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「Catch up Premier League」~Match week 2~ 2022.8.13-8.15

目次

①アストンビラ【16位】×エバートン【15位】

■乱戦に屈さず優位を勝利に結びつける

 開幕戦はどちらも敗戦。内容的にも厳しいものがあり、早急な立て直しの兆しが欲しい両チーム。ベンチに座るのはジェラードとランパード。かつて同じユニフォームでイングランドのために戦った両雄がベンチに座る一戦になった。

 どちらのチームも前線に無理にプレスに行くことはせずに中央を封鎖するのが共通点。CBにはボールを持たせることを許容しながら試合を進めることにする。

 ビラはスタメンに復帰したミングスがいる分、左サイドから押し上げは効いていた。前節ではあまり見られなかったラムジーとディーニュでサイドから抜け出す得意な形が多少は見られるように。

 けども、一度ボールを止められてしまうと打開策がなく、局面が停滞してしまう。エバートンはシャドーが中央に絞り、大外をWBに任せる形にしていたが、初動でボールをきっちり止めることができれば問題なく対応ができていたと言っていいだろう。

 エバートンの保持はビラよりもさらに苦しいもの。外循環のボールはなかなか起点を見つけることができず。コーディなど蹴れるバックラインの選手はいるのだが、ボールを預けて収めるところが見つけられない状態が続いてしまう。

 縦にグラウンダーのパスを付けられる時間帯はチェルシー戦もいいフィーリングだったエバートンだが、ビラの4-3-1-2は中央が強固。3センターも当然だが、トップ下のコウチーニョがイウォビを中心に中央の攻撃の起点を広範囲に抑えていたのが印象的だった。

 そんな中で先手を取ったのはアストンビラ。どちらも中央への縦パスは効かず、縦パス刺したもん負けの様相を呈していた流れでカウンターを決めた。イングスのフィニッシュは見事。多くのDF相手にコースを作り、ゴールを打ち抜いて見せる。

 一方のエバートンはセットプレーを軸にチャンスを作るものの、オフサイドなどで決定機を取り消し。前半に得点を決められずビハインドでハーフタイムを迎える。

 後半もペースを握ったのはアストンビラ。得点シーンのような縦のカウンターから攻めあぐねるエバートン相手に一気に敵陣に迫る。ビラの速攻の精度がやや心もとない分、エバートンにも反撃の機会はあったが、ポジトラへの移行が遅くスローダウンしてしまう。

 クロッサーのマクニールとターゲット役になりそうなロンドンの入れ替えなど、ランパードの采配も後押しとしては疑問が残る部分。左サイドから攻め立てるビラがいつ仕上げるかが試合の争点となっていく。

 ここから大暴れだったのは81分に投入されたオナナ。ボールロストでショートカウンターを誘発してしまい、ブエンディアにリードを広げる追加点のきっかけを与えてしまう。だが、直後のプレーで即座にリベンジ。ロンドンへのロングボールを拾うとエリア内に猛進撃。オウンゴールを誘発して1点差に迫る。

 オナナが起動した乱戦のスイッチは試合終盤までの殴り合いに発展することに。悪く言えば大味な、よく言えばプレミアらしいどちらにも点が入りそうなスリリングな展開は試合終了まで続くことになった。

 結局試合はこれ以降得点は決まらずに終了。乱戦以前の展開を優位に進めたビラが順当に勝利を収めた。

試合結果
2022.8.13
プレミアリーグ 第2節
アストンビラ 2-1 エバートン
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:31′ イングス, 86′ ブエンディア
EVE:87′ ディーニュ(OG)
主審:マイケル・オリバー

②アーセナル【2位】×レスター【11位】

■多少の難は調子の良さでねじ伏せる

 レビューはこちら。

 開幕戦では苦戦しながらもパレスに勝利したアーセナル。開幕2連勝をかけて対峙するのは2点のリードを守り切れずに勝ち点3を開幕戦で落としてしまったレスターである。

 立ち上がりはやや落ち着かない展開だった。ボールをにぎるアーセナルがレスターのプレスに引っかかりカウンターを食らうなど、アーセナルとしては盤石とは言えない展開に。カウンターの対応もインサイドレーンへのケアが甘く、レスターのIHにかなり危うい侵入を許す場面が目立った。

