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「Catch up Premier League」~Match week 38~ 2022.5.22

目次

①アーセナル【5位】×エバートン【16位】

■早い段階でお祭りムードに

 レビューはこちら。

 ニューカッスルに完敗を喫し、4位をおとなりさんに譲ることになったアーセナル。ノリッジがトッテナムに勝たない限りはCL復帰の夢は断たれることになる。

 一方のエバートンは最終節を前に完全にやり切った感である。グディソン・パークで劇的な逆転勝利で残留を飾り、最終節はボーナスステージにほかならない。

 エバートンは残留争い真っ只中に使っていた5-4-1でアーセナルを迎え撃つ。これによりボールを持つことが出来たアーセナル。ここ数試合、高い位置から相手にとがめられることでビルドアップの不安定さを露呈していたアーセナルにとっては、このエバートンのスタンスは助かるものだった。

 問題なく高い位置までボールを運べるアーセナルは左サイドのマルティネッリとタバレスのところから、PA内に迫っていく。対峙するイウォビにとってはマルティネッリとの1on1はやや重荷だったように思う。

 そのイウォビがシュートに対してハンドを犯てしまいPKを献上。アーセナルはマルティネッリがこれを決めて先制する。

 ここからアーセナルはゴールショーが開幕。そのマルティネッリがニアに入り込んで、スラしたことでファーに入ったエンケティアが追加点を叩き込む。

 前半終了間際に1点を返されたのはご愛敬。しかしながら、クロス対応の緩さは要改善。特に出場停止から復帰したホールディングにとっては、この部分は妥協できない要素なはず。PA内での対応の厳しさではだれにも負けないくらいの気持ちは欲しいところである。

 後半もアーセナルはセットプレーを中心に加点していく。セドリックがバイタル付近からミドルでベゴビッチを打ち抜くと、4点目はガブリエウがストライカー顔負けの抜け出しから左足で豪快にフィニッシュ。

 締めとなったのはウーデゴール。今季、アーセナルを力強いリーダーシップで引っ張っていった8番が今季のアーセナルの最後のゴールを飾ることとなった。

 裏のカードが結果を祈らなくてはいけないような展開にならず、早々にCL出場権については諦めがついたのだろう。エミレーツ・スタジアムは1つ1つのゴールに沸く平和な雰囲気だった。

 対するエバートンも5失点したものの陽気そのもの。自身の残留が決まったのはもちろん、隣人がタイトルを逸することが濃厚になったのだから笑いが止まらない。この試合で彼らが一番盛り上がったのは間違いなくエティハドからギュンドアンの3点目のゴールが入った速報が入った時に違いない。

 というわけで速い段階でお祭りムードになったエミレーツ。平和な形で最終節の幕は閉じられた。

試合結果
2022.5.22
プレミアリーグ 第38節
アーセナル 5-1 エバートン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:27′(PK) マルティネッリ, 31′ エンケティア, 56′ セドリック, 59′ マガリャンイス, 82′ ウーデゴール
EVE:45+3’ ファン・デ・ベーク
主審:アンドレ・マリナー

②ブレントフォード【11位】×リーズ【18位】

■功労者が幕を引いた残留劇

 最終節、バーンリーとの一騎打ちで残留の可能性を持ち越すことになったリーズ。残留の要件はシンプルで最終節でバーンリーよりも多く勝ち点を得ることである。すべてをここに置いていくつもりでブレントフォードに乗り込む。

 立ち上がりからリーズの気合は十分だった。高い位置から相手を捕まえに行くプレスで相手を強襲。開始早々に先制点!という場面もあったが、これはシュートを決めたゲルハルトがオフサイド判定。認められることはなかった。

