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「胸を借りて経験値を得る」~2022.3.16 プレミアリーグ 第27節 アーセナル×リバプール プレビュー

目次

Fixture

プレミアリーグ 第27節
2022.3.16
アーセナル(4位/16勝3分7敗/勝ち点51/得点43 失点29)
×
リバプール(2位/20勝6分2敗/勝ち点/得点73 失点20)
@エミレーツ・スタジアム

戦績

過去の対戦成績

 直近10試合の対戦でアーセナルの1勝、リバプールの5勝、引き分け(PK戦含む)が4つ。

アーセナルホームでの対戦

 直近10試合の対戦はアーセナルの4勝、リバプールの3勝、引き分けが3つ。

Head-to-head from BBC sport

・アーセナルは直近18試合の公式戦のリバプール戦で1勝のみ(D8,L9)。2020年7月のホームでの2-1の勝利。
・直近5回の対戦ではアーセナルはリバプール相手に得点を挙げられていない。
・リバプールは史上初めてアーセナルホームでの3連勝のチャンス。
・2022年は3回目の対戦。EFLカップでの2レグの対戦でリバプールが勝ち上がりを決めた。

スカッド情報

【Arsenal】

・ふくらはぎの負傷をした冨安健洋は当日判断。
・エミール・スミス・ロウには先発の可能性。

【Liverpool】

・モハメド・サラーは当日判断。
・イブラヒマ・コナテはフィット。しかし、コンスタンティノス・ツィミカスとジェームズ・ミルナーは病欠。

Match facts from BBC sport

【Arsenal】

・ウナイ・エメリ期である2018年以来のリーグ戦6連勝のチャンス。
・勝てばホーム4連勝。
・直近6試合のリーグの勝ち点がアーセナルより多いのはリバプールだけ。
・アルテタ就任以降、ホームで行われるミッドウィーク開催のゲームは8戦負けなし(W5,D3)
・アレクサンドル・ラカゼットは直近11試合のプレミア出場で10得点に絡んでいる(3G,7A)

【Liverpool】

・現在8連勝中。2020年2月の18連勝以来の長いランになる。
・この8連勝の期間で21得点、2失点。
・今季初めての3試合連続のクリーンシート。
・アウェイでの34得点はリーグ最多。
・モハメド・サラーはキャリア4回目のリーグ戦20得点。

予想スタメン

展望

■予想外だった快進撃

 『マネとサラーという前線の超主力2枚がAFCONで1ヶ月ほど離脱してしまうということで、1月は苦しい戦いになる。そのためにアドバンテージを年末までに取れなければリバプールのリーグ優勝は厳しくなるだろう』というのが、自分が今季の序盤戦に描いたリバプールについての展望だった。

 クリスマスの段階で順位表のトップにいたのはマンチェスター・シティ。年末の過密日程をものともせずに、連勝を重ねて首位をひた走っていた。先に挙げた見立てで言えばこの段階でリバプールはリーグ優勝から脱落である。

 自分の見立てがいかに浅はかだったかというのは3月になれば一目瞭然だろう。しかしながら、そこからリバプールは勝利を積み重ね続ける快進撃。シティもボロボロ勝ち点をこぼしたわけではないが、リバプールがとにかく勝ち点を落とさずに連勝を伸ばしてきた。現状ではシティより1少ない試合数で勝ち点差は4。3節後に控えているエティハドでの直接対決での首位奪取は、リバプールにとって十分現実味のあるシナリオになってきた。

 サッカーの内容に話を移す。攻撃面での連携においては今年のリバプールはやや右に偏重。昨シーズンと異なり、サイドでのタスクを増やしつつもスコアを重ね続けるサラーが異次元のパフォーマンスを見せている。アレクサンダー=アーノルドの大外からのピンポイントクロスは健在であり、一撃で相手を葬る威力がある。よって右サイドはカットインも大外もケアしないといけないというプレミアでも最高難易度のミッションが守備側には課されることとなる。

 左サイドは冬に加入したルイス・ディアスが異彩を放っている。個人でタメを作りながら、味方の攻め上がりを待つことができるし、自らもフィニッシュに持ち運べる強引さも◎。逆サイドへの展開やラストパスも含めて既に存在感を発揮している。

 球離れがいい訳でなく割とここで一旦止まる時もあるのだけど、それが変な感じにならないのが彼の不思議なところ。リズムが変わりつつ、仕組みを成り立たせている感がある。リバプールにとっては異物ではあるだろうが、異物のままに馴染んでいるような印象を受ける。

 前線の面々の中で唯一難しいシーズンとなったのが稼働率の面で難があったフィルミーノ。だが、CFにコンバートされたジョッタやマネは及第点以上の働きと言っていいだろう。降りる動きのスマートさは流石にフィルミーノに軍配が上がるが、組み立ての局面に顔を出しつつフィニッシュワークに顔を出すタスクを高水準で完遂する。特にエリア内でクロスに合わせるスキルが高いジョッタにはアーセナルは警戒したいところ。フィルミーノのフィットは噂されてはいるが、仮に間に合わなくても大きく戦力がダウンすることはない。

