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「Catch up Premier League」~Match week 6~ 2021.9.25-9.27

目次

①チェルシー【1位】×マンチェスター・シティ【5位】

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■待ち望んだ『9番』が難敵克服の立役者

 シティの史上初のビックイヤーを阻んだのはシーズン途中にプレミアにやってきたトーマス・トゥヘルのチェルシー。トゥヘル就任後、3連敗とシティにとってチェルシーはすっかり目の上のたんこぶになった印象だ。そんなたんこぶであるチェルシーは首位。すでに強敵との日程も消化し始めており、コンディションは上々。優勝候補筆頭との呼び声も高い。

 この試合の立ち上がりの構図は非常にはっきりしていた。ボールを持つのはシティ、受けるのはチェルシー。その展開を両チームとも受け入れた試合だった。プレスに対する姿勢も対照的。何がなんでも敵陣で奪い取りたいシティに対して、時折はプレスに出ていくものの、基本的には自陣に引くことが多いチェルシーだった。

 チェルシーがブロック守備で特に気をつけていたのは、左の大外に構えるグリーリッシュにいい形でボールを渡さないこと。内に入るカンセロからシティはグリーリッシュへのパスコースを切り拓こうとするのだが、ジェームズが細かい上下動を駆使し、前を向いてグリーリッシュと対峙する機会を減らそうとした。

 それでもジェームズの負傷交代後はやや左サイドで前が向けるようになったシティ。役割を引き継いだアスピリクエタは受ける前の段階の守備よりも、受けた後の対人守備を頑張っているようだった。

 右サイドはやや停滞感もあったシティ。こちらのサイドは攻撃参加に積極的なマルコス・アロンソが戻り遅れるシーンもしばしばあったが、内に絞る右のWGのジェズスがうまく彼のスペースをつくことができず。打開を担ったのはベルナルド。PA幅で自由に浮遊するベルナルドやフォーデンと徐々に繋がる機会を増やし、右サイドから中央の攻略を狙っていた。

 チェルシーの攻撃の狙いは明らか。ボールを奪った後、素早くルカクとヴェルナーの2トップに繋ぐこと。縦へのスピード勝負である。わかってても止められないスピードはシティのバックスを脅かしはしたが、ここはラポルトとディアスがなんとか体を張って防ぐ。前半は互いに相手の本懐にたどり着けず、枠内シュートが0で折り返すこととなった。

 後半、配置を変更したのは押し込まれていたチェルシー。ヴェルナーを右に移動させたのは、カンセロの裏を狙う意図だろうか。もう一つ中盤でバランス調整となったのは、攻守に前に出ていく役割をカンテからコバチッチに変更したこと。前半は自陣深い位置から脱する役割だったコバチッチを、より高い位置で触らせることによりゴールへの先導役としての役目を持たせたのだろう。

 だが先制したのは、対策を講じたチェルシーではなくシティ。セットプレーの流れから技と根性でジェズスが押し込み先制。シティファンが首を長くして待っている9番としての仕事をジェズスがやってのけ、シティに貴重な先制点をもたらす。

 チェルシーはハフェルツを投入し、3-4-3変形。CBラインを高く設定しプレスを解禁する。前線からのプレスの機能も高くリターンも見込めるやり方にシフトしたチェルシーだが、スピードに難があるバックスが後ろにスペースを背負うため、リスクも当然大きくなる。

 決定機はシティの方が多かったが、2点目までは決めきれず。チェルシーは最後の交代枠であるロフタス=チークがシティの左サイドを切り裂くアクセントとなり、ファンを驚かせたものの、最後までシティのゴールを脅かすことはできず。

 序盤戦のプレミアの行方を占う一戦は首位のチェルシーをシティがストップ。ようやくトゥヘルに土をつけて、両チームは勝ち点でも並ぶこととなった。

試合結果
2021.9.25
プレミアリーグ 第6節
チェルシー 0-1 マンチェスター・シティ
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
Man City:53′ ジェズス
主審:マイケル・オリバー

②マンチェスター・ユナイテッド【3位】×アストンビラ【10位】

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■専守からの変容を見せる5-3-2

 チェルシー戦でいい手応えだったものの、結果が出なかった5-3-2を継続しているアストンビラ。アルゼンチン代表遠征で一悶着あったブエンディアがスカッドに戻ってきても、この形を変えることなく継続している。

