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「Catch up Premier League」~Match week 34~ 2022.4.23-4.24

目次

①アーセナル【5位】×マンチェスター・ユナイテッド【6位】

■不安定さは健在ながらも勢いには差が

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アーセナル”あるある”を乗り越えて。ユナイテッド撃破でCL出場へ前進 | footballista | フットボリスタ


3連敗でCL出場権が遠のいたかに見えたアーセナルだったが、チェルシーとのロンドンダービーを制して連敗ストップ。4位を争うマ


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 共に絶不調で目標となっているCL出場権から遠ざかっている両チーム。アーセナルは前節、そのトンネルを脱してチェルシーに勝利した一方、ユナイテッドはリバプールに仕留められて大敗。マグワイアへの脅迫が発生するなど、チームはサポーターともども不穏な空気になっている。

 この試合の立ち上がりはその両チームの勢いの差を反映したものとなった。前半3分。先制したのは前節連敗を止めたアーセナル。セドリック、ジャカの2人で左右に大きくボールを振りながら、ユナイテッドの守備陣を横に振り回す。最後に決めたのは左サイドの大外から入ったタヴァレス。こぼれ球を押し込み、開始早々に大仕事を成し遂げる。

 先手を取られたユナイテッドは高い位置のプレッシングでアーセナルのビルドアップを阻害にかかる。前節もバックラインからの不安定なボール回しを見せていたアーセナルを相手陣側で追い詰めていく算段だ。アーセナルは前節ほどの不安定さはなかったが、バックラインのレギュラーが入れ替わった影響は感じられるボール回しの出来。時折、ひっかけてユナイテッドにショートカウンターのチャンスを与えてしまう。

 もう1つアーセナルにとって怖かったのはロナウドの存在。カウンターの旗手、エリア内での空中戦の強さ、マイナスのパスを刈り取るプレスバックの勘の鋭さ。ユナイテッドの前線でアーセナルのバックラインを苦しめるために立ちはだかっていた。34分に奪い取ったゴールも駆け引きでガブリエウを上回ったもの。年季の違いから前に体を入れてマティッチのクロスを押し込んだ。

 幸運だったのはアーセナルにとってこれが同点弾ではなかったこと。その直前の30分付近。アーセナルはユナイテッドのバックラインのラインコントロールの不安さに漬け込んで2点目を挙げていた。大外のサカで相手の最終ラインの高さを決めると、サカにマークが集中した分、浮いたウーデゴールが決定的な仕事を果たす。ウーデゴールは自身に注意が向いたヴァランをあざ笑うかのようにヴァランの後ろに入り込んだサカに浮いたラストパス。これをテレスが倒してPK。2試合連続でPKを決めたサカによって、前半をリードのうちに折り返せたアーセナルだった。

 後半は互いに撃ち合いの入り。アーセナルも前半に引き続き、ユナイテッドのバックラインにちょっかいをかけることは出来てはいたが、中盤が間延びしている分、ユナイテッドにもチャンスは十分。中央で浮くマティッチから大外のサンチョなどいくつか攻略できそうな糸口はあった。

 同点のチャンスを得たのはユナイテッドの方。タヴァレスのハンドで得たPKは同点の絶好のチャンス。だが、ブルーノ・フェルナンデスがこれを枠に決めることが出来なかった。

 ブルーノのミスを取り返そうと必死に同点ゴールを狙うユナイテッド。その攻撃を耐えきったアーセナルはこの試合の行方を決定づける3点目を手にする。試合を決めたのはジャカの左足。エリア内からスピード、コース共に完璧なミドルで打ち抜いて見せた。

 さすがに2点差がつくとトーンダウンした来たユナイテッド。交代選手が流れを変えることも出来ず、アーセナルに逃げ切りを許してしまうことに。リバプール戦大敗の連鎖を止められなかったユナイテッドとは対照的に、アーセナルはこれで2連勝。CL出場という悲願に向けてまた一歩その道のりが近づく大きな勝利だった。

