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「来年のことは何もわからない」〜勝手にプレミア定点観測21−22 最終報告 part1~

目次

【1位】マンチェスター・シティ

29勝6分3敗/勝ち点93/得点99 失点26

■奇策なし!今年はベタなシティ

 優勝おめでとう。これで連覇、ここ5年で4回の優勝。しかも、あのクロップのリバプールと同世代を過ごしながらというのを踏まえると、数字以上の偉業のように思える。

 今年のシティは想定外からのスタートだった。大きかったのはメンディを欠いてしまったこと。コミュニティシールドを見る限りは、SBには絞ってビルドアップに参加する偽SB色が強いタスクと、アタッキングサードで大外を回って追い越すタスクをコンボで課していたように見えたし、そのキーマンがメンディと踏んでいたので、グアルディオラと追い越してもらうSBが欲しかったグリーリッシュにとっては特に想定外だったように思う。

 というわけで今年はかなりベタなシティであった。奇策を発作のように扱われるCLのノックアウトランドでもとにかく素直に試合を進めてきたし、そこまでおかしなことはしなかった。

 強いて言えばリバプールとの第2ラウンド以降は、少し縦に速く攻めるのに固執する分、支配力が弱まったりなどはしていた。だが、CL敗退後はもう一度ボールと盤面を支配することが出来ていたように思う。

 あえて勝因を挙げるとするのならば、セットプレーによって苦しい展開を引き寄せられるようになったこと。ロドリ、ラポルトなどは重要な局面でセットプレーを奪いながらチームに勝ち点をもたらし続けた。

 そしてもう1つは年末年始の過密日程だ。コロナ禍と詰まっている日程において各クラブが勝ち点を落とし続ける中で、唯一コンスタントに勝ち点を積めたのは大きかった。保持に傾倒し休もうと思えば休めるプレーモデルとスタイルの浸透度の勝利だと思う。

 というわけで来季はいよいよハーランドとの融合である。早くて強くて点が取れるストライカーが上陸したシティは来季こそトッテナムとCLに勝てるのか。グアルディオラのシティもいよいよクライマックスに差し掛かっている感がむんむんである。

Pick up player:ロドリ
 悩んだけども昨季から一番成長を感じた選手を選出。どこか頼りないゲームメーカーだったが、今季はスケールアップし、選手としての格が違うステージに上がった印象。ミドルや空中戦など得点力もさることながら、1列前に動いて崩しの最終局面に顏を出す頻度が上がったのも今季のよかったポイントだ。

今季のマンチェスター・シティ

【2位】リバプール

28勝8分2敗/勝ち点92/得点94 失点26

■循環と進化を繰り返しつつ結果も出したシーズンに

 惜しくも2位には終わったが、終盤まで前人未到の4冠の可能性を残したままシーズンを走りきったのだからケチをつけるのは無粋というものだろう。今季のリバプールは最後までCL出場権が確定しなかった昨シーズンとは別チームだった。

 目を見張ったのはやはり前線だ。サラー、マネは明らかにトーンダウンした20-21に比べて見違えるパフォーマンスを披露。特にサラーはPA内特化型だった20-21から、アタッキングサードで大外での崩しからゴールまで全部やる人になってしまっており、誰が出ても強いリバプールの中でもワンランクチームのギアを別次元に持って行く存在になっていた。

 ディアスの加入で前線のポジション争いは流動性を維持しつつ激化。マネ、サラー、フィルミーノ後を見据えた強化も進んでいる。正直、ここがリバプールの中期的な課題になりうると思っていたので、これほどまでにスムーズな移行が進んでいるのが驚きである。

 これにファン・ダイクが戻ってくるのだから強くないはずはない。終盤戦はチアゴのフィットで従来は苦手としていた撤退気味の相手への解決策も提示。フィルミーノが出番を減らした前線はマネとジョッタが斜めに頻繁にレーンを入れ替えたり、あえてレーンを重ねることで相手の守備網の狙いを絞らせなかった。終盤に向けて90分間で相手をこじ開ける幅を見せてくれたのが楽しいチームだった。

