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「六角形を攻め落とせるか」~2021.9.26 プレミアリーグ 第6節 アーセナル×トッテナム プレビュー

目次

Fixture

プレミアリーグ 第6節
2021.9.26
アーセナル(13位/2勝0分3敗/勝ち点6/得点2 失点9)
×
トッテナム(7位/3勝0分2敗/勝ち点/得点3 失点6)
@エミレーツ・スタジアム

戦績

過去の対戦成績

図1

 直近5季の対戦でアーセナルの3勝、トッテナムの5勝、引き分けが3つ。

アーセナルホームでの対戦

図2

 直近5年間の対戦でアーセナルの5勝、トッテナムの1勝、引き分けが4つ。

Head-to-head from BBC sport

・アーセナルは直近10試合のリーグでのホームのトッテナム戦で無敗(W6,D4)
・アーセナルが勝てば2014年以来のノースロンドンダービー連勝となる。
・2010年にトッテナムが記録した2-3でのエミレーツでの勝利は直近28試合のアーセナルアウェイでのリーグ戦で唯一のもの(D11,L16)
・アーセナルは直近22試合のホームのプレミアでのトッテナム戦で少なくとも一度得点を挙げている。

スカッド情報

【Arsenal】

・3試合出場停止からグラニト・ジャカが復帰。フルスカッドで臨む。

【Tottenham】

・スティーブン・ベルフワインとライアン・セセニョンは引き続き離脱。一方、ルーカス・モウラはトレーニングに復帰。

Match facts from BBC sport

【Arsenal】

・2戦連続で1-0での勝利を記録中。3連続で1-0での勝利になれば2008年以来。
・無得点に終われば6試合終了時の得点数として1910-11に並ぶワーストのクラブ記録。
・今季ここまで26人の選手を起用し、スタメンの変更を16回実施。どちらもリーグハイ。
・スタメンの平均年齢は24.8歳で2021-22シーズンで最も若い。
・アレクサンドル・ラカゼットは点を取れば、アーセナルの選手で初めてホームのトッテナム戦で4戦連続のスコアラーになる。
・無失点を記録すれば、アーロン・ラムズデールはアレックス・マニンガー、ダビド・オスピナに続き、加入後3試合をいずれもクリーンシートで終えるアーセナルで3人目のGKになる。

【Tottenham】

・0-3での連敗中。3失点以上取られて敗れれば、クラブ史上初めての3試合連続3失点以上の連敗となる。
・ロンドンのクラブに3連敗中。敗れれば2004年以来の4連敗。
・ヌーノ・エスピリト・サントはプレミアでのアーセナル戦での6回の対戦で一度しか負けていない(W3,D2)
・ハリー・ケインはここまで4本のシュート。彼よりも多くシュートを放っている選手がプレミアには110人いる。
・ケインはノースロンドンダービーのスコアリーダー。14回のリーグ戦で11得点。これより多くアーセナル相手に得点を決めているのは12得点のウェイン・ルーニーのみ。
・250試合目のプレミア出場がかかるケインは3月のアーセナル戦では無得点。過去にアーセナル相手に2試合連続で得点をあげられなかったことはない。

予想スタメン

画像3

展望

■シーズンもダービーもジェットコースターなノースロンドン

 ノースロンドンダービーといえば、ジェットコースターのような展開が魅力な一戦。前回対戦はラボーナで先制弾を決めて、アーセナルファンを沈黙させたラメラがその後退場となり、トッテナムの逆転負けの象徴に。先程までヒーローだった選手が、一気にどん底に叩き落とされるというのはいかにもノースロンドンダービーらしい。

 振り返ってみれば、今季の両チームの成績もジェットコースターのようだ。唯一の3連勝、リーグの首位、そして最下位には3連敗のアーセナルという9月の最初の代表ウィークまではトッテナムファンにとっては笑いが止まらない展開だったはずだ。

 しかし、今のテーブルを見てみると両チームの勝ち点差はわずかに3。中断明けからはトッテナムが連敗、アーセナルが連勝と両チームの成績はまるっきり裏返しになっている。アーセナルにとっては勝てば9月に笑っていた宿敵に対して、肩を並べるチャンスがわずか1ヶ月でやってきたということになる。唯一の共通点は両チームの今季のリーグ戦での勝利は全て『1-0』であることくらいだろうか。