試合結果
2022.4.23
プレミアリーグ 第34節
アーセナル 3-1 マンチェスター・ユナイテッド
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:3′ タヴァレス, 32′(PK) サカ, 70′ ジャカ 
Man Utd:34’ ロナウド
主審:クレイグ・ポーソン

②レスター【9位】×アストンビラ【15位】

■孤軍奮闘のビラと決め手に欠けたレスター

 冬の補強で浮上したかと思いきや、ここ5戦でわずか勝ち点1と苦しんでいるアストンビラ。降格はさすがにないだろうが、このまま負けを重ね続けて来季に向かってしまえばチーム作りにも影響は出てきうる。悪い流れは出来るだけ早く止めたいところである。

 一方のレスターは大忙しの終盤戦。ECLに加えて、リーグ戦では延期分の未勝利試合がたまっているという状況。しかも、リーグ戦は特に手が届きそうな目標が見当たらないというモチベーション的にも難しい状況である。

 両チームの対戦はこうした悩みが如実に表れた一戦だった。ビルドアップがより安定していたのがレスターの方だろう。アストンビラはシャドーを狭くする守り方が主流なので、なるべく前に残りつつプレッシャーをかけたい。だが、そうなると、レスターのSBは浮く。IHのデューズバリー=ホールとティーレマンスも時折顔を出してバックラインからボールを運ぶ。

 ボールの預けどころを見つけることが出来たレスターはここから前進。特にマンマーク気味のアストンビラのプレッシングに対して、オフザボールの動き直しを繰り返せるデューズバリー=ホールがいる左サイドは円滑な前進を続ける。動き直しでマーカーを外すことができる彼のおかげでレスターはサイドからボールを運ぶことが出来ていた。

 一方のビラはズレを作るという観点というよりはとりあえず裏抜けでもロングボールでもいいから前線に預けて何とかしてもらう!という発想。体を張るワトキンスがキープして前線の起点にならなければ敵陣に進むことが出来なかった。

 それ以上にきつかったのは一向にレスターからボールを奪えなさそうなところである。ボールの奪いどころを設定できず、いい形でカウンターを仕掛けることはできない。なかなかタメが作れず点で合わせるようなカウンターばかり仕掛けていた割には得点の機会があったので、このあたりはワトキンスの底力を感じる。

 ボールを持つことが出来たレスターも前節と同じくアタッキングサードでの精度不足に苦しむ。決め手に欠く状態で攻めあぐねていくうちに、なぜかビルドアップにおいてサリーを頻発するようになり、なぜかフォーメーションをかみ合わせる方向に変形してしまう。そうなると、サイドにおけるズレが作りにくくなってしまう。両チームとも明確な攻め手が見つからずに試合は膠着状況に。

 後半、アストンビラはシャドーに大外を埋めさせる形で、撤退しながら4-5-1気味に守る手段を選択する。アストンビラの弱い部分を覆い隠す手としてはオーソドックスではあるが、必然的に試合はより膠着状態に向かう。

 困った感の出たレスターはとりあえずプレッシングに出てショートカウンター経由で好機を伺う。そうなるとアストンビラはとりあえず蹴る。なので、こちらの攻め手もアバウト。ワトキンス一点突破狙いのビラと攻めあぐねるレスターのにらみ合いが続く。

 アタッキングサードにおける精度改善の切り札ともいえるヴァーディを投入しても展開は変わらず。両者攻め切れないにらみ合いのまま、試合はスコアレスドローで終了した。

試合結果
2022.4.23
プレミアリーグ 第34節
レスター 0-0 アストンビラ
キング・パワー・スタジアム
主審:アンディ・マドレー

③マンチェスター・シティ【1位】×ワトフォード【19位】

■注文通りの勝利

 CL前の重要な一戦の相手はワトフォード。リーグ戦とCLの並行しての試合は続き、1つでも落とせば後ろからリバプールに噛み付かれるけど、次を見据えればレアル・マドリーが待ち構えているという状況。なるべく早く決着をつけたいところ。

