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「どう来ようが受けて立つ」~2022.10.1 プレミアリーグ 第9節 アーセナル×トッテナム プレビュー

目次

Fixture

プレミアリーグ 第9節
2022.10.1
アーセナル(1位/6勝0分1敗/勝ち点18/得点17 失点7)
×
トッテナム(3位/5勝2分0敗/勝ち点17/得点18 失点7)
@エミレーツ・スタジアム

戦績

過去の対戦成績

 過去5年の対戦でアーセナルの4勝、トッテナムの5勝、引き分けが2つ。

エミレーツ・スタジアムでの対戦成績

 過去10戦でアーセナルの5勝、トッテナムの1勝、引き分けが4つ。

Head-to-head from BBC sport

・トッテナムは直近37試合のリーグのアウェイアーセナル戦で2勝のみ(D14,L21)。勝利は1993年と2010年のもの。
・直近23試合のリーグ戦のこの試合でアウェイチームが勝ったのは2014年のホワイト・ハート・レインで0-1でアーセナルが勝利した試合が唯一。
・アーセナルは1998年のスコアレスドロー以降、直近23試合のホームのトッテナム戦でいずれも得点を挙げている。

スカッド情報

【Arsenal】

・トーマス・パーティ、オレクサントル・ジンチェンコ、冨安健洋は怪我の経過を観察する。
・キーラン・ティアニーはおそらく起用可能の見込み。マルティン・ウーデゴールとリース・ネルソンはフィット。
・エミール・スミス・ロウは鼠蹊部の怪我で12月まで離脱。

【Tottenham】

・デヤン・クルゼフスキは筋肉のトラブルがあり当日判断。
・ウーゴ・ロリス、ベン・デイビスは代表を欠場しており出場可否は不明。ルーカス・モウラは欠場の見込み。

Match facts from BBC sport

【Arsenal】

・リーグ戦でのホームゲームは6連勝中であり、3勝は今季のもの。
・しかし、3月のレスター戦以降、直近8試合のリーグでのホームゲームはクリーンシートがない。
・リーグ戦の17得点のうち、右足で決めたのは1点だけ。
・ミケル・アルテタは選手として(W3,D2)も、監督として(W2)も公式戦のホームのノースロンドンダービーに負けたことはない。
・ガブリエル・ジェズスは得点を決めた50試合のプレミアで無敗であり、うち47試合は勝利している。
・しかし、ジェズスは過去9回のトッテナム戦で1回しか得点を決めたことがない。

【Tottenham】

・プレミアで13試合負けなし(W9,D4)であり、2015年と2017-18年に記録した無敗記録に1少ない。
・8月28日のフォレスト戦以外の7試合のリーグ戦は全てロンドン開催。
・ハリー・ケインは得点を決めればプレミアで初めてアウェイ100ゴールを決めた選手になる。
・ケインは公式戦のアーセナル戦17試合の出場で13得点を挙げており、このカードの最多得点者。
・ソン・フンミンはノースロンドンダービーで9試合無得点の後、5試合で4得点を挙げている。

予想スタメン

展望

■得意パターンに厚みが出てきている

 プレミア屈指の好カードであるノースロンドンダービー。ファンの盛り上がりもひとしおの熱い対戦として知られているが、今年は一味違う。片方のチームが首位で、かつ下にいるチームが勝てば順位が入れ替わるという文字通りの首位攻防戦なのだ。ざっと調べたところ、おそらく同様のシチュエーションでのノースロンドンダービーはプレミア創設以降はなさそう。いつも以上に盛り上がる舞台設定になっている。

 追撃する立場であるトッテナムは昨季シーズン途中から就任したコンテ監督の下でチームの完成度を高めている。7戦5勝無敗という成績は高まった完成度の証ともいえるだろう。