 見た目こそ5-3-2だけど、比較的専守っぽかったチェルシー戦と比べるとアストンビラは徐々に変容を見せているように思う。攻撃においては一気にロングカウンターを仕掛けるわけではなく、大外のWBを活用しながら幅を取りつつ徐々に進んでいく。トップのFW2人がサイドに流れることにも積極的。ユナイテッドの4枚の横幅の大外を回るように攻略を狙う。

 15分近辺にあったキャッシュ→ターゲットの決定機はWBからWBへのクロス。この日のアストンビラの狙いの一つだろう。決まらなかったけども。5-3-2だけど、幅を使いながら前進。アストンビラはこのシステムの中でできることの範囲を広げようとしているのかもしれない。

 対するユナイテッドはこのアストンビラの横幅を使った攻撃をカットしたところからカウンターを狙う。割とアストンビラは引っかけるのである程度チャンスの頻度はあるのだが、ロナウドがいるとどうも一度落ち着いてしまうのが気になる。グリーンウッドが必死にゴール前まで運んでも、ロナウドがゴール前で一度止まる。ここまでは点を決めているのでなんとも言えないところだが、展開によっては怪しい部分も見え始めている。

 遅攻はユナイテッドも大外から。大外からドリブルで破壊するか、ラインを押し下げてポグバかブルーノ・フェルナンデスのミドルが王道パターン。ミドルにはめっちゃ積極的なため、決定機はそこまで多くないものの、シュート数はやたら増えていく感じ。

 そんなユナイテッドが苦しんだのは負傷者だ。前半にはショウ、後半はマグワイアとバックラインが次々と交代。この試合だけでも痛いが、ミッドウィークには初戦で手痛い敗戦を喫したCLが控えている。ここでどちらかを欠くだけでも痛手である。

 攻撃面ではルーク・ショウの欠場が痛く、後半からペースはアストンビラに。ワトキンスは決定機まで持ち込むもデヘアに阻まれており、メンディに止められまくったチェルシー戦がフラッシュバックした感じ。

 だが、後半から勢いを得たアストンビラが終盤に先制点をゲット。ホウスがコーナーから仕留め貴重な得点をビラにもたらす。前半はユナイテッドにもかなりセットプレーのチャンスはあっただけに悔しい失点となった。

 しかし、本当にユナイテッドが苦しんだのはここから。決定的な働きを見せたかと思ったホウスが後半追加タイムにハンドで今度はPKを献上。だが、このPKはブルーノ・フェルナンデスが枠外に。マルティネスのトラッシュトークが効いたのかは定かではないが、ユナイテッドが絶好の同点機を逃したのは確か。中断明けからどんより漂う停滞ムードを払拭できないままCLに挑むことになる。

試合結果
2021.9.25
プレミアリーグ 第6節
マンチェスター・ユナイテッド 0-1 アストンビラ
オールド・トラフォード
【得点者】
AVL:88′ ホウス
主審:マイク・ディーン

③レスター【12位】×バーンリー【19位】

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■逆算を感じないちぐはぐさ

 フォファナを負傷で失ったプレシーズンにはじまり、万全のメンバーが整わず、どことなく綱渡りの状況が続いているレスター。負けてはないんだけど、なかなか噛み合ってる感がない!というか。今節の相手は今季また未勝利と序盤戦苦しんでいるバーンリー。調子が出なかった昨季に続き、秋頃のブレーキはやや恒例行事になっている感がある。

 保持側に立ったのは戦前の予想通りレスター。バーンリーの前節の相手のアーセナルと同じく、バーンリーの4-4-2プレスには屈することなくまずは落ち着いてボールを保持した。この日の攻撃の目玉はバーンズとルックマンという両翼に備えたドリブルマシーン。最終ラインの配球力も高く、中盤も数的優位からフリーマンを作ることができるので、レスターはサイドにボールを運ぶところまでは問題なくできていた。

 だが、レスターの攻撃の強みはやはりFWから逆算されてこそだと思う。結果的に生まれた2点を見ても、ヴァーディの裏抜けを仕上げとして考えた時の選択肢の多様さこそがレスターの強さではないだろうか。両翼をオンザボールで生きるドリブラーで揃えてしまうと、そのフィニッシュとの食い合わせの悪さが気になるところ。