 そんな立ち上がりの不出来をひっくり返す調子の良さが今のアーセナルにはある。圧巻だったのはやはりシティからの移籍組の2人だ。ジェズスは狭いスペースにおいても、簡単に前を向ける位置で受けることができる。先制点となったシュートは圧巻。前を向かせただけでスペースはないと思われたが、右足で魔法のような得点を叩き出した。

 2点目となったセットプレーでの嗅覚もさることながら、ハットトリック未遂となったロングボールを収めてからの決定機まで一連など体のキレが抜群。この試合では圧倒的だったといえるだろう。

 ジンチェンコは対面のカスターニュがついてくるようになってからさらに破壊力を増した印象。自分にWBのポジションの選手がついてくることを利用し、左サイドの破壊に一役買って見せた。

 そんな中、レスター側で存在感を見せたのはヴァーディである。裏抜けからあわやPKの場面を演出。これはOFRにて取り消されはしたが、後半のオウンゴールにおけるラムズデールの中途半端な対応を見る限り、ヴァーディの幻影は残っていたように思う。

 彼以外にもハーフレーンから裏抜けするIHなどレスターは保持における効果的な策をいくつか見せることが出来た。そのうちもっとも破壊力が高かったのは4-4-2ダイヤモンドに移行してからトップ下に入ったマディソン。左右に流れながらのチャンスメイクでアーセナルにとって抑えにくい存在になると、右サイドの角度のないところからラムズデールの股下を打ち抜いて見せる。

 圧巻の存在感を見せるマディソンだったが、それでもこの日のアーセナルの勢いは止められず。なにせすぐにゴールを奪い返すのである。

   失点しても即座に得点を返すアーセナルは決して2点差を縮めさせることなく試合を運ぶことに成功。多少の課題を残しつつも調子の良さでねじ伏せたアーセナルが開幕連勝を飾った。

試合結果
2022.8.13
プレミアリーグ 第2節
アーセナル 4-2 レスター
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:23′ 35′ ジェズス,55’ ジャカ, 75′ マルティネッリ
LEI:53′ サリバ(OG), 74′ マディソン
主審:ダレン・イングランド

③ブライトン【6位】×ニューカッスル【5位】

優位な内容を覆すPA内の精度

 開幕戦はどちらも充実の内容での勝利。プレミアでも屈指の好スタートを切った両チームの激突は非常に注目度の高いものになった。

 内容的にも非常に見ごたえのある一戦だったといっていいだろう。特に際立っていたのはブライトンの絶え間ないプレッシングである。強度も十分、タイミングもばっちりの前からのプレスはニューカッスルを存分に苦しめることになる。

 ビルドアップに時間が与えられない時のニューカッスルの定番といえばサン=マクシマンを活用した陣地回復である。しかし、この日はそれも不発。対面のフェルトマンがうまく抑えてニューカッスルの反撃を食い止めていた。

   その分、ニューカッスルで奮闘していたのはウィルソン。あらゆる分野で高い水準を出せるオールラウンダーというイメージはあったが、これほどまでに相手に体を当てながらボールを収めるのがうまいのは正直意外。彼がいなければニューカッスルはさらなる苦戦を強いられていたのは間違いない。

 だが、基本的にはペースはブライトン。ボールを奪ってからの一本目の縦パスの意識が高く、息を突かせない間にニューカッスルに反撃を見舞うことができる。縦パスをきっちり咎められていたニューカッスルとはこの部分で差が出た。

    さらには、大外にトロサールとマーチという仕掛けられる選手がいるのも強み。中央で無理に急ぐことができない!と判断した場合もやり直しての大外からラインの押し下げは十分に期待できる。ポジトラと大外の優位がブライトンの主導権にそのままつながった印象だ。

 後半もペースをつかんだのはブライトン。前半以上に敵陣深くまで押し込みながらハーフコートゲームを展開する。ウェルベックに楔が入ればサイドも深さを作ることができる。

 サイドの優位が持続可能なものだったこともブライトンにとっては大きかった。後半途中にはマーチとトロサールは共に下がり、三笘とランプティが登場。持ち味だったWBを総入れ替えしても突破力が落ちないのは今季の彼らの強みである。

