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「ぐちゃぐちゃに歌い継いでいく」〜乃木坂46 8th year birthday live 雑感

    今年も終わってしまいました。乃木坂のバースデーライブ。

    昨年は物販待機列でこんなトチ狂ったモノを書いているので、今年も雑感程度には振り返りましょう。思い出かたちに残して行こうぜ。

目次

バースデーライブとは

    乃木坂やバースデーライブに知識がある方はここは読み飛ばしていい。毎年乃木坂はCDデビューをした2012/2/22を誕生日として祝うライブをやる。開催は基本的にはこの時期だが、会場が抑えられなくて夏にやる(2016,2018)こともある。乃木坂の今までの楽曲を「全曲披露」するコンセプトをベースに1stシングルから順番に乃木坂のライブを振り返るのが基本だが、卒業ライブのために順番がぐちゃぐちゃになったり(2017)、そもそも違うコンセプトを打ち出した(2018)時もあった。今年は全4日間で、199曲を披露した。というわけで2日間参加した自分は100曲くらい聞くことに成功である。

    今年の披露曲順はリリース順ではなく完全にシャッフル!というわけで何が出てくるかは完全にお楽しみ状態なのである。

   毎年、バースデーライブを見ていると、なんとなく年ごとにテーマを感じるものである。昨年は上記のレビュー中にも書いたとおり初日にメンバーがやたら「エモい」を連呼していたのが印象的であった。もちろん、今年のバースデーライブだって「エモい」ことには違いないのだが、個人的にはもう少し違うところにピントが合っている気がした。

新内眞衣が説くバースデーライブの意義

   バースデーライブの最も難しい要素の1つは「卒業したメンバーの楽曲をどのように扱うか」である。「サヨナラの意味」「制服のマネキン」のようにセンターのメンバーがいなくなっている曲もあるし、卒業したメンバーがソロで歌う曲もある。しかし、メンバーは移り変わっていく。生駒里奈も西野七瀬ももうバースデーライブには参加しない。こういった曲をどのように歌い継ぐか?は「全曲披露」というコンセプトを掲げるうちは、バースデーライブの大きな見どころとなっている。

    ただし、歌い継ぐメンバーの重圧は大きい。昨年のバースデーライブでは、卒業したメンバーの代わりにユニットに入った3期生の多くが(非常に頑張ってはいたものの)こわばった表情でのパフォーマンスに終始するのが目立った。オリジナルのメンバーの中に1人だけ新顔が入るのは難しい。3期生の中にはすでに加入前に「乃木坂46」という存在にあこがれていたメンバーも多い。たいていのファンは昔を愛するし、オリジナルのメンバーを大事にする。そしてそのことを代わりに入る彼女たち自身も知っている。プレッシャーに押しつぶされそうになるのも無理はない。

    そんな中、3日目のMCで2期生の新内眞衣はバースデーライブについての自身の思いを語った。

「乃木坂は8年やってきて私たち後輩は先輩がやってきた曲を任せてもらえるのは嬉しい。でもファンは皆それぞれの場所や曲に思い入れがあるから、いろんなことを思うしいろんなものを背負わないといけない。私たちメンバーも覚悟の上で任せてもらった曲を披露している。なので、『なんでこのメンバーが?』とか『ここはこの子がよかった』とか思うところもあると思うが、同じテンションでファンの方と一体になりたい。私たちは私たちなりに一生懸命やっていることが伝わればいいと思って、バースデーライブをやっている。」

    音源がないので、意訳になるが大まかにはこんなことを言っていた。彼女は2期生であるがメンバー最年長でもある。たくさんの曲のポジションを卒業メンバーの代わりに努めてきた後輩であり、多くのメンバーの先輩である彼女だからこそ言える言葉である。

   4日目に深川麻衣のソロ曲である「強がる蕾」を披露した4期生の賀喜遥香はAメロから涙で歌詞を詰まらせてしまい、見ているこちらとしてはなんとか無事に歌いきれるかどうか非常にハラハラする状況であった。しかし、彼女は徐々に立て直し、曲が進むにつれて堂々と歌うようになっていった。

    あの時の賀喜遥香に新内眞衣の言葉がよぎったかどうかはわからないが、上記の彼女の言葉は多くの後輩の助けになったことは間違いない。そして、「強がる蕾」を披露した時の会場の賀喜遥香を後押しする空気感はまさしく「同じテンションでファンの方と一体になる」という、彼女が説いたバスラの意義があらわれた一コマだったように思う。

    3日目に話を戻せばこの日は西野七瀬の楽曲が非常に多いセットリストになっていた。乃木坂で最も多くソロ曲を持っている西野七瀬。「西野七瀬のソロ曲メドレー」という形で、彼女と縁が深い3人のメンバーがそれぞれの表情で歌い上げるのが印象的だった。1番手の与田祐希は緊張をごくっと飲み込みながら、2番手の伊藤純奈は自らの持てるポテンシャルを存分に発揮しながら見事に歌い上げた。

    西野七瀬の親友である3番手の高山一実は「光合成希望」を披露。同曲は去年、高山が一人で歌いだしながらもBメロで西野七瀬本人がサプライズで登場。サビを仲良く2人で歌う演出だった。しかし、当然今年は歌っている途中に西野七瀬は出てこない。1年前のあの日と同じ曲を大切に、そしてどこか寂しそうに歌う高山の姿が印象に残った。