 シティはその注文通りにとっとと点を決めてみせた。先制点の際にキーになったのはクロス。シティの敵陣深くに侵入してからの大きなサイドチェンジの正確さはまるで機械のようである。ワトフォードは左右に振り回されてこのクロスに付きあわされてしまい、厳しい戦いを強いられることになる。失点の場面は右サイドのカンセロからのクロスがファーまで見事に通り、PAポジションを取り直したジェズスへの対応がうまくいかなかった。

 これくらい振り回されてしまえばワトフォードがPA内だけコンパクトに保つというのは非常に難しい。せめて、撤退守備を割り切って受け入れるのならば、12分のカウンターは是が非でも決めたかったところである。

 シティは強度的に上げることができなくても、バックラインからの前進に工夫ができるチームである。この日はCHがやたら開くポジションを取るのが特徴。普通に組み合えば、ワトフォードのIHは目の前のロドリかフェルナンジーニョを見るはずなのだが、ロドリを軸に外に流れて誘惑することでフリーになることを狙う。

 動くアンカーに対して、相手のIHがついてくれば、そのスペースは前線が降りて使い放題。ついてこなければ自分がフリーで前を向ける。シティにとってはどちらにしても美味しい形である。こうしたバックラインの工夫をメンバーが入れ替わってもできることはシティの強みである。

 その後、デ・ブライネの悪魔クロスでジェズスが2点目を奪う。これで早くも決着か?と思ったのも矢先、ワトフォードも前半のうちに1点を取り返す。シティに早々に複数点リードという心が折れても仕方ない展開の中で、カマラが入り込んで得点をとったのはメンタル的に素晴らしい。もう諦めたくなってもおかしくはない。

 だが、シティは突き放すことも忘れない。ロドリが接触プレーで倒れているデ・ブライネを尻目にスーパーゴールを叩き込んで3点目を奪い、前半は2点リードで終わる。

 後半、早々に抜け出したジェズスがPKを獲得。これを自らが決めてハットトリックを達成する。試合の行方もこれで完全に決まったと言っていいだろう。その後もさらに1点を追加したジェズスは計4得点の大暴れ。

 5点を奪ったところでギアを落としたシティ。注文通りの大勝でリバプール相手にリードを守りつつ、CLの準決勝に向かうこととなった。

試合結果
2022.4.23
プレミアリーグ 第34節
マンチェスター・シティ 5-1 ワトフォード
エティハド・スタジアム
【得点者】
Man City:4′ 23′ 49′(PK) 53′ ジェズス, 34′ ロドリ
WAT:28′ カマラ
主審:ケビン・フレンド

④ノリッジ【20位】×ニューカッスル【11位】

■地力の差には抗えず

 もはや残留への道は連戦連勝しか残されていないノリッジ。どこが相手であろうとガツンと強気で向き合うしかない。というわけで相手の中盤を積極的に捕まえにいくようなプレッシングで相手に圧力をかけていく。

 相手となるニューカッスルもこれは望むところ。中盤がノリッジと同じ3枚ということをいかし、マンマーク気味にハメて非保持でやり返す格好である。

 だが時間が経つとやはり両チームの地力の差が徐々にピッチに反映されるように。ボールを刈り取りきれなくなるノリッジに対して、バックラインで横に揺さぶりをかける余裕があるニューカッスルがより支配力を発揮する展開に。アンカーに入っているギマランイスを起点として、大きな展開を活かしながら敵陣深い位置まで押し込む機会が増えていくようになる。

 ニューカッスルは左のサン=マクシマンを軸としてサイドの崩しに挑む。しかしながら、ソロではやらせないノリッジはなんとか突破を許さずに粘る。ノリッジの狙いはカウンター。一発逆転ができるプッキの抜け出しに賭けてなんとか得点を奪いたい展開に。

