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「ブレントフォードさん、シティの勝ち方教えてよ」〜勝手にプレミア定点観測 22-23 まとめ part1~

今季も終わったお疲れ様!恒例のまとめだけど長いので5チームずつにするね!それでは早速スタート!

目次

【1位】マンチェスター・シティ

25勝5分5敗/勝ち点89/得点94 失点33

充実のシーズンには仕上げが必要

 優勝おめでとう!というわけで長いこと首位に君臨したアーセナルを逆転し、今季のプレミアを制したのはシティ。これで3季連続のリーグ制覇である。

 もっとも序盤戦は順風満帆だったわけではない。ハーランド×デ・ブライネのホットラインが早々に開通したのは朗報だったが、得点を積み重ねるハーランドをよそに、マンチェスター・シティらしい手数をかけた崩しが見られないことにどこか首をかしげてしまう試合が多かった。

 空気がやや変わったのはW杯明けである。リコ・ルイスの登用に伴い3-2-5型への明確なシフトが見られたこと。また、この3-2-5型のRSB役を攻撃色が強いリコ・ルイスからCBのストーンズにスイッチすることで後方の均質性、守備の強度の担保を図ったことである。

 左サイドはこうした文脈とはやや離れた形でカンセロからアケがレギュラーポジションを奪いつつあった。これにより、バックラインにはCBがずらり。シティは「ボールを持てるけどカウンターに弱い」という従来のイメージを払しょくし、対カウンター性能を高めた布陣をひくことができた。

 この後方CB型の3-2-5を成り立たせた影の立役者はグリーリッシュだろう。同サイドは攻め上がりの少ないアケとボックス内の仕事に特化したがるギュンドアン。サポートが少ない左の大外でのタスクを1人でこなし、背負った状態から前にボールを運ぶアクションまでもっていくことができていた。3-2-5で後方の強度を担保するという前線の攻め手が限られやすい環境で、攻撃が成り立っていたのは彼の功績も大きい。

 終盤戦のリーグ戦のシティはコンディションもさることながら、非常に余裕があったのが印象的だった。まずは相手の出方をうかがって、シティ対策をどのように講じてきたのかを解析する。中盤がマンツーでくるならデ・ブライネやベルナルドが移動を開始し、オールコートのハイラインでついてくるのであれば、とっととハーランドである。

 相手が極端に引いてきたときの攻略には少し時間がかかった印象だが、これは3-2-5の構造を維持したままでの攻略にトライし、だめならばロドリやストーンズの攻め上がりを解禁するなど、段階的に攻め込み方の強度を上げていったからだろう。相手の攻め筋が薄いと感じたら最後の手段として前方に人数をかける形を使う。そういうイメージである。

 このように相手に合わせた攻略法をアナライズして適応することであっという間にセーフティリードを奪い、終盤は強度を下げてクローズ。怪我と無縁のシーズンとなったのはプレータイムのシェアもさることながら、90分間のうち強度の低いプレーに終始する時間を作れたことによる部分も大きいだろう。

 継続した安定感が問題ないとしたら、残るはカップ戦という一発勝負における最大出力の担保が課題になる。解決のキーになったのは原点回帰である。FA杯ではベルナルドの途中投入によるハイプレスの解禁。ゆるりと進んでいた試合のペースを一気にシティ側に引き込み、終盤に相手を引き離す決め手となった。

 さらには、オールドファッション型のサイドに人数をかけた攻撃にハーランドを組み込めるかどうかは終盤戦まで未知数な課題となっていた。これを解決したのがCLのマドリー戦。1戦目の均衡した展開を打ち破ったのはグアルディオラのシティの原点であるサイドのトライアングルとハイプレス。ともにハーランドを融合しても問題なく機能していたのが印象的。多くの顔を持つ上に、その顔を自在に使い分けることができることを証明した一戦だった。

 シーズン終盤まで右肩上がりを続けてきた今季は充実のシーズンといえるだろう。だが、残る2つのカップ戦ファイナルを落としてしまえば、成功のシーズンという雰囲気は一気に変わりかねない。同じ町のライバルが待ち受けるFA杯と悲願のビッグイヤーのタイトルをそろえなければ大団円の終幕にはならないだろう。