 特にこの試合の三笘は存在感が圧倒的。終盤10分少々は彼のための試合だったといっても過言ではないだろう。1stタッチから相手のプレスをシャペウでかいくぐると、Jファンにはおなじみである大外エンドラインからの抉るようなドリブルで決定機を創出。プレミアデビュー戦としては十分といっていいだろう。

 惜しむらくは味方がそれを活かせなかったことだ。もはやブライトンの好例といってもいい決定力欠乏症がこの試合で発病。三笘が作り出した決定機を決めて試合を仕留めることができない。ボックス内でのニューカッスルの守備の粘りも圧巻。明らかにブライトン優位の試合内容をフラットな結果に持ってきたのはニューカッスルのPA内でのプレー精度の差だ。

試合結果
2022.8.13
プレミアリーグ 第2節
ブライトン 0-0 ニューカッスル
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
主審:グラハム・スコット

④マンチェスター・シティ【4位】×ボーンマス【3位】

■支配と脅威の二面性

 開幕戦では非常に慎重な4-4-2を敷いていたウェストハムを撃破したマンチェスター・シティ。今節の相手は同じく撤退型の守備を第一に考えているボーンマスであった。

 ボーンマスの基本布陣はウェストハムとは異なり3-4-2-1。だが、シティの大枠の方針は同じ。ロドリの周辺に人を置き、まずは非保持側の前線の陣形を中央に集めることである。とりあえず大外へのルートを空けることが初めにやってくる部分だ。

 ただ、大外の特性は前節と微妙に違う。右のマフレズは低い位置からボールを引き取って一気に加速するという前節のWGの役割よりも、正対した相手をどう置き去りにするかの部分が持ち味の選手である。そのため、この日の右サイドは前節と比べて降りてくる頻度は少なめ。その分、深い位置を取って正対した相手を揺さぶりつつ、マイナスのデ・ブライネに折り返してクロスというなんとも凶悪なコンビネーションを繰り出していた。

 左サイドの大外にはカンセロが常駐していた。カンセロはウォーカーに比べるとこの日は中央にいる頻度は低く、大外からフォーデンやギュンドアンと連携しながら攻め込む役割を託されていることが多かった。3-4-2-1と4-4-2の違いは前線のプレス隊の人数。シティはボーンマスのトップの周辺におく人数は前節よりも減らしていいと判断したのだろう。その分、カンセロのプレーエリアは外になることが多かった。

 よって、シティの攻撃は前節よりもゆったりとした攻め込み方に舵を切ったものだった。そうした中で崩しの決め手になったのは中央を割るコンビネーション。ウォーカーの縦パスを受けたギュンドアンが一気に攻撃を加速。ハーランドとのワンツーから抜け出して自らが得点を決めて見せた。今年のシティは割と相手のプレス隊の誘導と外の攻撃を設計する色が強いチームだと思うのだけど、隙を見せればギュンドアンが全部うまいことやってるのがずるい。

 ボーンマスに反撃の糸口がなかったわけではない。ボールを奪った後に何本かパスをつなぎ、相手のプレスを自陣側に引き付けたタイミングでムーアに入れるロングボールというのは設計の上では悪いものではないだろう。

 しかし、そうして前進に成功した時に怖いのが今のシティ。前がかりな相手に関してはデ・ブライネの独壇場である。あっさりと速攻を発動すると自ら決めて早々に追加点。さらにはボールを運んだあとに最後は走り込んだフォーデンが3点目をエスコート。前に出たら出たで怖いのが今年のシティである。

 保持では外を使いながら着実に支配し、速攻の際には一気にゴールまで沈める。二面性を使いながら主導権の掌握とゴールへの脅威をチラつかせるシティは非常に厄介である。

 後半もカンセロがPAで相手を翻弄した結果オウンゴールを誘発したり、ベルナルドの登場で旋回要素がマシマシになったりなどの変化はあったが、基本はシティペースは揺らがず。開幕戦と異なるブロック守備を破壊し、連勝スタートを飾った。

試合結果
2022.8.13
プレミアリーグ 第2節
マンチェスター・シティ 4-0 ボーンマス
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:19‘ ギュンドアン, 31’ デ・ブライネ, 37‘ フォーデン, 79’ レルマ(OG)
主審:デビッド・クーテ

