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「EURO 2020 チーム別まとめ」~ポルトガル代表編~

目次

チーム情報

監督:フェルナンド・サントス
FIFAランキング:5位
EURO2016⇒優勝
W杯2018⇒ベスト16

招集メンバー

GK
12 アントニー・ロペス(リヨン)
1 ルイ・パトリシオ(ウォルヴァーハンプトン)
22 ルイ・シルヴァ(グラナダ)

DF
2 ネルソン・セメド(ウォルヴァーハンプトン)
6 ジョゼ・フォンテ(リール)
20 ジョアン・カンセロ(マンチェスター・シティ)
3 ペペ(ポルト)
4 ルベン・ディアス(マンチェスター・シティ)
25 ヌーノ・メンデス(スポルティング)
5 ラファエル・ゲレイロ(ドルトムント)

MF
13 ダニーロ・ペレイラ(パリ・サンジェルマン)
26 ジョアン・パリーニャ(スポルティング)
18 ルベン・ネヴェス(ウォルヴァーハンプトン)
11 ブルーノ・フェルナンデス(マンチェスター・ユナイテッド)
8 ジョアン・モウティーニョ(ウォルヴァーハンプトン)
16 レナト・サンチェス(リール)
14 ウィリアム・カルヴァーリョ(レアル・ベティス)
24 セルジオ・オリヴェイラ(ポルト)

FW
19 ペドロ・ゴンサウヴェス(スポルティング)
9 アンドレ・シウバ(フランクフルト)
10 ベルナルド・シウバ(マンチェスター・シティ)
7 クリスティアーノ・ロナウド(ユヴェントス)
21 ディオゴ・ジョタ(リヴァプール)
17 ゴンサロ・ゲデス(バレンシア)
23 ジョアン・フェリックス(アトレティコ・マドリー)
15 ラファ・シウヴァ(ベンフィカ)

各試合振り返り

GS第1節 ハンガリー戦

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■幸運なゴールで均衡が一変

 コロナ禍に世界が襲われてからおよそ1年3か月。我々は満員のスタジアムを見なくなってからことに1年以上の月日が経った。だがこの日、本拠地のプスカシュ・アレナにはハンガリーを応援する観客がスタジアムを埋め尽くすことになる。文字通り圧巻の光景だ。

 そんな観客の声援を後押しとするかのように、ハンガリーは積極的なスタンスでポルトガルと対峙する。ハンガリーの5-3-2はWBの手前をどう閉じるかが構造的な問題となる。ここまでのいくつかのチームがそうしてきたように、大外を捨ててエリアに引きこもる選択もあり得たはず。だが、ハンガリーはIHが高い位置までチェックに出ていくことにより、ポルトガルの前進を寸断。中央をケアしつつサイドでボールを食い止めるやり方でミドルゾーンで踏ん張る。

 ポルトガルはこれにだいぶ手を焼いた。ボールこそ問題なく握れるものの、ビルドアップはU字型になってしまい、なかなか前進できない。個人個人のオフザボールの質は十分なのだが、どうも組み合わさらない。ベルナルドの縦横無尽の動きもラファエル・ゲレーロの斜めのランも他の選手とつながらない。

 裏抜け頼みの単調な攻撃に終始するポルトガル。もう1つ可能性を感じたのは左右のクロス。特にCHの片方(ダニーロはそういえばRSBもできるよね)がサポートに出張する右サイドからのクロスはチャンスがあった。エリア内のジョッタとロナウドのコンビはクロスに合わせる能力が抜群。ジョッタはやや硬さが目立つ初戦だったが、入り込むところまでできていた。したがって、クロスまで行ければポルトガルにチャンスができる形にはなった。決まらなかったけど。

 ハンガリーの攻撃はポストが主体。特に9番のアダム・サライにボールを集める。カウンターの際に多少遠回りになってもまず彼を探す場面が目立っていたので、恐らく相当頼られているのではないかなと思う。確かにフィジカルは強靭だった。

 後半はディアスやセメドが前半以上に前がかりになるポルトガルの裏を取り、ハンガリーがカウンターから主導権を握る場面すらあったほど。対人守備で強みのあるポルトガルをファウルせざる形に追い込んだり、オフサイドとはいえ途中交代のシェーンがネットを揺らし、あわやという場面を作っていた。

 だが、勝利の女神がこの日微笑んだのはポルトガル。クロスもシュートも相手に当たって方向が変わるという非常にラッキー要素が強い得点で均衡を破る。そうなるとここからはロナウド劇場。隙ができてきたハンガリーの守備陣に途中交代のサンチェス⇒アンドレ・シウバのラインでPKを奪取。これをロナウドが決めると、後半追加タイムにはおかわり。

