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「Catch up Premier League」~2023.8.6 コミュニティ・シールド マンチェスター・シティ×アーセナル ハイライト

目次

今季のポイントを抑えたアーセナルの試行錯誤

 シーズン開幕を告げるコミュニティシールドがリーグに先立って開催。相対する2チームは22-23のプレミアを牽引したといっていいシティとアーセナル。ウェンブリーで23-24の開幕を彩る。

 試合の大枠の印象を述べれば強度はそこそこに保ちつつ、瞬間的な切れ味はさすがと思わされる90分だったといえるだろう。特にプレスからリトリートに移行する部分は両チームとも力を入れており、リーグが開幕しても簡単に得点を許さないだろうことを予感させる仕上がりだった。

 序盤にボールを持ったのはシティ。昨季のトレードマークだったストーンズの移動は封印し、4-2-3-1というオーソドックスな座組を維持した形でボールを動かす。

 アーセナルのプレッシングは強度は控えめだが、位置は前がかり。4-4-2がベースの形ではあったが、ウーデゴール、ハヴァーツに加えて、ライスが前方にスライドすることで前は3枚になり、トーマスとは前後関係になることが多かった。

 ハヴァーツはストーンズを監視し、右足の方向からパスコースを切るように左に追い立てる。ウーデゴールはコバチッチ、ライスはロドリを監視し、サカは前プレには加わらず、アカンジのポジションを基準に戻る。ディアスは放置でボールを持たせる。ハヴァーツの追い込む方向から考えると、アーセナルはそちらにボールを誘導しているともとれる。

 去年のシティに対するアーセナルの対策といえば、オールコートマンツーだったが、それに比べれば高い位置で制限しながらボールを追い込んでいくことが可能かどうか?というところをチェックしているように見えた。中盤は人についていく動きが大きかったようにも思うが、ライスはロドリが最終ラインに下がる動きを見せると、完全放置の構えだったことを踏まえると、陣形を維持することを優先していたようにも見える。

 前半のアーセナルはシティ相手に高い位置からのプレスとリトリートを長時間持続可能な仕組みで両立することに重きを置いているように見えた。後方の数的優位を保険として担保しつつ、前プレスの可能性も消さない。サイドに追い込んだら、狭いスペースに囲い込んでカウンターへの移行を狙う。ライスに前方の守備への参加を促すのも、ジャカと違い機動力があるライスであれば、よほど直線的に進まれない限りは帰陣が間に合うという算段が立つからだろう。

 このアーセナルのテストはそれなりにうまくいったように見えた。序盤のシティの前進は降りたロドリからのサイドへの展開がベースになることが多かった。アカンジのオーバーラップからチャンスはあったが、サカのプレスバック遅れという個人のミスに分類できるレベルなので、アーセナルの仕組みが崩壊していたとは言えないだろう。

 押し込まれる場面は多くとも、インサイドが簡単にクロスに屈することはなく、低い位置でしのぐ部分においてアーセナルは高いクオリティを見せた。ただし、捨てたディアスから普通に運ばれたシーンがあったことは心にとめておきたい。

 もう一つ、アーセナル側で見られたのは保持における後方の乱数の多さ。ティンバー、ライスの2人はトーマスの位置を基準に縦横無尽に動き回り、シティにプレスのポイントを絞らせなかった。まだ開幕前だからという部分はあるが、シティにプレスに対してはこの流動性はそれなりに効果があったといえるだろう。

 前線の収まりどころとしてはハヴァーツが機能。ストーンズ相手に背負えるフィジカルを有しており、ゴールに背を向けても柔軟に働ける選手であることを証明して見せた。

 ライスは最終ラインにサリーするなど、かなり後方のタスクが多かった分、左サイドの高い位置での攻撃には顔を出せてはいなかった。ということでアーセナルの攻め手は右サイド。特に右の大外に張っている選手にインサイドにボールをコントロールしながら次の一手の見据えるというところからチャンスを作っていく。

 とりわけホワイトがチャンスを作ったシーンは見事。ハヴァーツの決定機を生みだすなど、サカという基準点を経由せずとも自身のオーバーラップを活用できるところを見せた。サカもキレキレ。ファーストタッチのコントロールでアカンジを翻弄する場面が多かった。

 トーマス、ロドリという重鎮2人はフリーになるたびに凄みのある縦パスを出していたのはさすがの一言。無理にプレスに行かず、リトリートの際の帰陣ができている両チームにとって、一気に前に進める彼らのパスはブレイクスルーになりうる。逆に言えば、それ以外は前進の手があまり効かず、非保持側が無理なく対応できたということだろう。

 後半に堅い試合を動かそうとしたのはシティ。右WGでスタートしたベルナルドをインサイドレーンにコンバート、その大外はウォーカーかストーンズが務めるという感じだった。

 シティの方向性にやや戸惑い気味のアーセナルだったが、右サイドのウォーカーの爆走オーバーラップをティンバーが封殺したことは大きかった。対人守備で大きく引けを取らなかったことは今後のレギュラー争いにおいてセールスポイントになる。

 そういう意味でシティのポイントになりそうなのは中央に登場したベルナルド。前半にライスが飛び出す際に生み出すスペースを狙える選手が中央にいることで、ややアーセナルの前プレを牽制しているようだった。

 さらに、デ・ブライネという不確定要素が入ったことで一層主導権を握るシティ。そして先制点を手にしたのも彼ら。アーセナルの守備ブロックに跳ね返されたかと思いきや、セカンドボールを拾い、パルマーがペナ角付近から左足で振りぬく。交代直後のティアニーとしては逆を取られてしまい、悔いが残るシーンとなった。

 交代選手が続々と入ったこの日のアーセナルの最終形態はトーマスを保持のアンカー、非保持のCBとして役割をセパレートする形。中盤と前線にはトロサール、エンケティアといった攻撃的なタレントを中心に起用。ファビオ・ヴィエイラが右の大外レーンでホワイトと出番をシェアしていたのは驚いたが、プレー自体には違和感はそこまでなかった。

 攻め立てる機会をいかし、後半終了間際にゴールを決めたのはアーセナル。トロサールの切り返しからのミドルがアカンジに跳ね返り、シティの勝利目前で試合は振出しに戻った。

 土壇場の同点劇で決着はPK戦に。PK戦を制したのはアーセナル。モナコ戦に続いてPKを止めたラムズデールの活躍で、アーセナルが開幕前の今季1つ目のタイトルを祝うことに成功した。

ひとこと

 強度を上げない状態で試合を支配できるか?は今季の命題だと思うので、前半のような簡単にボールを奪わせず、強度任せにしない撤退守備とプレスの両立という方向性はとても説得力があるものだったように思える。

試合結果

試合結果
2023.8.6
コミュニティ・シールド
マンチェスター・シティ 1-1(PK:1-4) アーセナル
ウェンブリー・スタジアム
【得点者】
Man City:77′ パルマー
ARS:101‘ トロサール
主審:スチュアート・アットウェル

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