 そうした好戦的なリーズのスタイルにホームのブレントフォードは見事に応えたといっていいだろう。プレスの応酬にこちらも参加しながら試合を盛り立てる。

 ただ、ブレントフォードの方がフィリップスにボールが入った段階で素早く撤退を始めるなど、やや現実的な振る舞いを見せた印象。リーズが対角のパスを駆使しながらブレントフォードのプレッシングを回避することが出来ていたこともあり、徐々に引く時間を作りながらのカウンター移行にシフトしていくようになっていった。

 リーズは保持しながら攻略に取り組むが、ラインを下げたブレントフォードがカウンターで返り討ちにしていく構図で試合は進むように。前半の中頃は互いに保持で相手の中盤にボールをひっかける展開が続き、なかなかボールを前に進めることができなかった。この時間帯はどちらかといえば、空回り気味だったリーズよりも割り切って前線への長いボールを活用するブレントフォードの方が落ち着いた試合運びをしていたといっていいだろう。

 膠着状態の中で試合が動いたのは後半。ブレントフォードはラヤのミスキックからピンチを招き、苦しい対応からPKを献上してしまう。これをリーズはエースのラフィーニャが決めて先制。

 先制点から一気にペースはリーズに。ラフィーニャを先導役にブレントフォードを自陣から脱出させないように閉じ込めていく。その一方でストライクを投入し5バックにシフトするなど、マーシュは現実的な策も講じる。

 だが、その逃げ切りたい目論見を生み破ったのはカノス。途中交代で入った7番はエランド・ロードに続き、このカード2試合連続得点を決めて試合を振り出しに戻す。バーンリーがニューカッスル相手に追撃弾を決めた時間と重なった失点ということもあり、リーズのファンには焦りの色が出てくる。

 しかし、そのカノスはゴール直後に2枚目の警告を受けて退場。1枚目の警告はなぜかユニフォームを脱いでしまったせいなので、さすがにやっちまった感がある。エランド・ロードではシュートを外したことをだいぶリーズファンから煽られていたので、リーズに個人的な恨みがある分、喜びが爆発したりしたのだろうか。

 いずれにしてもこの退場は現状でも残留が決まるリーズにとっては追い風。とはいえ、確実に勝って残留を決めたいリーズは終盤に10人のブレントフォードを押し込んでいく。そして、リーズの残留劇を締めくくったのはハリソン。ジェームズ、エイリング、ダラスと今季共に戦った仲間が次々と試合に出れなくなっていく中で、最後を締めたのが今季最もコンスタントにチームに貢献し続けたハリソンというのは個人的にはだいぶドラマチック。

 ふさわしい人がふさわしい形で幕を引く形でリーズの残留劇は終わりを迎えた。

試合結果
2022.5.22
プレミアリーグ 第38節
ブレントフォード 1-2 リーズ
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:78′ カノス
LEE:56′(PK) ラフィーニャ, 90+4′ ハリソン
主審:ポール・ティアニー

③ブライトン【10位】×ウェストハム【7位】

■明確に打ち出されたストロングポイント

 勝てばセルハースト・パークで試合をするマンチェスター・ユナイテッド次第でEL出場権が逆転で手に入るウェストハム。最終節の相手はシーズン後半にかけて調子を上げてきているブライトンである。

 立ち上がりから圧倒的にボールを持つことが出来たのはブライトン。ウェストハムは4-4-2スタイルで守備ブロックを組んで迎撃するという彼らの普段のスタイルに近いものだった。

 だけども、このウェストハムの守り方はブライトンにとっては非常に優しいものだった。なにせ、アンカーがろくに消されていないため、左右に裏にと展開が自由なのである。

 ビスマをフリーにしてしまえば当然そうなるだろう。ブライトンが支配的になるのも、そうしたウェストハムの守備における緩さによるものである。

 アンカーに限らず、この日のウェストハムは軒並みホルダーへのプレスの意識が薄く、傍から見るとどちらが欧州カップ戦を目指して戦っているクラブかがわからないくらいであった。