 結局仕上げで生きるのは奥行きだし、バーンリーはそういった後退させられながらの守備が非常に苦手なチーム。実際にレスターが点を取ったシーンもそういった形。逆にサイドでの対人はバーンリーにとっては絶対負けちゃいけない部分。他の選手のコンディションの部分も大きいのかもしれないが、レスターは手段の豊富さで戦えるチームにしてはやや単調で相手にとって与し易い方法を選んでしまったかなという印象を受けた。

 バーンリーはレスターの攻撃に対して、十分反撃することができていた。理由はいくつかあるが、まずは単純にレスターのバックスのメンバーが昨季から入れ替わったことで、足の速さでバーンリーがある程度優位であること。ヴェスターゴーアとソユンクのハイラインはやはり少し怖さが拭えない部分がある。ロングカウンターを成立させるためにスピードでの優位は大きなピースである。

 もう一つは新加入のコルネの存在。前節のデビュー戦では途中交代するも冨安に完封されてしまったが、この試合では躍動。サイドからのワンツーでの突破やエリア内に入ってくる積極性は従来のバーンリーのアタッカーにはなかった部分。

 特にエリア内でフィニッシャーの役割を担えるのは大きく、従来ならば2トップの片方がサイドに流れてしまうとエリア内の迫力が失われやすかったバーンリーにとってはありがたい存在。FWがサイドに流れること自体はバーンリーの崩しにおいては必要なので、それによってズレたバランスを整えることができる選手だというのはこの日の得点で証明できた部分だろう。

 ただ、そのコルネも負傷。かつチームも勝ちきれず。最適解まで辿り着けないレスターとトンネルを抜けられないバーンリー。両チームとも抱える苦しみをおろせない一戦になってしまった。

試合結果
2021.9.25
プレミアリーグ 第6節
レスター 2-2 バーンリー
キング・パワー・スタジアム
【得点者】
LEI:37′ 85′ ヴァーディ
BUR:12′ ヴァーディ(OG), 40′ コルネ
主審:クリス・カバナフ

④エバートン【6位】×ノリッジ【20位】

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■ポジティブ要素もあるけれど…

 開幕から5連敗。唯一の全敗で苦しんでいる昇格組のノリッジ。失点はリーグで最も多く、得点は最も少ないのだから最下位も全敗も必然と言えば必然だろう。

 ノリッジはこの試合において5-3-2を採用。バックスの枚数を増やしてまずは自陣の守備の部分から改善しようという腹づもりなのだろう。

    エバートンは初めこそ、アランがサイドに流れてディーニュを押し出すなど、相手が4-2-3-1で来ることを想定していそうな変形を行なっていた。だが、それも早々に終了。可変をせずとも、重心の低いノリッジ相手には前に進めることができるということだろう。

    実際、サイドにプレスをかけられずズルズル自陣深くまで下がっていってしまうことでノリッジは守備機会が増加。堅い守備を武器にロングカウンター主体で戦うチームでいいのならばそれでもいいのだろうが、ノリッジはその前提となる堅い守備があるチームではない。案の定、攻撃参加を増やしてくるエバートンに対してノリッジはPKを献上してしまう。守備力向上のため補強したカバクがPKを与えたというのも切ない。

 保持の局面ではノリッジの5-3-2はある程度の効果があったとは思う。エバートンのプレスがそこまで整っていなかったというのもあるが、WBにボールを持たせることで今まで前線にボールの預けどころがなかった部分は改善。以前よりは落ち着いてボールを持つことはできていた。しかしながら、そこからゴールに向かう動きができているかは別だけども。

 エバートンは後半にプレスを修正。タウンゼントに代えて、ゴードンを入れたタイミングで大外と中央の人数を合わせやすい5-3-2気味に守備を変形する。すると、これがプレスがハマるきっかけに。マクリーンからボールを囲んで一気にショートカウンターに移行すると、最後はドゥクレ。ダイナミズムの象徴と言える存在が決めた追加点で試合は決着する。

 得点は取れず、失点は積み重なる。メンバーを多少入れ替えたエバートン相手にも歯が立たず、ノリッジの苦悩はまだまだ続くことになりそうだ。

試合結果
2021.9.25
プレミアリーグ 第6節
エバートン 2-0 ノリッジ
グディソン・パーク
【得点者】
EVE:29′(PK) タウンゼント, 77′ ドゥクレ
主審:デビッド・クーテ

