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「手段は問わない」~2021.5.30 J1 第17節 川崎フロンターレ×鹿島アントラーズ BBC風オカルトプレビュー

目次

Fixture

明治安田生命 J1リーグ 第17節
2021.5.29
川崎フロンターレ(1位/15勝4分0敗/勝ち点49/得点47 失点14)
×
鹿島アントラーズ(6位/8勝3分5敗/勝ち点27/得点27 失点18)
@等々力陸上競技場

戦績

直近の対戦成績

図1

 直近5年間で川崎が8勝、鹿島が3勝、引き分けが6つ。

川崎ホームでの試合

図2

 直近10試合で川崎が5勝、鹿島が3勝、引き分けが2つ。

Head-to-head

<Head-to-head>
・川崎は公式戦の鹿島戦は8戦無敗(W5,D3)
・リーグ戦においては鹿島は5年間川崎に勝てていない(D4,L6)
・片方のチームが首位で迎えた当該カードは首位のチームが直近8試合勝てていない(D4,L4)。
・2008年以降の等々力でのリーグ戦はいずれのチームも必ず得点を挙げている。

 多くの川崎のタイトル獲得に立ちはだかってきた強大な敵である鹿島。天皇杯やルヴァンカップなどのノックアウトラウンドにおいては川崎ファンにとっては見たくもない相手だろう。しかし、リーグ戦において近年の力関係はむしろ逆で、厄介なタイミングで鹿島の前に川崎があらわれて屈するというパターンが多い。直近10試合のリーグ戦で鹿島は勝ちなし。鹿島の方にもボチボチ苦手意識が出てきてもおかしくはない。

 気になるのは首位で迎えたチームは必ずこのカードでつまずくというデータ。絶好調だった昨年の川崎ですら、カシマスタジアムで勝利を挙げることが出来ず、このジンクスの強力さを感じる部分である。データを見ても、今のスタイルを見ても互いに得意な展開であろう撃ち合いが見られることは必至。川崎は首位のジンクスを打ち破り、走り続けることが出来るだろうか。

スカッド情報

【川崎フロンターレ】

・大島僚太は長期離脱中。
・山村和也は練習に合流済み。

【鹿島アントラーズ】

・和泉竜司は右大腿二頭筋腱損傷で離脱中。
・染野唯月は負傷で離脱中。
・エヴェラウドは第10節以降、出場がない。

予想スタメン

画像3

Match facts

【川崎フロンターレ】


<川崎のMatch facts>
・負けなければJ1開幕20戦無敗の新記録。
・今季3回の引き分けの後はいずれもクリーンシートでの勝利。
・湘南戦でのビハインドは第2節のC大阪戦以来およそ1539分ぶりのこと。
・勝てば鬼木監督は歴代最速でのJ1通算100勝を達成。
・レアンドロ・ダミアンは鹿島戦での6試合で過去に得点を決めたことがない。
・家長昭博は2010年以降、出場した鹿島戦17試合で負けたことがない(W10,D7)

 内容が序盤戦ほど圧倒的ではないことはあるが、それでも15勝4分でのシーズンの折り返しは立派といっていいだろう。次にかかるのは開幕からの無敗記録20を越えられるかどうかである。ここまで3回の引き分けは直後の試合を全てクリーンシートで勝利(3戦合計:11-0)しているが、この試合でも湘南戦のドローを跳ね返すことが出来るだろうか。

 その湘南戦ではおよそ25時間ぶりのビハインドを経験。リードされることになれないシーズンの中で最低限追いつくところまで行ったのはひとまずよくやったといえるだろう。

 個人でも記録がかかる部分が多いのが今回の鹿島戦。鬼木監督の100勝はもちろん、家長の鹿島戦無敗記録もさらに伸ばすチャンスである。調べたことないけど、たぶん17試合鹿島戦負けなしって現役で最長じゃないのかこれ。負けなければ18試合に記録は伸びる。また今季は絶好調のダミアンだが、いまだ得点の経験がない鹿島戦でも好調を持続できるかが注目である。

【鹿島アントラーズ】

<鹿島のMatch facts>
・直近10試合のリーグ戦で7勝。
・先制された8試合のうち、負けたのは3試合だけ。
・直近7試合の公式戦でのアウェイゲームでは2勝のみ。
・上田綺世は90分換算の枠内シュートがアンデルソン・ロペスに次いで多い。
・リーグにおけるチーム内得点王は荒木遼太郎。
・相馬直樹監督は2013年以来の等々力凱旋。

