と同じく2次予選を全勝で突破したオーストラリア。グループBは突破の本命として戦うことになる。帰化戦略で戦力を増強した中国とカタールの地で迎える最終予選の初戦である。

 ゆったりとした保持で試合に入ったのはオーストラリア。自陣の浅い位置まで使った深さをもたらすビルドアップで、中国をおびき寄せる。それに対してどこまで出ていくか?という部分を問われた中国。若干その対応は曖昧になっていたように見えた。特に左サイドハーフの17番のウー・シンハンが出ていったあと、ややポジションに戻らないことで、大外を空けてしまうことが気になった。

 オーストラリアはSBを左側だけ上げる意識を高める3バック的な変形。左はSBのベヒッチが高い位置を取り、WGのメイビルがやや絞り目の位置。やや5レーン意識は高いチームのように思えたが、右の大外は埋まらないこともあった。CHは縦関係でアーヴァインがDFラインからボールを引き出す役割をこなす一方で、フルスティッチは前目に位置する。

 オーストラリアの前線が大事にしていたのは奥行き。特に両WGの2人が縦に抜ける意識が高め。2点のゴールはどちらもWGの裏抜けが効いたところから。中国のミドルゾーンに構えるバックラインをあっさり壊してしまった。

 中国のビルドアップは2人のCBに対してうまくサポートを作れなかったように思う。SBは早い段階で上がってしまい、CHは背中でオーストラリアのトップに消されており、前線に蹴るしかやりようがない。だが、エウケソンは独力でキープ力を生み出せるほどの凄みはなし。偶発的に右のウー・レイのドリブルがスピードに乗った時しかチャンスにならなかった。

    中国は押し込んだ際もサイドの攻撃の糸口はなし。手詰まり感がオマーン戦の日本の振る舞いと似ている感じがしたのは寂しかった。特にエウケソンのポストを使ってサイドを変えた後の停滞感とかはそっくり。結局個人技頼みが否めなかった。オーストラリアが流麗なサイドチェンジからダメ押しの3点目を決めたのとはあまりにも対照的だった。

 試合はオーストラリアの完勝。内容をみても保持での落ち着き、カウンターの威力、横断での崩しなどあらゆる局面でオーストラリアが中国を上回り、グループBの本命としての存在感を示した。

試合結果
2021.9.2
カタールW杯アジア最終予選 第1節
オーストラリア 3-0 中国
ハリーファ国際スタジアム
【得点者】
AUS:24′ メイビル,26′ ボイル, 70′ デューク
主審:コ・ヒュンジン

第2節 ベトナム戦(A)

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■オフサイドトラップで見られた前触れ

 電光石火の先制点を挙げた初戦だったが、退場者を出してしまいサウジアラビアに逆転負けを喫してしまったベトナム。2戦目の相手はオーストラリアと非常にタフな試合が続いていく。

 戦い方としては大枠ではサウジアラビア戦と同じ。5バックを軸に低い位置でオーストラリアを迎え撃ち、ブロック守備で凌ぎながらの戦いである。修正点としては、CHが前に出ていきすぎることで無駄に食いつく頻度が減ったこと。

    ベトナムはその分、前方への推進力を失ってしまっていたが、穴を開けずにオーストラリアの保持に対してジリジリと食らいつく。サウジアラビア戦はここで前に出ていき過ぎたことでライン間にスペースを生み出してしまっていたので、そこは初戦の反省を生かしているといえそうだ。

 オーストラリアは4-3-3気味で前のタレントを増やす形で対抗。フルスティッチがアンカーに入り、前は5人で攻略に挑む。しかしながら、なかなかブロックの攻略はできない。ワンタッチパスが2つ続いて繋がればチャンスにはなるが、有効打となるパスが連続で繋がることはまずない。

 WGとSBにはそれぞれベトナムのWBとワイドCBがマンマークで対抗。サイドから崩そうとするもなかなか手が出ない。初戦で裏抜けで活躍したメイビルもスピードに乗った状態でなければ、なかなか持ち味を発揮できず。裏に一発で通そうとしてもスピードで明確に上回れる選手がいないため、攻めあぐねる。

 むしろ少ないながらも危険なシーンを作り出したのはベトナムの方。早い攻撃からハンド風味のプレーを誘発。OFRまでこぎつけるが、原判定が覆らないというレアケースでPKは認められず。前節と同じくベトナムはOFRで運が転がってこない。