 悔いが残る試合として挙げられるのはやはり年末のレスター戦か。相手は中1日であったし、1週間近く休みがあったリバプールとしては確実に叩いておきたかった試合だった。

 それでも失速の可能性が大きかったANCの帰還をほぼミスなしで乗り切ってしまったのは異常。マネとサラーが不在となるこの時期に完全に優勝争いから脱落すると思っていたので、自分の見る目のなさを痛感した。国内カップ戦2つで優勝を果たしたのも南野のように限られた出番で結果を出せるバックアッパーがいるからこそだ。

 クロップとの契約延長や退団が噂されるマネなど、部分的な再編を繰り返しながらクロップとの歩みはまだ続いていきそうなリバプール。元のスタイルを維持しつつ、時代ごとに異なる顔を見せてくれるクロップのリバプールは来年どのような表情を見せてくれるのだろうか。

Pick up Player:モハメド・サラー
 自分が選んでいいのであれば、今季のプレミアのMVPは彼だ。ロナウドやメッシがそうしてきたように彼もまたフィニッシャーに特化した形で進化していくのかと思っていたので、まさか崩しからチャンスメイク、フィニッシュまでなんでもOKの選手に立ち返るとは思わなかった。得点王とアシスト王の2冠は彼がいかに幅が広いアタッカーであるかという何よりの証明である。

今季のリバプール

【3位】チェルシー

21勝11分6敗/勝ち点74/得点76 失点33

■雑音の中で地力を見せた

 目標を何らかのタイトル!とするのならば、今年のチェルシーは失敗したことになる。2強との勝ち点差は20弱。影響が甚大だった年末年始のコロナのクラスタ化は仕方ないにしても、終盤戦のCLマドリー戦以降で燃え尽き症候群のようにトーンダウンしたのはファンとしては怖かったはずだ。背中にはアーセナルやトッテナムの足音が聞こえる時期もあった。

 それでも何とか総動員でCL出場権を守り切ったことは褒められてしかるべきだ。チアゴ・シウバとリュディガー以外はボコボコと穴を空けたバックラインは前の試合と同じ並びになることが少なく、チャロバーやサールなど若手の台頭も見られない。1年間契約問題でもめていた感のあるクリステンセンには多くのチェルシーファンからのため息が聞こえてきそうである。

 中盤の稼働率も頭が痛い問題。能力的にはリーグトップクラスの選手であることに疑いの余地はないが、コバチッチとカンテは明らかに怪我が増えてきている。出れば仕事をしてくれるだけにどこまで彼らを当てにできるかは難しいところ。

 そして、残念だったのはやはりルカクだろう。デビュー戦となったアーセナル戦では相手を手玉に取ったのだが、シーズンが進むにつれて勢いはトーンダウン。おそらくはベルギー代表のように横に動く自由度を与えながらという方が彼に向いているように思うのだが、電柱っぽく使われることで魅力が半減していたように思う。終盤戦は調子を戻しただけに来季は期待したいところだが。

 『来季こそ期待したいFW』はとして昨季の段階で名前を挙げたのはハフェルツやヴェルナー。ルカクがフィットしなかった前線に固定されたハフェルツは定位置を確保したが、チャンスメイクは圧倒的でもシュートに改善の見込みが見られなかったヴェルナーは定着せず。明暗が分かれた印象である。

 多くの怪我人やピッチの外においての雑音などの中でもトゥヘルの有能さは見ることが出来たシーズンだったが、2強との差でいえばやや開いたシーズンになってしまった。バックラインを中心に何人か退団が見込まれているので、後方の再建のスムーズさが来季の序盤戦の出来を決めることになりそう。オーナーが変わってからいかにスムーズに補強の動きを見せられるか、舵取りが難しい夏になるだろう。

Pick up player:アントニオ・リュディガー
 守備面での安定感はもちろんとして、今年は撤退した相手をこじ開けるための持ち上がりとミドルでも活躍。攻守両面でシーズン全休クラスの怪我を負ったチルウェルのいない左サイドを1年間守り続けた。