 だが、得点したのはニューカッスル。右サイドのクラフトとマーフィーの2人でノリッジのサイドを抉ると、放たれたクロスはPA内でクリアすることができずに逆サイドに。この日、1トップに入っていたジョエリントンがファーで待ち構えて、シュートを叩き込むことに成功した。

 勢いに乗るニューカッスルは追加点。サン=マクシマンの降りる動きでノリッジの最終ラインに穴を空けるとそのスペースを利用。マーフィーとウィロックが競うように最終ラインの裏を取る動きを見せて、そのスペースから敵陣に侵入する。そこから再び最後はジョエリントン。この日2点目のゴールでさらにノリッジを突き放す。

 最終ラインからの対角パスを増やして、なんとか対抗していきたいノリッジだが、カウンターからのプッキの裏抜け以上にゴールに向かう手段が見えてこない状況は変わらない。2点ビハインドという苦しい状況で後半を迎えたノリッジ。後方からの組み立てで巻き返しを狙っていくが、クルルがまさかのプレゼントパスでギマランイスに3点目を許してしまう。古巣対決で痛恨のミスを犯してしまった。

 経験豊富なベテランにこういうミスが出ては試合は難しくなるのは当然。事実上、試合はここで終わりである。以降はノリッジが蹴っ飛ばすボールをニューカッスルがカウンターという構図がひたすら続く形。ノリッジは最後まで劣勢を覆せず、また一歩降格に近づく黒星を喫してしまった。

試合結果
2022.4.23
プレミアリーグ 第34節
ノリッジ 0-3 ニューカッスル
キャロウ・ロード
【得点者】
NEW:35′ 41′ ジョエリントン, 49′ ギマランイス
主審:クリス・カバナフ

⑤ブレントフォード【12位】×トッテナム【4位】

■苦手分野に追い込まれたトッテナム

 ここ数試合、相手にボールを渡しつつ、ショートパスを大事にするスタイルを貫いてきたブレントフォード。ボールを持たせられる局面が苦手なトッテナム相手にも同じ策を敷いてくるかと思ったが、ブレントフォードはここ数試合とは異なり、積極的な守備を仕掛けてきた。

 ハイプレスで相手を仕留めきる!という類のものではないが、前線からプレスで相手の攻撃を片側サイドに限定することは非常に強く意識していた様子。中央にも当然網を張りつつ、タイトなスペースの攻略にスパーズを追い込む。

 スパーズの得意分野は前線のスピードを生かした速攻と、WBとクルゼフスキによる幅を使った攻撃の二択。トッテナムはこうしたスモールスペースの攻略に追い込まれるのは得意ではない。ブレントフォードのブロックの組み方は明確で捨てるところと閉じるところの区別がしっかりしており、トッテナムが使いたいところをきっちり封鎖していた。

 よって、トッテナムが狙いたいのは時折高い位置に出てくるブレントフォードのプレッシングを退けての速攻である。それならば狭いところを攻略する必要はない。しかし、ソンとケインにはいつもの精度がなく、速い攻撃に転じた時のカウンターには威力がない。ブレントフォードのバックラインの奮闘も確かではあったが、それ以上にトッテナムの不振さが気になる展開だった。

 ブレントフォードの保持に対しては、とりあえずトッテナムは持たせて対応。ブレントフォードはローアスリウとヘンリーをSBとする4バック変形でトッテナムに挑む。

 ブレントフォードの攻め手はとにかくセットプレー。サイド攻撃主体でセットプレーをもぎ取ると、エリクセンのプレースキックを山のように浴びせかけ続けることで何とかトッテナムのバックラインをこじ開けようとする。サイドの深い位置からのスローインもロングスローが可能なセーレンセンがいれば、実質コーナーキックのようなものである。だが、ここはトッテナムのバックラインがなんとか踏ん張った。