 その後も攻め手が見つからないオーストラリア。一番のチャンスはベトナムがオフサイドトラップを掛け損なったFKのシーンだろう。この場面では何を逃れたが、このシーンは失点の前兆だった。左SBのスミスを主体としたクロス攻勢から二次攻撃を狙うオーストラリアに対して、ラインアップが遅れたベトナム。これを見逃さなかったオーストラリア。最後はグラントが詰めて前半終了間際に先制する。

 後半、ベトナムは攻勢に出るために攻撃的な配置に変更。前節得点を挙げたグエン・クアン・ハイをWGから中盤に動かし、ボールを運べる選手を増やす。前半よりもゴールに迫る機会は増えたベトナムだったが、運んだ後のプレーに精度が伴わず、ライアンを脅かすようなシーンを作ることができない。

 一方のオーストラリアも前半よりも間延びしたベトナムの陣形を崩せず。撤退した時にボールを回して時間を使うならわかるけど、明らかに攻め切れる時に煮え切らない攻撃をしているのは1点差ということを踏まえても不満。日本などが得意なショートカウンターはあまりうまくないのかもしれない。

 共にジリ貧だった終盤戦だが、前半終了間際の先制点を守り切ったオーストラリアが逃げ切り成功。予選2連勝スタートを飾ることとなった。

試合結果
2021.9.7
カタールW杯アジア最終予選 第2節
ベトナム 0-1 オーストラリア
ミー・ディン・スタジアム
【得点者】
AUS:43′ グラント
主審:アブドゥラフマン・アル・ジャシーム

2021/10 招集メンバー

GK
マシュー・ライアン(レアル・ソシエダ/スペイン)
ローレンス・トーマス(ソナーリュースケ/デンマーク)
ダニエル・ヴコビッチ(NEC/オランダ)

DF
フラン・カラチッチ(ブレシア/イタリア)
カラム・エルダー(ハル・シティ/イングランド)
リアン・グラント(シドニーFC)
ライアン・マッゴーワン(クウェートSC/クウェート)
ベイリー・ライト(サンダーランド/イングランド)※追加招集
アジズ・ベヒッチ(ギレスンポル/トルコ)
ハリー・サウター(ストーク・シティ/イングランド)
トレント・セインズベリー(コルトレイク/ベルギー)
ミロシュ・デゲネク(ツルヴェナ・ズヴェズダ/セルビア)※コロナ陽性のため辞退

MF
ジェームズ・ジェゴー(アリス・テッサロニキ/ギリシャ)
アルディン・フルスティッチ(フランクフルト/ドイツ)
アーロン・ムーイ(上海海港/中国)
ケネス・ドゥーガル(ブラックプール/イングランド)
ダニエル・アルザニー(ロンメル/ベルギー)
ジャクソン・アーバイン(ザンクト・パウリ/ドイツ)
トーマス・ロギッチ(セルティック/スコットランド)
デニス・ジャンロー(トゥールーズ/フランス)
ライリー・マッグリー(バーミンガム/イングランド)

FW
マーティン・ボイル(ハイバーニアン/スコットランド)
アダム・タガート(セレッソ大阪/日本)
アワー・メイビル(ミッティラン/デンマーク)
ミッチェル・デューク(ファジアーノ岡山/日本)
クリストファー・オイコノミディス(メルボルン・ビクトリー)

第3節 オマーン戦(H)

画像3

■サイドに圧をかけてねじ伏せる

 9月シリーズを2連勝。見事なスタートダッシュを決めたオーストラリア。オマーンを叩いて勝ち点を落とした日本にプレッシャーをかけていきたいところ。

 おなじみになってきたオマーンの中央封鎖の4-3-1-2に対して、オーストラリアはCHが低い位置まで降りることで仕掛けていく。CHが降りる動きを見せることで、オマーンのIHはオーストラリアのSBについていくのか、あるいはCHについていくのかの判断をする必要が出てくる。

 オマーンのIHが降りていくオーストラリアのCHについていった場合、オマーンの守備の陣形はIHとSBの距離が開くことに。従って、オーストラリアのCHにオマーンのIHが食いついた時がオーストラリアの攻める絶好機。SBとWGがオマーンのSBに襲いかかる形でクロスを上げられるとオーストラリアにはチャンスが出るようになる。

 ただ、オマーンにも十分にチャンスはあった。オーストラリアの4-4-2ブロックは全体の陣形がコンパクトに維持できておらず。機動力が優れているとはいえないオーストラリアの中盤が広いエリアを任されることによって、オマーンに振り回されることがしばしば見られた。

