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「コパアメリカ2021 チーム別まとめ」~チリ代表編~

目次

チーム情報

監督:マルティン・ラサルテ
FIFAランキング:19位
W杯2018⇒予選敗退
コパアメリカ2019⇒ベスト4

招集メンバー

GK
12 Gabriel Arias
1 Claudio Bravo
23 Gabriel Castellón

DF
3 Guillermo Maripán
18 Sebastián Vegas
5 Enzo Roco
6 Francisco Sierralta
15 Daniel González
2 Eugenio Mena
4 Mauricio Isla

MF
13 Erick Pulgar
28 Claudio Baeza
14 Pablo Galdames
19 Tomás Alarcón
17 Gary Medel
20 Charles Aránguiz
8 Arturo Vidal
25 Marcelino Núñez
7 César Pinares
27 Pablo Aránguiz

FW
9 Jean Meneses
26 Clemente Montes
21 Carlos Palacios
11 Eduardo Vargas
7 Alexis Sánchez
22 Ben Brereton
16 Felipe Mora
3 Diego Valencia
24 Luciano Arriagada

各試合振り返り

GS第1節 アルゼンチン戦

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■メッシも周りも悪くはなかったが…

 2日目で登場となったのはアルゼンチン。対するは国際大会での存在感の高さが印象的なチリである。立ち上がりにボールを支配したのはチリ。GK、CB2人、アンカーのプルガルの4人でひし形を形成し、ショートパスを主体にボールを組み立てる。

 しかしながらチリは前進に苦労していた。困った時はIHが降りる仕組みになっているのだが、ここの裁量の部分がどうだったか。どちらかというと、中盤が降りてきすぎてしまい後ろ重心になってしまうことで、前に人が欠けられない問題が発生していたように思う。

 それに比べるとアルゼンチンは前進の確固たる形はなかった。だが、前半から決定機をより得ていたのはアルゼンチンの方。チリに足りなかった馬力のあるドリブルを時折織り交ぜることによって、チリの中盤を1枚剥がして敵陣に乗り込むことが出来ていた。

 加えて良かったのが前線のオフザボールの質。ラウタロ・マルティネスやゴンザレスのように、味方のために汗をかける存在がいるのが大きい。17分のシーンは秀逸でゴンサレスのボールの引き出し方の質の高さを味わうことが出来る場面である。大きい展開を使うのがうまく、動きが少し重いチリのバックスに対して、アルゼンチンは最終ラインを一気に攻略するような動きを狙うことが多かった。

 もちろん、メッシに引き寄せられるようにパスをする場面も見られはするが、メッシを経由しないと何もできない集団ではないかも?と感じさせるアルゼンチン。それでも結果を出すのがメッシなのだけど。FKで先制点をもたらしたこの日は絶好調。後半はさらに組織の中でも輝くようになっていた。個人的には今まで見た代表のメッシの中ではだいぶやりやすそうだったと思う。

 ただし、後半はチリも復調。前線のオフザボールの動きや大きい展開を織り交ぜることによって、前半にはあまり見られなかったアルゼンチンゴールに迫る場面が見られるように。PKを奪取したシーンにおいても、前半にはなかった大きくて速い展開が活きた。前半から主審にフラストレーションを溜めていた様子のチリだったが、この場面ではOFRからの判定修正でPKを得ることが出来た。それ以降も割とビダルを中心に文句は絶えなかったけど。

 同点にされたアルゼンチンは猛攻を見せる。メッシが次々にチャンスメイクをかましていくのに加えて、ディ・マリアの投入でボール運びやエリアへの侵入の部分も強化。終盤にゴールに向かう回数はアルゼンチンの方が多かった。しかし、ゴールが枠を捉えない。

 結果としては不満だろうが、内容としては個人的には悪くなさを感じたアルゼンチン。チリはなんとか勝ち点1を持ち帰った格好だ。

試合結果
アルゼンチン 1-1 チリ
エスタディオ・ニウトン・サントス
【得点者】
ARG:33′ メッシ
CHI:57′(PK) バルガス
主審:ウィルマー・ロルダン

GS第2節 ボリビア戦

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■原則を破った先制点で逃げ切り

 立ち上がりから攻めていたのはチリ。攻めるときの人数調整は中央でアンカーが降りてくる形である。最近はSBをCB化するか、もしくはWG化するかで人数調整をするチームが多い気がする。だが、チリは中央で人数を増やし、サイドを押し上げるやり方。というか中央での調整するからこそのアンカー採用なんだろうなとも思う。