 そうしたウェストハムも徐々に試合のテンポを取り戻していく流れに。キーになったのは保持。ブライトンが無理にプレスをかけることなく、まずは撤退から時間を奪っていく。

 すると、そのまま先制したのはうウェストハム。アントニオが反転してからの強烈シュートをお見舞いし、劣勢をひっくり返す先制点を手にする。

 後半頭からは試合はブライトンペース。保持での押し込みから左サイドで攻勢を強める機会が増えたブライトン。実を結んだのもその左サイドの攻撃だ。保持での押し込み、と左サイドからの崩しのパスに逆サイドから飛び込むフェルトマンはこの試合でのブライトンの準備が認められたように思えた。そして、ブライトンは左サイドからのクロスで同点に追いつくことになる。

 反撃に打って出たいウェストハムだったが、ブライトンの左サイドほど明確なストロングポイントが出来ず、突破口を見つけられない。そうこうしているうちに、ブライトンは追加点をゲット。今度はグロスの反転シュートだった。

 やはり、ブライトンの魅力はボールを受ける準備が頻繁に行われていること。オフザボールをもさぼらないし、出す方もきっちりと使う。そうすることによって次のランのエネルギーがたまっていくのであろう。

 先制こそしたものの、最後までなかなか勝利にたどり着けなかったウェストハム。セルハースト・パークからのユナイテッド敗戦の吉報を活かすことが出来ず、来季のECL行きが決まった。

試合結果
2022.5.22
プレミアリーグ 第38節
ブライトン 3-1 ウェストハム
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRI:50′ フェルトマン, 80′ グロス, 90+2′ ウェルベック
WHU:40′ アントニオ
主審:ケビン・フレンド

④バーンリー【17位】×ニューカッスル【12位】

■今節も死神ムーブ

 リーズとの得失点差を考えれば実質勝てば残留確定。そういう意味では最終節の前の段階で残留争いの運転席に座っていたのはバーンリーといえるだろう。

 ここ数試合は5-3-2で挑むことが多かったバーンリーだが、この試合では4-4-2による正面衝突を選択。勝ちに行くことで残留をつかみ取るスタンスを見せることとした。

 立ち上がりから両チームとも肉弾戦の様相が強いがっぷり四つ。はっきり言って、この日のターフ・ムーアにはビルドアップの流儀とかズレを作って相手を動かすなど、そうしたことは細かいことであり、ぶつかり合うことこそ全て!みたいな空気が徐々に流れることになっていく。

 互いにこれだけ激しいぶつかり合いを繰り広げられているのあれば、負傷者が出てくるのも多少は致し方ないだろう。この試合ではジョエリントンが早々に負傷退場してしまったのはとても切ない。シーズンが長らく休みになることは救いではあるが。

 そうした肉弾戦の中でハンドを犯してしまったのはコリンズ。負傷者が続出している最終ラインを支えてきた男がここに来て痛恨のミスでチームを窮地に追い込んでしまう。

 得点シーンだけではなく、ニューカッスルはバーンリーの肉弾戦にめちゃめちゃ渡り合っていた。中盤よりも前にいかせない!という意気込みは十分で、バーンリーの前に先制点を携えて見事に立ちはだかり続けた。

 後半も試合の展開は同じ。だが、徐々に前進の方で苦しくなってきたのはバーンリーの方。なにせニューカッスルは中盤引き締めと1点のリードというアドバンテージを手にしている。馬力で劣るバーンリーが徐々に苦しくなるのは必然である。

 そんな中でウィルソンの追加点がニューカッスルに入る。前節、スタメン復帰を果たし、活躍を見せたベテランは今節ついにゴールをゲット。バーンリーをさらに苦しい状況に追い込む。

 しかしながら、ワンチャンスをコルネがモノにしたことで再び状況は好転。リーズが同時間帯に追いつかれたこともあり、自分たちが追いつくか、あるいはリーズが逆転を許すかのどちらかが実現すれば残留というところまで進むことが出来た。