 オマーンは守備面でも途中からIHがプレスを自重することで修正。オーストラリアに対してコンパクトな守備を敷くことができるようになってきた。メイビルによって奪われた先制点も28分にアル・アラウィの得点で取り返してオマーンが流れを引き戻す。

 しかし、並びで考えると4-3-1-2のオマーンはスライドが間に合わなくなった際にサイドの守備がどうしても孤立してしまいやすい。オーストラリアはその隙をついて得点を重ねていく。サイドでのロストからのクロスで後半早々に勝ち越し点を得ると、試合終了間際にもホルダーを追い越す形でのオーバーラップでクロスを上げてミッチェル・デュークが追加点。

 隙を見せながらも最後はオマーンを仕留めたオーストラリア。グループBのライバルたちにプレッシャーをかける勝ち点3を獲得し、日本とのアウェイゲームに乗り込む。

試合結果
2021.10.7
カタールW杯アジア最終予選 第3節
オーストラリア 3-1 オマーン
ハリーファ国際スタジアム
【得点者】
AUS:9′ メイビル, 49′ ボイル, 89′ デューク
OMA:28′ アル・アラウィ
主審:ナワフ・シュクララ

第4節 日本戦(A)

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■分が悪い勝負に出てほしい結果を得る

 レビューはこちら。

 日本は前節からスタメンを3人入れ替え。出場停止明けの伊東純也に加えて、守田と田中を先発に抜擢。システムも4-3-3に変更して背水のオーストラリア戦に臨む。

 日本の4-3-3のテーマは大きく分けて2つ。1つは守備時におけるWGの外切りプレスである。前節のサウジアラビア戦と比べて、より高い位置からのプレッシャーをかけるスタイル。押し込まれずにミドルブロックを敷いてカウンターに移行するための方策だろう。仮に頭上を越されてもIHを行動範囲が広い守田と田中に入れ替えてあるので彼らに頼む!というやり方である。

 日本にとって幸運だったのはオーストラリアの最終ラインが4-3-3外切りの弱点であるWGの頭上を越すパスを使えなかったことである。これが出来ないおかげでオーストラリアは中央での崩しに終始する必要があったため、ビルドアップのエリアが狭く限定されてしまう。

    オーストラリアはWGにムーイを起用するなど保持の仕様は色濃く出してはいた。ムーイは余剰分子としてフリーマンになることはできていたが、外を使えないオーストラリアのビルドアップでは日本のプレスがなんとか機能している状況が続いていた。

 IHは上々の仕事をしたといっていいだろう。中盤での広い範囲でスピードが要求される守備に加えて、前線に飛び出す役割をこなし、前半早々に点を獲るのだから田中碧には恐れ入る。

 保持の局面においてはゆっくり攻める!がテーマだったが、オーストラリアの守備陣は機動力勝負に弱いうえ、日本は中盤でも前線でもスピードで優位だったので早く攻める場面が多かった。このあたりは相手に合わせての部分が強いので、悪いことではないのだけど、大迫が負傷離脱してしまうとよりゆっくり攻めるのは難しくなりそうなので、そのあたりをどうするかは11月の課題になりそうだ。

 日本は守備においても前がかりの意識は高まりは目立った。特に、WGの前プレの意識が強まり、SBを背中で消すことに失敗することもしばしば。CB→SBのルートはグラウンダーでは問題なくオーストラリアも通すことが出来ていた。この部分で縦に間延びをさせられた結果、日本は同点に追いつく。

 万事休すかと思った日本。ここからはスピード系アタッカーたちにすべてを託して賭けに出る。オーストラリアの方が好機が多かっただろうが、彼らが勝ちを目指してくれたことは日本にとっては好都合。最後は浅野がオウンゴールを誘発。

 外切りを壊された分、分の悪い賭けに出ざるを得なかった日本だが、何とか最後に欲しかった結果を手にすることができた。

試合結果
2021.10.12
カタールW杯アジア最終予選 第4節
日本 2-1 オーストラリア
埼玉スタジアム2002
【得点者】
JAP:8′ 田中碧, 86′ ベヒッチ(OG)
AUS:70′ フルスティッチ
主審:アブドゥラフマン・アルジャシム

2021/11 招集メンバー

GK
マシュー・ライアン(レアル・ソシエダ/スペイン)
ダニエル・ヴコビッチ(NEC/オランダ)
ローレンス・トーマス(ソナーリュースケ/デンマーク)