⑤リーズ【17位】×ウェストハム【8位】

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■要人を欠いたリーズに自力の差を見せつける

 オープンな展開が続く序盤戦、チャンスをより多く得たのはウェストハムの方だった。攻撃における早い展開が得意なウェストハムはリーズが仕掛けるハイテンポな流れにも順応。序盤から前線のアタッカーがリーズのゴールに迫っていった。

 前進に苦労したのはホームのリーズ。ややボールを持たされ気味な展開が続く上に、バックラインはいつものメンバーから何人か変わっている。前線にはアバウトなボールを収めることができるバンフォードもいないというわけで苦労する要素が満載だった。

 それでもリーズは徐々に大きな展開を交えながらタメを作り、周りのオーバーラップを促して自分たちのリズムを掴む。ウェストハムのオープンに攻めつつ、クローズに守るという方針の中で徐々に抵抗を始めていた。

 リーズが先制点を得ることができたのは、ウェストハムが自らのミスでクローズに守ることを放棄してしまったから。ソーチェクのバックパスミスから、与えられたカウンターの機会に一気に攻め込んだリーズ。クリヒの落としを最後はラフィーニャが決めて先制。ウェストハムのミスに付け込み先制点を得る。

 その後もリーズは自陣から出ていくのに苦労する。だが、出ていくときに成功したときはラフィーニャがフィニッシュまで持っていく力がある。今年、もう一皮剥けた感があるラフィーニャであった。

 ウェストハムは先制された後はクローズに守ることを実践できてはいたが、今度は攻撃機会に繋がるボール奪取に苦慮。オープンに攻める方がなかなかできなくなっていた。

 迎えた後半、セットプレーからチャンスを得たウェストハムが押し返すように。ただ、ここはファウルの判定とメリエの好セーブに救われてリーズ側としてはことなきを得る。だが、モモを気にするラフィーニャが下がってしまうとリーズは一気に攻め手を失ってしまう。前線の預けどころがない分、リーズは前半よりもウェストハムに押し込まれる展開が続くことに。

 60分くらいからリーズがトーンダウンしたことにより、試合はさらにウェストハムペースに。徹底守備で怪しいサイドのポジションから徐々にウェストハムは敵陣に押し込んだ際の攻略ができるようになってくる。同点ゴールはここから。フィルポの怪しいポジショニングから同サイドに侵入を許し同点にする。

 その後も地力の違いを見せ続けたウェストハム。リーズの最終ラインも踏ん張り続けてはいたが、最後の最後で決壊。カウンターに打って出たウェストハムに数的優位を許すと、華麗なコントロールでDFを手玉に取ったアントニオが決勝点。

 バンフォード、エイリング、ラフィーニャが不在となった終盤のリーズにとっては、ウェストハムを下すことはやや荷が重いミッションだったようだ。

試合結果
2021.9.25
プレミアリーグ 第6節
リーズ 1-2 ウェストハム
エランド・ロード
【得点者】
LEE:19′ ラフィーニャ
WHU:67′ フィルポ(OG), 90′ アントニオ
主審:ケビン・フレンド

⑥ワトフォード【11位】×ニューカッスル【18位】

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■決まりそうで決まらない!

 よく言えばプレミアリーグらしい一戦、悪く言えば無秩序な撃ち合いという感じの一戦となった。ワトフォードもニューカッスルも最大の武器はおそらくアタッカー陣のスピードだろう。そのスピードを存分に堪能できる試合だった。

 システムの話でいえばニューカッスルがワトフォードにかみ合わせる形で3センターを選んだことも一因だろう。プレスのかかる中盤を避けるようにワトフォードは対角のパスを積極的に使いながら前進を狙っていく。

 だが、空いたスペースに入り込む味方を使う意識が低かったワトフォード。同サイド攻略に手間取ってしまい、デニスの独走以外にではなかなかチャンスを作ることが出来ない。

 いいことなのか悪いことなのかはわからないけども、やはり早い攻撃を独走で完結させるという観点でいえば、ニューカッスルの方が先輩格なのだろう。この試合もサン=マクシマンとアルミロンの2人を軸にミドルゾーンで構えたいワトフォードをガンガンに後退させていく。

 中盤がかみ合う分、普段よりもさらに中盤を省略することに躊躇がなかったニューカッスル。ガンガン縦に縦に突き進んでいく。すると前半のうちにセットプレーの流れから先制。サン=マクシマンの促すような優しいパスを遠慮なくミドルで叩き込んだロングスタッフがスーパーゴールで得点をもたらす。

