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「Catch up UEFA Champions League」~Semi-final 2nd leg+α~ 2021.5.4-5.6

目次

①マンチェスター・シティ×パリ・サンジェルマン

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■『プレッシャーを楽しめた』か?

  追いかける立場であるパリ・サンジェルマンにとってはムバッペが負傷の影響でベンチという厳しい状況。雪が積もるピッチにおいて、マンチェスター・シティがショートパスにいつもほど比重を置かない安全策を取ったこともあり、パリがボールを持つ展開が序盤から続く。

 ヴェラッティというボールを落ち着けどころは1stレグに引き続いて健在。彼にボールを収めつつ、パリは短いレンジでのパス交換に注力。シティのプレッシングにおびえることなくつなぐ選択を実直に続けていた。

 縦パスの引き出し手となったのディ・マリア。前線と中盤のつなぎ役として、彼が前を向くことで攻撃のスイッチが入る。しかし、問題はここから先。奥行きを作るムバッペの裏抜けがない状況で、仕上げの選択肢に困る状況。ムバッペに代わり先発となったイカルディはゲームの展開に置いていかれてしまっている様子で、攻守においてパリが展開を作るきっかけになりえなかった。裏に引っ張る選択ができず、中盤を越えてからのクオリティに難があった。

 一方、リスクヘッジをしたロングボールが多めのシティだが、ただやみくもに蹴っているわけではない。その長いボールから先制点を取ってしまう。エデルソンを起点としたジンチェンコへの裏抜けへのフィードは、まるでこの瞬間だけピッチから雪がなくなってしまったかのようにピタッと収まる。マフレズのゴールへの展開もきれいだったが、芸術的なフィードに目を奪われた人は多いだろう。

 後半もネイマールを中心に奮闘するパリ。だが、それをあざ笑うかのように追加点はシティに入る。カウンターはデ・ブライネの懐にボールが入りすぎたところで減速してしまったかと思ったのだが、そこから再加速のボールを出せるのが彼の強み、というか凄みである。最後の仕上げは先ほどと同じマフレズ。この追加点の直後にディ・マリアがフェルナンジーニョを踏みつけで退場したことで試合は完全に終了する。下手をすればその直後にヴェラッティも退場してもおかしくないくらい、この時間帯のパリはバタバタしていた。

 『プレッシャーを楽しみなさい、責任を楽しみなさい』とはグアルディオラの師匠であるクライフの言葉。この大舞台において、パリはプレッシャーにより1stレグでパフォーマンスを急激に落とし、2ndレグでは退場者を出すことで自ら試合を終わらせてしまった。

 プレッシャーの呪縛に苛まれたパリに対して、シティは最後の最後まで師匠の言葉を守り、決勝の舞台へ続く道を楽しんでいたように見えた。クライフの問いかけに対する両チームの答えがこの試合の勝敗を分けたのかもしれない。

試合結果
マンチェスター・シティ 2-0 パリ・サンジェルマン
シティ・オブ・マンチェスター・スタジアム
【得点者】
Man City:11′ 63′ マフレズ
主審:ビョルン・カイペルス

②チェルシー×レアル・マドリー

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■崩壊した2ndレグの青写真

 追いかけるレアル・マドリーが保持から入る立ち上がり。後方の重心を重くして人員を確保。プレス主体のチェルシーに対して、人数をかけることでチェルシーからボールを取り上げる。

 マドリーは非保持においてはクロースとモドリッチがジョルジーニョとカンテを追いかけるようにマーキング。トップこそアザールとベンゼマの2枚で、チェルシーのバックラインと数が合わないが、ボール運びの肝である中盤を食い止めることでチェルシーの前進を阻害するのが狙いだった。

 保持で支配、非保持で中盤食い止めなどずっと俺のターン!というのがマドリーが描いた青写真だろう。しかし、誤算だったのは保持における安定感のなさ。とりわけ、縦方向のボールの行き来からミスが出たのがつらかった。その流れでトランジッションからチェルシーに保持を許すマドリー。頼みのベンゼマも中央でのデュエルを嫌がってか、左に流れる状況に。その分メンディが内側に入ることでインサイドの人数を確保しにかかるが、その手前のパス交換の段階で引っかけられてしまった。

 もう1つ、マドリーの誤算だったのはチェルシーがあっさりと保持において反撃のルートを見つけてしまう。特に左の奥側からエンドラインをえぐるように入り込む。同サイドのWBでスクランブル起用となったヴィニシウスの裏のカバーはミリトン1人では荷が重たい。

 チェルシーの前線の連携は好調。コンディションのいい3人にカンテが+1として入り込むことでマドリーとしては止めるのが難しい状況に。カンテ、サッリの下でやっておいてよかったね。平気な顔でポストを決めるようになったヴェルナーはもはや足の速いジルーみたいになっていたし。この前線のコンビネーションはチェルシーの先制点に詰まっていた。ヴェルナーのポスト、カンテの抜け出し、そしてハフェルツの仕上げ(ポストだったけど)と素晴らしい一連である。

 この日は交代のプリシッチも好調。入って1,2回目のボールタッチはちょっと力みすぎてしまった感じはあったが、3回目の判断は冷静。相手を見る余裕ができた3回目のトライでマウントのゴールを呼び込み、試合を完全に決めた。

 アザールの抜擢やヴィニシウスやアセンシオのWB起用など奇策に出たマドリーの青写真は序盤で崩壊。クルトワの奮闘がなければ2-0という負けで抑えるのは難しかったはずだ。

試合結果
チェルシー 2-0 レアル・マドリー
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:28′ ヴェルナー, 85′ マウント
主審:ダニエレ・オルサト