DF
アジズ・ベヒッチ(ギレスンポル/トルコ)
ミロシュ・デゲネク(ツルヴェナ・ズヴェズダ/セルビア)
カラム・エルダー(ハル・シティ/イングランド)
ライアン・グラント(シドニーFC)
フラン・カラチッチ(ブレシア/イタリア)
トレント・セインズベリー(コルトレイク/ベルギー)
ハリー・サウター(ストーク・シティ/イングランド)

MF
ケネス・ドゥーガル(ブラックプール/イングランド)
デニス・ジェンロー(トゥールーズ/フランス)
アジディン・フルスティッチ(フランクフルト/ドイツ)
ジャクソン・アーバイン(ザンクト・パウリ/ドイツ)
ジェームズ・ジェッゴ(アリス・テッサロニキ/ギリシャ)
マシュー・レッキー(メルボルン・シティ)
ライリー・マッグリー(バーミンガム/イングランド)
ニキータ・ルカヴィツヤ(ハポエル・ペエルシェバ/イスラエル)
ジャンニ・ステンスネス(バイキングFK/ノルウェー)

FW
マーティン・ボイル(ハイバーニアン/スコットランド)
ミッチェル・デューク(ファジアーノ岡山/日本)
アワー・メイビル(ミッティラン/デンマーク)
ジェイミー・マクラーレン(メルボルン・シティ)
アンドリュー・ナバウト(メルボルン・シティ)

第5節 サウジアラビア戦(H)

画像5

■3位を意識した手打ち

 日本がぼやぼやしている間に首位争いの主導権は取りこぼさないオーストラリアとサウジアラビアの2チームにゆだねられた感がある。日本を置いていくためにも負けられない両チームの一戦となる。

 試合は立ち上がりから緊張感のある内容だった。共に守備陣は高いラインを敷くが、むやみに高い位置からプレスをかけ続けるのではなく、相手を追い込みながら選択肢を狭めていくような前線のプレスを行っていた。

 このプレスの効き目がよりあったのはオーストラリアの保持の局面。オーストラリアのPA脇まで横幅を取って広がるCB2人とGKの3人のフラットなラインでのビルドアップやその先の選手たちがサウジアラビアの4-4ブロックにつかまっており、なかなか前進のしどころを見つけられない。加えて、オーストラリアは右サイドのセインズベリーを使ったボール循環はあまり行わないことで、大きく横幅を使う形も行われないため、前進のルートも限定的だった。

 その分、ビルドアップの人数調整に幅を持たせていたのはサウジアラビアの方。噛み合っている4-4-2の中でサリーでズレを作り、サイドから押し上げる3-2-5系の変形を実施。アフロでおなじみのアッシャラハーニーが不在でも左サイドからSB主体の攻撃を実施。SBのアッドーサリーを軸に、左サイドから押し上げる形で前進する。

 しかし、攻撃の面でうまくいっていたのはむしろオーストラリアの方。フルスティッチの大きな展開からメイビルの縦への展開や逆サイドのボイルまでのサイドチェンジなどプレスを脱出し、攻め切る形はいい感じ。ロジカルに前進が出来ていたのはサウジアラビアの方だけど、前進が出来てからゴール前に届かせるところまではオーストラリアの方。

 どちらかといえば展開にあったのはオーストラリアの方。早い展開が刺さり、敵陣のゴール前まで運べるシーンが徐々に増えるように。サウジアラビアはゴール前まで運ぶ馬力に欠けていた印象だった。ただ、オーストラリアはクリティカルな前進を連発できるわけではないので、サウジアラビアは前半の終盤はあえてオーストラリアにボールを譲ることで攻撃の威力を抑えていたように思う。スピードがなければ怖さはやや割引である。

 後半はさらにオーストラリアに流れが傾く。クリティカルな前進が無理ならよりダイレクトに!ということで、ワイドに張ったWGの裏へのパスを増やし、速い展開から前進するように。押し込んでからはタワー型のFWにクロスを放り込んで折り返しを狙うという流れでゴールにかなり近いところまで迫る。

 サウジアラビアは苦しみながらも痛がり祭りでオーストラリアを激怒させつつ、試合の流れをぶつ切りにするなどでこの展開を耐え忍ぶ。

 オーストラリアが仕留められないまま時間が過ぎると、70分を過ぎたところで試合はようやくサウジペースに流れる。ボールを取り返しにいくオーストラリアのプレスが効かない時間帯に突入し、サウジアラビアのショートパスな前進が目立つようになった。間延びをして受けるとバックラインの機動力に難があるので、プレスが空転しながら受ける形はオーストラリアにとって恐怖。

