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「Catch up UEFA Champions League」~Quarter-finals 1st leg ~ 2021.4.5-4.6

目次

①ベンフィカ×リバプール

■カウンターは養分になる

 週末にシティ戦を控えるというタフな一週間の真っ最中のリバプール。シティの前にまずはポルトガル遠征である。

 立ち上がりから3-2-5気味に変形するリバプール。チアゴが落ちて、アレクサンダー=アーノルドが上がっていくこの形はリバプールにとって日常ではあるが、この日くらい割と明確に3-2-5という形がくっきりというのはそこそこ珍しいように思う。リバプールは中央を迂回するようにサイドから攻撃を仕掛ける。

    対するベンフィカは相手の攻撃を止めた後、すぐに横方向に大きな展開を挟むことでプレッシングを回避する。ゆったりしたビルドアップも広く横に距離を取ったCBからのロングフィードが中心だった。

    ベンフィカのアタッカー陣はリバプールのDF陣に対して十分点が取れる匂いはあった。ヌニェスは十分に背負えるし、エヴェルトンとシウバの両翼もリバプールのSBに対して優位を取ることが出来ていた。

 ただ、ベンフィカには問題が。それはリバプールのアタッカー陣がベンフィカのアタッカー陣以上に優位を取れそうなことである。こうしたベンフィカのカウンターはリバプールに止められてしまった後に自陣に大きなスペースを空けることになる。

 撤退守備においては普段の4-2-3-1から4-5-1あるいは5-4-1のように、自陣のスペースを埋めるように細かく人数を調整しながらラインを下げていたベンフィカだったが、リバプールのカウンターの状況ではそんなことをしている余裕はない。

    そもそもリバプールは結局火力で押し切れるという算段からある程度打ち合いに応じる気があるチーム。この試合でもベンフィカのカウンターをある程度受けるのは想定内だったように思う。

 むしろ、そのカウンターを養分に自分たちのカウンターの効果を上乗せしてやろう!みたいな感じだったのではないだろうか。左からはディアスのドリブルで、右からはサラーの裏抜けで敵陣に迫るリバプールであった。

 そして先制点はセットプレーから。CKからコナテが叩き込んでリバプールが敵地で先手を奪う。この先制点から勢いに乗り相手を押し下げるリバプール。その流れで前半のうちに追加点にたどり着く。右サイドからラインを押し下げるような対角パスを飛ばしたのはアレクサンダー=アーノルド。裏に走りながら対角パスを受ける形になったディアスの抜け出しから、最後はマネがゴールを奪う。

 2点を追いかけることになったベンフィカ。やり方は今までとは大きくは変えずにカウンター主体で攻勢に出る。気持ち強くなったのはプレッシング。リバプールに時間を与えないアプローチで前半よりもショートパスをひっかける機会は増えた。リバプールはCHを下げ気味で対応させるなど守備のバランスは調整していた。ただ、その中でもチアゴが警告を受けるなど、十分に対応できていたとはいいがたい。ヘンダーソンの登場は当然だろう。

 被カウンターを受ける状況が増えたリバプール。バックラインがそれでも踏ん張れば問題ないのだが、ついに決壊したのが後半。コナテのエラーでボールが目の前に届いたヌニェスが追撃の一撃を後半早々にもぎ取る。

 ここを攻めどころと見たベンフィカは一気に敵陣にかけるプレスの強度を引き上げる。エヴェルトン、シウバの両翼とSBのジウベルトも駆け上がり、厚みのある攻撃を見せるが、なかなかゴールを割ることはできない。

 一方のリバプールは右のWGに入ったジョッタがかなり絞り気味。フィルミーノと擬似2トップみたいな陣形になっていた。ジョッタは相手に影響を与えるような場所にいるのがうまい。この状況では相手の最終ラインに影響を与えている立ち位置だった。

 そのずれを活かしてこの試合を決めたリバプール。前線が降りる動きでオタメンディを手前に引き出して、入れ替わるように裏に飛び出していく。

 ベンフィカにとってはセットプレーやカウンターからやり返す準備は十分にあった。しかしながら、リバプールの火力と後半のテコ入れを前に一蹴されてしまった試合だった。

試合結果
2022.4.5
UEFAチャンピオンズリーグ
Quarter-final 1st leg
ベンフィカ 1-3 リバプール
エスタディオ・ダ・ルス
【得点者】
BEN:49′ ヌニェス
LIV:17′ コナテ, 34′ マネ, 87′ ディアス
主審:ヘスス・ヒル・マンサーノ