今季のチェルシー

【4位】トッテナム

22勝5分11敗/勝ち点71/得点69 失点40

■冬の新戦力とコンテのマイナーチェンジでハッピーエンドに

 ノースロンドンのライバルとの一騎打ちを制したCL出場権争い、ソン・フンミンのアジア人初の得点王など終わってみれば明るい話題が多かったトッテナム。しかしながら、その道中はなかなかスリリングなものだった。

 出だしはよかった。ヌーノが就任した開幕戦はいきなりシティというラスボスとの対戦になったが、これを中央をプロテクトするシティ・シフトで完勝。

 まずかったのはこのシティ・シフトを他のチームに応用して使いまわしたこと。中央を局在化させることは対シティにはいいかもしれないが、大外で崩しが主体のチームに対してはアンバランス。一時期は首位に立ちはしたが、クリスタル・パレスやアーセナルにあっさりとボコボコにされた。

 短命のまま終わったヌーノの後を引き継いだのがコンテ。序盤こそ支配的で全体の重心が高い自らのスタイルを注入していたが、中盤とサイドの軽さを見せてしまい、打ち砕かれることもしばしば。撤退したチームに対しては手が出ないという難もなかなか解決できなかった。

 直面した問題の解決の手助けになったのは冬にユベントスからやってきた2人。右サイドから崩しのきっかけを作れるクルゼフスキと中央で組み立てに奔走したベンタンクールの2人はチームの苦手分野である崩しの部分を請け負える存在だった。

 コンテも3-4-3を変更し、守備にはシャドーが確実に自陣深い方まで下がるなど、相手の攻撃を遅らせることを念頭に置いた策にシフトチェンジ。両WBを攻めあがらせた攻撃的なスタイルから、ソンとケインでの速い攻撃を活かせるアプローチに微調整をかけたのはコンテの隠れたファインプレーだ。

 終盤はメンバーをほとんど固定で駆け抜けた。怪我人が最小限に抑えられたのは幸運だったはず。チームとしては特にうまくいかない時に幼さを見せて荒いプレーにぶつけてしまう選手が多かったが、今年のトッテナムにはそういう選手がいなかった印象。特にソンとダイアーは大きくメンタル面での上積みが合ったように思う。

 来季はCL参戦。おそらくケインの去就の心配もいらない。キャンプからフルシーズンで指揮を執るコンテは鼻息荒くクラブ悲願のタイトルを狙ってくるはずだ。

Pick up Player:ソン・フンミン
 PKなしでの23得点は圧巻の一言。今年は序盤に波に乗れなかったケインに代わり、前半戦は中央で起点となる役割を果たしたのもポイントは高い。

今季のトッテナム

【5位】アーセナル

22勝3分13敗/勝ち点69/得点61 失点48

■健闘したが選手も監督も課題が残るシーズンに

 昨季よりも勝ち点は多く取っている、内容的にも上積みがあったのは確かである。しかしながら、目の前にCL出場権が手から滑り落ちてしまったことを考えれば充実のシーズンだったというのはいささか評価が甘すぎると言わざるを得ない。

 若いチームゆえに波の激しさは大きかった。2回の3連敗は今季の大きなブレーキを象徴しているといえるだろう。13敗もプレミアになってから最も悪い数字である。

 一方でベストメンバーで固定できた際の爆発力には目を見張るものがあったのも確か。ラカゼット、トーマスを軸にウーデゴール、サカ、スミス・ロウ、マルティネッリなどの2列目が絡む攻撃は他のどのチームとも違うリズム。大外ではマルティネッリとサカが躍動し、ロングボールの預け先として前線に起点が出来た。

 守備では冨安、ホワイト、ガブリエウ、ティアニーの4人がカルテッドを結成。揃えばハイラインを高いクオリティで維持することができ、これまでとは異なるアーセナルのスタイルを見せることが出来た。よって、タイミングさえよければプレミアのどのチームも苦しめることができるスカッドになったといえるだろう。終盤に迎えたエンケティアの台頭もいかにも若いチームらしいトピックスだ。