 しかし、サウジアラビアも強引に仕留めるまでは行けず。まぁ、彼らにとっては引き分けも悪くないのだろう。勝ちを目指していなかったわけではもちろんないのだけど、終盤に意地でも相手を置いていく!というよりはここらで手打ちするか!という感じも正直あった。もちろん、その手打ちの原因は彼らより低い勝ち点で迷える日本の存在があるからこそである。

試合結果
2021.11.11
カタールW杯アジア最終予選 第5節
オーストラリア 0-0 サウジアラビア
ウェスタン・シドニー・スタジアム
主審:コ・ヒョンジン

第6節 中国戦(A)

■高さオンリーの解決策で納得のドロー

 割と保持に対する意識が強かった今予選これまでのオーストラリア。しかし、この試合はデュークを狙いとしたロングボールを増やしており、比較的ダイレクトな展開を織り交ぜての前進となった。

 それでも保持の時間が多いのはオーストラリアの方。2CBをサポートするように、動き回るフルスティッチとジェッコの2人を軸としたビルドアップで組み立てを行う。しかしながら、前進した後の武器が乏しかったのがこの日のオーストラリア。中国はSHが撤退してラインを下げることをサボらなかったので、オーストラリアが積極的にSBをオーバーラップさせたとしても、同数で攻める形は変わらず。左のSBのベビッチが攻め上がる機会は多かったが、抜き切ってのクロスは比較的少なかった。

 オーストラリアはなかなかこの状況を動かすことができない。対面にマークがいてもあげられるハイクロスを中心にPAに迫るが、中国はCBが跳ね返し続ける。特にブラウニングの存在が大きく、中国はオーストラリアのクロスを粘り強く凌ぎ続けていた。そのため、デュークがサイドに流れながらのミスマッチ狙いなど工夫を施す。

 中国は跳ね返し続けていたが、38分に決壊。スローインからのリスタートへの対応がやや甘くなり、中央での対応の難易度が上がってしまった。クロスをデュークが叩き込んで先制する。

 頼みのブラウニングが負傷し、ビハインドも背負ってしまった中国は後半は保持に打って出る。中国のポゼッションはそこまで特徴的なものではなかったけども、オーストラリアは前節のサウジアラビア戦に引き続き、ボールをプレスで奪い返すことができない。高い位置まで進むことができた中国はそこからロストをしたとしてもプレスを発動してボールを奪取。自分達のターンを引き寄せる。

 しかし、中国は時間が経つにつれて徐々に中盤の横スライドが甘くなることでオーストラリアの中盤に時間を与えるようになる。だが、ここを活かせないのがこの試合のオーストラリア。日本戦ではキックの多彩さを見せたフルスティッチのサイドチェンジがオーストラリアがギャップを作るための手段の一つだったが、この日はキックが不発。違いを作り出すことができない。

 すると70分。試合が動く。何気ないFKの競り合いからジェッコがハンドを犯し中国にPK。これをウー・レイが沈めて同点に追いつく。めっちゃ点取るな。

 ともに勝利が欲しい両チームだが、攻守の入れ替わりが激しくなる終盤でトランジッションで優位に立ったのは中国の方。ゴールこそ許さなかったオーストラリアだが、高さしか手段がなかったこの試合のオーストラリアの攻め手は乏しいもの。結果だけでなく、内容を見てもドローでも致し方なしといった様子だった。

試合結果
2021.11.16
カタールW杯アジア最終予選 第6節
中国 1-1 オーストラリア
シャールシャ・スタジアム
【得点者】
CHI:70′(PK) ウー・レイ
AUS:38′ デューク
主審:アドハム・マハドメ

2022/1 招集メンバー

GK
マシュー・ライアン(レアル・ソシエダ/スペイン)
ダニエル・ヴコビッチ(NEC/オランダ)
アンドリュー・レッドメイン(シドニーFC)

DF
ミロシュ・デゲネク(無所属)
キー・ロールズ(セントラル・コースト・マリナーズ)
ジョエル・キング(シドニーFC)
ライアン・グラント(シドニーFC)
フラン・カラチッチ(ブレシア/イタリア)
ライアン・マッガワン(クウェートFC/クウェート)
トレント・セインズベリー(コルトレイク/ベルギー)
アジズ・ベヒッチ(ギレスンポル/トルコ)

