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「磨いて増やしていかなければ」~2020.10.4 プレミアリーグ 第4節 アーセナル×シェフィールド・ユナイテッド レビュー

 スタメンはこちら。

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目次

【前半】
限られていて尖っていない

 「5-2-3で戦うのか、4-3-3で戦うのか?」
 メルカートで飛び交う補強候補と共に幾度となくこの夏のアーセナルファンの間で議題になったトピックスである。この日のスタメンも5-2-3なのか、4-3-3なのか判別がつきにくいメンバーだった。ただ、実際に蓋を開けてみるとどこまでこの区別に意味があるんだろうと思うようなアーセナルのボール保持であった。

 ボール保持における最終ラインは3枚。CBが本職のルイスとマガリャンイスは中央よりやや左に2枚で並ぶ形。本来はMFのエルネニーがその右に入る。ブレイズの2トップに対して数的優位を得る。その分ベジェリンとティアニーが高い位置を取る形である。

 アーセナルのボール回しで強みになったのは左サイド。マガリャンイスから外のティアニーに展開して、サカかオーバメヤンにつなぐ形である。アーセナルの最終ラインはブレイズの2トップを揺さぶる横パスを使いながらも最終的に左で勝負する構え。マガリャンイスとルイスは相手を引き寄せてからボールを動かす意識があったので、前プレス隊を十分に引き付けてから列を超すパスを出していた。

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 特にこの日は絞って間で受ける役割を担うサカが前を向くことで攻撃が加速する印象を受けた。パスはやや各駅停車気味だったが、左サイドにはティアニー、オーバメヤン、サカがポジションを入れ替えながらボール回しを行っていたし、誰でも大外から飛び出す役割を担うこともできるキャラクター。少しブレイズは狙いを絞りにくかったかもしれない。

 ボールを握っていたのはアーセナルだが、試合の主導権まで完全に手中に収めていたかといえばそれはまた別の話。確かに左サイドの動きは強みだったが、懸念はいくつかあった。まずは左サイドから供給されるラストパスが山なりのクロスが多かったこと。アーセナルの前線はブレイズのDFラインに対して純粋な高さ勝負を挑めるほどの強度はない。

 序盤は数本、ブレイズのDFラインを押し下げながらのクロスがあったもの、その後は段々とシンプルなクロスが増えてくるアーセナル。クロスの精度が低くないので悪くはないが、確実に仕留める武器としては物足りない。

 エルネニーが低い位置で舵取りを任された右サイドも悪くはなかったが、深い位置まで入り込めていたかは微妙なところである。ウィリアン、ベジェリンとの連携は良かったとは言えないし、単純なつなぎでのミスも多かった。ベジェリンはドリブルで内側に進路を取ったり、エルネニーは少し高めの位置から逆サイドへの展開を行ったり受けたりできていたし、ベジェリンはカットインのドリブルからブレイズのブロックに切り込む場面も。ウィリアンはブレイズがプレスに来た時に低い位置まで手助けに来たりなど、個々人でできることはやっていたが、ユニットとしての強みはこの日は見られなかったように思う。

 中央はほぼ機能しなかったといってもいいだろう。深い位置を取るエンケティアはなかなかボールを受けられず孤立。たまにボールを受けるものの、受け手とコンビネーションでスムーズなポストがなかなかできず、相手を背負ったまま大きく後ろに戻すだけのパス回しになってしまう。内に絞るサカもそうだが、ポストを試みるも受け手との距離が遠く、ポストプレーが打開になっていない状況だった。

 低い位置でのボール回しに加わるセバージョスはポジションを守ることを優先。ブレイズの2トップの間に立ち、彼らを内側からなるべく離さないようにした。その分、ややボール回しにおける存在感は低かったセバージョスであった。

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 というわけで右と真ん中はなかなか実にならず、左は武器が貫くほどは鋭くないという状況のアーセナルであった。もう少しMF-DFラインで前を向ける機会を得たり、裏狙いでここを広げる動きがあっても良かったがあまりそういう試みは少なかった。

 ブレイズの守備は2段階。引いた位置の話は上で少ししたので出ていくときの話を。中央のスリーセンター、ワイドのWBというバックアップを受けた2トップが旗頭となり、アーセナルの低い位置からのビルドアップを追いかける『対アーセナルプレスチャレンジ』を彼らも敢行。結果は引き分けだろう。ブレイズがプレスで引っかけて決定的なチャンスを得ることもなければ、アーセナルが疑似カウンターのような華麗なプレスの脱出から得点機を迎えることもなかった。痛み分け的な。立ち上がりのルイスの疑惑のホールディングが一番危なかったかもな。

 ブレイズの前進はシンプルな長いボールが中心。マクゴールドリックのポストとバークのスピードという2トップでの勝負。ただ、これはちょっと消極的すぎたきらいも。手早い攻めはルイスとマガリャンイスの2人に多くの自由を許してもらえなかったブレイズのアタッカー陣であった。

 リトリートした時のアーセナルの守備はサカとベジェリンをWBとする5-2-3のような形。こうなるとさすがにブレイズはなかなかエリア内に入り込むことができない。敵陣までボールを運べる機会も多くなく、シュートまでとなるとほぼ皆無であった。