 その分、流れを掴めなかったときの踏ん張りの利かなさも際立った。マルティネッリ以外はゲームチェンジャーとしての役割は果たせないし、アルテタの修正が遅れたりハマらなかったりする試合も多い。逆転勝ちが1つだけでは苦しいのは当然だ

。ELで試合数が増える来季においてマネジメントと選手層は確実に課題になっていく。

 アルテタに関して少し気になるのは、毎年のように中心選手と衝突を繰り返していること。エジル、ゲンドゥージ、オーバメヤンなど、多くの反りが合わない選手を安い移籍金で退団させてきた。どちらが悪いかなどはわからないが、来季以降もこれが続くようだと経営的にもチーム的にもさすがに苦しいものはある。

 マネジメント面でも選手層の拡充の意味でもキーになりそうなのはレンタルバックの可能性が高いサリバ。実力は確かだが、ひと癖ある彼をうまく活用できるかどうか。アルテタの監督としての器が試されることになりそうだ。

Pick up player:ブカヨ・サカ
 失意のEUROを経てのリーグ戦フル出場は立派。好不調の波があったのは否めないが、2桁ゴールも記録するなど、個人のステータスを高めた1年となった。課題となるのは対人に強いSBとのマッチアップ。どこか独り相撲感がある内容の試合もあったが、同サイドのウーデゴールや冨安との連携をさらに高めてチームとして彼の良さを生かせることができれば、今年歯が立たなかったSBにもリベンジのチャンスはあるはずだ。

今季のアーセナル

【6位】マンチェスター・ユナイテッド

16勝10分12敗/勝ち点58/得点57 失点57

■心ここにあらずとなった終盤戦の責任は?

 端的に非常に苦しいシーズンとなってしまった。スールシャールが作り上げた古き良きユナイテッドは前線から元気に走り回りながら、攻守にチーム全体が動き回るスタイル。だが、前線の運動量が落ちてしまった20-21からはやや威力が落ちてしまった感が否めない。

 それに加えてやってきたのはロナウドだ。ゴール数を見れば彼自身のパフォーマンスがプレミアレベルにないとは全く思わないが、前からプレスをかけに行くスタンスが合わないことは明白だろう。ロナウドという英雄の帰還はクラブとしては逃すわけにはいかなかったはず。競合相手がシティであるならばなおさらである。そういう意味ではタイミング的なミスマッチではあったかもしれない。

 加えてラッシュフォードが極度の不振に陥り、カバーニは怪我に悩まされ、グリーンウッドが離脱し、サンチョはフィットに時間がかかるなど前線はロナウド以外に柱となる存在がいなかったのも大きな困難の原因である。

 というわけで古き良きユナイテッドの活力を取り戻せなかったスールシャールは秋に解任となる。代わりにやってきたのはラングニック。まさかのレッドブル路線である。しかも暫定監督としての就任で22-23からののコンサル契約付きというのだから驚いた。

 よって前線は引き続きフルコミットが要求されることになる。だが、ラングニック式の4-2-2-2は就任数試合で頓挫。エネルギッシュなスタイルは前線だけでなく、中盤より後ろの難をあらわにするものになった。

 最も割を食った感があるのは最終ライン。特にマグワイアは適応に苦しんだ。PA内を守れば安定感が高いにもかからわず求められるのはラインを高める広い範囲の守備。チーム全体を見てもスタイルに合うのはフレッジくらい。ここからラングニック合わせの大幅なスカッド入れ替えが行われるものかと思っていた。

 しかし、待っていたのは来季のテン・ハーグ就任とラングニックの退団。となると21-22の後半半分は何だったのだろうといいたくもなるはずである。テン・ハーグの就任がシーズン終了を待たずに早々に発表されたこともあり、シーズン終盤には早くもファンとメディアの視線は来季に。心ここにあらずという感じで負けを淡々と重ねていった。