MF
コナー・メットカーフ(メルボルン・シティ)
アジディン・フルスティッチ(フランクフルト/ドイツ)
ジャクソン・アーバイン(ザンクト・パウリ/ドイツ)
ジェームズ・ジェッゴ(アリス・テッサロニキ/ギリシャ)
ライリー・マッグリー(バーミンガム/イングランド)
トーマス・ロギッチ(セルティック/スコットランド)
アーロン・ムーイ(上海海港/中国)

FW
マシュー・レッキー(メルボルン・シティ)
マーティン・ボイル(ハイバーニアン/スコットランド)
ミッチェル・デューク(ファジアーノ岡山/日本)
ジェイミー・マクラーレン(メルボルン・シティ)
ブランドン・ボレッロ(ディナモ・ドレスデン/ドイツ)
マルコ・ティリオ(メルボルン・シティ)
クレイグ・グッドウィン(アデレード・ユナイテッド)

第7節 ベトナム戦(H)

■30分は遅いくらい

 オーストラリアがベトナムゴールのネットを揺らしたのはわずかに19秒のこと。OFRで取り消されたものの、この電光石火のシュートシーンはこの試合のオーストラリアとベトナムの力関係をきっちりと表していたもののように思う。

 ベトナムは5-4-1であるものの、最終ラインの位置は比較的高め。ミドルゾーンの位置で構えるベトナムの最終ラインに対して、オーストラリアは右サイドから一気に打開。ボイルとカラチッチのスピード豊かな右サイドから一気に切り崩すことで敵陣に進撃していく。

 左サイドではロギッチがライン間のパスを受けて前を向き、リッキーの裏抜けを活用。止まる人と動く人のギャップで崩していく。左右ともにラインブレイクの手段を見出しているオーストラリア。先制点は30分のことだったが、個人的にはオーストラリアがようやく点を取ったという感想。ベトナムが30分持ったのは非常に意外だった。

 先制点の場面は左サイドからのハイクロス。確かに空中戦ではオーストラリアが有利ではあるが、あれだけ対空時間があるクロスへの対応において、一番気をつけるべき9番に対して誰も競ることすらできないベトナムの守備は切なすぎる。

 ベトナムは保持の意識の高さはあり、自陣からのショートパスでの組み立てにはトライするものの、最終的には19番のグエン・クアン・ハイからの一撃必殺スルーパスに頼りがちになってしまう。前線にもフォワードが1枚しか残っておらず、オーストラリアのDFにはバレている状態。これでは流石に厳しい。

 ベトナムの守備の不味いところはボールホルダーへのプレッシャーをかけないところ。ラインが高いうえに、相手のホルダーがフリーとなればオーストラリアが裏を取られるのは当然。前半終了間際に2点目を決めて試合の大勢を決める。

 後半の頭はややベトナムが盛り返す。エリア内までボールを運んで押し上げることができれば、ベトナムにはチャンスがある。オーストラリアはエリア内の守備はかなりバタバタしており、人数がいてもスペースが空いたりフリーの選手を作ってしまったりなどのリスクマネジメントができていない。

 ベトナムには点を返す機会があったのだが、それを生かすことができず。そうしている間にオーストラリアがさらに反撃。ライアンから高いラインの裏に抜けるパスをだすと、抜け出したグッドウィンが沈めて3点目。

 直後に4点目を入れたオーストラリア。ベトナムとの力の差を見せつけて、ここはきっちりと上位陣を追走することに成功した。

試合結果
2022.1.27
カタールW杯アジア最終予選 第7節
オーストラリア 4-0 ベトナム
メルボルン・レクタンギュラー・スタジアム
【得点者】
AUS:30′ マクラーレン, 45+2′ ロギッチ, 72′ グッドウィン, 76′ マッグリー
主審:コ・ヒョンジン

第8節 オマーン戦(A)

■優位に立つも2回の誤算でフイに

 オマーンは4-4-2のフラットのフォーメーションを採用。前節と同じ陣形ででグループ内における3強の一角崩しに挑んでいく。だが、この形は個人的には前節と比べて機能しなかったように思う。

 まず、オーストラリアの4-2-3-1からムーイをアンカーに下ろしての逆三角形のビルドアップにうまく対応できていなかった。おそらく、オマーンは2トップが2CB+アンカーの3枚を監視する形を実現したかったのだと思うのだけど、ここが機能しなかった。枚数が合わない分、ホルダーを捕まえられないことに加えて、オーストラリアはオマーンの最終ラインに対してスピード面で優位。高く設定されたオマーンの最終ラインの裏に積極的に蹴り飛ばすことによってチャンスメイクに成功していた。

