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「原点からつながる最後の一歩」~2020.11.25 J1 第29節 川崎フロンターレ×ガンバ大阪 レビュー

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目次

【前半】
神奈川ダービーで挙げた課題を克服

 前提としてはどちらもボールを持つ時間帯をなるべく増やしたいチーム同士の対戦だった。その土俵での勝負なら!という勢いでまずは先に主導権を握ったのは川崎。川崎のビルドアップの1stステップとしてはまずはG大阪の2トップのマークを外すこと。この日のパトリックと宇佐美は通常以上に守備において相手を追いかけまわす頻度が多かった。前半から飛ばした川崎同様、G大阪も是が非でも早めに先制点が欲しかったということだろう。

 ただ、2CBにアンカーも含めた川崎最後方でのビルドアップは2トップに対して定常的に数的有利が確保されている状態。SHが出てきても、その分こちらもSBを手助けに使えばいいし、相手のCHが出てくればむしろそこはG大阪が相手に前進を与えるスペースになってしまう。川崎としてはまずはアンカーの守田が前を向いてボールを持てる時間をパス回しを通じて確保する。まずはここの過程を踏むことで川崎のポゼッションが非常に安定する時間が続くことになる。中盤の駆け引きはこの日は90分間川崎が優勢だった。

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 後方の選手が落ち着いて前を向ける状態を作ったら、次のステップはサイドからの侵入になる。この日の序盤のポイントになったのは三笘薫のオフザボールの動き。立ち上がりは左の大外に開く機会が多かった。すると、G大阪のRSBである髙尾がこれに引っ張られるように外にポジションをとる。

   これによりRCBの昌子との間が空くようになるG大阪。川崎が前線の収めどころとしてまず目をつけたのはここ。三笘が髙尾を引き付けている間にこのスペースに入り込む。横浜FM戦のレビューで課題に挙げた三笘をおとりにした動きをこの日は実践していたということである。

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 主にここに入り込むのはインサイドハーフを務めた大島僚太か、CFのレアンドロ・ダミアン。ここのスペースから間受け、もしくは裏抜けを狙うことで相手を押し下げる。先に進むのが難しいようならば、後方を経由してサイドチェンジ。「川崎が先に進むのが難しくなった=G大阪のCHが片側に寄って川崎の侵攻を防いでいる」なのでサイドチェンジは効果が大きい。

   この日の川崎はこの「だめならサイドチェンジ」という判断の早さが素晴らしかった。左がダメならすなわち右が空いているということでどちらかのサイドから深くG大阪のDFラインをえぐるような攻撃を見せた。

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 サイドから深く抉る局面はやはり三笘薫が強い。最後の局面で1枚剥がせるので、一番深くまで抉ることができる。しかし、G大阪の守備陣はPA内での対人になると恐ろしい強度を発揮する。最後の砦となりシュートを跳ね返すことで抉られても割らせない。サイドから時折上がるハイクロスも簡単に無効化されてしまう。

 となると、やはりラインをめぐる駆け引きから解決策を見つける必要がある。後述するが、この日のG大阪は最終ラインをPA内に常駐させるわけにはいかなかったので、ラインの上下動に川崎が付け込むスキがあった。ドンピシャでそれをやってのけたのが登里-ダミアンコンビ。ダミアンの走り抜けに合わせるようにピンポイントクロスを合わせた登里はこれで7つ目のアシスト。三笘薫に次いでチーム2位のアシスト数である。本人にとってもキャリアハイ。さすが!というわけできっちりG大阪の狙い目を突いて先制点までたどり着いた川崎であった。

【前半】-(2)
マイボールの時間を増やしたいが・・・

 対川崎におけるG大阪といえばローライン撤退でカウンターでの一発を狙うという戦い方を選ぶことが多かった。特に等々力ではその傾向が強かった。しかし、この試合でのG大阪はミドルゾーンに構えて、少しでも高くラインを保ちつつボール奪回を狙う姿勢が見えた。プレビューにも書いたがこれにはいくつか理由があると思う。

 1つは単純に彼らが今志向しているスタイルが強気のプレスに基づくものだということ。ただ、宮本監督のG大阪は直近のスタイルと関係なく川崎戦を特例と位置付けてローライン撤退をこれまで採用していた節がある。なので、あながちやっているスタイルだから!だけで押し切るのもなんとなくしっくりこない。

 考えられるのは陣地回復の手段が足りなかったこと。パトリックを車屋や登里と競らせることは確かに起点になりうるが、そこからこぼれ球を運んであわよくば1人、2人と剥がしていく人材が今のG大阪にはいない。アデミウソンがいればやりようがあったと思うが、いないのでどうしようもない。なので、ボールを奪う位置はなるべく高く。加えて、中2日という日程を考えても、川崎を90分追いまわす状況は避けていきたいところだった。これまでとは違うアプローチだったのはこういう理由ではないかと推測する。