 勢いに乗るニューカッスルは前半終了間際にもチャンス。バックパスをかっさらったサン=マクシマンが独走でカチコミを決めると、またもロングスタッフにラストパスをプレゼント。しかし、これを決められず決定的な2点目を得ることはできなかった。

 劣勢に立たされるワトフォードだったが、後半にセットプレーから反撃。キングのファーへの流しを最後はサールが押し込んで追いつく。

 ここからがクライマックス。その勢いのまま攻めるワトフォード。シソコのシュートの跳ね返りをキングが押し込んで逆転したかと思いきや、これはギリギリオフサイド。ネットを揺らしたキングは大人しく脱いだユニフォームを着る羽目になる。

 一方のニューカッスルが勝利のチャンスを得たのは試合終了間際。再び好機を生み出したのはサン=マクシマン。だが、抜けだしたマーフィーは1対1の機会に力無いシュートであっさりとフォスターに防がれてしまった。

 互いに決定的なチャンスを得点に変えることが出来なかった両チーム。ニューカッスルは未だ未勝利の沼から脱することが出来ないままだ。

試合結果
2021.9.25
プレミアリーグ 第6節
ワトフォード 1-1 ニューカッスル
ヴィカレッジ・ロード
【得点者】
WAT:72′ サール
NEW:23′ S.ロングスタッフ
主審:ジャレット・ジレット

⑦ブレントフォード【9位】×リバプール【2位】

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■昇格組が演出した今季ベストバウト級の90分

 今季ここまでわずか1敗。唯一の敗戦は90分に決勝点を許したブライトン戦。ブレントフォードは開幕戦のアーセナル戦の勝利を皮切りに、今季のプレミアの台風の目となっている。

 そのブレントフォードに立ちはだかるのはこちらは正真正銘無敗のリバプール。強豪相手にブレントフォードがどのような振る舞いを見せるのかが楽しみな一戦となった。

 試合は90分間を通して今季のプレミア屈指のエキサイティングさだった。その大きな要因となったのは間違いなくブレントフォードのアグレッシブな姿勢だろう。互いに高い位置まで出ていくプレスで速いテンポの試合を演出する。ただ、機動力の部分ではさすがにリバプールの方が一枚上手。カウンターからゴールを脅かす機会が多かったのはリバプールだった。

 しかし、先制したのはホームのブレントフォード。セットプレーから左サイドの大外を上がっていったピノックが最後に押し込んでホームスタジアムを爆発させる。

 だが、リバプールもすぐにやり返す。こちらはジョタ。空中戦の狙いの定め方は相変わらずさすが。ジャンプの際に相手に競り合わせない技術は彼のスペシャルスキルだと思う。どこで身に付けたんだろうか。

 迫力満点の撃ち合いは後半も続く。サラーが裏抜けからダイレクトに柔らかく打ち抜き勝ち越しを決めるリバプールもさすがだが、ダイレクトな展開で一歩も引かないブレントフォードの方もこの日は特に際立っていたように思う。

 特にラヤ→トニーのフィード一発で高い位置まで運べるのはずるい。ラヤのフィード能力の高さはすでにプレミア屈指。2点目のブレントフォードの得点は彼のフィードから得たクロスから決めたものだ。

 ブレントフォードの強さとして挙げられるのはクロスを積極的にあげる姿勢だ。おそらく、ある程度決められた約束があるのだろう。山なりのクロスをファー気味に流すとか。PA内で待ち受けるFW陣もこれに合わせてファー気味に競りかけることが多い。ここが徹底されているからこそ、時間的に余裕がない時も決め打ちでプレー出来る。ハイクロスなので相手のDFにもひっかかりにくい。

   そして、トニーがエリア内で張り合えるのが何と言っても大きい。いくら上がるところがわかっていても競り勝てないと意味がない。強みを最大化するために決め打ちされているルールなのだろう。

   再びリードされた後、終盤の同点弾もこのファー気味のクロスが決定打。別格だったカーティス・ジョーンズのスーパーゴールを打ち消すウィサのゴールは、ホームでリバプール相手に内容も結果も十分に張り合えるチーム力をブレントフォードが持っていることの証明となった。

