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「明日がその日かもしれない」~2024.5.19 プレミアリーグ 第38節 アーセナル×エバートン プレビュー

目次

Fixture

プレミアリーグ 第38節
2024.5.19
アーセナル(2位/27勝5分5敗/勝ち点86/得点89 失点28)
×
エバートン(15位/13勝9分15敗/勝ち点40/得点39 失点49)
@エミレーツ・スタジアム

戦績

過去の対戦成績

 直近5シーズンの対戦でアーセナルの5勝、エバートンの5勝、引き分けが1つ。

アーセナルホームでの戦績

 直近10試合でアーセナルの9勝、エバートンの1勝。

Head-to-head from BBC sport

Head-to-head
  • 205回のトップリーグにおけるエバートン戦でアーセナルは101勝を挙げており、英国リーグにおける特定チームが特定チームに対してあげた勝利数として最多記録となっている。
  • アーセナルは17-18以来のエバートン戦ダブルを狙う。
  • エバートンはプレミアリーグにおけるアーセナルでのアウェイゲームで1996年と2021年の2回しか勝利したことがない(D5,L24)。

スカッド情報

Arsenal
  • ユナイテッド戦で負傷したブカヨ・サカは様子を注視。
Everton
  • ブレイズ戦で顔を負傷したアンドレ・ゴメスは当日判断。
  • ジャック・ハリソン、ナタン・パターソン、ヴィタリ・マイコレンコ、デレ・アリは欠場。

Match facts from BBC sport

Arsenal
  • リーグ戦27試合はプレミアにおけるクラブレコード。これより多い勝利数は29勝の1970-71と28勝の1930-31の2回だけ。
  • 直近12シーズンの最終節で全勝。
  • 18のクリーンシートは98-99以来の数。
  • ブカヨ・サカとレアンドロ・トロサールは2024年に公式戦11得点を挙げているチームリーダー。トロサールは直近9試合で6得点を挙げている。
  • ウィリアム・サリバはマックス・キルマンと並びFPとして今季のリーグ戦でフル出場を続ける2人のうちの1人。フルシーズン出場すれば、アーセナルの選手として初めて。
Everton
  • 4月以降で17ポイントを稼いでおり、同期間でこれより多く勝ち点を得ているのはシティ、アーセナル、チェルシーだけ。
  • しかし、12月にバーンリーに0-2で勝利して以来、11試合公式戦でのアウェイゲームで勝利がない。
  • 直近11試合のシーズン最終戦で7敗を喫している(W3,D1)
  • ロンドンでは今季3勝を挙げているが、直近の遠征ではチェルシーに6失点で敗れている。

予習

第35節 ブレントフォード戦

第36節 ルートン・タウン戦

第37節 シェフィールド・ユナイテッド戦

今季ここまでの道のり

予想スタメン

展望

シンプルを根気良くがコンセプト

 ついに迎えた23-24シーズンのクライマックス。優勝の可能性を残してホームに迎えるのはエバートン。CL出場権をかけた2年前の最終節にホームで勝利をした相手である。

 直近のエバートンはやや対戦相手に恵まれている傾向にあるとはいえ好調。特に目立つのは守備。ここ5試合ではわずか1失点とかなり相手の攻撃を抑えることができている。

 特筆すべきは全員がコミットする高い守備意識である。特に圧巻なのはローブロックで守る際の守備の強度である。後ろの選手はもちろん、2列目にはかなり低い位置まで戻ってのハードワークが求められる。SHはPAのレベルまで降りてSBと変わらない守備をしているし、トップ下とCHの3人はローラインでスペースを埋めるだけでなく、高い位置に出てプレスのラインを回復するための二度追いが求められる。

 パフォーマンスでかなり印象的な働きを残しているのは両CB。近年、CBの稼働が安定せず、守備の崩壊をすることも少なくなかったエバートンにとってはブランスウェイトとターコウスキのコンビで年間を通してCBを固定できたことはとてつもなく大きい。

 特にブランスウェイトはプレミアの中でも安定したパフォーマンスを年間を通して発揮することができたCB。エバートンは時折CHが高い位置に出ていくことをスイッチとしたハイプレスを行うこともあるのだけども、その際にも相手のロングボールの防波堤として非常に高い機能性を発揮している。左右に動く相手にもきっちりとついていけるのがこれまでのエバートンのCBと比べても優れている点と言えるだろう。

 ローラインになり、跳ね返しに集中することができればさらにその機能性は増す。ボックス内にCBの守備が集中できるのはもちろんそれ以外の選手が外側のスペースを埋めてくれるからである。

 さらにはその後方を守るピックフォードも堅い。何かと揶揄されがちな選手ではあるが、特に今季後半戦のパフォーマンスの安定感はリーグの中でも明らかに上位。アクロバティックなセービングと必ずセットとなっているチームに対する熱い鼓舞はチームの支えになっているだろう。マージーサイドダービーでの勝利は彼の奮闘なしにはなかっただろう。

 ボックス内に立てこもらざるを得ない状況になることも少なくないチームだが、ギリギリで守ることにはチームとしては秀でている。ローブロックで当たり前のように体を張ることを徹底しているのがエバートンの少ない失点の理由だろう。

 攻撃もコンセプトは同じくシンプルなことを根気よく行う形がメインである。アーセナルにとって警戒しなければいけないのはここにきてキャルバート=ルーウィンが明らかに調子を上げていること。フィニッシュに関してはまだ一番良かった時期には届かないなという感じではあるが、ロングボールとしての起点としてはほぼほぼ戻ってきたと言っていいだろう。

 左右に動きながらロングボールを収め、2列目の飛び出しを促すアクションは一級品。トップ下のドゥクレとの相性も良く、終盤になってようやく攻撃のメインストリームが固まってきたなという感じである。

