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「教訓は攻略の道標」~2022.8.20 J1 第26節 アビスパ福岡×川崎フロンターレ プレビュー

目次

Fixture

明治安田生命 J1リーグ 第26節
2022.8.20
アビスパ福岡(13位/6勝9分9敗/勝ち点27/得点17/失点22)
×
川崎フロンターレ(6位/12勝4分6敗/勝ち点40/得点34/失点26)
@ベスト電器スタジアム

戦績

近年の対戦成績

 直近10試合の対戦で福岡の3勝、川崎の6勝、引き分けが1つ。

福岡ホームでの戦績

 直近10試合の対戦で福岡の4勝、川崎の5勝、引き分けが1つ。

Head-to-head

<Head-to-head>
・直近5回の対戦では川崎が1敗のみ(W3,D1)
・リーグ戦ではホームチームが直近8戦無敗(W7,D1)
・福岡はホーム川崎戦で直近3戦負けなし。
・8月の対戦は過去に4回あるが、全てホームチームが勝利している。

 直近の試合では川崎がやや優勢ではあるが、それ以上にこのカードの戦績で目を引くのは極端なホームチームの強さである。Jリーグは非常にホームアドバンテージが薄いリーグであり、少なくとも川崎に関してはこんなにホームとアウェイで異なる戦績の相手は記憶にない。

 ホームチームは直近8戦で7勝無敗。今回開催される福岡ホームでは川崎戦3試合無敗と福岡が優位な条件である。Jリーグでの8月の対戦は過去に4回あり、川崎ホームが2回、福岡ホームが2回だがいずれもホームチームが勝利。川崎は強力な内弁慶のジンクスを何とかしなければならない。

スカッド情報

【アビスパ福岡】

・コロナウィルス陽性反応者の状況は不透明

【川崎フロンターレ】

・大島僚太はふくらはぎの負傷で6週間の離脱。
・C大阪戦で負傷交代したジェジエウはフルトレーニングを消化。
・コロナウイルス罹患者は全て練習合流済み。

予想スタメン

Match facts

【アビスパ福岡】

<福岡のMatch facts>
・リーグ戦は直近3試合未勝利。いずれも無得点。
・17得点、22失点は共にリーグ最少。
・現在のトップ6との試合では9戦1勝(D1,L7)。勝ち点を獲った試合はいずれもホームで無得点。
・勝ち点を獲った15試合のうち、11試合はクリーンシート。
・今季、リードを奪った試合では公式戦負けなし(W13,D2)
・金森健志が川崎相手にリーグで複数得点を記録したことがある。

 様々な事情がある時期だったとは言え、現状は3試合連続の未勝利と無得点という厳しい状況。京都相手に山岸が決めたゴールを最後におよご360分ほど得点を決めていない。

 リーグでの得点は最も少なく、失点も最も少ない。いかにも福岡らしいスタッツといえるだろう。上位チームには苦戦するが、下位には無敗という対戦相手の順位によってくっきりというやつである。

 勝ち点を獲った試合のほとんどはクリーンシート、ひとたびリードを奪った試合では無敗と手堅さは今年も健在だ。Jリーグで唯一川崎が複数得点を決めた相手である金森にとってはこのスタジアムは思い出の地。川崎のステージ優勝を阻んだあの思い出をさらに上塗りするチャンスだ。

【川崎フロンターレ】

<川崎のMatch facts>
・勝てば今季初めてのシーズンダブル達成。
・勝てばリーグ戦では3カ月ぶりの連勝。
・カップ戦敗退直後のリーグ戦は4連勝中。
・アウェイでの公式戦は直近5戦未勝利。
・今季のリーグにおけるアウェイでの勝利は全てクリーンシート。
・遠野大弥がJ1で挙げた7得点のうち、4得点は九州勢が相手のもの。

 勝てば今季初めてのシーズンダブルと3カ月ぶりのリーグ戦の連勝がかかっている一戦。直近では公式戦での8戦2勝と戦績は芳しくはないが、厳しい台所事情ながらも横浜FM相手に勝利を挙げて優勝戦線に生き残ったのは大きい。

 カップ戦の敗退も手痛いものではあるが、敗退後のリーグ戦は直近では4連勝中。リバウンドメンタリティは示せるチームである。

 アウェイでの戦績の低迷はクリーンシートの減少と寄り添っている感じ。特に堅守の福岡相手には先制されると難しい試合になることは間違いない。九州キラーの遠野を旗頭になんとか命綱になる先制点をもぎ取りたいところだ。