 オーストラリアはこの優位を生かし15分にボイルが裏に一発で抜け出した形からPKをゲット。これをマクラーレンが沈めて先制。上位2チームを追いかけるための順調な滑り出しを見せる。

 オマーンの4-4-2フラットは保持の面でも難あり。予選序盤で存在感を見せることができたのは段差の多い中盤が菱形の4-4-2で多くの斜めのサポートを作ることができていたから。4-4-2フラットでは構造上、斜めのパスコースはあまり多く存在しない。

 オマーンはパスコースを創出しようと動き出しても、オーストラリアの中盤は同サイドにグーッと圧縮をかけることで密集をそのまま押しつぶす。オーストラリアは積極的にボールを取り上げることはしなかったので、保持率こそ両チームで差がない展開だったが、主導権はオーストラリアのものだった。

 順調に時計の針を進めていたオーストラリアだったが、後半の途中でまさかの誤算。トランジッションから攻め上がったSBのカラチッチの裏を使われてしまう。カバーに入ったCHを嘲笑うかのように、オマーンはCHが空けたバイタルからミドルを放ちワンチャンスをものにする。オーストラリアにとっては高くつくミスとなってしまった。

 後半のオーストラリアはサリーでバックラインの数的優位を確保し、外循環でボールを前に届けて、クロスを上げることで敵陣に迫る機会が多かった。このクロスがファーに届けば、4枚で迎え撃つオマーンのバックスは対応が難しくなる。そのため、クロスがファーに正確に届くかどうか?がオーストラリアの攻撃がうまくいく分かれ目となっていた。

 79分に勝ち越し点を生んだのもファーへのクロスで競り合うことができたから。こぼれたボールをデュークが落とし、攻め上がっていたムーイが叩き込んで再びリードを奪う。

 これで決着かと思われた試合だったが、終了間際にオーストラリアはまさかのPK献上。人数をかけて囲っていた気になっていたボールホルダーに裏へのパスを出させたことがまずは問題な気がするが、1点目と同じくカラチッチの裏を取られてしまっての失点は切ない。

 2回追いつかれてしまい勝ち点3を積む機会を逃してしまったオーストラリア。3月シリーズの日本とサウジアラビアとの連戦を厳しい状況で迎えることになってしまった。

試合結果
2022.2.1
カタールW杯アジア最終予選 第8節
オマーン 2-2 オーストラリア
スルタン・カーブース・スポーツコンプレックス
【得点者】
OMA:54′ 89′(PK) ファワズ
AUS:15′(PK) マクラーレン, 79′ ムーイ
主審:モハメド・ハッサン

2022/3 招集メンバー

第9節 日本戦(A)

■再び決め手になった川崎ユニット

 レビューはこちら。

 スタートダッシュには失敗したが徐々に順位を上げてきた日本と、日本に敗れてから緩やかに下降線をたどっていっているオーストラリアの一戦。互いに負傷者を多く抱える中でアジア予選はいよいよクライマックスを迎える。

 序盤、ボールを持つ機会が多かったのはアウェイの日本。IHを最終ラインにおろしながらSBを上げる形を取り、サイドの選手を押し上げる。

 中央を固めてくるオーストラリアの守備網に対して、日本は裏にボールを出す形でのアプローチも。浅野、南野などから前線の裏を狙う形で、スピード不足のオーストラリアの弱点をうまく出し抜いて見せた。

 数の上では揃っているオーストラリアの中盤だったが、田中と守田の2人を守るにはメトカーフとステンスネスのコンビはいささか力不足といわざるを得ない。動き直しで相手を置いていかれてしまい、中央から日本のストロングである右サイドへの展開を許してしまうこともしばしば。防波堤になり切ることはできなかった。

 右からの攻撃が成り立つのならば、左サイドの南野は何時ものように安心してエリア内に飛び込むタスクに集中できる。シュートは枠には飛ばなかったけどね。それでも中央でのデュエルと右サイドでの質はオーストラリアに対して決定機を作った大きな強みといっていいだろう。

 一方のオーストラリアは右サイドのフルスティッチへの長いボール一辺倒。日本の左サイドの対応が遅くなりやすいこともあり、右に流れた形からのチャンスメイクを選んだ一因だろう。あわやという冷や汗をかく場面もあった。