 80分までの均衡に似つかわしくない3点差という結果で決着。ハンガリーのサポーターたちは悔しさを噛み締めつつ、善戦した代表選手たちをバイキングクラップでたたえていた。

試合結果
ハンガリー 0-3 ポルトガル
プスカシュ・アレナ
【得点者】
POR:84′ ゲレーロ, 87′(PK) 90+2′ ロナウド
主審:ジュネイト・チャキル

GS第2節 ドイツ戦

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■再現性+5レーンで柔軟性に欠けるポルトガルを大破

 フランスに敗れてしまい立場が危険になってしまったドイツ。あとがないこともあり、立ち上がりからドイツは圧倒的に攻め込んでいた。狙い目にしていたのは右サイド。序盤からドイツはぐいぐい。右サイドからひたすらGKとDFラインの裏にクロスを入れ込み続けていた。前線の選手はほぼほぼ割り切っていた。ライン間に入り込むよりも、ラインに張る選手が多く飛び出しに的を絞っていた感がある。

 ポルトガルはビルドアップにおいてもドイツのマンマーク気味のプレスを脱出することができず。反撃の機会すら得ることができなかった。それだけにドイツのCKの守備の隙をついた先制点はお見事。後ろにほぼ人を残さなかったドイツに対してポルトガルはカウンターで数的優位に。ベルナルドからジョタにパスを通した時点で決着。お手本のようなカウンターだった。

 ポルトガルは先制以降、トップ下のブルーノ・フェルナンデスをIHにおいて中盤を5枚にシフト。ドイツが立ち上がりから起点にしていたハーフスペースを閉じにかかる。しかしながら、このIHの守備の強度がポルトガルのアキレス腱に。同サイドで埋める程度はできるのだけど、ラインを上下動させられた際の動き直しや逆サイドに展開された時のスライドで脆さが出てしまう。

 右サイドのハーフスペースと大外の関係でフリーを作り、ライナー性のクロスを逆サイドに届けるというドイツの攻撃は再現性抜群。特に左サイドを駆けあがるゴセンスを監視する選手がいなかった。

5レーン志向+再現性の観点で言えば最強なドイツに対して、これだけハーフスペースと大外のケアができなければ前半のうちに逆転されるのは当然な気がする。3失点目、SHに起用されたレナト・サンチェスが大外を埋めに戻らなかったには驚いた。監督が指示しなかったのか、選手が無視したのかはわからないけども。

 今大会は3-2-5隆盛なのでポルトガルがこの試合で見せた弱点は万人に展開できそう。ポルトガルの場合はサイドに人数調整が上手い選手がいないのがしんどい。この試合で言えばギンターとかアスピリクエタとかリュカとかSBもCBもできますよ!みたいな選手がいない。最後はセメドが3バックの右やっていたのはその証左。かといって6バックまで頑張れるほどSHのタレントに汗をかかせるわけにもいないのがジレンマである。

 強みが全開に出たドイツだったが、フンメルスの交代以降はやや危うさもあり。フンメルス不在の最終ラインの連携とネガトラの脆弱性はこの試合でもはっきり見えた。4得点も2失点もレーブ・ドイツの強さと弱さが詰まっている総集編のような試合だった。

試合結果
ポルトガル 2-4 ドイツ
フースバル・アレナ・ミュンヘン
【得点者】
POR:15‘ ロナウド, 57’ ジョタ
GEN:35‘ ディアス(OG), 39’ ゲレーロ(OG), 60’ ゴセンス
主審:アンソニー・テイラー

GS第3節 フランス戦

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■やりたい放題の両軍エース

 グループBの結果を受けてまずはフランスがグループ突破を一足先に確定。ポルトガルもドイツがしっかり勝てばほぼほぼ問題なしという状況。結局ドイツがふらふらしたせいで危なかったけどね。

 看板だけ見ればビックなカードだけど、両チームとも手堅く実を取りに言った試合だと思う。ポルトガルの目下の課題はドイツにぺしゃんこにされた5レーンをどう封鎖するか。その答えは片方のWGを早い段階でDFラインに下げることであった。特に献身的なプレスバックを見せたのは右のベルナルド・シウバ。この役割が彼でいいのかというのは言いっこなしでお願いしたい。

 したがって撤退型の5-4-1をメインに据えたこの試合のポルトガル。撤退し、自陣のスペースを埋めることを優先をした。前進の手段はお馴染みのロングカウンター。一辺倒だとあまりに単調なのだけど、うまくそれを解消していたのがレナト・サンチェス。球持ちがよく、フランスの中盤に当たり負けがしない中盤は前進の推進力をもたらすことができる。