 後半、押し込む機会が増えたトッテナム。だが、機会は増えようともブレントフォードに閉じ込められたスモールスペースを打開する以外にはこじ開ける方策はない。押し込まれてもブレントフォードがやることをブラさなかったのでトッテナムは引き続き苦しむこととなる。頼みのアタッカー陣も動き出しの量と精度が物足りず、トッテナムには決め手がない状況が続く。

 そして後半はカウンターと引き続きセットプレーでトッテナムに反撃するブレントフォード。ケインの水際のクリアや終了間際のトニーのヘディングなどいくつか惜しい場面はあった。だが、こちらもネットを揺らすことは出来ず。

 結果は痛み分け。だが、トッテナムを閉じ込めて自分たちの思い通りに展開を進めたブレントフォードの方がより手ごたえのある内容になったのではないだろうか。

試合結果
2022.4.23
プレミアリーグ 第34節
ブレントフォード 0-0 トッテナム
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
主審:マーティン・アトキンソン

⑥バーンリー【18位】×ウォルバーハンプトン【8位】

■まさに今年のバーンリー

 例年のごとく、後半戦に向けて怒涛の粘りを見せるバーンリー。ダイチを解任し、マイク・ジャクソンが暫定監督になっても粘り腰は相変わらずで、上位勢を苦しめている。

 今節の相手のウォルバーハンプトンは直近のバーンリーの対戦相手の中ではいい入りをした方だと思う。3-4-3の基本フォーメーションはバーンリーの4-4-2に対して、ズレを生みやすく保持する際には有利。大外とハーフスペースのコンボを意識しつつ、後方からの数的優位を生かしながらボールを前に運ぶことが出来ていた。

 バーンリーはどこを埋めるかの意識が統一できておらずに、優先度を決めることができない状態で苦しんでいる様子だった。エリア内でもギリギリの対応であまり余裕はなかったといえるだろう。

 ただ、ウルブスはCFのファビオ・シルバが最後のところで物足りない。PA内でのゴールにつながるプレーの精度がついてこずにチャンスをフイにしてしまい、ウルブスは先制点を奪うことができない。

 ウルブスは非保持においてもプレッシングがよく刺さっていた。後方からゆったりとつなごうとするバーンリーに対して、なかなか落ち着くことを許していなかった。

 バーンリーは敵陣まで運ぶことができれば、前節から好調を維持しているマクニールを軸にクロスをポンポン入れることができる。外を回って右足でもよし、内にカットインして左足でもよし、大外を回るロバーツを使ってもよしと右サイドはあらゆる形からクロスを入れることができていた。

 劣勢の前半をスコアレスで終えたバーンリーは後半に修正。縦に速い攻撃を意識しつつ、非保持においてはSHを早い段階で埋めることで撤退守備を強化。ウルブスに大外とハーフスペースのコンボを使うことを許さない対策を取る。

 敵陣深くまでは攻め込めるが、攻めあぐねているウルブス。すると、そのウルブスを尻目に得点を奪ったのはバーンリー。右サイドでタメを作ったマクニールが同サイドのベグホルストに裏抜けを促すパス。ベグホルストからの折り返しをヴィドラが決めて先手を奪う。

 こうなると一気にペースはバーンリー。彼らの意気込みにからめとられたようにウルブスは攻め手を失う。エリア内のターゲットもヒメネス1枚では厳しいだろう。

 後半はむしろ、カウンターからバーンリーがイケイケ。不安定な前半からイケイケの後半というこの試合の展開はまるで今季のバーンリーをそのまま表現しているかのよう。90分でリカバリーを決めたバーンリー。消化試合の違いはあるが、暫定順位でついに降格圏脱出に成功した。

試合結果
2022.4.24
プレミアリーグ 第34節
バーンリー 1-0 ウォルバーハンプトン
ターフ・ムーア
【得点者】
BUR:62′ ヴィドラ
主審:アンソニー・テイラー

⑦チェルシー【3位】×ウェストハム【7位】

■プリシッチに救われたジョルジーニョ

 残りのリーグの目標はFA杯の制覇と3位確保。CLの蓄積ダメージはまだ残っている感のチェルシーがこちらもリーグとELの二足の草鞋でシーズン終盤を迎えたウェストハムと相対する。