⑤サウサンプトン【20位】×リーズ【7位】

■落ち着かない中で見せたアタッカーのポテンシャル

 まるで「試合を落ち着かせたら負け」という裏ルールがあるのか?というくらい両軍とも落ち着かない立ち上がりであった。高い位置からのプレッシングはもちろん、後方からの押し上げも非常に積極的な両チーム。DFが敵陣に入り込みながら相手のFWにチェックをかける光景も珍しいものではなかった。

 どちらかといえば相手のプレッシングに落ち着いて対応していたのはリーズの方だった。長いボールを織り交ぜながら避難。この辺りはハイテンポなサッカーはやるけど、過度なプレス回避合戦には付き合わないよ!というリーズらしいボールの動かし方だったように思う。

 バックラインの落ち着きがなかったのはサウサンプトンの方。とにかく人を捕まえてくるリーズに対して、なんとか繋ごうという意識からショートパスを連発してプレス回避にトライ。しかし、パスを受けた選手がプレスに捕まっているし、リターンで出す先もことごとく人に捕まえられていて詰んでいるという状態に。それならばプラス回避は難しい。

 順調だったリーズだが、勢いに翳りが出たのはやはりバンフォードの負傷交代だろう。昨季から言っているが、ジェームズもプレスは一生懸命やってはいるのだけど、バンフォードのバイタリティとスイッチの入れ方はやはり別格。どうしても違う部分は出てきてしまう。

 リーズはボール保持で落ち着きをもたらそうとするが、落ち着いたからといって攻め手が見つかるかどうかという点とはまた別である。ショートパスからの攻撃構築は難しいし、期待がかかるアーロンソンは厳しいマークにあっている。長いボールを蹴っ飛ばしてもターゲットがハリソンでは厳しい。

 サウサンプトンはS.アームストロングの抜け出し、サイドに流れるアダムスなどいくつか武器が出てきた感じ。リーズがボールを持っている時間を超えて、40分過ぎからはサウサンプトンがペースを握るが、得点までには至らない。

 ハイテンションの中で後半早々に得点を奪ったのはリーズ。左サイドからの突破でロドリゴがニアで合わせてゴールを突き刺して見せた。失点後もまだまだ前からプレスに行くサウサンプトンに対して、リーズはさらに追い打ち。セットプレーから再びロドリゴが押し込んで今季3点目のゴールを決める。

 サウサンプトンはアタッカーを徐々に増員。アリボ、A.アームストロングを入れて5-2-3にシフト。純粋な数を増やした形に加えて、アリボの存在感は十分。体を張ってボールを前に進めることができていた。

 マーラの投入でさらにアグレッシブなフォーメーションを採用するサウサンプトン。4-4-2で前にバランスを寄せていく。反撃のきっかけになったのは左サイドのA.アームストロング。後手に回ったリーズの右サイドを置き去りにすると最後がアリボが得点を決める。

 続く、同点弾は中央でマーラの粘りからウォーカー=ピータースの裏抜けを活用。フィニッシュを決め切り同点に。左SBのジェネポも含めて攻撃偏重の持ち味を存分に生かすことに成功した。

 交代選手たちの活躍で2点のリードを引き戻したサウサンプトンがリーズの連勝を阻止。後半は速い展開におけるアタッカーのポテンシャルを存分に見せつけた。

試合結果
2022.8.13
プレミアリーグ 第2節
サウサンプトン 2-2 リーズ
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
SOU:72′ アリボ, 81′ ウォーカー=ピータース
LEE:46′ 60′ ロドリゴ
主審:トニー・ハリントン

⑥ウォルバーハンプトン【14位】×フラム【10位】

■共に波に乗り損ねたスコアレスドロー

 どちらかといえば立ち上がりにポゼッションの意識が強かったのはアウェイのフラムの方。中盤がサリー気味に変形しつつ、ショートパスを主体としての組み立てを実施。前節がリバプールとの対戦だった影響もあるだろうが、今節はそこまで簡単にミトロビッチにボールを当てない。1列目のプレス隊を超えるところは非常に慎重に行われており、CBもボールを運ぶ意識は十分にある。