サイドはSBのもの

 トッテナムの今季の戦い方の基本形となりそうなのは開幕戦から披露している4-3-3。シティに勝利していこう、この形をヌーノ政権でのベースとして戦っている。

 シティ戦を見るとチームとしてのコンセプトははっきりしている。守備において、前線の3枚とMFの3枚が六角形を形成し、相手のCHを閉じ込めて中盤からの全身を防ぐことを最優先する。インサイドを圧縮し、CHにボールを入れてきたら一気に取り囲む。

 特徴的なのはシャドーの立ち位置。内から外を切るように極端に絞った立ち位置をとる。大外まで無理に出て行くことはせず、逆サイドにボールがある時に内側を絞り、六角形のコンパクトさを維持することを優先する。

画像4

 実はシティ相手にはトッテナムは昨季も六角形を強く意識した形で挑んでいる。微妙に形は違う(昨季は4-4-2のような形で圧縮をかけていた)けども中央を使わせたくないコンセプトは昨季と非常に似ている部分である。

 なので、このやり方は若干シティ対策寄りなのかなと思っていた。ところが、開幕戦を制してからはこの形はいくつかの試合で似たコンセプトを再現していた。クリスタル・パレス戦はその試合の一つ。シャドーは中央を極端に固める構造をとっていた。

 仮に六角形の意識は低くとも、外を捨てて内を固めるというコンセプトは比較的一貫。大外はSBに任せてまずは中央を固めることを優先して戦っている印象。唯一、そのイメージとは程遠いチェルシー戦はいわば奇襲のカテコライズだろう。前線3人でフルスロットルでプレスをかけまくり、できるだけ早い時間で先制パンチを入れることが目的になっていた。ソンをわざわざトップに移動させていることからもなるべく高い位置の真ん中で引っ掛けてショートカウンターに繋げたいという意識が垣間見える。

 ということで一応ハイプレスもレパートリーにある。が、正直アーセナル相手に立ち上がりからここまで来るかはわからない。組み合っても敵わないであろうチェルシーに対してだから講じたリスクが大きい短時間集中型のシステムを、今のアーセナルに対してわざわざ焼き直すとは思えない。ダービーという舞台装置を借りてハイプレスに打って出たとしてもソンとケインの場所を入れ替えてまで時間を奪いにくるようには思えない。

 どのようなやり方で来るかは読めない部分もある。個人的には六角形の鳥籠でCHを幽閉するシティ戦やクリスタルパレス戦に近いシステムと予想する。いずれにしてもサイドよりは中央、ある程度高いラインでアーセナルを迎え撃ってくるのではないだろうか。

 攻撃においては昨季と大きく変わっていない。ケインがいれば遅攻が、ソンがいれば速攻が整うというメカニズムはここ数年のトッテナムと同じ。彼らのどちらかがかければトッテナムの攻撃は威力が大きく減退する。

 前線のプレーエリアは攻撃においても比較的幅が狭め。ソンは斜めのランは得意だけど、大外から斜めに入ってくるというよりは、PA内を斜めに走り込むというインサイドでのフリーランが多い。ルーカスやベルフワインなど他のアタッカーも運ぶのはうまかったりするが、大外に張って勝負できるではない。

 大外は攻撃においてもサイドバックのもの。レギロンが上がる時間を稼げて初めて成立するといった風情である。その上、時間を作れるアタッカーはケインと出番が限定的なエンドンベレくらい。多くのアタッカーは時間を使う立場の方が上手い。幅をとる選手が少なく、かつ時間を作れる選手が少ないため、トッテナムの攻撃は縦に早く完結できるカウンターが軸となっており、遅攻では詰まりやすくなっている。

■トーマスを解放せよ

 アーセナルとしては試される一戦になる。ノースロンドンダービーにおける誇りとか名誉をかけるという観点においてももちろんそうだし、中断明けの2連勝が彼らにとってはどういうものなのかが白日の下に晒されるのがこのノースロンドンダービーと言えるだろう。降格圏からは距離があることを示したに過ぎないのか、それとも欧州カップ戦圏内を争えるところまで復調したのか。アーセナルにとってはあらゆる局面でトッテナム相手との力関係が明らかになる序盤戦の真価が問われる一戦となる。

 もっとも試される部分はサイドからの前進だろう。トッテナムはこれまでの傾向から言うと、中央を固め、サイドを薄くするという明確な方向性を打ち出している。

 ということはまずは手厚い中央ではなく、サイドからの前進をやり切る必要がある。内側を固めるシャドーの協力が少なく、SB大外を一手に引き受けている。アーセナルはこのサイドバック周りを集中的につくべきである。