 だが、その状況でも押しのもう一手は出てこず。ブレントフォード・コミュニティ・スタジアムではリーズが勝ち越した一報も飛び込んできてしまい万事休すである。

 ニューカッスルは前節のCL出場権をかけたアーセナルに続いて、きっちりとバーンリーも望む方とは逆側に連れていかれた。見事な死神ムーブである。

 バーンリーは苦しい規模の中で何とか一部に定着していただけに少し寂しさはぬぐえない。名物スタジアムのターフ・ムーアもプレミアとはしばしのお別れ、再びこの地でプレミアが見られるのにどのくらいの時間がかかるだろうか。

試合結果
2022.5.22
プレミアリーグ 第38節
バーンリー 1-2 ニューカッスル
ターフ・ムーア
【得点者】
BUR:69′ コルネ
NEW:20′(PK) 60′ ウィルソン
主審:クレイグ・ポーソン

⑤チェルシー【3位】×ワトフォード【19位】

■セレモニーを締めくくったのはバークリー

 すでに降格が決まっているワトフォード。この舞台とはしばしのお別れとなる彼らのプレミア最終節はスタンフォード・ブリッジ。最終節まで順位を確定させているチームが1つもない中で、唯一得失点差の関係で事実上の3位が決まっているチェルシーの本拠地に乗り込むことになる。

 立ち上がりからこの両チームの対戦で想定できる展開で進む両チーム。低い位置からボールを持つチェルシーに対して、ワトフォードはボールを持たれることを許容する形で対抗する。

 まずはケネディ、マウントの居る左サイドから突っつく姿勢を見せるチェルシー。ワトフォードは重心を下げてSH-SBでこれを跳ね返しにかかる。

 しかしながら、ワトフォードはボールの奪いどころが定まっていない様子。サイドから押し下げられて、エリア内にマイナスの形を送られるなど危なっかしい形が続く。ズルズル下がってしまうのは彼らの悪癖である。

 ノープレッシャーでボールの供給ができるチェルシーは自由自在に両サイドから攻める展開が続く前半に。その中で得点につながるプレーを見せたのはこの日存在感のあったケネディである。ファーサイドで待ち構えていたハフェルツにアシストを決めて先制。ケネディ、おそらく今季リーグ戦初先発だと思うのだけど、めっちゃ元気である。

 後半はさすがに何かがかかっているわけでもないため、どこか雰囲気はのどか。その後もチェルシーが支配的に試合を進めているのは変わりなかったこともあり、いつもはタッチライン際とベンチを行き来しながらイライラを隠さないトゥヘルもガムを噛みながら穏やかな表情で試合を見守っていたのが印象的だった。交代でピッチを退くリュディガーのファンへの最後のあいさつやバークリーの投入など、どこかセレモニー感が出て来たスタンフォード・ブリッジ。

 だが、後半も終盤に差し掛かったところでワトフォードは反撃に。右サイドからカットインで入ってきたジョアン・ペドロが同点弾をゲット。前触れがないところから得点が生まれることに。チェルシーとしては前節を思い出す緩さが際立つ失点となった。

 しかし、4バックに移行していたことが奏功したチェルシー。さらに攻勢を強めたところで右サイドの攻撃が炸裂する。チェルシーの21-22最後のゴール、そして最後の決勝点を決めたのはロス・バークリー。ギリギリのところを最終節を勝利で飾る立役者となったのは、今季出番の少なさに苦しみ続けたバークリーだった。

試合結果
2022.5.22
プレミアリーグ 第38節
チェルシー 2-1 ワトフォード
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:11‘ ハフェルツ, 90+1’ バークリー
WAT:87’ ゴスリング
主審:マイク・ディーン

⑥クリスタル・パレス【13位】×マンチェスター・ユナイテッド【6位】

■ビハインドも若手中心のスタンスは変えず

 最終節にかかっているのはウェストハムとのEL出場権を巡る6位争い。にもかかわらずマンチェスター・ユナイテッドはメンバーが揃わないというか、ターンオーバーを意識したようなメンバー構成となっている。