 したがって、大外は両サイドともSBが担当することが多かったチリ。逆に両WGは内に絞ることがタスクを担っていた。右はCFのバルガスとWGのメネセスがレーンを入れ替えることもしばしば。左のWGのブレアトンは独力でも重戦車的な突撃してくる感じである。

 これに対してボリビアは守備の人数対応に追われることに。バルガスをCB2人で挟み、そのほかの場所はマンツー。WGをSBで監視する。チリのSBが上がってきたら、ボリビアはSHを下げて対応。相手のトップの人数によって4-6人で人数を調整していくイメージである。

 この原則が破られてしまったのが10分のチリのカウンター。帰陣が遅れたボリビアの守備陣に対して、カウンターで襲い掛かったチリ。最後はブレアトンが決めて先制に成功する。

 ビハインドに陥ったボリビア。保持においては結構時間をかけるタイプ。内側に絞るアルセを軸に内側に入れるパターンと、裏を狙うパターンの両にらみでチリのブロック攻略を狙う。チリはこれに対して内を閉じたポジショニングで迎え撃つ。無理にプレスに行かずに、網を張って迎え撃つスタイルである。ひっかけてからのカウンターを視野にボリビアの保持に反撃する。

 特に後半はライン間をコンパクトにしたチリ。ボリビアは徐々にライン間で捕まってカウンターを食らうきっかけとなるボールロストが増えてきた。かといって外にボールを回すと、チリは今度は同サイドに圧縮するように内を切る。こうなるとボリビアは素早いサイドチェンジが出来ない。

 両チームともラインの表でも裏でも駆け引きはできるチームである。ライン間にボールを入れたり、後ろ向きに相手を背走させたりなど、DFラインを動かせるアプローチまではできていた。しかしながら、そこからシュートの状況を作る部分の丁寧さには欠けていたように思う。特にビハインドのボリビアにとってなかなか追いつくきっかけがつかめずに苦しい状況になった。

 最終的には6バックまでの変形も視野に入れつつ逃げ切ったチリ。ボリビアは序盤の失点が大きく響く結果となってしまった。

試合結果
チリ 1-0 ボリビア
パンタナル・アリーナ
【得点者】
CHI:9′ ブレアトン
主審:ヘスス・ヒル・マンサーノ

GS第3節 ウルグアイ戦

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■前半は表裏の使い方の設計の差

 共にワールドカップ常連国である両チームの好カード。ウルグアイは4-4-2、チリはスリーセンターのイメージが個人的には強いのだが、それをやや外すようなフォーメーションで試合に臨む。

 ウルグアイのスタメンは5-2-3という形だろうか。3バックで臨んだチリのWBをひとまず嚙合わせる形。中央でのサイドチェンジを制限し、同サイドに圧縮する。ウルグアイはCHを同サイドに押し寄せて同サイド攻略に挑む。だが、なかなか決め手となる一崩しが刺さらず苦戦する。

 一方のチリもサイド攻略狙い。ターゲットとしたのはウルグアイの左サイド。先ほど、ウルグアイはチリのWBとかみ合わせるように布陣を組んだといったが、チリは3-4-1-2のような形で中央は2トップ。しかも、2トップは横移動が多いということでウルグアイは特定のマークマンをつけにくかった。人は余っているが、その分受け渡しの責任感も薄まったウルグアイ。それを利用したチリはバルガスとブレアトンの2トップで最終ラインを引き出す動きを見せる。

 チリで特に効いていたのがバルガス。彼が引いて受けることがビニャが空けた最終ラインの穴をフリーランで走りこむという動きを誘発。チリはこのサイドから押し下げる。得点シーンではブレアトンの受けに合わせてバルガスが抜ける形。バルガスにとっては2トップの相棒がパスの出し手ということでやり切る!という心持ちになったのがよかったかもしれない。角度のないところからシュートを突き刺し、先制弾を奪う。

 共にサイド攻撃を志したが、裏を使うことを前提に設計されている分、チリの方がウルグアイよりも精度が高かったように見える。後半のウルグアイはその精度の差を割り切ったように見えた。表のスペースからアーリー気味にクロスを上げることによって、高さのないチリの最終ラインに苦しい対応を迫り続ける。