Pick up player:エーリング・ハーランド
 W杯不出場で実質ウインターブレイクがあったというエクスキューズはあるが、それでも通年大きな怪我無く駆け抜けてゴール記録を塗り替えてしまうのだから文字通り異次元の存在である。つなぎの局面においても降りてきてワンタッチで落とし、裏を狙う動きのスムーズさが徐々にみられるように。課題も着実に克服しており、来季はさらにライバルたちの頭痛の種になりそうな予感もある。

今季の道のり

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【2位】アーセナル

26勝6分6敗/勝ち点84/得点88 失点43

新しいフェーズでも躍進を継続できるか

 やや、尻すぼみのシーズンになったことは否めないが、それでもミケル・アルテタと彼の教え子たちにとっては大きな成果を上げた一年だったといえるだろう。特にW杯の中断前までのプレミアはアーセナル一色だったといっても過言ではなかった。

 前半戦はマンチェスター・ユナイテッドにこそ屈したものの、チェルシー、リバプール、トッテナムとここ数年は後塵を拝していたライバルたちを撃破。結果もさることながら、目を見張るのはその試合内容。ここ数年のアーセナルは強豪対決では割り切った守備をベースとして少ないチャンスを生かす形での勝利か、真っ向勝負での力負けが際立っていた。今季のアーセナルはまさしく正面突破。がっぷり四つでCL出場権争いのライバルたちを打ち崩して19試合で勝ち点50という、前年優勝争いに絡めなかったチームとしては考えにくいレベルの数字を打ち出して見せた。

 大きかったのは既存戦力と新戦力の融合だ。ジェズス、ジンチェンコというシティ組とレンタル復帰したサリバの3人はハイプレス、小気味いいパスワークからの前進に、ハイラインにおける迎撃とハイテンポで攻撃と守備を回すために必要不可欠なピースだった。

 全体の設計図が明確になった分、既存戦力が大きくレベルアップしたのも見逃せない。特にBtoB型として自陣のPA内の封鎖から中盤での繋ぎに加え、敵陣でのフィニッシュまで仕事の幅を広げたジャカはプレミア全体を見渡しても今季大きくスキルアップした選手の1人といえるだろう。

 得点を量産したウーデゴールも恩恵を受けた1人。サカ、ホワイトという右サイドの新コンビでサイドから押し下げる確固たる手段を確立すると、マイナス方向からミドルを仕留める(SJPのニューカッスル戦は素晴らしかった)もしくはエリア内に飛び込んでのフィニッシュという形で得点を量産していった。MFでPKなしでこのゴール数は手放しで称賛されるべきものである。

 ジンチェンコ、ジェズスという前半戦から中盤戦にかけての負傷者は何とかカバーしたし、トロサールやジョルジーニョといった経験値が豊富な面々が加わることにより、今季のアーセナルのスタイルを持続可能にする準備は整ったといえるだろう。狙ったものではないにせよFA杯とELの早期敗退もリーグ制覇に向けた後押しにはなっていた。

 しかし、サリバと冨安の同時離脱によって、アーセナルの右側後方のユニットの機能性は大きく低下。代役を務めたホールディングやキヴィオルはそれなりの守備性能は見せてはいたが、サリバがこなしてきた役割と比べればスケールダウンをしてしまうのは否めない。

 攻撃においても右のCBの保持での押し上げが効かなくなったため、ホワイトとサカを軸とした右サイドの攻略は前半戦ほど威力が高いものにはならなかった。サリバの離脱に目が行きがちだが、冨安の負傷も痛かった。終盤戦のリバプール戦とウェストハム戦はいずれも前半戦の必勝パターンだった先行逃げ切りが機能せずに2点差を追いつかれてしまった試合。ボールを持たずに強度を担保できる冨安がいれば、この2試合の結果は違った可能性がある。