 アーセナルはボールを握るもシュート機会までは数少なく、ブレイズは0-0で粘り続けることはできたもののボールを敵陣まで運べる道筋は見えない。両チームのファン以外はあくびしてしまいそうなじりじりとした展開で試合はスコアレスのままハーフタイムに突入する。

【後半】
配置変更+前半の良さ

 アーセナルがボールを持ち、ブレイズが受けるという関係性は前半と同じ。少し変わったのはCHの立ち位置だ。前半に低い位置に降りていたのはエルネニーだったが、後半に低い位置に降りるようになったのはセバージョス。エルネニーはCBの右側に降りたが、セバージョスはCBの間に入る形で最終ラインに。その分、両CBは開いた形でボールを出すようになった。

 これにより後半のエルネニーはより高い位置に進出するようになった。この後半の形の方がより4-3-3っぽいような気もする。前半よりは左右対称だし。2トップの間で前半に浮いていたセバージョスを下すことで開放し、その分右サイドのエルネニーを高い位置でボールに関与させることで、前半詰まり気味だった右サイドのボール回しを何とかしようという算段だったのではないだろうか。逆に右サイドにボールを集めて、逆サイドで1人浮いたセバージョスからオーバメヤンへの裏への決定的なパスが出る場面もあった。左偏重だった前半とは異なるテイストだ。

 10分ほど過ぎた頃にはエンケティアに代えて投入されたペペも右サイドに。CFはオーバメヤンが久しぶりに務めることに。ペペの登場で前半と比べればはるかに右サイドの高い位置でのボール保持は目立つようになった。

   そしてそれが報われたのが61分のこと。ぺぺ、ウィリアンの囲まれながらのボールキープはなかなかにぎこちなかったが、遅れてPA内に侵入してきたエルネニーが詰まりを解消。彼を起点にオーバメヤンとのワンツーで抜け出したベジェリンが逆サイドのサカにアシスト。ようやく先制点をこじ開けた。

 高い位置で進出したエルネニー、そしてスマートなポストプレーを決めたCFのオーバメヤンという配置変更を活かした組み合わせに前半から繰り返されていたベジェリンのラインブレイクが加わり、泥臭いボールキープが美しいゴールに様変わり。アルテタ・アーセナルらしい華麗な崩しからの先制点になった。

 先制されたことによって出ていかなくてはならなくなったブレイズ。そんな相手をあざ笑うかのように追加点を決めたのが二コラ・ペペである。ベジェリンとのワンツーでのコンビネーションでの突破となったが、一つ目のパスの時に2人を引き付けていた分、リターンパスに抜け出した時にスペースを得ることができたペペ。ドリブラーとしてのスペシャリティとスコア的に追いかけなければいけないというブレイズの状況が合わさった追加点といえるだろう。

 その後はセバージョスとエルネニーの重心を下げてビルドアップの安定を図るアーセナル。左に移動したウィリアンが詰まりそうになったら手助け。この試合ではミスが目立ったウィリアンだけど、この部分は相変わらずさすがである。

 ブレイズはシャープを投入し、4-3-3に変化。前に人をかけることでボールを奪い返しに来る。これは割と効いていたように思う。徐々に試合のテンポが上がっていくと、アーセナルに一矢報いることに成功。ロングボールを拾ったバードックがマクゴールドリックにラストパス。空けてしまったアーセナルのバイタルからミドルシュートを叩きこむ。パスを出した後のバードックの外に逃げるランが内側を空ける手助けになったか。ブレイズにとってはうれしい今季初ゴールになった。

 ボールを握って攻め立てたブレイズだったが反撃もここまで。ホーム開幕戦に続いて終盤は冷や汗をかいたアーセナルだったが、勝利で4位浮上を決めた。

あとがき

■初得点は巻き返しにつながるか?

 今季初ゴールを決めることはできたブレイズ。しかしながらエミレーツから勝ち点を持ち帰ることはできなかった。我慢のプランの中で先にアーセナルに得点を許してしまえばかなり厳しい展開になってしまうのは仕方がないところ。ただ、リーズ戦はもう少しゴールに迫れているシーンが多かったので、ややアーセナルをリスペクトしすぎている感はあった。

 ただ、彼らにとっては初ゴールを決めるか決めないかは雲泥の差だろう。まずは勝ち点1を。代表ウィーク明けからの巻き返しの可能性は十分にある。

■得点機会を決定機でカバー

 前半は攻め手が少なく、その精度も少ない状況に苦しんでいた。得点はきれいだが、得点機会がきれいな形以外で訪れない故に、シュート数が伸びてこないのは気掛かり。限られたチャンスをゴールに結びつけることで勝ち点をかき集めている印象だ。

    補強の噂にも振り回された数週間だったが、代表ウィーク明けにはトーマスも合流する。得点も失点も成果と課題と結びついたこの試合を精査して、完成度を高めるフェーズに入ってほしいところである。

試合結果
2020.10.4
プレミアリーグ
第4節
アーセナル 2-1 シェフィールド・ユナイテッド
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:61′ サカ, 64′ ペペ
SHU:45′ マクゴールドリック
主審:リー・メイソン

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