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「仏の顔は二度まで」~2020.9.12 プレミアリーグ 第1節 リバプール×リーズ レビュー

 スタメンはこちら。

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目次

【前半】
リーズってどんなチーム?

 日程くんが盛り上げ上手なのか、盛り上げ上手な人がスッとこのカードを開幕戦に忍ばせたのかは知らないが、開幕戦の再注目はおそらくこのカード。自身が率いるチームを昇格に導き、満を持してのプレミア初参戦となったビエルサをクロップのチャンピオンチームが迎え撃つとなれば盛り上がらないわけがない。といっても僕は初め数十分寝坊しましたけども。

 さて、リーズは今年の頭にアーセナルとFA杯で対戦している。のでレビューを書いていたりする。

 彼らのトレードマークはとてもタイトなマンマーク。そして広いサイドに抜けるようにプレスを長いパスで回避をしていくボール回しである。

 多くのチームはマンマークだったりゾーンだったりを部分的に取り入れつつ、その比率を振ってやり方を決めているのが普通。それでいうとビエルサのリーズはかなりマンマークに大胆に振っているチームである。中盤3枚、サイドそれぞれ2枚をかみ合わせて守る。トップのバンフォードが1人で数が合わないのと、後方の2CBが相手のCFに対して1枚多く構えているのもアーセナル戦と同じ。

 最終ラインに1枚余らせている分かどうかはわからないが、リバプールのボールホルダーが目の前の選手を剥がすと、近くのリーズの選手がスッとんできて捕まえに来るというムーブの繰り返し。とにかくボールホルダーを捕まえることが優先である。そして逆サイドでも低い位置でも平気でついていく。顕著なのはリバプールの左サイド側。ロバートソンが高い位置を取れば、コスタが降りてついていくし、マネにはアイリングがぴったり。降りる動きはもちろんのこと逆サイドまでついていく。

 アーセナル戦と少し違ったのは、人数不足のトップへの援軍。アーセナル相手にはWGが前に出ていくことで人数を確保していたが、この試合はインサイドハーフが前に出ていく機会が多かった。

 ここはおそらく相手に合わせた部分。中盤経由でのビルドアップが多いアーセナル相手には中盤のマッチアップを維持。SBが長いボールでプレス回避が可能でさらに起点にもなれるリバプール相手にはSBのマッチアップを崩さないということだろう。

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 というわけでしょっぱなっからバチバチのデュエルであったリバプールのボール保持時の組み合わせ。相手を捕まえて自由を奪いたいリーズだったが、対面で剥がされてエリア内に侵入されることもしばしば。そんな中でサラーのシュートがエリア内でハンドを誘いリバプールが先制点を得る。

 しかし、エネルギッシュな守備を見せていたリーズはひるまない。攻撃に移ると非常に手早さが目立った。単純にリバプールを撤退前に仕留めたかったのか、大きい展開を素早く使いたかったのかはわからないが、積極的に縦に早いボールを使っていた。

 守備時にリバプールの選手にマンマークでついていく分、ボール奪取後のリーズの配置は結構無茶苦茶なことも多い。なので位置的なアプローチでの解決はそこまで見られなかった。原則があるとすればボールサイドの裏抜けは必ず怠らないことだろうか。そして、その選択肢を積極的に使うこと。ボールホルダーは裏に抜けるパスを出すか、逆サイドに流してサイドチェンジを行うかの2つの選択肢を選ぶことが多かった。

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 相手の良さは割とすんなり受けるリバプール。なのでこの試合もリーズの良さをがっちり受け止めていたし、普通に失点を重ねていた。リーズの同点弾はフィリップスの長いパスに裏を抜けたハリソンがアレクサンダー=アーノルドを出し抜いてゲット。広いスペースで手早く攻撃を完結させることに成功した。しかし直後、セットプレーからのファン・ダイクで再びリバプールがリードを奪うことになるのだけども。

 再びリバプールのリードとなった試合はリーズがどうリバプールのプレスをボール保持でかいくぐるかの勝負に。特にリバプールの3センターを交わせるかどうか?というのがリーズの争点であった。

    リーズはCBが開き、SBが上がりアンカーとフラットなポジションに。2-3のような形でポゼッションする。リバプールはアンカーをフィルミーノが監視、両WGが外切りでのプレスを敢行。3センターが激しい横移動でリーズの出所を塞ぐ。この時間帯はワイナルドゥム、ヘンダーソン、ケイタの壁にポゼッションが引っかかり、ショートカウンターを食らう場面もあった。

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 ただし、ひとたび相手のMFラインを越えれば一気にチャンスに。この日のリバプールの最終ラインは若干不安定。先制点の場面もアレクサンダー=アーノルドが簡単に振り切られてしまったように、さらされた場面での脆さが目立つ。同点のシーンもさらされたDFラインのミスから。ファジーなところに出た浮き球をファン・ダイクが処理ミス。プレゼントをもらったバンフォードがゴールに流し込む。ファン・ダイク、ちょっとCL後かららしくない気がする。心配。