 自分たちの力でとれたはずのタイトルを逃してしまい本当に悔しいシーズンになったアーセナル。しかしながら、今季は自分たちが何者かを示せたシーズンとなる。自己紹介は終わり。来季は強いアーセナルのイメージを持続しつつ更新していくことができるかどうか。舞台をCLに移して始まる欧州の舞台との両立はできるのか。アルテタのアーセナルは来季新しいフェーズに挑むことになる。

Pick up player:ガブリエル・ジェズス
 終盤はスコアラーとしての物足りなさが出たシーズンかもしれないが、攻守ともにチームをプレミアで優位に戦える水準に引き上げられたのは彼の貢献度が大きかったから。ジェズスがいなければ今季のアーセナルは優勝争いのスタートラインにすら立てていないだろう。

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【3位】マンチェスター・ユナイテッド

23勝6分9敗/勝ち点75/得点58 失点43

スケールアップを視野に入れた初年度としては大成功

 近年のプレミアリーグにおいては時代を掴むチームがいくつか出てきている。いうまでもなくグアルディオラのシティ、クロップのリバプール。そして、今はアルテタのアーセナルがこうしたチームに肩を並べられるかどうかの挑戦権を得たといったところだろう。

 こうした一時代を築くチームの共通点は何か。それは指揮官自身が時代を背負うチームのリーダーとしてふさわしいことを示しつつ、自分好みのプレイヤーを集め、複数回の市場をかけてチームを刷新することである。

 監督が信頼を勝ち取るためにはタイトル獲得以上の効果があるものはない。多くの選手を集めるにはCL出場というブランド価値があった方が明らかに優位だ。今季のテン・ハーグはこの2つを両立させた結果を手にしたというだけでも大成功だといえるだろう。

 確かにアヤックス時代に彼が見せていたスタイルに比べれば、今のユナイテッドは非常にマイルド。強度を大事にしている中盤の人選は少ない人数でボールを後方から運ぶことを第一優先にとらえられているとはいいがたい。

 後方からのボールキャリーは増えてはいるが、移動によって生じたズレを前に送ることができているとも言い難いし、前線はやたらと急いで攻撃をしたがる。ボールを握りつつ、試合の主導権のスタイルを確立したシーズンとは言えないだろう。結局カウンターが一番点を取れるじゃん!と言われてしまえばそれまでである。テン・ハーグのサッカーが十分に浸透したチームというのは乱暴だろう。

 とはいえ、ユナイテッドは実質再建1年目のチーム。リサンドロ・マルティネスやエリクセンのような自らのスタイルに合う選手を獲得しつつ、カゼミーロで中盤の強度を担保したり、ワン=ビサカにスタイル適応を促したりするテン・ハーグのスタンスは「他国からやってきた監督がユナイテッドで1年目の指揮を執る」という意味では非常に順当なスタンスだったといえるだろう。理想に溺れることなく、現実と向き合いながら今できる打ち手を講じる指揮官のあがき方は個人的には好感が持てる。

 チーム作りが順調に進んでいる幸か不幸か年明け以降のスケジュールは殺人的なものだった。FA杯、リーグ杯、プレーオフ送りになったEL、そしてプレミアの4つのコンペティションを同時に戦える器用さも層の厚みもこのチームに求めるのはまだ酷である。

 過密日程にまず悲鳴を上げたのはバックラインだった。ともにW杯をフルで戦ったマルティネスとヴァランは共に負傷で苦しみ、カゼミーロは一発退場における出場停止でかさばり、春先はまともに稼働ができなかった。背骨といえる後方ブロックにガタが来た段階でプレミアとELのタイトルは明らかに白旗を上げざるを得ない状況だった。

 それでも例年譲り合う4位争いでは踏ん張りを見せてCL出場権は余裕をもって確保。シーズン終了後には隣人に一泡吹かせるチャンスがウェンブリーで待ち受けている。

 とはいえ、リーグカップタイトルとCL出場権の安定した確保だけでは一時代を築くチームは作れない。どこかでスケールアップが必要になる。来季以降は当意即妙さだけではなく、自分たちのやり方で相手をぺしゃんこにする強さを身に着ける必要があるだろう。