 愚直ではあるが、キャルバート=ルーウィンに向けてのロングボールで前進し、押し下げた後も左右からのシンプルなハイクロス。攻撃を強めたい時はFWを追加投入しての2トップ化だし、セットプレーではターコウスキがさらに得点力を担保する。

 シンプルではあるが防ぐのが難しく、超えるのはハード。それが今のエバートンの好調さの源である。

中盤を間延びさせてウーデゴールに選択肢を与える

 もっとも重要なのはキャルバート=ルーウィンへのロングボールに対してアーセナルに守備陣が対抗できるかどうかである。打点の高さと長いリーチでボールを収めるという観点ではプレミアではトップクラスの厄介さを誇っているのは間違いない。さらには左右に動くアクションも織り交ぜてくる。ガブリエウ、サリバといったCB陣は左右に振られるところから内側に展開させないことも重要になる。そういう意味では収められた後のアクションも大事である。

 ハイクロス対応はアーセナルのDFにとっては自信を持ってやれる部分。冨安、ホワイトを並べてファーに流れてくるターゲットに対するハイボールにはきっちりと対策を打っておきたいところでもある。もう1つ、得点源になっているミドルシュートを避けるためにも、跳ね返した後はすかさずラインアップを行い、シュートブロックでインサイドを閉じて守りたい。

 攻撃においては立ち上がりのハイプレス回避を丁寧にしたいところ。ハヴァーツへのロングボールはブランスウェイトが相手だと通用するかどうかは未知数である。幸い、ハイプレスに出てくるエバートンは普段の水準のアーセナルであれば(ユナイテッド戦並だと怪しいけども)問題なく外せる。中盤を引き寄せながらMF-DFの背後に縦パスを通して前進を狙っていきたい。

 一番楽なのは中盤3枚にプレスの意欲を持たせて自陣に引き寄せつつ、中盤を縦に間伸びさせる形。イメージとしたいのはボーンマス戦であり、中央での細かいパス交換で相手のプレスのベクトルをへし折りながら、時間と人をなるべく前に押し上げたい。後方からの列上げでのサポートを冨安やライスが行いながら、ウーデゴールになるべく多くの選択肢を与える展開を作っていきたい。

 このやり方のメリットはエバートンのSHに戻る時間を与えないこと。ミドルゾーンでの加速から攻め切る形を作ることができればサイドが手薄な状態でサカとトロサールにボールを渡すことができる。特にヤングの起用が想定される右サイドは狙い目だろう。1on1で出し抜けるくらいのミスマッチはサカとの間で作り出すことはできるはず。ミドルゾーンで加速からサカにボールを渡したい。

 押し込んだ状態ではなかなか堅さがあるエバートン。しかしながら、シティやチェルシーは問題なく破壊する事はできている。ボールを出して入れてを繰り返してのブロック崩しはサッカーにおいてももっとも難易度の高いプレーの1つではあるが、丁寧にやれば崩せる力は今のアーセナルにはあるはず。今季のエバートンはここまで逆転勝ちがないチーム。右で作って左で仕留める形でなんとしてもほしい先制点を手中に入れたい。

おまけ

 さて、最後に少しだけ与太話を聞いてほしい。自分はJリーグで川崎を応援している。この試合は2017年に川崎がリーグ初優勝を決めた時とよく重なる。自分たちが勝ち、首位の鹿島が敗れないと優勝のチャンスはない。当時の川崎はタイトルを獲得したことがないチーム。ノンタイトルではないにせよ、長らくリーグ制覇から遠ざかっている今のアーセナルに似ている。対する鹿島は当時のJリーグの優勝争いの常連であった。

 ということでホームスタジアムに向かう自分は正直なところ「どうせ鹿島が勝つだろう」と思いながらスタジアムに向かっていた。おそらく、世間のムードもそんな感じである。川崎はグッドチームではあるが、リーグを制するのは勝者のメンタリティを持っている鹿島であると。そんな見方が一般的だった。ところが、最終的には鹿島は3ポイントを取ることができず、川崎はリーグで初めてのタイトルを取ることになる。ここから、川崎は多くのタイトルを獲得し、鹿島は逆に長らくタイトルを取ることに苦しむことになる。

 さて、プレミアリーグに話を戻そう。FAカップのタイトルは尊いがリーグかCLでのタイトルを取らないとその国の勢力図は本当の意味で塗り替える事はできない。「アーセナルはいいチームであるが、シティの後塵を拝するチーム」という評判はたとえファンは声高に功績を叫んでもひっくり返すのは難しい。

 タイトルはシティの方が明らかに可能性は高いだろう。それは否定しようがない。ただ、あの年の川崎もその日の朝までは「タイトル獲得のメンタリティを持たない2位濃厚のチーム」だった。そして、アーセナルは川崎と同様に残り1節で全てを変えられる位置につけている。アーセナルにとって明日が運命を変える日になるかもしれない。

 等々力で初優勝を迎えた自分は小林悠のハットトリックによる逆転得点王も相まって、突然訪れた多くのタイトルにあわあわしていた。今思えば、あの日の自分はタイトルを取るイメージが全然湧いておらず、喜ぶ準備ができていなかったのだと思う。

 全てが終わった時にダメージを負いたくないから「どうせシティが優勝する」と思ってしまう気持ちはよくわかる。別にその気持ちを咎めるつもりはない。でも、その日は突然やってくるのだから、そうなった時に大喜びする準備をしてほしい。明日がその日になるのかもしれないというイメージを持って日曜の夜を迎えてほしい。その期待を負ってもらうのに今のチームは十分であることを1年間示し続けてきた。彼らにこの試合を制する力強さとほんの少しの幸運が宿ることを心の底から願っている。

【参考】
https://www.bbc.com/sport/football/premier-league

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