 よっしゃこれでいけるぜ!からのセットプレーからのリバプールの得点。さっきも見たぞ!それ!2セット目!というわけでいけそうでいけないリーズを尻目にセットプレーで点を重ねていくリバプールであった。

 試合は3-2。ホームのリバプールリードでハーフタイムを迎える。

【後半】
弱まるマンマークで押し込む王者

 「リーズは前半枠内シュートが2つしかない」とは後半開始直後の放送席のコメント。いわれてみれば確かにリーズは惜しいところまではいくものの、得点シーン以外は芯を食った崩しはなかったかもしれない。リバプールもセットプレーで得点を重ねているものの、芯を食った崩しでの決定機は数えるほど。なんだかんだでリーズ守備陣が体を張ってブロックするシーンが多かった。

 テンションの高い前半を過ごしたことで、さすがに両チームとも非保持の際のプレッシャーは弱まる。特にリーズはややフェイスガードが解けてしまった感じ。ボール回しでも前半に指摘したリバプール中盤の防波堤をなかなか越えられずに引っかけてしまう。

 ようやく防波堤を越えて相手陣に攻め込めるようになったのが60分過ぎのこと。まずは左サイドからダラスが深い位置まで侵入してあわやの場面を作る。そして66分。この日は上下動に大忙しだったコスタが幅を取るように相手を引き付ける。自ら作った角度から針の穴を通すスルーパスで前線に飛び込んだクリヒがこれを仕留める。

 WGとしての幅取りとエリア内に飛び込むというインサイドハーフとしての役割、共に求められた動きが結実した美しい得点であった。ナイス幅取り&ラストパスである。

 それでも主導権はリバプール。マンマークの威力が弱まったリーズに対してPAまで迫る場面を増やしていく。バンフォード⇒ロドリゴに代わって、裏に相手を引っ張るフリーランがなくなった印象を受けた。ちょっとフィットには時間がかかるかもしれない。

 コスタとハリソンの両WGはマジでよく走っているが、それ以上にリバプールの3トップはまだまだ元気。サイドでの多角形からリーズのズレを作り、3トップがオフザボールで抜け出す。86分のフィルミーノのフィニッシュを見るとゴールまではあとほんの少しというところ。

 しかし、その「ほんの少し」をもたらしたのはリバプールの3トップではなくロドリゴ。CKからの対応で軽率に飛び込んでファビーニョを引っかけてしまい、PKを与えてしまう。結局これが決勝点に。試合を通してチャンピオンに食いついていったリーズだったが、最後の最後もセットプレーに泣いてしまう。

 試合は4-3。派手なスコアの開幕戦を制したのは王者のリバプールであった。

あとがき

■出力はOK、持続力は?

 善戦はしたものの結局敗れてしまったリーズ。得意な展開に持ち込むことさえできれば、アンフィールドを脅かすだけのポテンシャルは見せつけた。昇格組の中で最も地力があるのは間違いないだろう。この試合の敗因は明らか。セットプレーの拙さだろう。2回までは再び得点をとることで許されたが、3回目は許されなかった。2回許されるだけでもすごい気はするけども。

 ポテンシャルは確かだが、その分コンディションには気を遣わなくてはいけないスタイル。特に守備では前の選手の消耗度が非常に高いので、少数精鋭主義のビエルサがどうかじ取りをしているかが見もの。最大出力は折り紙付き。疑う余地は全くない。問題はどれだけ持続してこのスタイルをキープできるか。上位進出へのカギは間違いなくそこになる。

■守備陣にコンディションの上積みはほしい

 昨年の序盤戦を思い返してもリバプールは相手の良さを引き出したうえで勝つ試合が多かった印象である。このリーズ戦はまさにその象徴。プロレスラーなら間違いなく大人気になるタイプである。クロップの言う通り序盤ならばこのコンディションも許容範囲といえるだろう。特に前線は90分走り切るスタミナを見せつけた。準備はOKという風情だ。

 ただ、本文でも触れたように最終ラインのコンディションが上がってこないと不安が募る。リバプールのアグレッシブなスタイルは広い後方をカバーできるDF陣がいてこそのもの。土台がぐらつけばこの日のような複数失点も珍しくないものになってしまう。チェルシー、アーセナルとスピード豊かなアタッカー陣を持つチームとの連戦に最終ラインがどう対峙するかは注目していきたいところだ。

試合結果
2020.9.12
プレミアリーグ
第1節
リバプール 4-3 リーズ
アンフィールド
【得点者】
LIV:4′(PK) 33′ 88′(PK) サラー, 20′ ファン・ダイク
LEE:12′ ハリソン, 30′ バンフォード , 66′ クリヒ
主審:マイケル・オリバー

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