予習

第22節 湘南戦

第23節 C大阪戦

第25節 鹿島戦

展望

■テンポを落として1点勝負を狙ってくるはず

 まずは福岡に敬意を表したい。コロナウイルス感染者が続出するチームで公式戦を消化し続ける難しさは川崎も痛いほどわかっている。そうした中でルヴァンカップを突破したことはチームにとっては簡単なことではなかったはず。辛い時期によく結果を両立させることが出来たと思う。

 さて、それはそれとしてなのだが、はっきり言って今回のプレビューは困り果てている。基本的には直近3試合のリーグ戦を参考にするのが自分の予習スタイルなのだが、今回の福岡はイレギュラーすぎる。2節前のG大阪戦は中止、そしてルヴァンカップはスクランブルの極みであり、外れ点と考えるのが妥当だろう。

 代わりに4節前の湘南戦を見てみたが、3バックを形成しロングボール大決戦という感じ。今季の福岡は7月くらいから3バックには3バック!というスタンスで立ち向かっているのだが、川崎は4バックなのでその観点でも参考にはなりにくい試合だった。

 おそらくであるがスクランブル体制が続くのは前節の鹿島戦までである。鹿島戦の時点で控えメンバーに主力が戻ってきたこともあり、今週は徐々に主力が復帰するという位置づけになるはずだ。

というわけで鹿島戦も川崎戦のスタイルとはまた違ったものになる可能性が高い。鹿島戦の内容は「おそらくルヴァンカップもこんな感じでなんとかしてきたんだろうな」という感じでひたすら筋肉祭り。ルキアン、フアンマ、ジョン・マリの3人がひたすらロングボールを受け続け、サイドからはクルークスがペナ角からの家長的クロスとエンドライン側の右足のクロスを使い分ける形で放り込み続ける。これはいくらなんでも極端だろう。主力が戻った状態でこのまま川崎戦に向かうのは考えづらい。

 基本的には外国籍のFWのうちの1人を山岸と組ませる形に落ち着くはずだ。厄介なのはジョン・マリ。Jリーグの筋肉の中でも最も筋肉といっても過言ではない存在であり、わかっていても止められないタイプの選手である。右サイドのクルークスのクロスとの相性は良好といえそうだ。

 筋肉要素を減らすとは言っても左右からのクロスが主体なのは変わらないだろう。今回の予習期間に開催された試合の中で最も参考になりそうなC大阪戦でも攻撃の手段はクロスを常に狙っていた。サイドには自ら仕掛けられつつタメが効くSHと大外からオーバーラップできるSBを組み合わせて起用するはずだ。CHには順当に行けば前と中村が復帰。CBには出場停止明けの奈良がグローリか宮と組む形になるはずだ。

 前回の対戦において福岡の今年のポイントはアグレッシブなプレスだと述べた。しかし、例えば4-4-2で構えた時にアンカーに対して中盤から潰しに来るような強烈なハイプレスはこの試合では採用しないように思う。

理由は大きく分けて3つ。1つ目は前回の川崎との対戦でこれを採用しなかったこと、2つ目は同じく保持時にはアンカーを形成する4バック型チームであるC大阪にもそうしたプレスにはいかなかったこと、3つ目は復帰する戦力のゲーム体力が未知数な中でリスクの高いやり方を許容しない可能性が高いこと。この3つが主な理由である。

 予想にはなるがミドルゾーンに構えてテンポを落としての1点勝負に持ち込みたいというのが彼らの狙いではないだろうか。速攻かあるいかクロスから先制点を奪えれば理想。仮にビハインドになったら筋肉要素を増やして、ロングボール合戦に持ち込み、川崎からゲームの主導権を手放させてどちらに転ぶかわからない展開に持ち込むと予想する。

■攻める場所を決めるチームが主導権を握る

 川崎にとってはソリッドな4-4-2に相対する展開になる可能性はかなり高いといえるだろう。アンカー受け渡し型の4-4-2に対して大事なことはいつも言っている通り。相手の2トップをタスクオーバーさせることである。