 ザーゴとの別れを選び、相馬監督就任で勢いを取り戻した鹿島。長期的な判断としてはこれがどう転がるかは神のみぞ知るところだろうが、少なくとも短期的にはこの監督交代はプラスに出たようである。相馬監督にとってはリーグ戦20戦10敗あまり相性のいいとは言えない等々力の凱旋となる。

 粘り強さは監督が代わっても健在で、今季も先制を許した試合でもなんとか食い下がって追いつく場合が多い。センセーショナルな横浜FM戦では見事に逆転勝利を決めて見せた。ただし、アウェイゲームは少し苦手なのは気になるところだ。

 前線では若手の躍動が目立つ。チーム内得点王の荒木は高卒2年目ながらすでにゴールで圧倒的なチームへの貢献を示している。ジョーカーとして存在感を示している上田をベンチに追いやる大活躍で前線のレギュラーを確固たるものにしている。

展望

■割り切りトランジッションこそ最強

 鹿島のボール保持を後方から見ていこう。積極的にビルドアップに参加するGKをPA幅で挟むようにCBが大きく開くのが特徴。SBを高い位置に押し上げるのはオーソドックスなスタイルといえるが、珍しいのはCBの手前のスペースにいるCHがあまりビルドアップには絡みたがらないことである。

 レオ・シルバも三竿健斗もボールに触りたがるわけではなく、限られた機会で縦や大外に大きな展開をすることに注力。ボールを触りながらリズムを作るわけではない。以前対戦した時はもう少しCHがボールに絡んでいた気がするので、この部分はザーゴ時代と違うところではないだろうか。

 その分、中央でボールを触る機会が多いのが2トップの一角である荒木遼太郎。先ほどチーム内得点王であるという紹介をしたのだが、彼のすごいところは得点だけに活躍の場がとどまらないところ。中盤に降りてきて縦パスを引き出すのはもちろん、細かいパス交換で周りに前を向かせて助けたりする。先に挙げた三竿やレオが大きな展開をする手助けをするためのパス交換も前線から降りた彼が担当することが多い。

 ただ、個人的に最も彼のスキルで好みなのはパスを出した後に次のプレーにつながるようなオフザボールの動きを意識していること。周りに前を向かせたら終わりではなく、自らも推進役となってチームを押し上げることができる部分。アーセナルファンの読者がいれば伝わるかもしれないが、少しスミス=ロウっぽいなと思う時があった。ということで個人的には荒木はとても好きな選手である。早く海外に行ってください。

画像4

 荒木以外の前線の選手(土居+両SH)は裏に抜ける役割が最も大きな仕事。時折、内外レーンを入れ替えつつ奥行きを作る動きから一気にフィニッシュまで持っていく。基本的にはCBの後方やハーフスペースの裏を取る動きが多いのだが、横浜FMや鳥栖などサイドの裏が空きやすいチームに対しては大外から裏抜けを行い、相手のラインを下げることを第一に考える。

 この裏抜けの動きを孤立させないためのサポートは充実している。最低でも土居orSH2人の裏に抜けた人以外の2枚は裏抜けした選手と並行にゴール前に向かうし、仮に土居がサイドに流れる(左に流れることが多い)ならば、左サイドの白崎は内側に進路を取り、エリア内の人数を担保する。

画像5

 とにかくゴールへ一直線。それが今の鹿島で一番殺傷性が高い攻撃である。気になるのはSB。ビルドアップの説明で述べたように高い位置は取るのだが、思ったように攻撃に絡めていない。

 ザーゴ時代は猫も杓子も永戸のクロスみたいなイメージすらあったのだが、今は奥行きから直線的にカウンターを刺すことが第一優先。C大阪戦では相手がややプレス強度を落としてきたので、積極的にSBを使っていたがサイドからのクロスを活かした攻撃の型はどことなくおぼろげである。

 もっとも、これはエヴェラウドの欠場が続いていることや上田綺世が復帰と離脱を繰り返して現状ではスーパーサブ止まりというスカッド事情に拠るところもあるだろう。彼らのプレータイムが伸びれば永戸のクロスも現状よりも大きな威力を発揮するはずだ。

 守備は4-4-2ベース。2トップは縦関係になることもあるが、基本はこの形である。SHは内を締める意識が高く、大外は空けることもしばしば。特に左の白崎は少し誘導が甘く、後方の永戸と町田のカバー範囲が増えてしまうことも散見された。

画像6

 関所となるのはCHである。彼らの広いカバー範囲で鹿島の守備は成り立っている部分が大きい。レオ、三竿に自由度が高いボールハントを許しているのはその方が撤退した際の守備の不安よりはマシということだろう。相馬監督の就任の際に『鹿島らしさ』の議論が巻き起こったが、今の彼らの鹿島らしくない部分を挙げるとすれば、引いて受ける状況に強さを発揮しないところ。それならば、CHを軸にトランジッション勝負に振ってカタをつけてやろうというのが今の鹿島である。