 夏の豊富な新戦力はチームの幅を広げるというよりも、深さを掘り下げたりもしくは長時間スタイルを維持する方向性に舵を切った補強といえるそうだ。現状のスカッドの中で圧倒的に1stチョイスといえる新戦力はいないが、ビスマ、ペリシッチ、ラングレ、リシャルリソンなどレギュラー格もしくはレギュラーと遜色ない控えの一番手の立場を確立できている選手は多い。彼らによってトッテナムはスタイルを長時間、高クオリティで維持することが出来ている。

 ある程度、代替可能なポジションが増えている中で不可欠になっているのはもちろんケインだ。長年、トッテナムはケインとソンが軸のチームであることは疑いようのない話ではあるが、時期によってどちらにより依存しているのかの比重は変わっている。今は特にケインのポストによる前進がトッテナムの保持を支える一番の柱である。

 リシャルリソン獲得時に彼をケインの控えと扱う向きもあったが、基本的にリシャルリソンはマークが集まりやすいエースと組ませてこそ輝くタイプだと思う。今の併用のスタイルの方がベストといえるだろう。仮にケインが離脱した時はリシャルリソンがCFの有力候補にはなるだろうが、攻め方は大幅な変更を余儀なくされるはずだ。

 保持はそのケインのポストから前向きの選手を作り、敵陣に進んでいく。どのように進んでいくかはスペースで受けた選手次第。ソンやリシャルリソンならば縦に鋭く進んでいく。もしくはクルゼフスキやペリシッチであれば大外から攻め手を探ることになる。

 トッテナムは撤退守備の攻略が苦手というイメージはまだ残ってはいる。だが、大外からの崩せる武器を着実に増やしていることを考えると、あながち攻め切れないわけではない。

 クルゼフスキは右のペナ角にカットインしながらファーの裏に精度の高いボールを打ち込んでくる。非保持側はファーと裏というホルダーに目線を向けている時に対応しにくい場所をケアしなければいけなくなってしまう。昨年の後半戦のノースロンドンダービーでセドリックがソンとPKとなる接触を起こしたのもこの形であった。

 それに加えて、左のペリシッチである。ペリシッチはマーカーに対して体を隠しながらボールを持って、マーカーにとってはボールにアプローチしにくい構図を作るのが得意。その結果、彼は抜ききらないクロスを上げるのがとてもうまい。逆サイドのエメルソンはクロスに飛び込んでくる嗅覚はある。WB→WBの形もトッテナムの警戒すべき形の1つだ。

 撤退守備に対する攻撃に欠かせないのは後方からの持ち上がりである。そこに新しい風を吹き込んでいるのがラングレ。左のCBを務める彼はキャリーと縦パスに持ち味があるタイプであり、後方から時間を作るというこれまでのトッテナムの守備陣が苦手だった部分を補える選手。ホイビュアの組み立ての負荷を軽減できる存在といっていいだろう。

 非保持はハイプレスを行うこともあるという感じ。かわされる状況が続いてしまえば相手の力量に関係なくきっちり割り切った5-4-1に移行する。シャドーはいずれも低い位置までプレスバックできる存在であり、撤退モードにおける例外はない。

 保持側が攻略しようと人をかけての攻撃に失敗すれば、即座にロングカウンターが飛んでくるのがトッテナム。シャドーが一斉にスピードを生かして襲い掛かってくる。クルゼフスキは他の選手ほどのスピードはないが、相手と正対して時間を作り、カウンターの勢いを落とさない最適な選択肢を取れる選手。ブレーキになることは少ない。

 自分たちの土俵といえるロングカウンターに相手を引きこめれば試合の流れは一気に変わる。前節のレスター戦のように一方的にトッテナムペースに持ち込める得意パターンといえるだろう。