 今季の最大の舵取りの失敗はやはりラングニックの招聘にまつわるフロントの判断だろう。中期的なかじ取りを任せたかと思いきや、次期監督は全く毛色の違うタイプの指揮官で本人は退団。チームもラングニックも何がしたかったのかわからない。こうした場当たり的なことを繰り返していては結果が出ないのは当然だ。

 テン・ハーグは有能な指揮官ではあると思うが、意思決定をする側がこれだけ揺らいでいればまとまるものもまとまらないのは当然である。まずはチームの方向性を定めること、誰に何もを求めるかを明確にすること。フロントがきっちり仕事をしなければ今のプレミアでの復権はなかなかに困難なものになる。

Pick up player:クリスティアーノ・ロナウド
 PKが多いとはいえ、CFにとっては苦しい昨今のプレミアにおいて、2桁ゴールは立派といえるだろう。空中戦の強さも健在で、プレミアでも当たり負けはしない質の高い武器。依然として高いレベルにあることを証明したシーズンとなった。

今季のマンチェスター・ユナイテッド

【7位】ウェストハム

16勝8分14敗/勝ち点56/得点60 失点51

■大健闘故に降りかかった失速

 躍進した2年目のシーズンは大体厳しい戦いになるのが定説である。序盤戦のウェストハムはそれを打ち破ったといっていいだろう。昨季躍進を支えたメンバーはマンチェスター・ユナイテッドに帰還したリンガードを除けば軒並み残留。昨季のメンバーをベースに今シーズンも戦うことになった。

 チームの中心は何と言ってもライス。EUROのフル稼働からコンディション面での懸念はあったが、心配をよそにシーズンを走りきった。昨季並みどころかサイドへの崩しの顔出しにハイプレスへの参加など、仕事の幅は昨シーズン以上といっても差し支えないだろう。

 相棒のソーチェクと共にライスが走りきった中盤は盤石。反対に苦しかったのは最終ラインだ。オグボンナはシーズン中盤戦以降をほぼ棒に振り、レギュラーは1枚落ちが常態化。ズマ(ピッチの外ではわちゃわちゃしたけども)とドーソンは何とか踏ん張ったが、時にはクレスウェルがCBに入るなど最終ラインの構成には悩まされたシーズンといっていいだろう。

 前線は序盤戦はよかったが、ELとの並行がボディーブローのように効いてきた後半戦は失速気味。アントニオはチャンスメーカーとしての仕事が増えてしまい、ゴール前に迫る機会を失うことに。ボーウェンはスコアラーとして気を吐いていたがこれではチーム全体としての得点力は落ちてしまっても仕方ない。

 シーズンを振り返ってみると終盤戦の時点で好位に付けていたCL争いからズルズルと脱落。直接対決に苦しんだというよりも下位のチームに勝ち点を落としてしまう試合が多かったのがもったいなかった。

    ライバルとなる3チームが欧州戦線を早々に離脱したり、あるいはそもそもなかったりしたのもウェストハムにとっては逆風。ELと並行してパフォーマンスを落とさない体力はまだなかったようである。

 ただ、それは裏を返せば欧州の舞台でも爪痕を残した証拠でもある。ELでベスト4まで入りながらリーグ戦で欧州カップ戦争いに顔を出せるほどの地力はついているということ。欧州カップ戦の負荷が下がる来季は終盤戦までCL争いに食い込めるスカッドを作り上げたいところだが。

Pick up player:デクラン・ライス
 本文でも取り上げたが再掲。今季のイングランド代表の面々は特にシーズン序盤にEURO疲れを引きずっているケースが多かっただけに、本大会をレギュラーで走り切りかつ、シーズン序盤からフルスロットルというパフォーマンスはなかなかに圧巻。前半戦ならリーグ全体のMVP候補。

今季のウェストハム

【8位】レスター

14勝10分14敗/勝ち点52/得点62 失点59

■苦しい台所事情を振り切った後半戦

 ウェストハムとは逆に序盤の出遅れからよくここまで巻き返したなという印象である。苦しんだのは怪我人だ。今年のレスターのバックラインは呪われていたといってもいいだろう。