 対するクリスタル・パレスも右のWGにラク=サキを使うなど、メンバー構成はややチャレンジング。セルハーストパークでの最終節は互いにフレッシュな並びで戦うこととなった。

 互いに前線は相手のバックラインにきつめのプレッシャー。それを受けたバックラインにはミスが多く、なかなか落ち着かない立ち上がりとなった。

 攻撃の方針は両チームともに違いが見えた。ユナイテッドはサイドに大きな展開を使いながら前進の機会を伺っていく。SHとSBの縦関係の意識が強く、2人がそれぞれを使いながら攻撃に打ってでる。

 最終節に抜擢されたハンニバルはスタートポジションは左ではあったが、とにかく動き回る。フリーマンでいいよといわれているのか、制御不能で暴走しているのかはわからない。ブルーノがその様子に応じて左サイドに流れたりなど、元気が有り余るハンニバルに対して調整役を買って出ていた。

 一方のクリスタル・パレスは縦パスを入れながら前進。ザハのポストを使いながらカウンター寄りの中央のルートで前進を狙っていく。ザハのポストは高確率でチャンスにつながっており、ユナイテッドよりも具体的なゴールに迫る道筋だったといってもいいだろう。

 異なる前進のルートを模索する両チームだったが、クリスタル・パレスに入った先制点は思わぬものに。スローインから大きく後ろに戻したブルーノのパスは味方に渡らず。このプレゼントをザハがキープし、シュートまでつなげて先制する。

 確かにピンチになった後のユナイテッドの最終ラインの対応もまあまあひどいが、そもそもブルーノがそんなパスを出す必要がない。通ったところでなんなの?というパスからミスになるのは切ない。

 ビハインド、しかも欧州カップ出場権が左右されるかもしれないユナイテッドだったが、特に終盤までギアチェンジは見られず。交代枠もショレティレ、ガルナチョなど若手の抜擢によるものが中心だ。

 プレスからクリーンにボールを奪い取る場面も増えてこず、ヒューズをミリボイェビッチに変更し、クヤテを最終ラインに入れてプロテクトを進めるパレス相手にこじ開ける手段がない。クヤテが入って以降は、パレスは非保持で5バックを形成。ユナイテッドはマタを入れて保持を安定させるくらいが関の山である。

 80分を過ぎたところでだいぶ押し込む機会は増えてきたユナイテッド。右サイドの裏からゴールに迫っていくが、どうしてもこわしきれないまま試合は終了。

 ラングニックのチームは徐々に店じまいを始めたパレスの守備陣に攻略のきっかけを見つけることが出来なかった。よって、6位争いは他会場にゆだねられることになったが、これはウェストハムは敗退で決着。ユナイテッドが6位に滑り込み、来季のEL出場を決めた。

試合結果
2022.5.22
プレミアリーグ 第38節
クリスタル・パレス 1-0 マンチェスター・ユナイテッド
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:37′ ザハ
主審:マーティン・アトキンソン

⑦レスター【9位】×サウサンプトン【15位】

■ゴールラッシュでの大勝で締めくくる

 共に順位は中位、残留争いにも欧州カップ戦争いにも無縁な両チームの対戦は非常におおらかな雰囲気で行われた。もともと、アグレッシブなスタイルで知られる両チーム。互いに積極的に最終ラインにプレッシャーをかけながらゲームを進めていく。

 フォーメーションも互いに噛み合うし、どちらもダイレクトな展開が得意ということで、前半からデュエルの頻度が多く、ボールは敵陣と自陣を行ったり来たり。デュエルで存在感を見せて、主役になるのはだれ?という感じの試合展開となった。