 そして、ボール保持の時間を作りたがるというのも予想通り。ただ、最終ラインが特段足元に優れているわけではないG大阪はボールの持ち運びでズレを作れずに苦しむことに。

 新進気鋭の山本悠樹が前を向くことが出来れば28分のシーンのように、安定したボール保持から川崎を押し込むことが出来る。しかし、G大阪のCHには川崎のMF陣が背後から襲い掛かった状態でボールが預けられることの方がはるかに多く、ボールの狩りどころになるかもしくは不安定な体勢でのパスを拾われるかのどちらか。

 頼みのパトリックも競り合いではさすがの強さを見せるもそこから独力で出し抜けるほどのスピードはない。プレビューで触れたG大阪の生命線となるサイドからの裏抜けは、押し上げられないことによりそもそも機会が少なかったし、数少ないシーンでもCBが早めにつぶすことで事なきを得ていた。

 保持の時間が増えないG大阪を尻目に川崎は攻撃の機会を増やしていく。すると追加点は今季得意なセットプレーから。ダミアンの中央ややニアよりからのヘッドにファーで裏抜けした家長が合わせる形。これは決まってしまえばノーチャンスなヤツである。

    今季は本当にいろんなパターンからのセットプレーの得点を見れた。昨季は膠着した試合でのセットプレーの得点の少なさは大きな課題だった。セットプレーから得点数は下から3番目。この数字をリーグトップまでに改善できたことは優勝の要因の一つだろう。

 終了間際に引き離す1点を決めた川崎。試合は2-0でハーフタイムを迎える。

【後半】
ダミアンのサイド流れ≠悪

 控え選手のハーフタイムのアップを回避して、ロッカールームでの一体感創出に励んだG大阪。おそらく、前半にできれば先制点、悪くともタイスコアで折り返したかったはずで、ここまでは目論見が外れてしまったということだろう。なるべく早く反撃すべく、後半開始からプレスの強度を上げて臨んでいた。

 ただ、この日の川崎はプレスに屈しなかった。プレス回避はお手の物で特に広いスペースを発見する点において登里の貢献はすさまじかった。サイドに追い込みたいG大阪のプレスを無効化する視野と技術で拓けたポジションにパスを送る。55分の中央へのパスとかとても好き。これをやられるとプレスをかけるほうはげんなりするだろう。

 G大阪がプレスに出てきたこと。そして川崎がそれを回避する術を持っていたこともあり、後半は川崎がカウンターからシュートチャンスをひたすら作る展開に。

 この日の後半の川崎は、これまであまり見なかったプレス回避からのカウンターの形が用意されていた。流れとしては左サイドに流れるダミアンをまず使うところから。サイドに引くような形に動き相手を引き付ける。これに合わせてWGの三笘が裏を狙う。

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 このやり方のいいところは仮に裏が難しくても、内側で受けるというもう1つ策が用意されていること。G大阪のDF陣は前に出てきており、レアンドロ・ダミアン周辺に人は多くない。ダミアンが引き連れた昌子を背負えさえすれば、昌子が空けた中央のスペースからもボールを運ぶことが出来る。いずれのコース取りにしても三笘はドリブルを開始した状態でG大阪守備陣と対峙することになるのでかなり厄介だ。

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 ダミアンの降りる動きには彼にはゴール前でプレーに専念できなくなるという懸念があった。したがって、あまり良くない傾向のプレーとされがちであった。

 ただ、この試合はG大阪が前からプレスに来ているため、囲まれてロストする危険が少なかったためまずリスクは少なかった。メリットとしてはこの日のWGのスキルとかけ合わせればダミアンが最終局面に顔を出すことが可能になること。

    三笘は試合後インタビューで「ゲームメイクとオフザボールは成長した実感がある」といっていたけど、運ぶときに急ぎすぎずに周りの上がりを待てるようにスピードを調節することが出来るようになったということなのかなと。さらに逆サイドの家長もタメを作ることが出来る。

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 ドリブルとフィジカルで時間を作れる両WGならば、ダミアンが再度PAに駆け上がることは可能になる。守備時のプレスも含めるとタスクとして過負荷なのでベンチに信頼できるFWがいてこそだろうけども。ダミアンと三笘は最近セットで使われることが多いので、鬼木監督の中では連携が高まっているという認識なのかもしれない。

 そして、いざとなれば両WGがフィニッシュまで持って行ける力があるというのも心強い。いうまでもなく4点目はその形である。登里が1枚剥がして縦パスを付けたことで、ダミアン⇒三笘へのラインはよりG大阪にとってクリティカルなものになった。