Pick up player:マーカス・ラッシュフォード
 キャリア最高のシーズンとしてチームを何度も勝たせては来たが、まだ好不調の波という改善点は残っている。リーグを代表するFWとして君臨するために克服する課題が残っているのはチームの状況とも被る。来季はキャリアハイのシーズンを更新する凄みをまといたい。

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【4位】ニューカッスル

19勝14分5敗/勝ち点49/得点68 失点33

強豪変貌へのセオリー踏襲で負けないチームに

 プレミアリーグにおいて諸手を挙げて成功のシーズンと位置付けることができるのはシティに次いでニューカッスルだろう。20年ぶりのCL出場権をもたらしたエディ・ハウと選手たちにとっては偉大な功績を手にすることができたシーズンとなった。

 昨シーズンの半ばに行われたサウジアラビアサイドによる華やかな買収劇に比べればクラブの動きは非常に堅実なもの。えてして、後方から手を付ける大型補強は実を結びやすいというのが個人的な感覚なのだが、ニューカッスルも例外ではなかったように思う。

 ポープ、ボットマン、シェアのトライアングルは非常に強固。勝ちきれなかった試合が多いのも事実だが、シティと並んでプレミア最少の敗戦数を記録したのは彼らの貢献が非常に大きいことは言うまでもない。

 中盤より前も守備の強固さに大きく貢献したといえるだろう。ハイプレスでもローラインブロックでも安定していた4-5-1は非常にコンパクトで保持側としては圧を感じたはずである。

 万能性をすでに昨年示していたジョエリントンはリーグトップクラスの汗かき役のタスクをシーズン通してやり続けた。サイドの守備の封鎖にSBとWGに加えてIHが寄与できたのもニューカッスルが少ない失点で1年を過ごすことができた大きな要因である。

 イサク、ウィルソン、アルミロンといった前線の選手たちはそれぞれ異なるタスクを担いながら、時期によってベストメンバーを代えながら調整。特に2人のストライカーは共に2桁ゴールを達成するなど大きな成果を残した。

 強いて懸念点を挙げるとすれば、特にWGのパフォーマンスが年間を通して安定しなかったことだろうか。右のアルミロンはシーズン前半の勢いを後半まで持続できていなかったし、サン=マクシマンは負傷と復帰を繰り返すある意味いつも通りのシーズン。イサクのサイド起用やマーフィーの躍動で穴を埋めることはできたが、4-3-3であれば年間を通して計算できるWGが欲しいところである。イサクとウィルソンの負傷が少なくないプレイヤーであることも2つのコンペを戦う来季の不安要素だ。

 なお、後方のユニットは逆に軸がはっきりしている分、替えが効かないポジションが多いのが課題になる。ポープ、トリッピアー、ボットマン、シェア、ギマランイス、ジョエリントンは現状では代替不可能といえる選手だろう。特にギマランイスがリーグカップの退場で出場停止だった時期は今季のニューカッスルでもっとも苦しい戦績だった。

 チームとしての課題はまずはこうした代替不可能な戦力が多い中でCLとの両立をどうするかだろう。それに加えてレスター戦のように徹底して引いてくる相手にはもう少しアクセントが欲しいところ。負けないチームからより勝てるチームへの変化を遂げられるかどうかが次の壁になるだろう。

 CL出場権を確保したことで夏のマーケットでの注目度は段違いだろう。どこまで派手な動きを見せるのか、そしてラブコールに応える選手がどれくらいいるのか。ほかのプレミアの強豪からしても気になるところだろう。

Pick up player:アレクサンドル・イサク
 ソシエダでやや湿りがちだった決定力に関する不安は杞憂だった。中央、サイドとプレーエリアを問わず、チャンスメイクからフィニッシュまで幅広く貢献できる万能型ストライカー。身長の割にはエアバトルに強みがなさそうなところと稼働率は懸念だが、逆に彼がフルシーズンでコミットできればニューカッスルの攻撃力は数段上がるだろう。