 そして、この日の最終盤に披露された「帰り道は遠回りしたくなる」は西野七瀬のラストセンターシングル。涙ぐみながらセンターポジションでパフォーマンスをした遠藤さくらも上記3人と同じように紛れもなく西野七瀬の楽曲を歌い継いだメンバーである。

北野日奈子が見せたぐちゃぐちゃな表情

 先述の新内眞衣の言葉があったMCパートにて、齋藤飛鳥はこんなことを言っている。

 「バスラって感情がぐちゃぐちゃになる。それが好き。」

 4日目。この日は西野以外の卒業生のソロ曲のメドレーがあった。盟友・橋本奈々未のソロ曲「ないものねだり」を緑色のサイリウム(橋本奈々未のサイリウムカラーだ)に染まる中で歌い上げた白石麻衣と松村沙友理は曲の締めに指で「7」と「3」を作って見せた。多くのファンにとってこの日、最も心に残ったシーンになったに違いない。

 が、筆者が個人的にこの日1番グッと来たのはその直後の曲。中元日芽香のソロ曲「自分のこと」を歌い上げた北野日奈子と寺田蘭世である。

    特に北野日奈子は非常にこわばった表情でステージに立っていた。北野と中元は2017年に発売されたシングルで共にアンダーメンバーの楽曲のセンターを務めた。タイトルは「アンダー」。文字通り、アンダーメンバーの存在意義について歌った楽曲である。ただ、この曲は結構歌詞が重たい。2017年初頭から体調が万全でないことが多くなった中元は同年11月にグループを卒業。北野も握手会やライブの欠席が多くなり、翌年に活動を休止する。今では北野が立派にセンターを務める「アンダー」も当時は「病み曲」だと揶揄されたこともあった。

 星野みなみや相楽伊織、衛藤美彩など多くのメンバーのサポートもあり、彼女は2018年8月のシングルから活動を再開する。座長を務めたアンダーライブでは自身がセンターを務める「日常」など、従来の天真爛漫なキャラクターとは一線を画すクールなパフォーマンスを披露。表現の幅を広げて、今では初の福神メンバー入りも果たし、活躍している。

    そんな彼女があの時「アンダー」のセンターを共に務めた中元の楽曲「自分のこと」をどういう気持ちで歌ったのだろう。彼女のことも思いながら?寂しい気持ちで?こわばった表情からはなにも読み取ることはできなかった。ただ、この曲の歌詞は、活動休止時の北野自身に重なりそうな歌詞も多い。

自分のことがわからなかった
なぜ私はここにいるのか?
何を求められてるのだろう
真っ暗な闇の中でもがいてた

 ひょっとすると、苦しんだ時期の自分のことも重ねて?「自分のこと」の締めは徐々に明るくなっていく様子が歌詞に描かれている。

自分が少し好きになれたよ
やっと笑顔になれた気がする
これから先の長い未来が
ワクワクして楽しみになって来た

 歌詞が明るくなるにつれて、彼女自身の表情も笑顔が目立つようになる。中元のこと、自分自身のここまでの歩みを前半でかみしめた後、未来に向けて進んでいく決意を笑顔で見せてくれたように思えた。広がった彼女の表現の幅を味わうことができたし、齋藤飛鳥の言葉でいう「ぐちゃぐちゃな感情」の一片をこの楽曲を通して感じることができたように思った。

200曲目に思う白石麻衣のこと

 さて、今回が自身最後のバースデーライブ参加となる白石麻衣は3日目からの登場になった。彼女が舞台に立つと、とにかく周りのメンバーは楽しそうである。曲中にがっつりキスをしたせいで白石の頬を赤くしてしまった松村沙友理。白石が気にしない素振りを見せると、松村は「やさしいねぇ!!!!」と感激していた。齋藤飛鳥は次の曲のために白石が脱いだコートを渡されたときに「いいにおい!!」と興奮していたし、表現の仕方は様々だがとにかく彼女の周りのメンバーは幸せそうな表情なのである。

 4日間に及ぶバースデーライブの大トリ。乃木坂にとって200曲目となったメモリアルソングはそんな白石の卒業前のラストシングルである。この日初披露となった「しあわせの保護色」は「身近にある幸せを見つけましょう」というメッセージが込められた歌。

   このタイトルと歌詞を見て、自分が思い出したのは白石の卒業発表に際して、多くのメンバーから出てきた彼女とのエピソード。そのどれもが、メンバーの日常を気にかけている彼女のやさしさがあふれるものばかりだった。人気者で華があるだけではなく、彼女は気遣いの人である。だからこそ、彼女と絡むメンバーはそろって幸せそうな表情を浮かべるのだろう。そして、彼女自身も幸せそうにいつも笑っているのだろう。

 この曲の振り付けの中で、白石と3期生の大園桃子が手を合わせる部分がある。大園は白石を最も慕う後輩の1人である。3列目の中央からこの日の大園は笑顔で白石を見ていた。しかし、大園桃子はメンバーの中でも1,2を争うくらい感情がストレートに出る人物である。自身が愛する白石とのパフォーマンスの機会が徐々に少なくなっていけば、また違った感情が彼女の中に芽生えるに違いない。おそらく、白石の卒業までにたくさん涙を流すことになるだろう。

 来年のバースデーライブにはもう白石麻衣はいない。もし、全曲披露のコンセプトが踏襲されるのならば、曲によっては大園桃子が白石のポジションを担当することもあるだろう。ここから彼女が感じるあらゆる気持ちが来年のバースデーライブを彩る新しい「ぐちゃぐちゃな感情」に昇華されることを期待したい。

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