 木曜日にEL準決勝を控えるウェストハムはメンバーがターンオーバー気味。アントニオとボーウェン、ライスをベンチにおくというのは、基本的にはメンバー固定を好むモイーズにしては思い切った入れ替えといってもいいだろう。ただし、最終ラインにやたらSBの名前があるのはターンオーバーではなく、CBの面々が負傷で不在なだけである。

 というわけで籠城戦に持ち込みたいウェストハム。トップのベンラーマの優先度も中央の動線の遮断であり、チェルシーのバックラインにプレスをかけることではない。おそらく、前がかりになれば背中に潜むマウントに簡単に刺されてしまうことは承知していたのだろう。慎重な立ち上がりだった。

 チェルシーはサイドで迂回させながら攻撃を行いたいところだが、常に同数以上で受けるウェストハムに苦戦。なんとかクロスを上げるスペースを捻出しながらエリア内勝負に持ち込むが、高さで競えるルカクは不在。チェルシーの前線の得意な形でエリアに迫ることができない。可能性を一番感じたのはドリブルで中央に切り込むカンテであった。

 ウェストハムは攻撃でもローテンポ。バックラインは横幅を使いながら相手のプレスをいなしゆっくり進むフェーズとカウンターで一気に縦に進むフェーズを使い分けていた。だが、アントニオとボーウェン抜きではさすがにカウンターの威力は据え置き。そこの部分もゆっくりと保持するパターンを選ぶ頻度の多さにつながっていたといえそうである。

 後半も相手のブロック攻略に挑むチェルシー。後半になると徐々に狙い目が見えてくる。対応が徐々に遅れてきたのはマスアクのサイド。切る方向や戻るタイミングにズレが見られるようになり、チェルシーはこちらのサイドから攻め手を見つける。

 チェルシーは仕上げとして3枚替えで4バックに移行。すると、ルカクが抜け出しからPKをゲット。唯一のCBであるドーソンの退場で10人になったウェストハムは絶体絶命に。しかし、ジョルジーニョがこのPKを失敗。

 絶好のチャンスを逃したチェルシーだったが、後半追加タイムにプリシッチがクロスに合わせる決勝弾。土壇場でジョルジーニョを救い出したプリシッチが勝ち点3を掬い取り、CL出場権の地位をさらに固めることに成功した。

試合結果
2022.4.24
プレミアリーグ 第34節
チェルシー 1-0 ウェストハム
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:90′ プリシッチ
主審:マイケル・オリバー

⑧ブライトン【10位】×サウサンプトン【13位】

■薄いサイドを作り続け、最後まで攻め気は止まらず

 復調気配のきっかけは両チームともアーセナル戦の勝利。トンネル脱出を手助けしたアーセナルファンとしては共に名前も見たくない両チームの一戦である。

 立ち上がり早々にスコアが動く。先手を奪ったのはブライトン。2分にウェルベックが先制点を決める。この場面はサウサンプトンのクロス対応が杜撰だった。左サイドの奥、相手選手を抜ききらないまま上げたククレジャのクロスはあっさりとPAの横断に成功。守備側からすると最も危険なコースを通った感じはしたのだが、それを咎められなければ当然ピンチになってしまうだろう。

 この先制点のようにブライトンはここ数試合と同じく、左サイドで作って、右で仕留めるような格好で攻撃を狙っていく。大外を取るククレジャに、ハーフスペースの抜け出しを組み合わせる形。ムウェプなど右寄りの選手たちはこのクロスに対して閉じ込む役割がメイン。左右のサイドは攻撃における役割が比較的分担されているように見えた。

 一方のサウサンプトンも攻め手はあった。アダムスのポストから逆サイドに展開することでブライトンの薄いサイドからエリアに迫っていく。薄いサイドで攻めあがったリヴラメントはあわやの場面を演出する。それだけに大怪我は残念だ。一日も早い復帰を祈りたいところである。