試合結果
2021.9.25
プレミアリーグ 第6節
ブレントフォード 3-3 リバプール
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
BRE:27′ ピノック, 63′ ジャネルト, 83′ ワッサ
LIV:31′ ジョッタ, 51′ サラー, 67′ ジョーンズ
主審:スチュアート・アットウィル

⑧サウサンプトン【15位】×ウォルバーハンプトン【16位】

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■優位も決め手を欠く

 噛み合わせ的にはあまり組み合える感じではないサウサンプトン。だが、積極的なプレスでウルブスの前進を阻害させていく。ウルブスはサイドを変えながら進むことができれば効率的に前に進むことができる。だけども、サウサンプトンがそれを高い位置から妨害していく。そんな流れの立ち上がりだった。

 どちらかといえば効率的に前進ができていたのはサウサンプトンの方。今季のサウサンプトンはSBとSHを軸にサイドから前進していく意識が高かったのだけど、この試合のサウサンプトンはどちらかといえば昨シーズン仕様。2トップとSHの4枚が近寄りながら進んでいこうという感じ。

 サウサンプトンのSHとSBがレーンも含めて遠くなることで、ウルブスはなかなかエリアを絞って守ることができず。結果的に外が空いたサウサンプトンの方がウルブスよりも前進することができていた。

 サウサンプトンの保持に対して徐々にウルブスはプレスを強めるも、サウサンプトンは落ち着いて保持する流れは変わらず。ウルブスがロングカウンターから一発を狙う展開で試合は落ち着く。

 その膠着した流れの中で先制したのはウルブス。ヒメネスがロングボールの競り合いから独走して貴重な先制点をゲット。均衡を破り一歩前に出る。サウサンプトンはジェネポを投入してサイドを強化。突破からのクロスで勝負したい姿勢を見せる。

 だが、インサイドに高さがなくクロスに精度がないこの日のサウサンプトン。インサイドの高さはウルブスの方が上で攻めあぐねてしまう。ネベスの投入で5-3-2に変化したウルブスがサイドを手当てにするとサウサンプトンは好機を得ることすら難しくなる。

 逃げ切ることができたウルブス。優位に攻撃を進めていたが、決め手を欠いたサウサンプトンはまたしても勝利を掴めなかった。 

試合結果
2021.9.26
プレミアリーグ 第6節
サウサンプトン 0-1 ウォルバーハンプトン
セント・メリーズ・スタジアム
【得点者】
WOL:61′ ヒメネス
主審:アンディ・マドレー

⑨アーセナル【13位】×トッテナム【7位】

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■揺らぐ余地なく真っ赤に染まるノースロンドン

   レビューはこちら。

 9月の頭には首位から高みで最下位のアーセナルを見下していたトッテナム。だが、そこからの連敗で立場は大きく変化。この一戦で敗れてしまうと連勝を重ねてきたアーセナルに順位をひっくり返されてしまう可能性すらある。

 試合は立ち上がりからアーセナルの保持が中心の展開に。トッテナムは今季おなじみの3トップ+3センターで中央を封鎖する六角形システムを焼き直してこの試合に臨む。

 アーセナルはシティも苦しんだこのシステムを非常に機能的に破壊した。左の大外のティアニー、右の大外のサカとウーデゴールをまんべんなく使い、まずはトッテナムのIHを広げる。アーセナルはトッテナムの六角形の内部にトーマスとジャカを残しているのがミソで、彼らが気になるトッテナムはこれまでほどスムーズにサイドに六角形をスライドさせることができない。

 中盤の3枚の距離が広がると今度はIH-アンカーの間にアーセナルは縦パスを入れるようになる。これが攻撃のスイッチングになる。配球センスが非常に優れていたのがガブリエウ。内に入れるか、外に散らすか、奥を狙うかの判断が素晴らしかった。

    中でもジャカとの関係性はピカイチ。自陣低い位置まで引いてホイビュアを背負いながらワンタッチで奥に送る流れはこの日のアーセナルの攻撃のスイッチが入る肝だった。これにより、前半から得点を重ねていくアーセナル。ウーデゴール、サカ、スミス・ロウは絶好調でスピーディなアタックを演出。