 守備においてのフラムは前節と同じく中盤よりも高い位置で止めたい守り方。バックラインも高目に設定されており、サイドに追い込みながら相手をなるべく早い段階で止める意識は継続されている。

 一方のウルブスは速攻で光を見出す。フラムがサイドからいい形でクロスを上げられない状態を尻目にポジトラから反撃に。中でも攻撃を一気に前に進めることができるポデンスにボールが入るとカウンターは加速する。ネトとポデンスの組み合わせからのロングカウンターはフラム以上に得点の可能性を感じさせるものだった。

 時間の経過とともにウルブスの保持の割合は増加。フラムは前節ほどのコンパクトな時間を長く継続することができず、間伸びした中盤を使われての前進を許してしまう。この部分はフラムの2トップが後方の選手たちにウルブスの攻撃の方向を制限できなかった影響が強いだろう。

 スコアレスのまま迎えた後半もペースはウルブスのものに。サイドからの連携を見せての崩しとロングカウンターという2つの武器を使いながらフラムを追い込んでいく。

 フラムもショートパスから深くサイドに入り込んでのクロスを行いたいところではあるが、なかなかきっかけを掴むことができない。このままウルブスペースで進むかと思ったところでフラムの右サイドの崩しがようやく成功。背中を取られたアイト=ヌーリがボビー・リードを倒してPKを献上する。アイト=ヌーリは攻撃面では存在感十分なのだが、開幕節に続き非保持ではやや不安定な部分を見せてしまった。

 だが、このPKをミトロビッチが失敗。リードを奪うことができない。ここから先はウルブスペース。高い位置まで食いついてくるフラムの最終ラインの修正を利用し、左サイドの大外から一気に裏を取る形から早い攻撃で一気に決定機を迎える。

 ただ、ウルブスも交代選手が入ったところでややトーンダウン。トラオレ、ゲデスがもう少しコンディションが上がれば徐々に変わってくるだろうが、現状では1stチョイスとの体のキレには差があると言っていいだろう。

 PKを決められなかったフラム、いい時間帯に得点を取りきれなかったウルブス。ともに決め手を欠いた一戦はスコアレスドローで幕を閉じた。

試合結果
2022.8.13
プレミアリーグ 第2節
ウォルバーハンプトン 0-0 フラム
モリニュー・スタジアム
主審:ジョン・ブルックス

⑦ブレントフォード【9位】×マンチェスター・ユナイテッド【13位】

■プレスと肉弾戦、二段構えのプレミアの洗礼

 開幕戦はブライトンに逃げ切られてしまい、ホームで黒星スタートとなったユナイテッド。今節の相手は同じく2点差というシチュエーションでなんとか同点まで持っていったブレントフォードである。

 立ち上がりからユナイテッドは試されている感があった。前節と異なり使い慣れた5-3-2を採用したブレントフォード。レスター戦では鳴りを潜めていた高い位置からのプレッシングも復活。ユナイテッドのCBとアンカーを捕まえる形を作り、プレッシャーをかけていく。

 ユナイテッドは完全にこのプレスに屈してしまい、自陣から出れない状態になってしまう。波状攻撃の中でミスが出てしまい、開始早々にブレントフォードは先制。ダシルバのミドルを弾き切ったかと思ったデ・ヘアだったが、ボールは脇の下をすり抜けてしまいそのままゴールイン。手痛いミスになってしまった。

 ユナイテッドは後ろに残された人のスキルがどうこうというよりも、ビルドアップのサポートの人数が足りていない状況を解決すべき展開が続く。この試合のブレントフォードはサイドの浅い位置においてはややマークが甘く、遅れてついてくることも多いため、SBがサポートに入る機会を増やせばなんとかなったはず。

 だが、ユナイテッドはそれをせず。リターンをもらえる選手がいない中でマーカーを背中に背負っているアンカーに渡すという自殺行為に近いパスワークを行ってしまう。1回目のマグワイアのミスは事なきを得たが、次のデ・ヘアのミスは2失点目に繋がることになってしまった。

