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「新旧リバプールルートの開通が流れを変える」~2024.1.14 アジアカップ2023 グループD 第1節 日本×ベトナム レビュー

目次

日本にずっと俺のターンを許さないベトナム

 アジアカップ開幕戦。王座奪還を目指す日本の初戦はベトナムが相手である。立ち上がりはバタバタとした入り。ベトナムの中盤の懐の深さにより、日本が交わされたり、あるいはファウルを犯すなどフラットになる立ち上がりだった。

 5分もすれば日本はボールを持てるようになる。日本は3-2-5に変形し、非保持において5-4-1の形で構えるベトナムに対して、攻略の糸口を探していく。10分に中村が伊藤と作った縦のギャップが初めてミドルゾーンのベトナムのブロックを押し下げるきっかけになっていた。

 この流れから得たセットプレーから日本は先制。ファーに流れたボールから菅原がミドルを放ち、こぼれ球を南野が仕留めた。

 5分にボールを持つようになっても、先制ゴールを決めてもベトナムはボールを持つターンになればバックラインから分岐を作り、中盤にスペースを作り、深い懐からターンをすることで日本の中盤の守備を剥がしていく。GKを挟み、4バック化して後方の横幅から分岐を作るポゼッションで日本のプレスの基準点を外すベトナム。これにより日本はずっと俺のターンになることがなかった。特に左サイドに降りながら受けるグエン・ディン・バックと右IHのド・フン・ドゥンがボールの収めどころになっていた。

 日本と同じくベトナムも1stセットプレーから1点目をゲット。ニアに入ったグエン・ディン・バックがアクロバティックなエビぞりのスラしがそのままゴールイン。このプレーに関しては日本の守備陣はほぼノーチャンスだろう。

 日本は20分の菅原の縦パスカットをきっかけに少しずつハイプレスを成功させていく。特にベトナムのメインの前進手段となっていた降りるグエン・ディン・バックにボールを預ける保持のルートに先回り。先手を打ってのプレスに行くようになり、高い位置でボールの回収を機能させていた。

 だが、グエン・ディン・バックのスピードは日本の一瞬の守備の隙をつくスキルがある。菅原から警告付きのファウルを引き出すと、このセットプレーからベトナムは2点目をゲット。ファーサイドで少し早く菅原がラインを下げたこと、そして鈴木のステップワークがやや足を取られた形になってしまったことでゴール前にボールが転がってしまい、これをファム・トゥアン・ハイが仕留める。2つ目のセットプレーも得点に繋げたベトナムが逆転に成功する。

 日本はボールを持てるようになっていたが、サイド攻撃がなかなか機能せずに苦戦。左サイドは中村と伊藤の縦方向のギャップ頼みで3人目が絡んでこられずに、外のレーンで孤立。右サイドは伊東のインサイドへのドリブルに対して合わせる動きが見えなかった。

 インサイドレーンの南野と細谷はこうしたサイドの動きにあまり呼応することができなかった。特に伊東のカットインに対しての縦への抜け出しなどはCFに起用された細谷に求めたかった部分だろう。

 対して南野は前半の終盤に存在感を発揮。遠藤からの縦パスを受けることでインサイドに起点を作り、日本があまり構築できなかった中央の攻撃を機能させていく。45分に南野自身が縦パスを受けてからシュートを放って同点ゴールを生み出す。

 3点目も南野と遠藤の新旧リバプールのラインから。南野もさすがであるが、遠藤の縦パス意識の高さがメキメキ上がっていることがきっちりゴールにつながっているのは興味深い。南野のタメにより中村を解放すると、インサイドに入り込んだ中村は2人を引きつけたところからスーパーゴールをゲット。日本は前半のうちに試合をひっくり返してハーフタイムを迎える。

4-3-3変更がもたらした攻守の意義は?

 後半、日本は配置変更を実施。メンバー変更した細谷→上田のところには手をつけず、中盤を3センター的に変更する。これにより、左サイドに流れた守田が盤面整理能力を発揮。中村がボールを受けるまでのところをうまく整えたり、逆サイドにスムーズに展開することでサイド攻撃の流動性を担保した。

 日本が左右のサイド攻撃に枚数をかけるようになったことで、ベトナムは非保持の5-4-1の左SHに入ったグエン・ディン・バックを押し下げられてしまうように。これでカウンター時に前に立つのがファン・トゥアン・ハイの1枚になったベトナム。日本のCBはこれでカウンターの迎撃を落ち着いてできるようになった。

 50分の半ばからベトナムは保持の時間を作るように。前半の終盤は縦に急ぎすぎてしまうあまり、日本のプレスに引っかかっていたベトナムのポゼッションだったが、WBが低い位置まで降りてきてボールを触るなど、この時間はきっちりとポゼッションからボールを動かすことを意識することとなった。

 日本は4-4-2のミドルプレスで迎撃。無理に深追いをせず、でもきっちり絞って後ろからやり直しを図らせるというところを両立する我慢ができていたのは良かったと思う。奪った後の縦への急ぎすぎ感はちょっともったいなかったが、ベトナムを前進させないというところではうまく守っていた。

 ベトナムはグエン・ディン・バックが下がって以降、前進のルートが見えなかった感がある。スピードというわかりやすい長所があったグエン・ディン・バックの不在は大きい。代わりに入ったグエン・ヴァン・チュオンはより背負って受けるタイプだったが、谷口と板倉が相手では流石に分が悪すぎる。こうして、ベトナムはビルドアップの出口を失った状態で攻めあぐね続けた後半を過ごしてしまうことに。

 日本の交代選手で印象的だったのは佐野。守田の役割をそのまま引き継ぐポジションで起用されると、ボックス内に突撃していく攻撃意識を全面に押し出すという異なるカラーで存在感を出していく。

 そして、試合を決めたのは終盤に登場した久保建英。猪突猛進モードの佐野の攻め上がりをきっかけに加速した日本の攻撃の中でボックスでボールを受けると、上田に柔らかいラストパスから4点目をアシスト。堂安を含めた交代選手のパスワークで奪ったゴールで試合を決定づける。

 前半は苦戦を強いられた日本だったが、システム修正を施しながら最後はベトナムを鎮圧に成功。王座奪還を掲げる初戦を勝利で飾った。

ひとこと

 多角的な見所がある試合だったと思うが、中央で粘りながら存在感を出すことを諦めなかった南野、高い位置で暴れまくった守田、猪突猛進モードでフルスロットルの佐野の印象が深い試合だった。過負荷でも涼しい顔をしている遠藤と伊東が別格なのはいうまでもない。

試合結果

2024.1.14
アジアカップ2023
グループD 第1節
日本 4-2 ベトナム
アイ・トゥママ・スタジアム
【得点者】
JPN:11‘ 45′ 南野拓実, 45+4′ 中村敬斗, 85′ 上田綺世
VIE:16’ グエン・ディン・バック, 33′ ファン・トゥアン・ハイ
主審:キム・ジョンヒョク

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