 前半は根性でなんとかしていたチリの中盤より前の選手も徐々にサイドまで出ていけなくなるように。豊富な運動量が目立っていたビダルとバルガスの2人が負傷交代したのは偶然ではないかもしれない。チリは5-3-2に変更し、中盤がサイドに出ていきやすいように手当したものの、押し込まれる展開はなかなか覆らない。両者の負傷交代と話は前後するが、押し込まれた状況からCKでウルグアイに同点ゴールを決められる。

 ただ、ウルグアイも最後のところの精度が十分ではなかった上、プレス時に前に出ていくことでショートパスでのつなぎが上手いチリの前進を手助けしたように思う。終盤は共に攻めの機会はあったものの、こじ開けることはできず。試合は1-1の痛み分けで終わった。

試合結果
ウルグアイ 1-1 チリ
パンタナル・アリーナ
【得点者】
URU:66′ ビダル(OG)
CHI:26′ バルガス
主審:ラファエル・クラウス

GS第4節 パラグアイ

画像4

■競った展開を変えたのはセットプレー

 立ち上がりからなかなか展開が安定しない時間が続いた試合だった。ボールがピッチを縦方向に行ったり来たり、どちらのチームが主導権を握った展開といえない状況で試合は進む。

 その状況を誘発したのは互いのDFラインの選手たちの積極的な前に出ての守備である。前から出ていって、縦の楔を潰し続ける積極的な守備に攻め手が苦しむという構図であった。

 どちらかと言えば保持が安定していたのはチリの方だろう。パラグアイの4-4-2のセットに対して、チリの4-3-3の並びはアンカーがあまりやすい。プレス隊が2枚のパラグアイに対して、3枚で後ろを組むチリは安全地帯を作りながらのビルドアップが可能な状態に。

 ただ、チリはもう一歩奥に進むことができない。どうしてもやり直しに逃げてしまいがちなポゼッションで、裏を取れたとしても全体の重心を上げられずに厚みをもたらすことができる攻撃にはならず。パラグアイの後方の選手に捕まっている状況からなかなか逃れられない。

 一方のパラグアイは2-2型のボックスビルドアップ。結構、最近は見ない形のような気もする。斜めの形を作るのが難しく、ショートパスでのビルドアップはチリに比べると控えめ。それよりはダイレクトな展開で右の大外から押し下げる形を狙うことが多かった。それでも相手を振り切れずに好機には至らない。

 展開自体が傾かない膠着した試合を動かすのはセットプレーと相場が決まっている。先制したのはパラグアイ。CKからファーサイドにズドンで先制に成功。そのあとのCKでも同様にファーサイドにズドンをパラグアイは狙っていたので、チリのセットプレーの狙い目としていたかもしれない。チリ、最終ラインに高さはないからね。

 後半のチリは5-2-3気味に布陣変更。最終ラインから中盤までアランギスの行動範囲を広げながら、ポゼッションに変化をもたらせようとする。しかし、どちらかと言えばボールを渡して、カウンターで主導権を握ったのはパラグアイ。スピード勝負ができるだけでなく、ポストで前線の起点ともなったアルミロンは幅広い活躍。追加点のPKも沈めてみせた。

 競った展開をセットプレーで制し、主導権を握ったパラグアイ。ハードな展開から主導権を完全に引き寄せ、決勝トーナメント進出を決める勝利を飾った。

試合結果
チリ 0-2 パラグアイ
マネガリンチャ・スタジアム
【得点者】
PAR:33′ サムディオ, 58′ アルミロン(PK)
主審:ウィルマー・ロルダン

Quarter-final ブラジル戦

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■10人でなお高い壁

 絶対王者ブラジルに挑戦するのはA組4位のチリ。グループステージではそこまで仕上がってる感じではなかったが、ノックアウトラウンドではさすがに上積みがあったように思えた。5-3-2のコンパクトなブロックを敷くことでブラジルを迎え撃つチリ。ローラインで待ち受けることでブラジルを跳ね返す場面もあれば、高い位置からプレスに出ていくことも。どちらにしても陣形の間延びは防がれており、コンパクトな状況でブラジルのポゼッションを苦しめていた。

 ブラジルはネイマールがラインを落ちながら運ぶことで攻撃を前に進めてチャンスメイクをここまでしてきた。しかしながらこの試合ではチリのコンパクトな守備に対して、ネイマールが降りて受けるスペースがない。したがって、ブラジルの前進は超絶スーパーなつなぎが通らないと難しかった。例えばゲームメイカー型FWのフィルミーノの縦パスとか、サイドでの崩しとか。いずれもハードなパスを通すことでチリのプレスのつなぎ目を何とか破っていった形でゴールに迫るのである。