ハイテンションが前提、ただし…

 やや停滞気味の川崎にとっては単純に鹿島戦という舞台装置によってテンションを乗っけられることは大きい。個人的には鹿島戦でまったりとした入りをしたのはあまり記憶にない。特にここ数試合はおとなしい側面が目立った前線からのプレスを起動できれば好勝負が期待できる。鹿島の得意なトランジッション勝負は川崎にとっても得意な舞台である。

 ただ、いくら何でもフルタイム出場している面々の疲れは無視できない。特に田中碧。当然いいプレーもあるのだが、シンプルに頭が疲れているんじゃないか?と見受けられる場面は多い。仮に、エネルギッシュにという部分にかけるのだとしたら脇坂を頭から使うことも視野に入れるべきだ。

 仮にそれ以外でも勝負したいメンバーが揃わないのならば、無理に序盤からテンションを上げることをあきらめることも考えなくてはいけない。札幌戦のように、スローダウンしなるべく前半はローテンポで引っ張る。引かないに越したことはないのはもちろんだが、今の鹿島はスローに攻める部分が強みのチームではない。なので、自チームの事情と相手チームの弱いところを織り込んだ折衷案ではあるが、あえてローテンポというやり方もあることは記しておきたい。前半は泥に引きずり込んで、後半に田中碧投入と共にスイッチを入れた札幌戦の再現は1つ考えられる形だろう。

 いずれにしてもローテンポにしたとしても川崎が裏を消すほど引くとは思えないので、あっさり裏を使われたらおしまい。ホルダーにプレスをかけること、そして裏のスペース管理ははっきりさせたい。前を向かせたら分が悪いので前を向く前に体を当てること。ライン間を空けると荒木が躍動するのでこちらも気にかけなくてはいけないのは厄介だ。

 攻撃において気にするべきはCHを越えながら横断することである。前節の湘南戦でできなかった課題の一つ。

 お手本になるのは横浜FMが決めた先制点である。色々見どころがある得点だが、コンセプトの部分で言えば前田大然がレオ・シルバを交わしてサイドチェンジしたところが一番大きい。これが鹿島の門番の越え方として超理想的。左右に振りつつ背走させながら自軍選手が上がる時間を稼ぐ。トランジッションに強みのある脇坂が久しぶりに輝いてくれるとこの部分でも明るい展望が描ける。

画像7

 同サイドで狭いスペースを崩すことも悪くはない。鹿島の守備は人基準になることが多いので、最近お馴染みのIHを同サイドに集結させる川崎のやり方には対抗できない可能性はある。

画像8

 ただし、三笘とマッチアップするであろう常本には要注意。脚力があるのでオフザボールでちぎりにくい上に、三笘が得意な正対した状況を作る前に体を寄せて前を向かせずに決着をつけるのが上手いSBである。正直あまり相性が良くないのではないのかなと思っている。過度に三笘に頼りすぎると川崎は袋小路に陥る可能性もある。

 名古屋戦以降の試合はACLに向けてやり方を広げる期間と個人的に位置づけていた。まぁ、うまくいかなかったことも正直結構あった。が、とりあえずこの試合はそれを忘れて目の前の勝利にひたすらこだわるべき。ここは総力戦。もう一度勢いをつけるためにも、鹿島をここでへし折るためにも絶対に勝つべき試合だ。

 開幕からの無敗記録、前節の引き分け、勢いのついた相手。全て大歓迎だ。個人的には鹿島相手にはどんどん川崎にプレッシャーがかかる要素が乗っかればいいと思っている。それだけ自分は鹿島戦には思い入れが強い。一番嫌な相手に、多くのプレッシャーを抱えて挑んで勝ってこそチームは強くなる。かつてはタイトルがかかった試合では顔も見たくなかった相手に、今ではこうして正面切って向き合うことができるのだ。川崎はあの時よりも強くなった。また一つ、鹿島戦のいい思い出を川崎の面々がもたらしてくれることを期待してやまない。

【参考】
transfermarkt(https://www.transfermarkt.co.uk/)
soccer D.B.(https://soccer-db.net/)
Football LAB(http://www.football-lab.jp/)
Jリーグ データサイト(https://data.j-league.or.jp/SFTP01/)
FBref.com(https://fbref.com/en/)
日刊スポーツ(https://www.nikkansports.com/soccer/)

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