 ここからさらに2失点を重ねるユナイテッドだが、ここはまぁ仕方ない部分とも言える。ビルドアップというチームの核を叩かれた2失点目までと違って、セットプレーで喫した3失点目などはある程度目を瞑らないといけない部分。リサンドロ・マルティネスがベン・ミーに競り勝てないことは織り込み済みであるはず。完成度もそうだが、相性的に分が悪い相手というのはある。

    4失点目はすでに試合が壊れている状態であり、緊張感に欠ける対応になったのは否めない。骨格を叩かれた2失点目までを重点的に改善すべきだろう。

 ユナイテッドはサポート人数を増やしたり、ロングボールでロナウドという形を使いながら徐々に前進に成功する。敵陣に入ってからの状況を考えると、前半のうちはチャンスがあっただけにビルドアップのバランス調整を早い段階で積極的に書けなかったのは悔やまれる。

 4点という望外なリードを得たブレントフォード。後半も3枚交代をしたユナイテッドを冒頭にプレスで強襲し反撃の機会を削ぐと、60分になると試合を落ち着かせて自陣に下がってスペースを埋める。

 保持の機会を与えられたユナイテッドはサイドからボールを進められるようにはなったが、崩しの部分が定まらず、ブレントフォードに一矢報いることができない。

 手打ちして自陣を固めたブレントフォード相手に反撃の一手も刺さらず、ビルドアップの修正案を多く試すこともできなかったユナイテッド。前半に完全に試合を決めたブレントフォードに手も足も出ないまま完敗。次節、ホームにリバプールを迎える一戦はプレッシャーのかかる試合となってしまいそうである。

試合結果
2022.8.14
プレミアリーグ 第2節
ブレントフォード 4-0 マンチェスター・ユナイテッド
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:10′ ダシルバ, 18′ イェンセン, 30′ ミー, 35′ ムベウモ
主審:スチュアート・アットウェル

⑧ノッティンガム・フォレスト【18位】×ウェストハム【19位】

■悪い流れを咎めて23年ぶりの勝利を手に

 ともに初戦を落としてしまった両チームの一戦。フォレストにとっては今世紀初めてのプレミアのホームゲームということになる。

 立ち上がり、セットプレーからチャンスを作ったのはフォレスト。ニアカテの存在感は抜群で惜しい場面を作り出す。一方で本職のCBがいないウェストハムは高さがなく、セットプレーは苦しい形になる。

 ウェストハムは序盤はあっさりと前線に蹴っていた印象。ただ、そこから直線的にゴールに進むことはフォレストのバックラインは許さず。フォレストは前3枚がハメに行ってはいたが、リトリートが間に合っていたので、ウェストハムはうまく加速ができなかったということだろう。

 サイドに展開した際のウェストハムの出来は左右で非対称。右サイドはややつまり気味でなかなか打開策が見出せない。昨年よりもややボーウェンに元気がなさそうなのは気がかりである。一方の左サイドはベンラーマが好調。彼がタメを作り、クレスウェルがクロスを入れる形でフォレストの守備陣を苦しめる。

 フォレストの反撃の手段はカウンター。ウェストハムのサイド攻撃がまごついたこともあり、フォレストは反撃の機会は十分得ることができた。WBの積極的な攻撃参加も光っており、早々にエリア内に放り込みながらチャンスを伺う。

 ただ、このクロスのタイミングがやや早かったように思う。エリア内の準備が整っていないうちにクロスを上げてしまったりするシーンが散見されており、ウェストハムからすると簡単にボールを捨ててくれたなという印象である。

 お互い一長一短な展開だったが、前半終了間際に流れを変える出来事が。アントニオがウェストハムがネットを揺らした場面でボールと関係ないところで相手を突き飛ばしゴールが取り消しになる。直前に判定にフラストレーションを溜めていたことがおそらく要因なのだろうが、あまりに稚拙なプレーだ。

 得点のチャンスをフイにしたウェストハム。悪い流れを断ち切るためにとりあえずハーフタイムまで逃れたいところだったが、それを許してくれないのがプレミアリーグ。珍しくボールをゆったり持てたフォレストは左サイドのトフォロに展開。カットインからエリア内に侵入するとフリーのリンガードが放ったシュートを最後はアウォニイが決めて前半追加タイムに先制点を挙げる。