 チリの攻撃は速攻では2トップが主体。ライン間で前を向くサンチェスからラインの後ろ側を取るラストパスが出てくるか、より体を張ることができるバルガスが入れ替わるようにして裏を狙うかである。

 ゆっくりと迫る場合はWBを使ったサイドチェンジが主体。特に狙っていたのは相手のSBが裏を開けて飛び出してくること。特にブラジルの左のSBであるロディのところを狙い撃ち。食いつかせて裏を取ることで前進はできていた。だが、決定機にかけるブラジル。最後の防波堤である強力なCBコンビを越える術がない。

 ジリジリした展開を解決して見せたのは後半早々の出来事。交代選手の貢献により均衡が破れた。勝利の立役者はルーカス・パケタ。チリのDFにヒビを入れることはできていた前半だったが、後半はパケタとネイマールのコンビでチリを中央からこじ開ける。

 後半早々に得点をえたブラジルに予期しないトラブルがあったのはこの直後。ジェズスの一発退場で10人に。チリに押し込まれる展開になりながら、何とかしのぎ切る。チリは高さのあるプレアトンを入れたことで多少引いているブラジルを脅かすことはできてはいたが、好機は数えるほどだった。より目立ったのはブラジルの堅牢さ。そして数的不利な状況によるネイマールのボールをキープする力である。多分、チリからしたらめっちゃめんどくさいだろう。キープからのファウルを量産し、チリが一方的に攻撃する状況を作らせない。

 4-4ブロックの堅さとネイマールが作り出した時間のおかげで10人のまま逃げ切ったブラジル。チリはグループステージとか異なる完成度まで仕上げてきたように思えたが、相手の壁は高かった。

試合結果
ブラジル 1-0 チリ
エスタディオ・ニウトン・サントス
【得点者】
BRA:46′ パケタ
主審:パトリシオ・ロースタウ

大会総括

画像6

■小気味いいパスワークは徐々に見せたが

 3センターを採用する4バックが基本というチームということで、中央でアンカーが降りて、両サイドを押し上げるという若干今のトレンドとは異なる形でビルドアップをするチーム。といってもチリはこういうやり方をしているイメージはもともと強いのだけど。というわけでアンカーに入るプルガルがビルドアップの際に人数調整の役割に入ることが多かった。

 基本的には尻上がりのチームだったと思う。初戦のアルゼンチンは中盤にビルドアップのために降りる動きを許容しすぎたせいで、後ろに重たくなってしまった。その上、アルゼンチンと異なりドリブルで運べるわけでもないので、各駅停車の渋滞が後方で発生してしまった印象だ。

 しかし、徐々に時間が経つとともにこれは修正。大きな展開を織り交ぜることに寄って、前進のリズムをつかんでいく。相手によってはWBが存在する5バックを活用し、保持で幅を使う意識も強まってくる。こうなると保持で徐々にチリらしさという部分が垣間見えてくる。

 中盤はビダルを筆頭にダイナミズムがあり、サボる選手が少ないのが特徴。前線も体を張ることができるバルガスを軸に機動力を武器としてスピーディーな攻撃で相手を苦しめた。それでも勝ち切れない試合が多かったのは、高さ攻めで押しつぶされることもしばしばあるため。空中戦の耐性はあまり高くなく、パラグアイにはセットプレーで完全に押し切られてしまった。

 決勝トーナメントでは4位通過のバツとして初戦からブラジルというラスボスと対戦。5-3-2で中央を閉じるコンパクトな陣形で相手を苦しめたが、パケタとネイマールのコンビにかち割られてしまった。ブラジルに退場者が出たことで押し込む機会を得ることができたものの、ブロックを敷くブラジルを崩す武器はなし。10人のブラジルを崩せずに終戦してしまった。

 それでも代表チームにおいては練度の高いプレスでブラジルを苦しめることはできたし、徐々にコンディションを上げていくスタイルもどちらかと言えばトーナメント向きだろう。スペシャルなタレントであるアレクシス・サンチェスが残り1年でどこまでフォームを上げられればプラスアルファをもたらすことができるようになるのだが。

頑張った選手⇒ベン・ブレアトン
 チリに似つかわしくない重戦車系の選手でいいアクセントになっていた。所属を調べてみたらブラックバーンでなんか納得した。

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