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「Catch up AFC Champions League」~2022.4.15 グループステージ 第1節 川崎フロンターレ×蔚山現代 ハイライトレビュー

■ローコストで奪われた先手

 まず、試合見て真っ先に思ったのはコンディションの厳しさである。両チームとも、とにかく体の動きが重たい。おそらく、ボールを追いかける方にとっては体力的、精神的な疲労がかなり積み重なる。そのため、普段以上に先制点が大事になる環境である。

 そのため、両チームとも慎重な立ち上がりだった。蔚山は徹底的に4-4-2でローラインを形成。川崎はシミッチを最終ラインに落とす3バック化を行うが、これにはほとんど構うそぶりを見せず。非保持に回ったらまずは撤退第一である。なお、これが普段のスタイルなのか、暑さゆえなのかはわからない。

 川崎も立ち上がりは4-4-2で噛み合わせるようなプレッシングを狙っていくが、すぐさま撤退型のブロック形成に切り替える。ちなみに蔚山も中盤を落としながら、川崎同様にDFラインに数的優位を作り出すスタイルだった。

 蔚山の前進は大きく分けて2つ。1つ目は低い位置からのボール回しやトランジッションでライン間のスペースに入るカザイシュヴィリか天野を活用して前を向かせること。低い位置からでのボール回しでは家長が外から内にプレスをかけにくるタイミングを前進のトリガーとして狙っていたし、カウンター局面では間伸びした中盤がカザイシュヴィリと天野の狙い目になる。

 序盤の裏へのパスがジャブのように効いていたのか、川崎のバックラインはいつもよりも縦に間延びしており、蔚山の両SHが内に絞って受けるスペースを作っていた。蔚山の両SBは保持において大外の高い位置をとってくるので、外にもポゼッションの安全地帯を置く形。広さを使って下手なロストは避けていく方である。

 もう1つの蔚山の前進はレオナルドめがけたシンプルなロングボールだ。川崎はこのロングボールから先制点を許す。川崎としてはバックラインにプレスをかけないやり方である程度高いラインを形成するのならば、レオナルドに対するこの場面の2対1は対応しなければいけない。谷口は体を寄せられなかったし、攻撃に絡める選手が1枚しかいないにも関わらず山村は挟みに行ける立ち位置をとることができなかった。両CBともにいい対応とは言えず蔚山に楽に先手を奪わせてしまった。

 蔚山に楽に先手を取らせる副作用はブロックでの撤退守備や、後方でのだらっとしたポゼッションが彼らにとって是になることである。自陣を埋めてスペースを消すやり方も、後方でボールを取られないことを優先してちっとも前進しないことも、ロングボールでリードを奪えるのならば是になる。

■リスクをどれだけとるか

 川崎は立ち上がりは左サイドからの攻略を優先。遠野に加えて、同サイドに橘田を積極的に流しながらスモールスペースの攻略に挑んだ。撤退ベースになった前半の中盤からはダミアンへのシンプルなロングボールを優先することで陣地回復を狙うやり方にシフトする。

 リードを奪われて飲水タイムを迎えた後は撤退する蔚山に対して、川崎はシミッチを落とす形で様子を見ながらポゼッション。降りてくる川崎の選手に蔚山の中盤がプレスに出ていき、ブロックに穴を開けた際は川崎は前進の隙を見つけることができていた。

 ただ、バックラインからのボールの持ち運びにはもう少しトライはしてほしかったところ。背後を取られた時のリスクを考えているのはわかるけど、蔚山にリードをされてしまっている状況なので、そうしたチャレンジなしに相手は動かせない。

 アタッキングサードにおける川崎のチャレンジとしては、山根のオーバーラップでの攻撃参加が挙げられるだろう。右サイドの高い位置をとることで攻撃に厚みを与えていた。サイドから深さを作った川崎はラストパスさえ決まれば!というシーンが徐々に出てくるようになる。

 しかしながら、彼が攻撃に参加するということは裏を返せばカザイシュヴィリが蔚山のカウンター発動時にフリーになりやすいということ。蔚山もまた、山根の攻撃参加を食い止めることで、陣地回復の機会を得ることができていた。

 後半、川崎はシミッチをアンカーに据える4-3-3に移行。これにより、ダミアンへのロングボールを拾える選手が増えて、川崎はセカンドボールで優位に立てるように。さらにアンカーポジションに入る選手へのケアが甘くなりがちな蔚山に対して、シミッチが前を向ける機会が増えるようになった。

 当然、アンカー脇のプロテクトの方法は問題になるが、川崎はポゼッションの機会を増やすことでさらされる回数を減らすことで対抗。蔚山にとっては何度か時間を得ることができた右のSBのテファンのボールロストがちょっと安易だったのがもったいなかった。

 後半は攻勢を強めた川崎。アンカーをシミッチにしたことによる+αを見せる場面がやってくる。シミッチ→マルシーニョへの一撃必殺スルーパスである。抜け出しまでは完璧だったものの、マルシーニョのラストパスのコントロールが乱れた分、ダミアンにとっては難しいシュートの局面になり、シュートがミートしなかった。

 蔚山は徐々に2トップにシミッチ周りをマークさせるようにポジションを調整。川崎の4-3-3に対抗してくる。

 シミッチへのマークがキツくなったことと、マルシーニョの体力面から簡単に深さを作れなくなった川崎は横幅を広げるアプローチをかけていく。宮城の投入は蔚山を横に広げるための一手である。大外をとれることで敵陣深くまで進めるようになった川崎。ここからのクロスで攻勢をかける。だが、こちらも時間の経過とともに蔚山が2枚重ねる形で対応するようになっていく。

 80分まできた川崎。押し込んだ状況を作った仕上げとして小林を投入するが、最後の10分で慌てた前進が増えてきてしまい、再び押し込めない状況に逆戻りしてしまう。特に長いボールを活用した谷口のフィードが詰まってしまったのは誤算だった。ただ、89分に鬼木さんが『悠のところもっと!』といっているので、ロングボール自体はチームとしての狙いだったようにも思える。だが、単純なロングボールに関してはダミアンに対しても何とか凌いでいた蔚山なので、こうしたボールで起点を作るのは難しい。

 チームが困った時になにかをしてくれるワンダーボーイ枠といえば今季は宮城天である。こぼれ球をダイレクトボレーで抑えの効いたシュートを披露。チョ・ヒョヌの超反応も含めて見どころたっぷりのミドルであった。

 そして、このミドルを起点としたCKから川崎は追いつく。ヒョヌのキャッチミスから復帰戦となった車屋が押し込んで同点に。土壇場で追いついた川崎が蔚山から勝ち点3を取り上げたところで試合は幕を閉じた。

ひとこと

 消耗戦は避けられないので、前半の戦い方はスコアレスで折り返せるなら正義。蔚山はボールを落ち着いて持てる選手が多いので、ビハインドはとってもしんどい。次回先手取られたら許してもらえない予感。後半、次々と手を繰り出すギアチェンジができたのはOK。もう一味足りないかなと思ったけど、追い付けたのでなんとかなった。勝ち点取れてよかった。芝の関係でグラウンダーの対角パスは転がらないので、浮かせてスピードをつける工夫が欲しい。

試合結果
2022.4.15
AFC Champions League グループステージ
第1節
川崎フロンターレ 1-1 蔚山現代
タン・スリ・ダト・ハジ・ハッサン・ユーヌス・スタジアム
【得点者】
川崎:90’+3 車屋紳太郎
蔚山:21′ レオナルド
主審:ハミス・アルマッリ

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