 どちらかといえば、優勢に進めていたのはレスターの方だろうか。ドリブラーであるバーンズに裏抜けできるヴァーディを合わせることで、相手の最終ラインを明確に破る術をもっていたのは大きい。いつもと少し違ったのは限られたチャンスを確実に叩き込むヴァーディではなかったこと。珍しく決定機を外してしまい、前半早々に先制点を奪う形にはならなかった。

 一方のサウサンプトンは2CBと2CHの可変で相手のプレッシングを回避してボールを持てる展開に。しかしながら、アタッキングサードにおける明確な武器がなく、シュートに迫るまでのパターンが見えてこないまま。レスターをPA内まで押し込むことこそできるものの、そこから先の決め手が足りない状態となっていた。

 後半は前半とは打って変わって得点がたくさん入る展開となった。先手を取ったのは前半のうちから優勢だったレスターである。バックラインにプレッシャーをかけ続けてミスを誘発したところを快足FWがかっさらう!というのはここ数試合のレスターの鉄板のパターンである。

 今日の被害者になったのはリャンコ。ヴァーディにボールをかっさらわれて、マディソンにゴールを沈められたときのやっちまった!という表情はどこか憎めない。

 前半に引き続き、押し込むところまでは行くサウサンプトン。だが、得点につながる決め手はなかなか後半もみつからないまま。

 そうこうしているうちにカウンター専念スタイルにシフトしつつあるレスターが追加点をゲット。ロングカウンターからバーンズ→ヴァーディのホットラインで追加点をゲット。ウォード=プラウズ、リャンコあたりはだいぶ目が回る形で振り回されてしまった。

 サウサンプトンはS.アームストロングがメンディとティーレマンスを振り切る形でPKをゲットし1点を返すが、なおも支配的なのはレスター。3点目はマディソンに逆サイドへの脱出を許してしまったステーフェンスのやらかしである。

 そして仕上げとなったレスターの4点目はもはや練習なのかな?という強度。終盤はゴールラッシュでホーム最終節を飾ったレスター。大勝で21-22シーズンを締めくくった。

試合結果
2022.5.22
プレミアリーグ 第38節
レスター 4-1 サウサンプトン
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:49‘ マディソン, 74’ ヴァーディ, 81‘ 90+6’ ペレス
SOU:79‘(PK) ウォード=プラウズ
主審:ジョナサン・モス

⑧リバプール【2位】×ウォルバーハンプトン【8位】

■こじ開ける姿は堂々たるもの

 勝ち点差はわずかに1ポイント。国内外で4つのタイトルを総なめにするチャンスがあるリバプールにとって、唯一自力では何とかすることができないのがこのリーグのタイトルである。

 そのためにはまずは自分たちが勝利をすること!だったのだが、このアンフィールドで迎えた最終節でまさかの先制点をウルブスに献上。ネトが最終節で一番乗りでゴールを揺らして見せた。ミスをしたコナテにとっては頭が真っ白になってもおかしくはないシチュエーションである。

 まさか一斉開催の最終節において20チームのうち真っ先に失点するとは夢にも思わなかっただろうリバプール。ここからの試合は非常に堅い展開に。両チームともコンパクトなブロックを敷きながら、相手の出方を伺うスタンス。ブロックのままでは崩すのが難しいので、お互いにトリガーを準備しながらブロック攻略に当たっていた。

 保持の機会が多くなっていたリバプール側で攻略のトリガーになっていたのは、大外を噛ませてのハーフスペースからの抜け出し。これでサイドから深さを作ることはできていたリバプール。しかしながらエリア内で人垣を築くウルブスの守備ブロックに手を焼く。

 対するウルブスの武器はロングカウンターである。もちろん、リバプールのコナテ、マティプ、ヘンダーソンのユニットも強固ではあるが、ファン・ダイクとファビーニョがいないとなればいくばくかは楽にゴール前に運べる。スピード豊かなネトを中心に相手のバックラインの裏をついていく形を狙う。