②マンチェスター・シティ×アトレティコ・マドリー

■地獄からチームを連れ戻したフォーデン

 ユナイテッドを倒してコマを進めたベスト8で待ち構えていたのはシティ。アトレティコはまさかの2ラウンド連続のマンチェスター遠征にやってくることになった。

 アトレティコの方針はユナイテッドと対峙する時と大きくは変わらない。5-3-2で構えつつ、3センターでスライドしながら前の5枚で食い止めて跳ね返すというものである。

    意外だったのはロドリに特段マンマークをつけなかったことである。左右への展開に定評がある彼を自由にしてブロックを組むという選択は個人的には驚き。むしろここをまずは抑えてから守り始めるものだと思っていた。

 というわけでシティはブロックの外側からDFラインの裏に斜めのパスを差し込む形でブロックの破壊を狙っていく。ブロックを壊せる精度を担保するために、サイドでフリーの選手を作るためのサイドチェンジは怠らない。すでに述べたようにアトレティコは人をケアしてサイドチェンジを阻害するという発想はあまりなかったので、シティがサイドを変えながらフリーマンを作ることはそこまで難しくなかった。

 やはり一発を狙っているのはデ・ブライネ。WGで作った深さを活かし、ファーサイドを中心にピンポイントでアトレティコのブロックを破壊できる一撃を常に狙っていた。

 サイドチェンジを阻害できないことで自陣に押し込まれるアトレティコ。ユナイテッド戦ではグリーズマンを落とすことで5-4-1に変形したのだが、この試合では2トップが共に下がる5-5-0を採用。私は点を取れないけども、あなたも地獄に連れていく!という形で前半の45分を溶かすことに成功する。

 後半のアトレティコはグリーズマンをトップに置く5-4-1のシステムに変化。エティハドでは後半も地獄に連れていく!スタイルでもいいのかなと思ったけど、流石に点は取れへんやんけ!と思ったのか、90分これを続けることは心が持たないのかは不明である。ちなみにアトレティコで心がもたないのならば、世界中のどこでも無理そうと思った次第。

 ユナイテッド戦と異なりフェリックスを前に残さなかった理由は量りかねるが、グリーズマンを最前線に置いた形でもカウンターの推進力は十分担保できている様子。5-5-0のフリが効いているせいか『おお、めっちゃ攻撃的じゃん!』と思った人もいそう。僕は思いました。

 とはいえ、ライン間のスペースも徐々に出て来たアトレティコ。53分にはようやくきわどい位置でFKの奪取に成功する。布陣もデ・ブライネとベルナルドを左に置き、左右どちらからもピンポイントクロスを狙える形に変化した。

 両チームの明暗を分けたのは交代選手の出来だろう。どこか試合に入り切れなかったアトレティコの交代選手たちをよそに別格の輝きを放ったのはフォーデン。投入直後から別格の推進力でアトレティコの守備ブロックに穴を空けると、70分には先制点の起点に。素早いライン間の反転でデ・ブライネの先制ゴールを演出して見せた。その後もフォーデンはアトレティコのゴールを脅かし続けることに。

 守備においては保持におけるアトレティコの対角パスを封印したアケの存在感が抜群。最後までアトレティコの反撃を許さない。

 結局試合はそのまま終了。5-5-0で連れ去られた地獄からチームを引き戻したのは紛れもなくフォーデン。5バックを溶かし切った先制点を手土産にシティはワンダ・メトロポリターノでの2ndレグに臨むことになった。

試合結果
2022.4.5
UEFAチャンピオンズリーグ
Quarter-final 1st leg
マンチェスター・シティ 1-0 アトレティコ・マドリー
シティ・オブ・マンチェスター・スタジアム
【得点者】
Man City:70′ デ・ブライネ
主審:イシュトヴァーン・コヴァーチ

③ビジャレアル×バイエルン

■強度に問題はなし!