 サイド攻撃を操っているのは展開力のあるファビーニョ。それをIHでフォローするのがメインの形である。ここ数試合、組み立てにおいて存在感を発揮しているのがマティプ。フリーになりやすいCBという立ち位置を利用し、マークの集まりやすいファビーニョの横で暗躍している。

 フリーになってからの攻め上がりから直近では結果を出しており、ブライトン戦やリーズ戦では得点につながるプレーを見せている。ファン・ダイクの対角パスに加わる、リバプールの最終ラインの攻撃の新しい武器となっている。

 アーセナルにとってはこれまでの相手とは比べ物にならない脅威に対峙しなければならない。最もわかりやすい懸念はサイド攻撃に対する防衛である。

 右のセドリックは前節のレスター戦では流石にバーンズ相手では厳しいところを突きつけられた感がある。マネやディアスに対しては当然同等以上の苦戦は予想されるだろう。冨安が万全な状態で間に合うならば、それに越したことはないが、1月に無理をさせた故に離脱が長引いてしまっている感があるので、それを繰り返すことだけは避けたいところである。

 リバプールの右サイドは左に比べるとレーンの使い分け方や連携が巧み。アーセナルとしてはここまで展開によって見え隠れしてきたマルティネッリの守備面における規律の部分の不安が露わになる展開も十分に予想されるだろう。カットインも大外もOKのサラー+アレクサンダー=アーノルドにIHが絡む形にはジャカを含めて3人でなんとか食い止めたいところ。攻撃の軸であるサラーの出場可否が大きなポイントになるのは言うまでもないが、おそらく間に合わせてくるだろう。

 サイドの守備にCHがフォローに入れば、背後をフィルミーノが狙ってくる。真ん中もサイドも!という展開になれば、とりあえず供給元を断ち切りたい!というのは自然な流れである。

 ファビーニョをラカゼットとウーデゴールで受け渡しながら守るのがオーソドックスな流れではあるが、先に示したように最近はマティプの持ち上がりも厄介である。かといってCB+アンカーの3枚を前プレスに割くのは比較的リスクは高い。

 ただ、最近のリバプールは前線の裏抜けの頻度が下がっているようにも思うので、アーセナルがラインを上げる作戦を実践すれば、好転する可能性はないわけではない。2CB+アンカーを全部抑えるのか、それとも受け渡しながらのバランス重視にするのか。ここはアルテタが決断すべき部分だ。

 しかし、リバプールのCBは試合の中でプレス隊との関係性を調整する力がある。インテル戦では例えばGKを積極的にビルドアップに組み込みながら幅を取ってマーカーである2トップから離れてフリーになるとか。こうした流れの中での変化や対応力はチームとしての経験値である。ここは現状ではアーセナルよりも上の部分であろう。

■欧州カップ戦で得られなかった経験値を得る

 攻撃の局面においては十分にアーセナルには付け入る隙があると見る。一番わかりやすいのはカウンターからWGでリバプールのSBの裏を取ること。攻め上がりが多いリバプールのSBはカウンターにおける大きな狙い目。ファビーニョ、ダイクの少なくともどちらかはサイドに引っ張り出して裏をカバーさせたいところ。強固な中央を少しでも掻き乱したい。

 もう一つ可能性を感じるのは中盤のプレス回避。最近はあまり見ない気がするが、IHがトランジッションで後手を踏むのがリバプールの今季の負けパターンである。ここはリバプールの隙になりうるだろう。

 対するアーセナルにとって中盤のパスワークはここ数試合での強みである。トーマス、ウーデゴールを軸に細かいタッチと動き直しとパス交換を繰り返しながら一気に攻撃を加速させる。ここでリバプールの中盤をひっくり返し、一気に攻撃のスイッチを入れることができればアーセナルにはチャンスはある。リバプールのバックラインが位置について守れる前にゴールを強襲すればシュートまで持って行ける可能性はある。点は取られる可能性もあるだろうが、点を取り返す力があるのが今のアーセナルである。

 欧州カップ戦、FA杯という緊張感のある一発勝負は今季はもう経験することができないアーセナル。はっきり言ってこうした2つのコンペティションを並行に掛け持ちしたり、一発勝負の重みを感じれなかった部分は今季のアーセナルにとって痛手である。

 それゆえ、リーグ戦ではあるがリバプールのような強豪との一戦はなんとか貴重な経験にしたいところ。接戦になった場合には二転三転する展開が待ち受けているのは確実と言っていいだろう。

 一番大事なのは確実にこの舞台に上がること。早い時間の失点や退場者で相手の手の内を出させることなく、試運転モードでいなされて負けてしまうパターンが最も避けたい台本である。展開が変わりまくるタフな90分を味わって、より強いチームが踏む舞台の予行演習をしておきたいところである。

 いうまでもなく今回は胸を借りる立場。全力でぶつかり、90分間勝利を掴むための試行錯誤を繰り返せる試合を経験し、欧州カップ戦に出られなかった機会損失を補いたいところである。

【参考】
https://www.bbc.com/sport/football/premier-league

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