 CBが幅を取り、アンカーを受け渡す際の2トップの移動距離を物理的に長くすること、GKを能動的にビルドアップに組み込み、GK→アンカーのルートをチラつかせること。それができれば、2トップに対しては安全にラインを越えることができる可能性が高まるだろう。ソリッドな4-4-2崩しにはまずはこれを実践できるかが大事。4-4ブロックと正面から向かい合う下準備が必要である。

 そこから先の4-4ブロックの攻略に関してはルヴァンカップの敗退の教訓を参考にしたい。ルヴァンカップの失点の際の理由として述べたのは「サイドチェンジをチームとして許容していいか?」のズレが出来たということである。

 逆転突破を許すきっかけになった1失点のシーン山中がフリーになっているにも関わらず、小林がサイドチェンジを許すようなプレスをかけてしまったことが大きな影響をもたらしたと述べた。相手のブロック攻略に対して守備側が大事なのは、どこに相手を追い込むかということを共有することである。

 逆にホルダーへのプレスのかけ方1つでも、ボールがどちらに向かうかは予測を立てることができるだろう。そうすれば、ボールが進む先をある程度予測することができる。シミッチのような機動力が低いにも関わらずボールハントが得意な選手はこうしたボールの雲行きを読むのが得意なのである。

 教訓にするのはここから。ボールを持つ側の始点に立てばこの雲行きを相手に掴ませたくない。つまり、ホルダーに対して守備側がボールの方向に制限をかけられない状況を作ればいい。例えばIHを使ってアンカーをフリーにする形。これができればアンカーは自由に左右にボールを展開することができる。

 「4-4-2の守備側の強度を決める要素の1つは自分のラインを越された後の2トップの守備への貢献度である」とたまにいうのだけど、それはこのケースにおいて2トップがアンカーをケアできれば保持側の攻める方向の自由度が下がるからである。

 川崎が4-4-2攻略においてIHがタイマンで勝利した時にほぼ確実に主導権を握れるのも相手の薄いサイドを攻め落とすことをこちらが選択できるからである。ターンなどで相手を外した状態を作ることができれば、守備側はボールを誘導するための制限をホルダーにかけるのは難しくなる。

 要はどの場所で攻めるか?というのを決めるのが攻撃側か守備側かで試合の主導権は決まるのである。ホルダーがフリーで相手の守備の薄い場所に自由にボールを付けられれば攻撃側が主導権を握るし、相手の守備が手厚いところにボールを誘導することに成功していれば守備側が主導権を握る。

川崎はC大阪に対して、彼らがを付けたい方向にボールを誘導してしまった。これでは自由にボールを付けさせているのと同じである。ならば自分たちがボールをにぎるときは自由にボールを付けるためのボールを動かし方を意識する。そうした形で教訓を還元したい。

よって、川崎はボールを持つだけでなく、ボールを持ったうえで主導権を握りたい。保持に関しては直近の試合でのフィーリングは悪くない。だが、福岡は楽な相手ではない。向こうが粘り強く戦うならこちらも何度でもやり直しながら粘り強く戦う。それがポゼッションのポイントだ。

 トランジッションで狙えるのは福岡のSBの裏である。福岡の攻め手となるのはサイドの攻撃。SB-SHのクロスが主体である。そうなればカウンターで狙えるのはオーバーラップしたSBが空けたスペース。福岡のCBは奈良を除けば広いスペースのケアには不安がある選手が多い。C大阪も素早いトランジッションからSBの裏を狙うことでカウンターに持ち運んだり、あるいはプレースキックでチャンスを得たりすることが出来ていた。速攻では思い切りの良さも重要だ。

 守備においては当然怖いのはハイボール。クルークスのカットインからのクロスは川崎が守りにくい形。アンカーのシミッチがクロス対応に追われてしまい、最終ラインに吸収される形が増えると、サイドのケアが手薄になりこのクロスは刺さりやすくなる。少なくとも序盤はクロスを上げさせないこと自体をケアする方針を貫きたい。

 おそらく、福岡はビハインドになれば明確にターゲットの枚数を増やしてくるチーム。3枚以上ターゲットを作るのが明らかなチームなので、終盤には5バックの採用も視野に入れるべき。逃げ切りに関するシミュレーションに関しても川崎はカップ戦での教訓を生かすべきだ。

【参考】
transfermarkt(
https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(
https://soccer-db.net/)
Football LAB(
http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(
https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(
https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(
https://www.nikkansports.com/soccer/)

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