 このサイドへのカバーが際立っているのがホイビュア。チェルシー戦みたいにアンカー起用されると左右差はそこまでないが、それ以前のようにインサイドハーフでの起用が基本線になるのならば、彼がいないサイドから攻める方針の方がいいだろう。今までの傾向から言えば、エメルソンのサイドではなく、レギロンのサイドである。

 孤立無援のサイドがあるならば、そのサイドから攻め落とし切ることがまずはポイント。従って、ここまでの課題となっている同サイドからきっちり前進し切れるかが大事なところ。自分たちが進みたいところから進むのではなく、相手が薄くなっているところから進めるかがポイントになる。

 必要になってくるのが裏を取る動き。トッテナム戦で狙い目になるのはSB-CBの間のスペース。大外を引き受けるSBを低い位置まで誘き寄せ、その裏を使うことができれば、アーセナルはトッテナムのラインを下げることができる。逆サイドのアタッカーは絞りながらPAに入り込み、エリア内でクロスの受け手として待ち構える。

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 バーンリー戦で足りなかった奥行きを使う動きを見せなければ、同サイド攻撃は間違いなく停滞する。いきなり課題克服の一戦となる。ウィンブルドン戦で右サイドから裏抜けを連発し、PK奪取したマルティネッリの動きはまさにこの試合のアーセナルに必要なものである。

 この攻撃が成立し続けると、トッテナムの守備陣は六角形を維持しにくくなり、前線と中盤が狭く守ることが難しくなる。アーセナルとしてはトッテナムの六角形のコンパクトさをまずは破壊し、中央で囚われているトーマスを解放すれば異なるルートが拓ける。

画像7

 左右どちらのサイドでも裏をSB-CBチェーンを壊すことを狙っているので、4-3-3予想にしたが、速攻に強みのあるトッテナムを警戒するならば、4-2-3-1予想もありえるだろう。これだと、中盤がSB-CBのスペースを壊すようなフリーランを恒常的に行うのは難しい。仮にこれができてもエリア内に人数を送ることの難易度は4-3-3よりも高くなる。

 4-2-3-1ならば、トッテナムが幽閉をしなければいけないCHは2人になる。アーセナルはこれを利用し、この六角形の内と外を出入りし、CHのボールの受けどころを工夫し、相手を引き出す。こうしてより直接的に六角形を歪めていく。

画像6

 この歪みが不十分なまま六角形の中に突っ込むとトッテナムの思うツボ。ジャカもトーマスも独力でターンして前を向くのが上手いタイプではない。ここからのショートカウンターはトッテナムの攻撃の最も大きな狙いだろう。アーセナルの保持においてはサイド、もしくは最終ラインで六角形を引き出し、中央の活路を見出す六角形チキンレースになると予想する。

 もう一つの課題はプレッシング。ここまでのアーセナルのプレスを振り返ると前線からプレスにいくものの、人数は相手より1人か2人足りない状況で逆サイドのDFか中盤の選手を捨て、後方での数的優位は確保しておくというものである。以下はチェルシー戦の例。

画像8

 人数的には1人足りないけども、勢いは十分。従って、判断のための時間は奪えているが、判断さえできれば安全圏となっているパスコースに出されてしまう。時間は奪えているが、スペースまでは取り上げられていないのがアーセナルのプレスのここまでの傾向である。

 この部分は昨シーズンからの継続的な課題だし、ここにきての大幅な改善は正直期待しづらい部分でもある。ただ、チェルシーやシティには歯が立たず、ノリッジやバーンリー相手にはそれなりに通用したこのプレスが、欧州カップ戦出場権を狙える立場ではあるが、バックラインのプレス耐性が強みではないトッテナムにどれくらい通用するかがポイントになるだろう。ここで通用しないのならば、仕組みの部分から大幅な見直しが必要になるはずだ。

 プレスで前を向かせず、ずっと俺のターンが最強なのはいうまでもなし。だが、それが難しい時間はバイタルと中央を固めてターンが来るのを待つしかない。ハイプレスが続くかはガブリエウ、ホワイト、冨安がどれだけ高い位置でのデュエルを制することができるかにかかっている。

 まとめるとプレスの耐久時間をなるべく伸ばすこと、そしてトッテナムの非保持におけるサイド捨てを修正させることが勝利に近づくポイントになるだろう。そのためには、バーンリー戦で見せることができなかったサイドを縦に貫く奥行きを見せることが必須になる。

 名誉、誇り、そして自分たちの立ち位置の証明をかけた戦いになる。久しぶりの大観衆に包まれるエミレーツでのダービーは今季の序盤戦のアーセナルを占う大一番になりそうだ。

【参考】
https://www.bbc.com/sport/football/premier-league

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