 ウェストハムはトフォロへの対応がまずかった。ソーチェクとライスがサイドに流れてしまったことでエリア内でのタイトさがなくなってしまった形。トフォロを潰せなかったのは痛恨であった。

 後半、反撃に出たいウェストハム。左右にじっくり相手を振ることができればフォレストの非保持は穴が開く。これは前に3枚を残し、2CHで横幅を対応しようとしているため、じっくりやればやるほどきっちり穴を開ける仕組みになっている。

 しかし、試合は速いテンポがメインに。どちらのチームもチャンスを迎えるが得点には至らない。フォレストはオフサイドによってゴールが取り消しに、ウェストハムはハンドで得たPKをライスがヘンダーソンにストップされる。この試合ではヘンダーソンは大活躍。前日にデ・ヘアが散々だった次の日にこれ。これもいかにもプレミアである。

 なんとかゴールを手繰り寄せたいウェストハムだが、交代選手が流れに乗れず攻撃の勢いは停滞。非保持においても、フォレストの空中戦に対してズマ以外のバックラインが苦戦。跳ね返しての波状攻撃にスムーズに持ち込むことができなかった。

 要所で流れに乗るチャンスを逃したウェストハム。悪い流れの隙に漬け込んだフォレストがホームでおよそ23年ぶりのプレミアでの勝利を挙げることに成功した。

試合結果
2022.8.14
プレミアリーグ 第2節
ノッティンガム・フォレスト 1-0 ウェストハム
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:45+2′ アウォニイ
主審:ロベルト・ジョーンズ

⑨チェルシー【8位】×トッテナム【1位】

■見所は新たな因縁だけではない

 共に開幕戦は勝利。打倒2強に向けてスカッドを急速に整えたトッテナムに対して、多少の出遅れはあったものの戦力を揃えつつあるチェルシーの一戦。チェルシーはククレジャがスタメンデビューを果たす。

 序盤はトッテナムの出足の良さが目立った。特に左サイドにボールがあるときのインサイドへの折り返しパスに狙いを定めてショートカウンターを発動。落ち着かない展開を利用してチェルシーゴールを狙う。

 しかしながら、この試合のチェルシーは前節の物足りない出来とは違った。チェルシーは右サイドを中心にある程度前進すると、横に揺さぶりをかけるパスを繰り返しながらの慎重なアプローチを行う。

   ビルドアップにおいては4バック変形がチェルシーの主流。よって、左サイドの大外でボールを引き取るのはククレジャ。逆サイドからのボールの受け取り手としても、CBからのボールの引き出し役としても安定しており、スタメンデビュー戦とは思えない出来だった。

 サイドの崩しでは多角形を使いながら抜け出す選手を作り出すという設計図。中央では横パスを繰り返しながらある時突然スイッチを入れる形。トッテナムの中盤の背後に忍び寄るマウントと体を張りながらのボールキープができていたロフタス=チークはどちらも絶品だった。

 カウンターからチャンスを狙うトッテナムだが、中央を封鎖に成功したチェルシーに苦戦。降りてくるソンはジェームズのマンマークに、クルゼフスキはスムーズなチェルシーの受け渡しの前に完全に消されていた。このプレスで人を離さないところと受け渡しのスムーズさがバランスよく共存していたチェルシーの守備は非常に良かった。

 先制点はその好調の守備陣から。ククレジャのCKが見事にクリバリのミドルを呼び込む。嬉しいホーム初試合、初ゴールを達成することとなった。チェルシーは先制以降、横の揺さぶりパスを徹底。相手が穴を開けたら前進という形でことごとくトッテナムのプレスを無効化する。

 後半になっても流れを変えられないトッテナムはリシャルリソンを投入し、4-4-2に移行。アバウトなボールの放り込みで試合をオープンに引き戻すとホイビュアのミドルで同点に。直前のファウルやリシャルリソンのオフサイドインパクト疑惑などチェルシーファンには一言言いたくなる失点になってしまった。

 一方でトッテナムは4バック移行の副作用に苦しむ形に。横のスライドを5バックのノリでやってしまう分、逆サイドがおろそかに。チェルシーは浮いた逆サイドからジェームズが決めて勝ち越しゴールをゲット。再びリードを奪う。