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【5位】リバプール

19勝10分9敗/勝ち点67/得点75 失点47

難点を解消するアーノルドシステムと前線の怪我人復帰で巻き返し

 欧州とプレミアの両方での覇権奪回は端的に言えば失敗に終わったし、来季のCLでマドリーにリベンジをする機会すら失ってしまっ厳しいシーズンとなってしまった。リバプールがCL出場権を逃すのは7シーズンぶりのこととなる。 

やはり大きいのは序盤戦の出遅れだろう。トップハーフをキープするのが精一杯。開幕3戦の勝ちなしや10月末にノッティンガム・フォレストとリーズに喫した連敗などは調子のいい時期のリバプールであればありえない戦績である。

 やはり痛手だったのは怪我人の多さだろう。鉄人サラーは相変わらず頑丈だったが、特に前線はメンバーを選ぶ余裕が出るのに年が明けるのを待つ必要があった。中盤では保持のロールで重要な役割を果たすチアゴが年間を通してコンスタントに出場ができなかったのが大きかった。

 その結果、引き起こされたのは左サイドの機能不全。IHから落ちてボールの収めどころになることができるチアゴの不在とマネの退団にジョッタとディアスの負傷が重なった左サイドはほぼ幅を取っての攻撃が機能せず。

両サイドから均質的なアタックを仕掛けることは不可能。直線的な動きを得意とするヌニェスを左寄りで起用しつつ、実質ストライカーの枚数を増やす措置をとるしかなかった。右のサラー、アレクサンダー=アーノルドのコンビはフィニッシュだけでなく、崩しにおいても重要な役割を担うことになる。負荷はかなり大きかったといえるだろう。

 中盤にも結局年間を通してチアゴの代わりになるような柱は出てこず。やはり、こちらも稼働率がネックになる選手は多く、短期的にパフォーマンスがいい選手を重用することでしのぐ時期が長かった。そうしている間にCL出場権のボーダーはかなり彼方に飛んで行ってしまったし、CL本戦もマドリーを跳ね返すことができずに敗退してしまった。

 潮目が変わったのはホームのアーセナル戦で採用したアレクサンダー=アーノルドの中盤起用だろう。インサイドに司令塔役としてボールの落ち着かせどころを入れ込むことで保持局面を強化する役目を託された格好だ。中盤の主軸不在と左IHのビルドアップ関与を免除し、左サイドの攻撃に専念させることの2つの面でリバプールの課題の解決を図る。

 クロップにとって幸運だったのはこのタイミングでディアスやジョッタの復帰やガクポのフィットで前線の火力が増したこと。正直、頭からうまくいったとは言い難い中盤起用だったが、トランジッションから前線が点を取りまくることでなんとか攻撃を成り立たせていた。もっとも、中盤から前線の強度を生かす形は中盤に入ったアレクサンダー=アーノルドの起用によるところもあるかもしれないが。

 だが、それよりも本丸なのは終盤に見られたように中盤に起用されたアレクサンダー=アーノルドがPAやバイタルにガンガン入っていきながらラストパスやミドルを決めるパターン。この右足の精度をゴールに直結する形で使わないのは宝の持ち腐れなので、きっちり押し込める仕組みに仕上げたいところ。

 もちろん、課題はある。左サイドの攻撃のクオリティアップできるIH(ブライトンのあの人を主軸に据える計画なのだろう)やアレクサンダー=アーノルドをカバーできる中盤やバックスの強度担保は必要になるだろう。降格が確定したサウサンプトン相手さえゴメスとマティプでは4点取られるのだ。

 アレクサンダー=アーノルドシステムが今季限りのテストなのか、来季のメインなのかは今のところはわからない。ただ、暫定的にリバプールの不具合を修正する形なのは確かだし、課題を解決し人員がそろったリバプールのクオリティの高さを証明する後半戦にはなっただろう。

CLに届かなかったのは失敗だが、前半戦の出来を考えれば「CLに届くかも?」まで持ってこれただけ立派な感じもする。後半戦の勢いを来季も維持できれば優勝候補だろう。

Pick up player:モハメド・サラー
 毎年公式戦トータルで4000分の出場時間と30ゴールを保証してくれるプレミアを代表するエースは今年もこのノルマをクリア。すごいですね。鉄人ですね。

今季の道のり

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 つづく!

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