■相手の出方に対して受けて立って支配する

 ノースロンドンダービーにおいてポイントになるのはトッテナムの出方になる。具体的に言えば、彼らがどれだけ支配的な振る舞いを取ろうとするかである。

 保持+撤退守備攻略というボールを持った支配をするための人選で考えるならば先発にはペリシッチやラングレという名前が並ぶだろう。しかしながら、ペリシッチはすでに大外での対人で受けに回った時の脆さはあるし、ラングレもアーセナルのようにスピード豊かなアタッカーへの対応は未知数なところがある。保持を優先すると左サイドのユニットの強度に不安はあるはずだ。

 トッテナムにはハイプレスに出てくるか?という問題もある。アーセナルからすれば来てくれればチャンスは広がるといえるだろう。ここまでのトッテナムのハイプレスはそこまで成功率は高いものではなく、あらゆる状況をハイプレスで回避してきたアーセナルにとっては十分対応可能といえるだろう。積極性を逆手に取り、早い時間に先制パンチを食らわせるきっかけにしたい。

 逆に撤退守備にトッテナムが舵を切った時のポイントはロスト時に困らないボールの回し方をすることだ。トッテナムが撤退できるのはある程度押し込まれてもそれを帳消しにできるランナーがいるからである。そうしたランナーたちにボールが渡るのをアーセナルはできるだけ遅くしなければいけない。

 そのためにはボールの失い方が大事だ。具体的には大外を取った後、ハーフスペースの裏抜けで奥行きを作ること。また、クルゼフスキのようにファー+裏へのクロスを放り込むことによって、バックラインは距離があるクリアが難しくなる。アーセナルが即時奪回における攻撃を繰り返し行うためにも、対応しにくい攻撃ルートを意識することは重要だ。

 SBやジャカの攻撃参加は圧力を増すための大事な要素になる。ある程度1人で後方を任せられるトーマスがフィットするかどうかもアーセナルにとってどこまでリスクをかけられるかのポイントになるだろう。

 非保持においてはまず狙いたいのは上にあげた通り即時奪回。トッテナムのバックラインはプレス耐性に長けているとは言い難く慌てる傾向はある。ある程度は深追いにチャレンジしたいところだ。

 撤退守備においてはある程度中央を固めていい。ケインと縦パスの供給源になる両CHのマークはきちんとしたいところ。逆にWBにはラインを越えられる前の段階では持たれてもそこまで怖くはない。ただし、サイドでボールを持ったとしてもトッテナムは斜め方向にケインの縦パスを入れてくるので、アーセナルは中央のパスルートを消しながら相手を外に追いやる意識は持っておきたい。

 ロングカウンターにおいてはバックラインを信じるしかない。サリバとガブリエウで止められなかったらもう無理である。

 そして鍵を握りそうなのはセットプレー。両チームとも得点源ではあるが、特にトッテナムにとっては均衡した局面を打開するための重要なピースである。

 アーセナルは得点を決めたことで勢いに乗る場面があるという意味でもちろんセットプレーの怖さがあるチームだが、トッテナムはリードすることで撤退守備+ロングカウンターというプランがより破壊力を増す土壌を作ることができる。より先制点の影響を受けやすいチームといえるだろう。

 アーセナルからするとまずはクイックリスタートの妨害は欠かさず、トリックプレーを簡単には許さないこと。クリアは来た方向に跳ね返すという基本を忠実に守りながら、ピンチをしのいでいきたい。

 アーセナルのプランはトッテナムのプランに渡り合っていく形で問題はないと思う。ハイプレスが来れば外せばいいし、撤退守備は切り崩せばいい。もちろん、トッテナムのロングカウンターも怖いが、今のアーセナルの保持を撤退して受けることにも怖さは当然あるはずである。トッテナムも強いが、アーセナルも充実しているのだ。

 プレスに来ようが、引いて守られようがどちらにしてもアーセナルは受けて立てる。そして、試合を支配する。多くの観客が後押しするエミレーツで首位の座にふさわしいチームであることを高らかに証明するノースロンドンダービーにしたい。

【参考】
https://www.bbc.com/sport/football/premier-league

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