 下馬評を覆し、ユベントスを破ってベスト8に進出したビジャレアル。個人的にはその結果以上にベスト16での180分の内容に非常に驚いた。なにせめちゃめちゃテンポが遅い。CLはある程度の強度がなければ足切り!という印象があるのだけど、この2チームはある程度ゆっくり試合が進行するのを許容しているかのようだった。

 そうした試合を勝ちぬいただけに最も気になるのは速いテンポ、高い強度でバイエルンにビジャレアルが向き合えるのかどうか?である。

だが立ち上がりを見る限り、そうした心配は杞憂のように思えた。ビジャレアルはバイエルン相手にも強度が問題になることは無かった。前のラウンドでユベントスに見せたスローリーなテンポの面影はそこにはなかった。

 前ラウンドからここまでの間のリーグ戦は比較的低調と聞いたのでチームとしてどこか相手のテンポに合わせてプレーしてしまうことが多いのかもしれない。そういうチームにとってはバイエルンのような強度の高いチームはむしろ歓迎ということだろう。

 特に目覚ましかったのはボール奪取後の攻撃への切り替え。カウンターにおける前進のスムーズさはラウンド16のパフォーマンスが嘘のようだった。

    ポゼッションにおいても攻撃の手ごたえはあり。大きくタッチラインに開くCBから保持を始めるビジャレアルはまずバイエルンのSHを食いつかせて、そこから最後の多角形で攻め落とす!というのが中心となるスタイル。

    この試合においてはビジャレアルの2列目の4人はいずれもMFタイプで比較的均質的であり、大外で優位を取れるアタッカーもいないため、誰かが幅を取っても誰が最終的に抜け出してもOK。3-2-5に変形し、デイビスが上がった分、負荷がかかるリュカを集中的に狙うように。3分にはあっさりと裏を取ると、8分には先制点をゲット。やはり狙いはトランジッションで甘さが出たバイエルンの左サイドだった。

 8分のゴールシーンはバイエルンの左サイドだけでなくライン間も簡単につながれており、バイエルンの守備ブロックがこの試合でいかにコンパクトさを維持できなかったかの象徴的なシーンである。

 保持においてもバイエルンは物足りない。4-4-2でとりあえず撤退祖優先する方向に舵を切ったビジャレアルに対して、なかなか解決策が見極められない。大外のデイビス、グナブリー、コマンあたりはビジャレアルのブロックが捕まえられないほど大外に張るのだが、そこからPA内へボールをつなぐルートがない。

 よって、大外からのアバウトなクロスに終始、だが、これは単調すぎてビジャレアル守備網に引っかかってしまう。単騎での突破は困難で、バイエルンはこの大外の優位を生かすことが出来なかったといっていいだろう。

 そのバイエルンをいなすことでロングカウンターのチャンスを作り、バイエルンよりもチャンスメイクすることに成功していたビジャレアル。基本的なことだが、ボールサイドのサポートの手厚さと抜け出しと大外を作る堅実さで先制点以降もチャンスを作り続ける。

 基本的にはそうした流れが試合終了まで続いた印象だ。サネやゴレツカの投入で同点ゴールを狙ったバイエルンだったが、精度が上がる兆しは最後まで見ることが出来ず。むしろ、モレノのミドルやコクランのオフサイドのシーンなど終盤までカウンターの手を緩めなかったビジャレアル相手に1点差でホームに帰還できることが幸運なくらいである。

試合結果
2022.4.6
UEFAチャンピオンズリーグ
Quarter-final 1st leg
ビジャレアル 1-0 バイエルン
エスタディオ・デ・ラ・セラミカ
【得点者】
VIL:8′ ダンジュマ
主審:アンソニー・テイラー

④チェルシー×レアル・マドリー

■ベンゼマは許してくれない

 部分的にスタメン選びに色が出ているところは両チームともにあるものの、基本的には今季一番使ってきたフォーメーションに近い両チーム。そんな中で少し工夫を施してきたのはチェルシーの非保持の局面だった。

 アンカーのカゼミーロをマウントが、クロースをカンテが、そして後方ではクリステンセンがヴィニシウスについていく形が特徴的。カンテとマウントの位置関係からナチュラルな3-4-3の配置とは異なる形になっていたので、この試合に向けて準備してきたものなのだろう。

 だけども、このハイプレスは発動条件が曖昧。常に追いかけ回すというよりはあるタイミングでこの形に収まるようになる。そのギャップにマドリーは上手くつけ込んでいた印象だ。