 後半、前半以上に長いボールでの前進を狙うオーストラリアに対して、日本はお付き合いする形に。アジアの舞台ではオープンに試合が流れると、それに付き合えるように快足アタッカーを投入するのだけど、この試合ではベンチにそのタスクを請け負える人が不在。いつもに比べると、この時間帯に相手ペースから脱する手段が乏しかった。

 その状況に屈しなかったのが守田。右サイド、深い位置でボールをキープし味方のオーバーラップを促す。手前に引き出してのためだけではなく、奥に入り込んでのつぶれ役も出来ていたので、山根や伊東からすると非常にありがたかったはずである。

 山根、伊東、守田を軸に右サイドでの川崎風味の崩しで優位を得た日本は畳みかけるべく、左サイドに三笘を投入。すると89分。山根のクロスに絞った三笘が先制点をゲット。ワールドカップ出場を大きく引き寄せる。

 つづく後半追加タイムにはまたしても三笘が追加点をゲット。オーストラリアサポーターとライアンに無駄なトラウマを植え付ける形で試合を決定づける。

 守田を軸にした右サイドの崩しとジョーカー三笘。今予選で日本を助け続けた川崎ユニットが最後の最後でも決め手になり、日本は今大会も無事にワールドカップ出場を決めることができた。

試合結果
2022.3.24
カタールW杯アジア最終予選 第9節
オーストラリア 0-2 日本
ANZスタジアム
【得点者】
JAP:89′ 90+4′ 三笘薫
主審:ナワフ・シュクララ

第10節 オーストラリア戦(H)

■プレス耐性と中盤の層の薄さに泣く

 日本のライバルとして、今予選を通じて戦った両チームが最終節に激突。突破の可能性を賭けた一戦ではないということは残念ではあるが、この予選においては屈指の好カードである。

 両チームとも保持を落ち着いてやりたいスタンスは見ることができた。中盤1枚(オーストラリアならばジェッコ、サウジアラビアならばアルナージー)が最終ラインに降りてCBに加わりゲームメイクに参加。保持側は3枚でのビルドアップを行おうとする。守備の陣形はどちらのチームも2トップが先導するプレススタイルなので、このやり方はとりあえず数的優位を確保するという視点では妥当ではある。

 しかしながら、その数的優位の確保が両チームにとってはビルドアップの安定につながることはなかった。互いに高い位置からアタックしてくる相手チームのプレスに慌ててしまい、ボールを落ち着いて回すことはできなかった。

 特にひどかったのはオーストラリア。サイドにボールが出たタイミングでシャドーがスイッチを入れるサウジアラビアに対して、自陣でのボール回しが安定せず、結局はクリアすることになってしまったり、ボールを奪われたり。CHにレギュラーポジションの選手がいないというエクスキューズがあるとはいえ、もう少しできて欲しいというのが本音である。

 サウジアラビアはそれに比べればマシではあった。プレッシングに慌てる場面もないわけではなかったが、CHの相棒のカンノも降りて対角のパスを使いながら圧力を回避していたので、オーストラリアに比べれば逃げる手段はあった。

 オーストラリアのチャンスはほとんどハイラインを敷くサウジアラビアのDFの裏を狙う動きから。これだけ直線的な動きでのチャンスメイクが成立するのだとしたら、もう少しビルドアップの時に裏に蹴って回避することを積極的に取り入れていいと思った。38分のボイルの抜け出しによってネットを揺らした場面(オフサイド判定)はオーストラリアの裏抜けが最もクリーンに決まったシーンだ。

 一方のサウジアラビアはサイドに振りながら薄い場所を作り、壊していく幅を使ったやり方。特に予選を通して効果的だったアッ=シャハラーニーのオーバーラップを使える左サイドを使った攻撃はこの試合でも効いていた。

 後半になるとプレスもトーンダウン。そうなるとオーストラリアも幅を使ったポゼッションをできるようにはなったが、運動量が落ちた影響で直線的なゴールの手段が薄くなったマイナスもそこそこ。薄いサイドを使った攻撃でPKを得たサウジアラビアに比べるとやや物足りなさがあった。

 結局は彼らのスタイルで言えばポゼッションが物足りないのだろう。プレス耐性と負傷者だらけの中盤で3月シリーズはボロボロだった印象のあるオーストラリア。プレーオフの開催される6月にはもう少し上手く戦えるチーム状況になっているといいのだが。

試合結果
2022.3.29
カタールW杯アジア最終予選 第10節
サウジアラビア 1-0 オーストラリア
キング・アブドゥラー・スポーツシティ
【得点者】
KSA:65′(PK) アッ=ドーサリー
主審:アドハム・マハドメ

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