MENU
カテゴリー

「Catch up 日本代表」~2023.6.20 キリンチャレンジカップ 日本×ペルー ハイライトレビュー

目次

WGを軸とした攻撃設計が猛威を振るう

 6月シリーズの第2ラウンドは大阪に舞台を移しての一戦。オーストラリアに大陸間プレーオフで敗れてしまい、惜しくもワールドカップの本戦出場を逃してしまったペルーとのゲームである。

 ペルーはコパ・アメリカで見たことがあるのだが、その時とほとんどイメージは一緒。同じゲームモデルでプレーしているのだろう。基本的なビルドアップはCBとCHの4枚で実施。CBの周りをCHが動きながら最終ラインに加わる。ジョトゥンは左のSBの位置、カルタヘナはCBの間に降りることが多く、どちらか1人は少なくとも中盤に残る約束事。

 中盤に残った1枚をアンカー的におきつつ、SHのクエバとペーニャの2枚がIHのように中央に絞る。SBは高めの位置を取り大外を独占する格好である。外側のレーンはSHとSBが入れ替わることもしばしばで厳密な固定はない。が、自由度もそこそこでフリーダムではない。特に前の方では自由な移動よりも互いのポジションバランスを重要視した配置になっていた。

 日本はこれに対して、鎌田を1列前に上げる4-4-2型のプレッシングを行う。日本のプレスのポイントは陣地の外のアウトナンバーは無視していいというセオリーで行われていたことにある。ペルーのビルドアップは最終ラインに落ちる動きを見せたり、2トップの脇に立ったりなど相手のプレスを前に引き出すような誘い水がいくつか散りばめられていたが、ここに乗らないことを徹底。SHも含めてインサイドを締めるような横幅もコンパクトな4-4-2で外に逃げられる分にはOKという割り切りが見られた。

 ボールホルダーを深追いしないという方針は我慢できずにプレスに行くことが多い森保JAPANにしてはやや珍しい兆候のように思えた。ただし、結果的にペルーのチャンスはトランジッションからFWのラパドゥーラが裏に抜ける形が多かったため、ゆったりとボールを持たせる自由を与えることは悪くない選択だったように思う。配置が整っているが、決め手にかけるというペルーの動きは尖った武器のない保持型のチームのあるあるのように思えた。

 日本は立ち上がりはカウンターから前進を狙う。直線的な動きができる古橋と伊東を軸に右サイドを抜ける形からロングボールを狙う立ち上がりだった。

 ペルーは日本と同じく中央を固める動きである程度バックラインにはボールを持たせることを許容する。日本がペルーと違ったのはサイドに決め手があること。三笘と伊東という両翼は日本の攻撃における生命線。ペルーの中央を固めて外での勝負を受け入れるような方針は日本と対峙するのに相性が悪かった。

 中央は固められてもサイドからサイドへの大きな展開で勝負所を作れる日本。三笘は正対するだけで味方がオフザボールでの仕掛けをするための時間を作ることができるし、逆サイドの伊東には敵より先んじてオーバーラップを仕掛けられる菅原がいる。どちらのサイドでもペルーの守備に対してある程度の計算の立つ攻撃ができていた。

 そのため捕まりがちな中央でも少しの隙ができれば左右に展開。旗手はやや苦労していたが、遠藤や鎌田は切れ目からのサイドの展開で日本の勝負所にボールを届けることができた。

 その勝負所から日本は前半に2つのゴールを手にする。どちらの得点も右サイドから左という形でのフィニッシュ。1点目は伊東からの横パスを受けた先にいた伊藤のゴール。思い切って左足を振り抜いたシュートは嬉しい日本代表初ゴールとなった。

 このシーンでのペルーは横の守備のチェーンが切れてしまったことが失点の原因となった。伊東に2枚目の守備として向かったジョトゥンのプレスに、カルタヘナは全くついて行く素振りを見せず。この両CHの動きのギャップがペルーが中央から右エリアをカルタヘナとペーニャの2枚で守ることになった大きな原因。この隙を伊藤が見逃さなかった。

 2点目は低い位置まで降りた伊東→菅原のスイッチが起点となった縦に鋭い攻撃。抜け出した菅原からパスを受けた鎌田が見事なコントロールで逆サイドの三笘までボールを届ける。これを三笘がカットインから決めてゴール。前半のうちにペルーを突き放す。

 ポゼッションが安定していたペルーと比べれば、日本はやや点を結ぶような危うい繋ぎになっていたように思えたが、WGという明確な預けどころがあったことと、特に右の伊東を軸としてのロスト後の即時奪回の守備が非常に効果的。ロスト後にペルーに対して簡単にオープンな状態での攻撃を許さなかったことがポゼッションの不確実性をうまく補っていたように思う。

 WGという強みを活かした攻撃で結果を出した日本。2点のリードでハーフタイムを迎える。

 後半、ペルーは3枚の交代カードで流れを変えにくる。基本的な構造やペルーがボールを持つという流れは前半の立ち上がりと変わらなかったが、変化をつけたのは中央に積極的に縦パスを入れて細かいパスのコンビネーションを活かすこと。また、バックラインもしくはラインを落とした中盤から大外に直接ボールをつけ、その動きと合わせるように同サイドのハーフスペースの裏抜けをセットにするなど、少し動きをつけていこうとした。

 日本の武器は前半と変わらずカウンター。三笘を軸としたひっくり返すアクションから前半と同じような反撃の動きで後半の立ち上がりを過ごす。

 日本の守備は前半よりは危険なシーンは多かったように思う。例えば、鎌田のロストから菅原が置き去りにされたシーンは前半効いていた即時奪回の崩壊だし、サイドの封鎖に守田が足を滑らせてヘルプに行けなかったことはペルーの後半の仕掛けが効いていたとも取れるだろう。

 しかしながら、この日の日本はこうした多少の不都合は吹き飛ばせるカウンターの破壊力があった。60分の交代で前線に入った前田を含めた3トップは後半も絶好調。前田へのロングボールのセカンド回収から陣地回復を一手に引き受けていた三笘の持ち上がりでゴールに迫ると、最後は伊東が落ち着いて流し込みに成功。カウンターの威力で日本の気になるポイントを帳消しにする。

 4点目はこの日あまり見られなかった自陣からの組み立てをきっかけとした得点。右のSBに入った相馬の前進から久保と堂安の交代組のパス交換にトライする。これは相手ボールになったが、マイナス方向のパスミスを掻っ攫った前田がダメ押しのゴールを決めた。

 最後は途中投入でCHに入った瀬古が対応で後手を踏み、ゴンザレスに1点を許した日本。だが、大量4得点でペルーを一蹴。苦手な吹田スタジアムでようやく勝利を挙げた。

ひとこと

 W杯でレギュラー格でなかった選手を中心に代表のやり方に馴染んでいることも触れないといけないとは思うが、やはり三笘と伊藤は凄まじかった。アジアカップでも基本はこの両WGを軸としたスピードを活かした設計になるのだろうと思う。また、前半に見られた我慢が効く4-4-2ゾーンもこれまでの森保JAPANの文脈で言えば十分な収穫になるだろう。

試合結果

2023.6.20
キリンチャレンジカップ
日本 4-1 ペルー
吹田スタジアム
【得点者】
JPN:22′ 伊藤洋輝、37′ 三笘薫, 63′ 伊東純也, 75′ 前田大然
PER:83′ ゴンザレス
主審:ハミス・アルマッリ

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次