③アーセナル×ビジャレアル

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■勝ってもおかしくはなかったけども・・・

 2ndレグでひっくり返しを期すアーセナルだが、その出鼻を試合前にくじかれてしまう。先発予定だったジャカがウォーミングアップで負傷、先発としてケガ明けぶっつけ本番になったティアニーが急遽出場になった。

 アーセナルにとって困ったのはシェフィールド・ユナイテッド戦で初めてジャカをSBで起用して以降、一度も本職SBで左サイドを埋めたことがないこと。左サイドの深い位置でプレスを回避できるジャカが保持において3バックのような形で相手の陣形をゆがめる形で成り立っていたジャカシステム。ティアニーは優秀な選手だが、プレス耐性に強みがある選手ではない。このしたがってやり方を変えていく必要がある。この辺りはアルテタの中期的なプランニングが足りなかったといわざるを得ない。

 そこ以外で目につくのは保持における3センター起用だろう。もっとも、この部分はボールを持っているときはこういう変形を施していた部分ではあるので、形としての違和感はそこまでない。

 ただ、うまくいくかは別問題。特に右サイドは停滞。低い位置まで押し下げられた際にベジェリンやホールディングは脱出する術を見つけられないし、ウーデゴールは大混乱。サカとラインをかぶったり、キープをするもののどこにボールを出せばいいのかわからない状況が続いてしまっていた。希望になっていたのがペペとティアニーの左サイド。特にペペは独力で相手のラインの位置をコントロールできる存在としてビジャレアルの脅威にはなった。

 基本的にサイドチェンジの効果は限定的。サイドを変えられた相手と同じくらい味方も驚いており、攻略の準備が整うのに時間がかかってしまっていた。それだとあまりサイドチェンジの意味はない。

 守備においては4-3-3における高い位置からのプレッシングがハマらない。その上、ハイラインを敷いているにも関わらず、アーセナルの最終ラインはビジャレアルのアタッカー陣に対して後手を踏む。復帰明けのティアニーはラインを上げるタイミングが遅れることが多く、機動力に欠けるマリやホールディングはラインを下げられる状況が頻発する。

 攻守に流れをつかみきれないアーセナル。それでも相手のゴールに迫ることはできていたし、押し込んだ際のビジャレアルのバックスは非常に不安定。GKの飛び出すタイミングも含めて怪しい部分は多く、終盤に仕掛けたクロス攻勢は効果的ではあった。シュートのタッチが少し変わっていれば180分の結果が変わってもおかしくない試合だったといっていいと思う。

 しかしながら、20-21シーズンでもっとも大事な試合といっていい日に見せるパフォーマンスとしては『勝ってもおかしくない』程度のパフォーマンスは非常に物足りない。ジャカの負傷で台無しになったように振舞うアルテタも含めて大事な時の準備が足りないという20-21のアーセナルを象徴するEL敗退となった。

試合結果
アーセナル 0-0 ビジャレアル
アーセナル・スタジアム
主審:スラフコ・ビンチッチ

④ローマ×マンチェスター・ユナイテッド

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■殴り込みをかけた相手の土俵で意地の勝利

 正直に言えば、今回取り上げた4試合のうちで唯一1stレグで決着してしまった試合といえるだろう。6-2という衝撃的なスコアはローマが前半に出た3人の負傷者にすべての交代枠を使わなくてはいけなかったことが大きい。そのせいで、戦術的な交代ができなかったどころか、後半に足を引きずり続けたディアワラを交代することができなかった。1stレグで負傷したのがスピナッツォーラやヴェレトゥという超主力級というのも痛い。

 したがって、2ndレグが消化試合の様相になってもおかしくはない状況だった。だが、ローマは勇敢に戦うことを選択。それも縦に速い攻撃から積極的に得点機会を創出するためにピッチの上下動を繰り返すやり方を選んだ。

 ローマの出来も良かったし、ゴールに向かう状況を作り出すことはできていた。加えてマンチェスター・ユナイテッドがやや間延び気味だったこともローマの攻撃を手伝っていた。とはいえ、早い展開といえば基本的にはプレミア勢の土俵。それも今季のマンチェスター・ユナイテッドのスカッドは、特に早い展開に強い超プレミア仕様である。

 ややゆるみ気味だった後方の選手たちとは異なり、ユナイテッドの前の選手はやる気満々。速い攻撃から先制点をゲット。ブルーノのポスト⇒フレッジの抜け出しからラインの駆け引きをするカバーニで決着だった。

 マンチェスター・ユナイテッドの土俵に入り込む羽目になったローマだが、試合展開を見れば仕方ないだろう。試合の展開を早くして、攻撃の機会を稼がなければどうしようもない。先制点を奪われても、後半をビハインドで迎えてもローマの闘志は衰えなかった。

 ローマファンの友人によると今季のジェコはだいぶ存在感が薄れてしまったという話だったが、この試合においてはクロスのターゲットがいることは大きかった。PA内に多く入り込み、ラインの駆け引きに専念したりする小兵のアタッカーが中心の中で基準点として相手のCBを引っ張れる存在がいるのは重要である。

 終盤には逆転をしてなんとか2ndレグ勝利というこの90分の目標を達成することができたローマ。相手の土俵に入り込まないといけない状況の中で十分に健闘を見せた。

試合結果
ローマ 3-2 マンチェスター・ユナイテッド
スタディオ・オリンピコ
【得点者】
ROM:57′ ジェコ, 60′ クリスタンテ, 83′ テレス(OG)
Man Utd:39′ 68′ カバーニ
主審:フェリックス・ブリヒ

   おしまいじゃ!!

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