 プレシーズンにおけるフォファナの長期離脱から始まりカスターニュ、エヴァンス、リカルド・ペレイラも怪我に苦しんだ。ヴェスターゴーアは低調なパフォーマンスで戦力になり切れず、ジャスティンは負傷明けで中盤戦以降ようやくプレータイムを伸ばしたらシーズンが終わってしまった感じ。年間を通して無事に稼働したDFはトーマスとソユンク、アマーティくらいのものだろう。

 加えて、今年は前線の要であるヴァーディも怪我が多かった。ティーレマンスやソユンクといったEURO組の低調な仕上がりも含め、チーム全体が負のスパイラルに陥っていた感がある。

 それでも終盤戦になんとかトップハーフまで舞い戻れたのは底力だろう。推進力になったのは中盤に現れた新星であるデューズバリー=ホール。攻守にハードワークできる中盤の新たな柱としてチームを牽引する。序盤戦は怪我の影響を感じさせたバーンズと共に中盤戦以降は彼ら2人が左サイドは大きな武器となった。

 そのパフォーマンスに引っ張られるように重鎮組は奮起。マディソンが量産モードに入り、ヴァーディが復帰するとさらにブーストがかかった。終盤戦の巻き返しでチームは何とかトップハーフを確保した形である。

 巻き返したという観点で見ればさすがの底力!といえるのだけども、シーズンを通してサッカーの内容も見てみればボール保持の安定感、バックラインの耐久性など諸々のスケールダウンは否めない。特にボール保持に関しては割とメンバーが入れ替わっていてもこれまでは出来ていた部分ではあるので、気がかりではある。

    ティーレマンスなど主力の退団も噂されている状況であり、来季の編成も不透明。主力に長期離脱歴がある選手が徐々に増えてきたこともスカッドを組む上での不確定要素になりうる。

 それだけに来季の目標の置き方は難しいところ。キャンプでメンバーを揃えて、主力が通年で稼働できれば欧州カップ戦争いに食い込めるポテンシャルは十分。20-21の水準まで持っていければチャンスはあるはず。それができなければ功労者であるロジャースの立場が危ういものになる展開もありえない話ではない。

Pick up player:ジェイミー・ヴァーディ
 あーこの稼働率じゃ今季はなかなか厳しいシーズンといえそうだな!からの終盤戦の巻き返しには舌を巻くばかりである。出れば仕事をする千両役者ぶりは今季も健在で多くのチームを仕留めてきた。特に終盤戦はバックパスキラーとして暗躍。無理なポゼッションへのこだわりによって産まれた隙を次々とゴールにつなげて見せた。

今季のレスター

【9位】ブライトン

12勝15分11敗/勝ち点51/得点42 失点44

■魔法がかかったり解けたり

 決定機はたくさん作れているけども、最終的にはシュートがやたら入らないということで台無し系のチームとして名高いブライトン。しかし、今季の序盤戦は一味違った。

    決定機創出力をそのままにシュートが入るチームになったブライトンは普通に強かった。モペイが普通に枠にボールを飛ばす。となってしまうとなるといよいよブライトンは脅威である。

     よっしゃこのままCL出場権やで!となったあたりで急激に魔法が切れてしまった感じ。シュートが入らなくなってしまい、モペイはいつも通りの悲しげな顔でシュートが決まらなかった現実を受け入れることをピッチで繰り返していた。

    例年に比べると高い位置から積極的にプレスに行く機会が増えた分、やや試合を支配するという観点から安定性を欠いたことも勝ち点が落ち着かなかった要因。最もこれはポッターなりのチャレンジだと思うので、残留争いに首を突っ込むでもしない限りは問題はないと思うのだけども。