 だが、攻め色の強いSBは諸刃の剣。サイドから攻撃を食らうと、CBが引っ張り出されて守備陣形が無茶苦茶になってしまうサウサンプトン。ブライトンの2点目はそうした最終ラインが動かされた形からの物だった。プローの裏を取ったウェルベックがサリスを引っ張り出すと逆サイドに展開しつつエリアの中に。この動きについていききれなかったサリスがウェルベックへのラストパスを消し切れずにオウンゴールをしてしまう。

 しかし、前半終了間際にサウサンプトンも反撃。テラのドリブルからFKを奪取するとウォード=プラウズの右足が今日も炸裂。名手の一芸で1点を返しハーフタイムを迎える。

 後半もテラの左サイドで主導権を握ったサウサンプトンのペース。左サイドから相手を押し下げると、中央が空くようになり徐々にブライトンの守備ブロックの狙いがわかるようになる。同点ゴールにおいてはロメウのボールカットからテラのタメで、ブライトンの守備陣を押し下げたスペースに入り込んだウォード=プラウズ。今度はオープンプレーからのウォード=プラウズの得点で一気に追いつく。

 追いつかれたブライトンも勝ち越しゴールを狙い譲らない。互いにCFのポストを活用しながら逆サイドへの展開で薄いサイドから攻め入る形で試合の終盤までチャンスを作る。

 しかしながら、どちらのチームも決勝点を奪えないまま終了。最後まで打ちあった両チームの一戦は決着がつかないまま、タイムアップを迎えることとなった。

試合結果
2022.4.24
プレミアリーグ 第34節
ブライトン 2-2 サウサンプトン
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRI:2′ ウェルベック, 44′ サリス(OG)
SOU:45+4′ 54′ ウォード=プラウズ
主審:ロベルト・ジョーンズ

⑨リバプール【2位】×エバートン【17位】

■視線は隣人より目標に

 意地と意地がぶつかり合うダービーというよりも、優勝と残留という互いに異なる目標を目指すために淡々と目の前の相手に向かい合う。個人的には今回のマージ―サイドダービーにはそんな印象を持った。

 立ち上がりからボールを持つのはリバプール。エバートンは相手にボールを渡すことは許容しつつ、持ちこたえる形で迎え撃つこととなった。

 エバートンのこの試合の振る舞いは悪くなかったように思う。ローラインながらコンパクトさを維持できてはいたし、サイドへのフォローも十分で、リバプールの多角形に対して十分渡り合うことが出来ていた。このあたりはIHのイウォビとドゥクレに助けられた部分である。ボールサイドには寄っていって、逆サイドの時は中央を埋める。豊富な運動量で横スライドを根性でやっていた。

 攻撃はロングボール一辺倒ではあるが、リシャルリソンの競り合いは五分五分といったところ。敵陣での即時奪回に色気を見せつつ、撤退時は相手より素早くという部分も徹底出来ていた。したがって、限定的ではあるが、攻撃の機会もあったし、守備のソリッドさは保つことが出来ていた。

 リバプールは左でチアゴが降りて対角のサラーに大きな展開が保持の軸。いつもの光景ではあるが、ややワンパターンなのと、少し足元への要求が多いせいで攻撃が停滞している感じは否めない。リバプールの保持の時間は長かったが、エリア内でエバートンに跳ね返されてしまい、枠内シュートまでたどり着くことも前半はなかなかできなかった。

 膠着した前半。どちらもチャンスがなかったということは1ポイントでも手にしておきたいエバートン側の思惑通りといっていいだろう。前半終了間際の大乱闘とは裏腹にダービーらしくないチャンスの少ない展開だった。

 後半も同じく攻勢に出たのはリバプールの方。しかしながら、後半にむしろチャンスが広がった感があるのはエバートン。SB裏のゴードンを使った速攻で前半以上にクリティカルに敵陣に迫ることが出来ていた。