 一進一退の攻防の中でスコアを動かしたのはリバプール。チアゴのおしゃれなフリックというスペシャリティが乗っかったことでリバプールは見事な同点弾が乗っかることになった。

 同点ゴール以降は支配的だったリバプール。後半は一気に畳みかけていく。ラインを壊すパスから敵陣に迫っていくのは前半と同じ。対角のパスで大外を噛ませる形以外にもアレクサンダー=アーノルドが内に絞りながら縦のベクトルに強いパスを出すのはいかにも21-22モデルのリバプールっぽい。

 一方のウルブスで後半に猛威を振るったのはファン・ヒチャン。前半以上に前がかりになるリバプールのバックライン相手に大立ち回り。ゴールの脅威をリバプールに十分現実味がある状態で突き付けながら、ロングカウンターを引っ張っていく。

 リバプールが仕上げとして投入したのはサラー。アタッキングサードでの精度をさらに高めに行く。すると、こじ開けるきっかけになったのはセットプレー。混戦からサラーが押し込んで得点王に手をかける決勝点を手にする。

 すると直後には仕上げとしてロバートソンがとどめの一撃。試合を完全に決定づける。シティが他会場で勝利を挙げたため、優勝は果たせなかったが、苦しい展開を堂々とこじ開けていく最終節のパフォーマンスは確かに今季強さを見せ続けたリバプールの姿であった。

試合結果
2022.5.22
プレミアリーグ 第38節
リバプール 3-1 ウォルバーハンプトン
アンフィールド
【得点者】
LIV:24′ マネ, 84′ サラー, 89′ ロバートソン
WOL:3′ ネト
主審:アンソニー・テイラー

⑨マンチェスター・シティ【1位】×アストンビラ【14位】

魔の5分間で全てをひっくり返す

 勝てば文句なしで優勝!という状況で迎えた最終節。エティハドで迎え撃つのは何の因縁かリバプールのレジェンドであるジェラードが率いるアストンビラである。

 当たり前ではあるが、優勝が懸かっているシティは立ち上がりから本気モード。高い位置からのハイプレスですべてのプレーを敵陣で完結させてやる!という勢いで序盤から攻勢に出る。

 軸になったのは左の大外に入ったカンセロ。アストンビラの5-3-2は大外のケアが甘くなりやすい構造。自在にあらゆる場所にボールを届けられるカンセロが司令塔となり、ブロックの外からピンポイントでビラの空けたスペースを狙い撃ちしていく。左サイドは低い位置も取るベルナルドもいたため、比較的縦関係の流動性は高めであった。

 ただし、ひとたびプレスを抜けられてしまえばピンチに陥ったのも確かである。特にラムジーの持ち運びは脅威。躍進のシーズンとなった今季、何度も見られた左サイドからの持ち上がりでシティにカウンターの脅威を突きつけていく。

 ほとんどの時間を支配していたシティだったが、先制点を決めたのはまさかのアストンビラ。右サイドで攻撃に果敢に参加したキャッシュが左サイドからのクロスに合わせて先制。ワンチャンスをモノにして前に出る。

 苦しい展開となったシティ。後半はフェルナンジーニョに代えて、ジンチェンコを入れることでさらなる攻撃の強化に打って出る。前半と同じく支配的な保持を繰り広げたシティ。

   だが、ビラのカウンターの脅威が残っているのも事実である。頻度でいえば前半よりも徐々に増えてきた印象で、シティとしては彼らから身を守りながら攻略に挑まないといけない。

 そうした中で次にスコアを動かしたのはまたしてもビラ。ワトキンスの落としからコウチーニョが古巣を大きく後押しする追加点を奪う。

 しかしながら、ここまでやられて黙っているわけにはいかないのがシティである。この日、切り札になったのはギュンドアン。ベルナルドに比べてエリア内に入り込んでいける彼がIHに起用されたことでエリア内の厚みが増加。