 だが、試合は最終盤に再び動く。セットプレーからニアで合わせたのはケイン。土壇場で同点に追いついたトッテナムがチェルシーの勝ち点3を阻止。トゥヘルとコンテの大げんかばかり目につく試合だが、肝心の内容も見どころ十分だったロンドンダービー。両チーム勝ち点1を分け合う結果で幕を閉じることとなった。

試合結果
2022.8.14
プレミアリーグ 第2節
チェルシー 2-2 トッテナム
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:19′ クリバリ, 77′ ジェームズ
TOT:68′ ホイビュア, 90+6′ ケイン
主審:アンソニー・テイラー

⑩リバプール【12位】×クリスタル・パレス【17位】

■想定外の失点で浮き足立った代償

 開幕節はフラム相手にまさかの引き分けスタートになってしまったリバプール。必勝を期すアンフィールド開幕戦はアーセナルに続きビック6との連戦スタートとなったクリスタル・パレスとの試合だ。

 パレスは開幕戦に比べれば撤退型の5-4-1でアンフィールドに見参。アーセナル戦よりもかなり後ろの重心を意識した並びとなった。当然リバプールにボールを持たせる方針になる。

 リバプールはボールを持ちながら崩すやり方を模索する。この試合はトップにヌニェスが入った分、前節よりもアバウトな長いボールが増えた印象。パレスの最終ラインとの駆け引きをしながら、体を張りながら抜け出す形は確かにこれまでのリバプールにはあまり見られなかった武器である。

 リバプールはチアゴがいなくとも右サイドへの対角のパスもうまく使えており、パレスの5-4-1攻略は順調に進んでいた。右サイドからの奥行きをとった横パスからPA内でのシュートで十分なチャンスを迎えることができている。CBのフィリップスも持ち上がりながら中央に隙を見てボールを刺すことができたし、ザハは時にファビーニョを自由にしてしまっていた。

 危ういシュートを喰らったことは計算外だっただろうが、パレスとしては押し下げられること自体は想定内。ロングカウンターからエゼとザハの2枚でチャンスメイクをする。

 そして、先に得点をもぎ取ったのはクリスタル・パレス。ロングカウンターからエゼがファビーニョを交わしてザハにラストパス。これを決め切って先制点を奪い取る。

 この先制点がリバプールをやや焦らせたように思う。序盤に見られたような5-4-1ブロックに対する慎重なアプローチは鳴りを潜め、強引で急ぎすぎてしまうプレーが増えていく。守備においても強引に捕まえにいくせいで自陣側に穴を開けるシーンがちらほら。ヘルプのないファビーニョが困っている様子が印象的だった。

 後半も同じ展開に。リバプールは2列目からの飛び出しを増やしながらパレスの最終ラインの裏を取るアプローチを増やして得点を狙う。ここから巻き返したいリバプールだったが、ヌニェスがアンデルセンの挑発にやり返してしまい一発退場。ここからリバプールは10人で相手を追いかけることになる。

 10人になりこれまで今季のリバプールが構築してきた形はほとんど見られなくなる。ヌニェスを使った強引な裏へのパスや、右サイドでの人数をかけたパスワークからのフリーマンを使ってのクロスは効果が半減する。

 そんな中で魅せたのはディアス。正直、システマティックなリバプールの中ではあまりハマっている感は受けないのだが、このようにスクランブルな事態における個人技は絶品。独力で同点ゴールを叩き出して見せる。

 10人になってなお3ポイントを狙うリバプールに、パレスも攻撃的な選手の投入で応戦。しかし、交代選手たちはエネルギッシュではあるが、前からのプレスの規律には欠けている印象。その分、終盤は間伸びした陣形での戦いになった。

 互いにチャンスを作りことができた終盤ではあったが、なかなか生かすことができず。どちらのチームが勝ち越すこともなく試合は終了。リバプールは開幕戦に続き勝ち点3を取り切ることができなかった。

試合結果
2022.8.15
プレミアリーグ 第2節
リバプール 1-1 クリスタル・パレス
アンフィールド
【得点者】
LIV:61′ ディアス
CRY:32′ ザハ
主審:ポール・ティアニー

今節のベストイレブン

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