 例えば、中盤ではクロースをカンテが捕まえるのが遅れるパターンがちらほら。キャラクターを考えればデートのようについて行ってもいいと思うのだが、なんらかの決まりがあったのだろう。

 ヴィニシウスを使ったワンツーからの抜け出しは物理的にクリステンセンには太刀打ちできない相手だったように思う。広大なスペースでのスピード勝負は前のラウンドでハキミとダニーロの二段重ねに苦しんだヴィニシウスにとっては放し飼いに等しいような扱い。だいぶ伸び伸びとできたはずである。

 マドリーのゴールはこのチェルシーのマンマークの発動におけるギャップを活かしたものだった。カンテのマークが遅れたクロースから、左に流すとヴィニシウスがスピードで振り切り、最後はベンゼマ。ピンポイントのクロスをピンポイントで合わせて先制する。

 続く、2点目も一度押し込んでからマイナスで空いたカゼミーロを使い逆サイドに展開。さらにマイナスで空いたモドリッチから2人に挟まれたベンゼマに点で合わせるクロスを決めて追加点である。

 チェルシーのハイプレスに対してもマドリーは徐々に慣れてきた感じ。マンマークの対象外だったCBがボールを持ちつつ、チェルシーの中盤が釣ることができたら、そこの対象のマーカーはフリーになっているのでそこから前進。ベンゼマやカルバハルなどが続々と中央に流れてきてフリーマンとなりながらボールを持ち上がるのもチェルシーにとってはストレスだっただろう。

 2点を奪ってからはマドリーのこのプレス回避のメカニズムはかなりわかりやすくできていたように思う。チェルシーのプレッシングはこの試合の早い段階で明らかに見切られていた。

 一方、ボール保持ではチェルシーも十分やれる感じ。マドリーはリュディガーの持ち上がりに苦慮。初めはモドリッチが高い位置までリュディガーについて行ったのだが、リードを考慮したのか撤退形に切り替え。右WGのバルベルデもバランスを見ながら時には5バックに入ることもあった。

 ただ、これによってマドリーは後ろ重心になり過ぎた感がある。特にマウント、カンテ、ハフェルツが流れる右サイドには対応に苦しむ。

 そして、追撃弾も右サイドから。プレミアをよく見ている人ならば、マイナスにジョルジーニョが受けた瞬間にその先に生まれる決定機が予見できた人もいたのではないだろう。2点目のモドリッチに比肩する少ないタッチでの超絶クロスでハフェルツの同点弾を呼び込んだ。

 後半のチェルシーは2枚を代えて、4-3-3に変更。更なる反撃に打って出ようとするのだが、ここでメンディに痛恨のミス。ブレントフォード戦に続くバックパス処理のところでエラーが発生してしまう。ブレントフォード戦ではなんとか助かったが、ベンゼマにこれを見逃してくれというのは無理筋だろう。史上4人目のCL2試合連続のハットトリックは思わぬ形でもたらされることとなった。

 撤退色を強めつつ、カウンターに専念するマドリーに対してチェルシーは攻め筋がないわけではなかった。むしろ、2点差がついたことで積極的に攻めてくるチェルシーのバックラインにはかなり手を焼いていた印象。

 両サイドのハーフスペース付近に陣取る左のリュディガーと右のジェームズにはある程度自由を許したマドリー。特に高精度のクロスを入れられるジェームズはマドリーの脅威に。チェルシーのアタッカー陣に決定力があれば、最終スコアは違うものになったはず。クルトワが最後の壁として立ちはだかったのもチェルシーにとっては苦しいところだった。

 マドリーは押し込まれる状況には苦しんだが、ボール保持では時間を使うことが可能に。アンカーに入ったロフタス=チークを狙い撃ちにして、アンカー脇に選手を集結させて無限ポゼッションするムーブはCLの経験値差で相手を殴ってきたレアル・マドリーらしい振る舞いと言えるだろう。

 後半は押し込まれながらも時間を溶かしたマドリー。2点リードをベルナベウに持ち帰ることに成功した。

試合結果
2022.4.6
UEFAチャンピオンズリーグ
Quarter-final 1st leg
チェルシー 1-3 レアル・マドリー
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:40′ ハフェルツ
RMA:21′ 24′ 46′ ベンゼマ
主審:クレマン・トゥルパン

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