 攻め切れないリバプールはオリギとディアスを投入し、4-2-3-1にシフトチェンジ。すると、これがいきなり結果につながる。サラーとオリギの右サイドのパス交換から、エバートンを手前サイド側に寄せると、逆サイドへのサイドチェンジ。これに詰めていたロバートソンが先手を奪う。

 これでエバートンの反撃を完全に鎮火したリバプール。勢いに乗ったまま、オリギが追加点を決めて試合を決着させる。前半は苦しんだリバプールだが、エバートンの思惑通りに試合が進んだのは60分まで。残る30分で押し切れる強さは1ポイントでも欲しかった隣人にとっては非常に冷酷に映ったはずだ。

試合結果
2022.4.24
プレミアリーグ 第34節
リバプール 2-0 エバートン
アンフィールド
【得点者】
LIV:62′ ロバートソン, 85′ オリギ
主審:スチュアート・アットウィル

⑩クリスタル・パレス【14位】×リーズ【16位】

■シュートの拙さに助けられ、貴重な勝ち点1を死守

 ここから終盤にかけてまでなかなか厳しい日程が続くリーズ。残留争いに向けて現状の順位としては有利ではあるが、この先の3連戦はマンチェスター・シティ、アーセナル、チェルシーである。というわけでこのクリスタル・パレス戦では意地でも勝ち点を確保しておきたいところである。

 立ち上がりからゴールに向かって積極的な動きが目立っていたリーズ。ビエルサ時代ほど強烈ではないが、人を捕まえにいくプレッシングを使いながらクリスタル・パレスのビルドアップを阻害していく。

 攻撃に関してはリーズはロングボールを軸に直線的にゴールに迫っていく。縦に早い攻撃はリーズの特徴でもあるのだけども、個人的には少し急ぎ過ぎた感がある。リーズの長いボールはロングボールのターゲットを味方が追い越して厚みを作っていく形を作ってナンボだと思うのだが、どうもとりあえず放り込んでいる感があって強みを発揮しきれていない。

 左サイドのハリソンは後方から追い越してくるダラスと良好な関係を築くことはできてはいたが、それ以外は味方との連携を使いながら攻勢に出れる組み合わせは見当たらず。右で単独の動きができるラフィーニャはそれでもいいが、基本的にはもう少し味方をうまく使っていける選手が欲しい。前半の途中でロドリゴが見せたサイドチェンジなどは非常にアクセントになっていたため、こういうボールの動かし方は増やしたい。負傷明けのフィリップスに今後期待がかかる部分である。

 一方のパレスはリーズのハイプレスに対して臨機応変な対応。後方からのショートパスでの繋ぎを重視して前進しようとする場面が基本線だが、リーズのSBの裏のスペースが空いている場合は別。アイェウ、ザハの2人に素早くボールを渡し、サイドから押し下げて攻撃を一気に完結させにいく。

 得点が入らないまま迎えた後半、徐々に試合のペースはパレス寄りに。リーズはゴールに迫る手段を見つけることができずに攻めあぐねる状況が続いていく。パレスは存在感が増していくザハが印象的。プレー面ではもちろん、相変わらずの相手を挑発するような振る舞いも健在で、リーズの面々を苛立たせていた。

 パレスは選手交代で右にオリーズを投入。左のザハとの2枚看板でサイドからリーズを崩しにかかる。実際、リーズの守備の陣形が崩れかけた場面もかなりあったのだが、パレスの決定力が低く試合を決めることができない。シュートはいずれも枠外かメリエの正面。ファインセーブの連発というよりはシュートの拙さが目立ったという方が正しいだろう。

 何とかスコアレスドローで凌いだリーズ。貴重な勝ち点1を積んで4位以上の3チームとの連戦に挑むことになる。

試合結果
2022.4.25
プレミアリーグ 第34節
クリスタル・パレス 0-0 リーズ
セルハースト・パーク
主審:ダレン・イングランド

今節のベストイレブン

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