 そうしたチームの中で攻守に目立っていたのは新加入のククレジャ。ヘタフェで鳴らしたフィジカルは見事にプレミアでも通用することを証明。プレミアのドリブラーたちにピタッと張り付き、前を向くことさえ許さない対人守備で封殺。攻撃面でも高い位置までのオーバーラップを90分間欠かさないタフっぷりを見せつけて、見事に年間を通して活躍して見せた。

 アタッカー陣の中ではトロサールが躍動。昨年だったら枠外に飛んでいったシュートをバシバシ決めるようになり、決定力ではないFW陣の中でフィニッシャーとしてチームを牽引して見せた。

 試合の中でのシステム変更の豊富さや、あらゆるポジションで起用して可能性を見せようとするポッターの姿勢は今年も相変わらず。同じ試合の中で1トップとアンカーをどちらもやったマック=アリスターのようにそうした中で徐々に力を付けていく選手もいる。

 来季は三笘が加わるブライトン。近年は育成クラブとしても名高いブライトンの中で三笘がどのような変化を遂げるのか今から楽しみである。

Pick up player:レアンドロ・トロサール
 ドリブルが得意なアタッカーの中で決定力を備えた今季はワンランク上の選手になったシーズン。懐の深いドリブルと左サイドからのカットインはプレースタイルを加味すると来季の三笘の最大の壁になりうる存在でもある。

今季のブライトン

【10位】ウォルバーハンプトン

15勝6分17敗/勝ち点51/得点38 失点43

■得点力とゲームチェンジャーに苦しむも堅実

 アーセナルと同じくシーズン序盤戦は大苦戦。ブレーキがかかってしまい残留争いもやむなしのシーズンかと思われた。しかしながら中盤戦以降、チームはV字回復。

    負けている時期もそもそも少ない失点で踏ん張れていたことが復調の要因としては大きい。元々失点は少なく抑えられていたので得点さえついてくれば後は!という感じで前線の奮起を待っている形だった。

 その前線の牽引役となっていたのはファン・ヒチャン。僕の知り合いに『ブンデスからやってきたアタッカー1年目はマジ無理説』を唱えている奴がいるのだが、ヒチャンは見事にそれを裏切って見せたといっていいだろう。

 昨年のアーセナル戦で負傷したヒメネスも徐々にコンディションを上げていく。シーズン終盤でようやくスカッド入りしたネトがフィットすればさらにチームとしての前線の層は厚くなっていくはず。やや残念だったのは2年目となるシルバが今季も殻を破れなかったことだろうか。

 中盤より後ろは固定メンツで安定。ネベス、キルマンあたりは例年以上のパフォーマンスを見せたと思うし、左WBでマルサウを抑えてレギュラーを獲得したアイト=ヌーリにとっても充実のシーズンとなった。

 そしてゴールマウスにはジョゼ・サ。新加入のGKはとても華があるパフォーマンスでチームを最後方から鼓舞。強固なセービングに加えて、ギリギリだが間に合う飛び出しは足が速いとは言えないウルブスのバックラインを助けていた。

 来季以降勝ち点を伸ばせるかのキーは得点力とゲームチェンジャーの存在である。38得点はトップハーフで最低。ヒメネスとデ・ブライネの今季のモリニューの得点数が同じじゃ困るのである。

    特に前半戦は前線の交代選手に苦しんだ印象。ネトのさらなる復調やトリンコンの完全移籍が見込めればこの部分の改善も見込めるはず。

 改善点はあるが、ブルーノ・ラージは地味ながらも安定した1年目を見せたといえる。最終節のリバプールが象徴するようにどこにとっても倒しにくいチームを作り上げた功績は大きい。来季も楽しみなチームだ。

Pick up player:ルベン・ネベス
 高額な移籍金ゆえに自分は割とアーセナルには「いらない」といってしまうのだけど、もちろん素晴らしい選手である。今季はおなじみの司令塔タスクのほかにサイドに忍び寄ってマイナスの折り返しを受けてワンタッチで折り返してアシストを決めるスキルも習得。得点により直接絡む機会も増えるなど幅を見せたシーズンとなった。

今季のウォルバーハンプトン

 つづく!

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