 フランスは左はIHのカンテ、右はWGのグリーズマンが高い位置までプレスをかけにいく。パリでもそうなんだけど、こういう時に意外と前線に残されずにしっかりSHの位置まで下がることが多いムバッペ。前残りさせた方がいいんじゃないかというのは素人考えなのだろうか。攻撃の部分を見るとムバッペの左からの裏抜けに比重を置いていた。単純だけど効く。面白くないけど効く。シンプルに点が取れる形ほど正義である。

 狙い目はハッキリ、だが工夫は多くなく、ジリっとした展開になったこの試合。試合を左右したのは要所に現れたPK。まずはロリスが偶発的とはいえ相手選手をガッツリパンチ。先制点を許す。

 ビハインドのフランスはポルトガルの5バックを縦に割るイメージで。前半のPK奪取のシーンや、後半の逆転ゴールはポルトガルのバックスが整う前にベンゼマで攻略しきってしまうというフランスのやり方が実ったシーンだ。

 しかし、フランスがベンゼマならポルトガルにはロナウドがいる。後半、左サイドからカットインのチャンスを得ると、クンデがハンド。これはなんかもうどう見てもハンド!これで得点をまた伸ばしたロナウド。PKを決めるなんて当たり前と思うかもしれないが、直前にスペインの試合を見ている自分には口が裂けても『PKは簡単』となどと易々といえることはない。

 この同点ゴールで火が付いたフランス。失点に絡んだクンデは高い位置まで出ていってビルドアップの列越えを手助け。CBでも割と行動範囲は広いイメージだけど、SBだと輪をかけて動き回っていた。攻撃面では頼りになることは間違いない。

 しかし、ポグバのミドルをパトリシオに防がれるなどフランスは失点直後は反撃に出た。しかし、70分過ぎると両チームともにトーンダウン。他会場の経過を把握したのかわからないが試合のテンションがグッと下がった。

 試合を引き分けに終わらせることが大方合意した両チーム。ロナウドとベンゼマが音頭を取って前にボールを進めないという協定を無言で結ぶ。1人で急に相手をぶち抜いたコマン以外は言うことを聞いていた。多分コマンはあとで2人にボコボコにされたと思う。色んな意味でまさに最初から最後までロナウドとベンゼマ祭りだった。

 何はともあれ、何とかGS突破を決めたフランスとポルトガル。だが、ノックアウトラウンドは初戦からイングランド、ベルギーというハードな組み合わせ。負荷の高いグループステージを過ごしてきた両チームはいきなりぶつかる強豪相手にどのようなパフォーマンスで臨むのだろうか。

試合結果
ポルトガル 2-2 フランス
プスカシュ・アレナ
【得点者】
POR:31′(PK) 60′(PK) ロナウド
FRA:45+2′(PK) 47′ ベンゼマ
主審:アントニオ・マテウ・ラオス

Round 16 ベルギー戦

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■展開にマッチする先制点

 立ち上がりにボールを保持したのはポルトガル。ショートパスを軸にボールを動かす。ベルギーは並び的には3-4-3気味なのだが、トップに入ったデ・ブライネはアンカーのパリーニャを監視する役割。攻撃においても中盤でボールを引き出しながらビルドアップに参加するので、実質的な役割は中盤だろう。中盤の枚数が合わせるマンマーク気味の対応である。

 ポルトガルの保持に対してベルギーは同サイドに圧縮気味に対応する。特にエデン・アザールがいる左サイドにおいては、DFラインのスライドも大きめ。ただし、ポルトガルのボールホルダーに対してチェックが甘くなることがあり、逆サイドへの展開をすることで大きく脱出することができている。担い手となっているのはレナト・サンチェス。ボールを引き出し、強いフィジカルでベルギーの中盤に体をぶち当てながら逆サイドにボールを流す。大会中に上り詰めた中盤の核は、この日も好調だった。

 ただ、彼以外のポルトガルの選手はそこまで横への展開が得意ではない様子。強引に縦につける場面も散見され、左に流した方がいいタイミングでも急ぐ時もあった。この辺りの展開の折り合いは割と個人によってばらけていた印象である。

 一方のベルギーにはデ・ブライネが縦横無尽に動くことで、中盤のマークを引きはがし、フリーになり局面を一気に進めるパスがある。デ・ブライネは相変わらずの射程距離の長さ。縦方向の精度は抜群で、ルカクを軸にポルトガルのDF陣と直接対決する状況を作り出せていた。

 均衡した展開の中で、1つスイッチが入ると『待ってました!!』といわんばかりにカウンター合戦が発動するのが面白い。ベルギーが縦に急げばロナウドを前に残すポルトガルがそこを狙って反撃など、少しのきっかけでダイナミックな展開のスイッチが入るのはなかなかである。先制点となったトルガン・アザールの豪快なミドルシュートはまさしくこの試合のオープニングゴールとしてふさわしいものだった。