 すると76分にようやく右サイドのクロスから追撃弾。これで1点差に迫る。すると、直後にはロドリが今度は左サイドからマイナスのパスを受けてミドルを打ち抜く。

 1点目で一気に火が付いたエティハドに後押しされるように得点を重ねていくシティ。最後の仕上げはカンセロ、デ・ブライネの二段の縦パスから再びギュンドアンがゲット。わずか5分で試合をひっくり返す。

 残りの時間は全力ボールキープ。総動員でポゼッションに舵を切り、ギュンドアンが得たゴールを守り続ける。リバプールが終了間際に勝ち越したことで緊張は最後まで解けなかったが、無事に試合はそのまま終了。

 魔の5分間ですべてを変えたシティがエティハドのサポーターの目の前で21-22シーズンの優勝を決めた。

試合結果
2022.5.22
プレミアリーグ 第38節
マンチェスター・シティ 3-2 アストンビラ
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:76′ 81′ ギュンドアン, 78′ ロドリ
AVL:37′ キャッシュ, 69′ コウチーニョ
主審:マイケル・オリバー

⑩ノリッジ【20位】×トッテナム【4位】

■ほしいもの、全部お持ち帰り!

 最終節のトッテナムの目的は2つ。1つはキャロウ・ロードで引き分け以上の成績を手にすること、もう1つは得点王争いをしているソン・フンミンに対して、1つでも多くの得点をおぜん立てすることである。

 2つの目的を背負ったトッテナムは想定通り、5-4-1で組むノリッジのブロック崩しに挑むことになる。普通であれば重心が低い形の究極系ともいえる5-4-1はトッテナムにとってはめんどくさい代物であるはず。オープンな展開からのカウンターで得点を重ねている彼らのスタイルはこうした相手を打ち破るのに適しているものではない。

 しかしながら、この日のノリッジに関しては別である。なにせ、ボールを持ったホルダーが比較的簡単に1枚くらいは剥がしてしまうのである。そうなってしまうと、ズレができにくいという5-4-1のメリットはあまり多くはない。というわけでノリッジは序盤からひやひやの展開だった。

 逆にノリッジがボールを持つ展開においてはあまりボールを取りにいかないトッテナム。ある程度もたせて泳がせることでプッキが抜け出せる背後のスペースを作らないというやり方で失点を回避していた。サンチェスのパスミスのようにトッテナムが決定的なチャンスを与えない限りはノリッジにはチャンスが訪れなかった。プッキにとっても抜けきってシュートまでいかないとチャンスを作り出せないという過酷な状況だった。

 というわけでここまで書けば先制点がどちらに入ったかは想像に難くないはず、前線の引く動きと連動するように高い位置を取ったベンタンクールの抜け出しからトッテナムが先制点を奪う。

 勝敗に関しては実質これで決着であった。ノリッジはボールを取りに行く気力もないことは明白。CL争いは最終節のどのトピックよりも早々にカタがついてといっていい。あと、この試合に残されたトピックはソンの得点王の話だけである。

 結論から言えば、こちらも最終的にはサラーに並び、得点王を手にすることが出来た。クルゼフスキがソンに得点を取らせたいがために、クソみたいなパスミスをしていたのはご愛敬。最終的には多くのチャンスからゴールをつかみ取り、自身のキャリアにとって大きな個人タイトルをつかみ取った。最後のゴールは得点王の名に恥じぬものである。

 最終節の段階でほしいものは全て持ち帰ることに成功したトッテナム。CL復帰とソンの得点王を手土産としたキャロウ・ロードからの帰り道は、さぞ充実感にあふれるものになったことだろう。

試合結果
2022.5.22
プレミアリーグ 第38節
ノリッジ 0-5 トッテナム
キャロウ・ロード
【得点者】
TOT:16′ 64′ クルゼフスキ, 32′ ケイン, 70′ 75′ ソン
主審:クリス・カバナフ

今節のベストイレブン

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