 この日は前線のセットが代わってもFWが流れたところを起点としたカウンターは継続。5点目のシーンも小林悠がサイドに流れて出し手となり、WGの齋藤と旗手が最後の仕上げを担当するという流れであった。今季のWGはボールを保持して相手を押し込んでいるときは幅を取る役割を担うことが多かったが、カウンターが期待できる場面になるとCFをおとりにWGが直線的にゴールに迫る動きが今後増えていくかもしれない。

 G大阪もボール保持が出来て押し込んだ後は右サイドからのラインブレイクという形を狙っていたが、川崎はオフサイドにひっかけたり、インサイドハーフのスライドで早めにつぶすことで対応。そもそも、浦和戦では横パスを挟むことでラインブレイクのタイミングをうかがえていたからこそ裏抜けが効果的だった。しかし、この試合では川崎のプレスのせいでG大阪は横パスで揺さぶりをかけることが出来なかった。だからパスがズレたり、オフサイドにかかってしまったりなどで浦和戦ほど効果を発揮することが出来なかったのだろう。

 最後は大島僚太のエスコートでキャプテン・中村憲剛がピッチに立つシーンも。憲剛へのおぜん立てがあからさますぎてガンガンパスカットされているのはなんか笑った。

 後半も攻守に圧倒した川崎が大量5得点の快勝。見事に本拠地でタイトル獲得を決めた。

あとがき

■スタイルの相性と完成度

 撤退した時の強固さはさすがの粘りだったが、この日のスカッドとスタイルは川崎相手には少々分が悪かったように思う。プレスからボールを奪い返し、自分たちの時間を作るというのは確かに川崎攻略においても最もクリティカルにダメージを与えられるやり方ではある。

 ただ、同じ土俵で戦うということはシンプルに精度や強度がモノを言うことになる。この日のG大阪は中盤で攻守に後手を踏んでしまったし、ボール回しにおいては後方の選手もそれを助けられなかった。つくづく今季の川崎は中盤で決まることが特に後半戦は多かったなと思わされた。この試合では中盤の主導権争いは川崎に軍配が上がった。

 正直、今のG大阪のサッカーがどういう文脈で行きついたものなのかはわからない。ただ、間違いなく目指すスタイルに対しては完成度はまだ途上の位置づけだろう。U-23も含めた再編成を経て、来季は勝負になる。完成度を高めるための土台のブラッシュアップを残りのシーズンでは続けたいところ。天皇杯でのリベンジは個人的には望むところである。

■9カ月前の原点から始まったチャレンジ

 三笘に過剰にボールを集めすぎてしまった横浜FM戦の課題は序盤で克服。先制点で見せた最終ラインの縦への揺さぶりはG大阪相手の狙い目。前回の課題を改善し、今回の相手に付け込むというやり方は優勝という結果を差し引いても、非常に見ていて気持ちのいい試合だった。

 相手が空けたスペースから攻略をしていき、片側に寄っていったらすかさずサイドチェンジでピッチを広く使う。G大阪戦で見せた川崎のサッカーはまさしく今季ずっと理想としてきた「相手を動かし、自分たちのスキルを活かすスペースを創出する」というスタイルを体現したものだったといっていいだろう。

 思えばシーズン初戦のルヴァンカップ清水戦で、今年掲げたサッカーが昨年とは違うことをサポーターに示せた上で結果を残せたのは監督にとっても選手にとっても大きかったのではないか。

    図らずしも、今季は長い中断をはさんだリーグ戦になってしまったわけだが、開幕戦の鳥栖戦の引き分けのみだったら昨季のドロー地獄の連鎖から抜け出せない印象で数カ月を悶々と過ごす羽目になった可能性もあるだろう。2月に見せた今年のサッカーの原点は、9か月後に今季の優勝を決める試合であの日よりも洗練された姿になっていた。リーグ戦、最後の一歩であるこの勝利がシーズンの初戦とつながったまま成し遂げられたということはとても感慨深い。

 スタイルを示し、それに合う人材を集めて育て、年々少しずつ大きくなっていくのが川崎のここまで進歩の仕方。4-3-3での新スタイルに1年間取り組んで勝ち取った2020年のリーグタイトルは、川崎がまた少し先に進むことが出来たことの証明なのかもしれない。

 やったぜ!!!優勝だ!!!!

今日のおすすめ

 大島僚太⇒中村憲剛の交代シーン。いうまでもない。

試合結果
2020.11.25
明治安田生命 J1リーグ 第29節
川崎フロンターレ 5-0 ガンバ大阪
等々力陸上競技場
【得点】
川崎:22′ レアンドロ・ダミアン, 45′ 49′ 73′ 家長昭博, 90′ 齋藤学
主審:西村雄一

 

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