 前半終了間際にリードしたベルギーだが、悲劇が起きたのはその直後。おそらく足首周辺を負傷してしまったデ・ブライネが途中交代をしてしまう。後半も一度は出場してみたものの、すぐにプレーを中断。この後のトーナメントやプレミアリーグ開幕に危ぶまれるところである。

 縦に相手を揺さぶれるデ・ブライネの不在と先制点を得たことで後半のベルギーはロングカウンターに専念する。デ・ブライネ不在のチームをアザールが牽引。全盛期のようなスピード豊かな突破こそ鳴りを潜めたものの、ボールを落ち着かせてファウルを得て進撃を食い止める一連はさすが。Jリーグファンに向けていえば川崎の家長のような働きであった。

そんなベルギーを見て、ポルトガルは勝負の交代に出る。ジョアン・フェリックスとブルーノ・フェルナンデスの2人を一気に投入し、攻撃への圧力を一気に高める。

 ポルトガルはエリア内での放り込みか、大外へのロングボールでサイドからラインを下げた状態でのエリア内での折り返しが攻撃の主なパターン。ラファエル・ゲレーロがポストを叩くなど、惜しい場面もなくもなかった。だが、ポルトガルは最後までゴールを割れず。フェリックスもブルーノ・フェルナンデスも決定的な働きができなかった。

 人員もフォーメーションも変化をつけながら死の組を突破したポルトガルだったがここでストップ。前回王者はベスト16で大会を去ることとなった。

試合結果
ベルギー 1-0 ポルトガル
エスタディオ・ラ・カルトゥーハ
【得点者】
BEL:42′ T・アザール
主審:フェリックス・ブリヒ

大会総括

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■改善を浸透させる遊びがなかった

 死の組爆死三銃士の一角。大舞台であればあるほど輝く大スターであるC・ロナウドにベルナルド・シウバやブルーノ・フェルナンデス、ジョタなどプレミアメガクラブで存在感を出すタレントが加わったことで優勝候補の呼び声が大会前にはちらほら。ちなみに竹内さんの優勝予想はポルトガルでした。

 初戦のハンガリー戦は3-0と快勝はしたものの、80分過ぎまではスコアレスで進むなどスコアとは裏腹に快勝というわけにはいかなかった。2戦目のドイツ戦では5レーンを守り切れないことを早々に見抜かれた。ゴセンスに散々同じ形でチャンスメイクを許すなどマウントからタコ殴りされたような4失点を喫する。かなりダメージの大きい敗戦だったが、最終節のフランス戦という名のロナウド・ベンゼマ大同窓会で友好的な引き分けを演出し、何とかノックアウトラウンド進出を決めた。

 こう書くとどうしようもないチームみたいに見えてしまうのだが、チームとしての見どころは個人的にはあった方のチームだと思う。なぜなら反省はちゃんと生かすタイプのチームだから。保持でも存在感を出せず、非保持ではスペースを埋めることが出来ないウィリアム・カルバーリョとダニーロのコンビをドイツ戦であきらめる決断はチームをいい循環に乗せたと思う。

 代わりに登用したレナト・サンチェスとジョアン・モウチーニョは保持の局面でアクセントになる。特にミスターEUROみたいなキャラになってきたサンチェスは持ち上がりの部分で躍動。保持の局面ではそれまでさっぱりだったポルトガルが息を吹き返した。それにともなったシステム変更でブルーノ・フェルナンデスをベンチに座らせたりなど、痛みのある判断をしたのも好感が持てる。

 大外⇒大外アタックで困らされたドイツ戦の教訓はSHに根性で自陣に戻ってスペースを埋めてもらうことで改善。ベルナルド・シウバとジョタの過負荷になれているプレミアのアタッカー陣にこの役割を託した。自陣深くからのカウンターの精度も高く、限られたチャンスで得点を生み出せるチームというのもトーナメント向きといえるだろう。ちなみに、このチームでカンセロをどう使う気だったのかが永遠の謎になってしまったのが自分は悲しい。

 ただ、いかんせんくじ運が悪すぎる。死の組での3戦を勝ち抜いた後にベルギーというのはさすがにチームを再構築する中では遊びがなさすぎる。しかも、勝ってもイタリアとかもうどうしようもない。そうなると、大会前の完成度の話が問題になる。大会中にチームを仕上げられなかった日程面での不運と、大会までにチームが仕上がらなかった部分のクロスオーバーがポルトガル敗退の要因といえるだろう。

頑張った選手⇒ペペ
 何歳になってもいい意味でも悪い意味でもペペはペペ。どのリーグに所属が変わっても国際大会で見るたびに普通に高いクオリティを見せているのは素直にすごい。

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