   近年はさえないパフォーマンスに終始しがちなオーバメヤンもポストと守備に奔走し、自らの得点だけでなく最前線からチームを引っ張る活躍を見せた。

 対するトッテナムは苦戦。アーセナルのプレスに対して中央にボールを入れることはできず、ケインとソンに丸投げのやり方では厳しい。アーセナルもこの放り込みを予期していたようでCHとDFラインは非常にコンパクト。ケインを逃がさないホワイトの守備の意地も見えた。

 ホイビュアの負荷を軽減するスキップの投入と、レギロンのパートナーとなったブライアン・ヒルの活躍で後半は多少は盛り返したトッテナム。だがそれも慰め程度にしかならない。

 シーソーゲームがトレードマークのノースロンドンダービーだったが、この試合に関してはそれは当てはまらない。熱狂するエミレーツのファンの声援を背に攻守に圧倒したアーセナルが順位表でもトッテナムを交わして今季初めてのトップハーフ入りを果たして見せた。

試合結果
2021.9.26
プレミアリーグ 第6節
アーセナル 3-1 トッテナム
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:12′ スミス・ロウ, 27′ オーバメヤン, 34′ サカ
TOT:79′ ソン
主審:クレイグ・ポーソン

⑩クリスタル・パレス【14位】×ブライトン【4位】

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■宿敵の笑顔を消し去ったヒットマン

 2017年にプレミアの舞台で初めて実現したM23ダービーだが、間違いなく今回の対戦は同ダービー史上最も高い注目度で行われることになる。チェルシーとマンチェスター・ユナイテッドの敗戦、そしてリバプールの引き分けを受けてブライトンにとっては勝てば首位浮上がかかる一戦となってしまったのだ。

 対するクリスタル・パレスも成績こそ伸び悩んでいるが、チームのソリッドさは昨シーズンよりも確実に成長。倒しにくいチームへと変貌を遂げつつある。

 立ち上がりいい入りをしたのはホームのクリスタル・パレス。特にボールの受け手となる中盤に強いプレスをかけて中央のパスへのプレッシャーをブライトンにかけていく。これにブライトンは完全に屈した形。攻守の中盤の要であるビスマを欠いてしまえば、ここでリスクを取れないのも無理はないけども。

 こうしてパレスは中央のパスコースを寸断に成功。ブライトンのビルドアップルートはサイドに限られる。サイドからの攻撃も珍しくククレジャがいる左サイドに偏るブライトン。早めにプレスに来るクリスタルパレスにここからも脱出口を見つけることが出来ない。

 一番、ブライトンが効果的だったのは縦に蹴りだしてしまうこと。ウェルベックとパレスのDF陣の裏抜けタイマンが最も勝機があった攻め方となっていた。逆に言えば、それだけパレスはうまくブライトンを阻害したということでもある。

 パレスの攻撃はSBを肩上げする3-2-5気味の変形。IHの2人、特にギャラガーがボールサイドに積極的に顔を出し、アウトナンバーとなり守備の狙いを絞らせない仕組みになっていた。

 特にブライトンの対応が後手に回りやすかったのは彼らの左サイド。バーンがやたらと対面のギャラガーを追いまわして動き回り、ククレジャがそれをカバーできないという関係性でたびたび同サイドのハーフスペースは穴が空いていた。その脇の甘さを突いたクリスタルパレス。ギャラガーの突破に対してトロサールが安易に飛び込んでしまい前半終了間際にパレスに先制点を献上する。

 後半、4-3-1-2に変化しながら攻勢を強めるブライトン。クリスタルパレスは前半ほどの積極的なプレスは見せずに撤退気味に。だが、ビスマの不在の影響は大きく、押し上げるようなポゼッションも高い位置から捕まえるようなショートカウンターもブライトンはどこか停滞気味。むしろ76分のアイェウのチャンスでパレスが試合を決める機会すらあったくらいである。

 だが、これはダービーマッチ。最後まで何が起こるかわからない。終了間際、グアイタの何気ないキックがあっさりと自陣まで戻ってくると、これをモペイが逃さずにあっさりとループを決めて見せる。ぬか喜びストライカーから一変、決定機を逃さないヒットマンになりつつあるモペイが一撃で試合を振り出しに戻し、宿敵から笑顔を消し去って見せた。

試合結果
2021.9.27
プレミアリーグ 第6節
クリスタル・パレス 1-1 ブライトン
セルハースト・パーク
【得点者】
CRY:45+2′(PK) ザハ
BRI:90+5′ モペイ
主審:アンドレ・マリナー

  おしまいじゃ!

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