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「理詰めで挑む理不尽な舞台」~2020.2.19 UEFAチャンピオンズリーグ Round 16 1st leg トッテナム×ライプツィヒ レビュー

スタメンはこちら。

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目次

【前半】
噛み合わせ+CBのスキルで優位に

 プレミアのウィンターブレイクに乗じて、先日初挑戦したブンデスリーガのレビュー。題材はCLの予習も込みでバイエルン×ライプツィヒだった。

 ライプツィヒへの第一印象は「思ってたよりだいぶ静かですね!!」だった。これはいつも通り?それとも首位攻防戦のバイエルン仕様?と悩んでいたところ、ご丁寧に教えてくれた方がいらした。

 というわけで相手を飲み込むようなスタイルではないらしい!思ったより静的なんだなというのが現状のライプツィヒへのイメージである。

   一方でスパーズは打ち手が限られる。直近のアストンビラ戦では4-4-2ブロックで迎え撃つも、連携面も含めて精度はイマイチ。ケインの離脱を発端とする歯車のズレをなかなか止めることができない。それに加えてソンの長期離脱が確定。かなり苦しい状況である。

   この試合の前半のスタイルを決めたのは、そのスパーズのしんどいチーム事情によるところが多いと思う。スパーズの狙いはボールをライプツィヒに渡して、4-4-2ブロックを組む。そこから前線に長いカウンターを打ち込む事で攻勢に転じることが狙いだった。

   両SHを務めるベルフワインとゲドソン・フェルナンデスはライプツィヒのWBを監視する意識が強め。ルーカス+アリの前プレ隊に加わることは非常に稀だった。したがって比較的後ろへの意識が強かった4-4-2ブロックであった。

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   スパーズとして困ったのは、ライプツィヒの低い位置からのビルドアップ。3バックで2トップのプレス隊と相対するときに大事なのは余った1人が何ができるか?逆にボールを追う側はだれにボールを持たせちゃいけないか?なのだが、ライプツィヒの3バックは全員ボールが持って相手の出方を窺えるようだった。これかスパーズにとっては非常に厄介だったと思う。

   加えてライプツィヒの3-4-3に4-4-2で立ち向かうことを想定すると、単純な噛み合わせが非常に悪い。ハーフスペースの出所も受けどころも潰しにくく、CHを除けば間を繋がれやすい配置になっている。

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    というわけで開始早々間をつなぐパスワークからチャンスを数多く迎えるライプツィヒ。1本くらい決められないのが不思議なくらいだった。

    元々の噛み合わせの悪さに加えて、先述の「3CB誰もがボール持てる問題」が重くのしかかってくるスパーズ。サイドからCBが持ち運ぶライプツィヒがスパーズに選択を迫る。放っておけば、ハーフスペースにくさびを通されてしまう。したがって、WBを見張る!と決めたSHが出て行かざるを得ない。そうすると今度は大外が空いてしまう。

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    スパーズのSHはどちらも今冬加入の選手。連携しての守備はさすがにまだ未完成。受け渡しもなかなかうまく行かず、ライプツィヒは常にフリーの選手を作れる形に。仮にスパーズが2トップの片方から追いかける選択をすれば、今度は中央から持ち運びが可能に。実際にど真ん中からシックにダイレクトにくさびを入れるシーンもあった。

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   前線はポジションは流動的だが、シックはポスト役、ヴェルナーは幅広い範囲に顔を出して受ける役割をこなしていた。ライプツィヒが序盤によく見せたビルドアップは2トップ脇からCBが侵入し、間受けする前線にくさびを入れる。パス交換から、フリーの選手が大外のアンヘリーニョに長いパスを送る。

    オーリエが左に流れるヴェルナーの動きに釣られるシーンが多く、アンヘリーニョのところは空く機会が頻繁にあった。ここからアタッキングサードに一気に侵入!というのがライプツィヒ前進の王道パターンである。

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    図では中央のパス交換を省略したが、大枠はこんな感じ。このやり方で序盤はライプツィヒがゴールに迫るシーンを多く作った。

    スパーズのボール保持の局面は基本的にロングカウンターが主体。ライプツィヒのCB2人のポジションが被ってあわや!というシーンのように、序盤は数回チャンスを作っていた。一方で30分のシーンのようにロ・チェルソとベルフワインの連携ミスでカウンターが完結できない場面もあった。ここのあたりは「いつものメンバー」ではない、連携面での弱みが見えてしまったように思う。

    遅攻に関しては、ややオーリエを活かす意識は強めだったか。5-2-3であれば2センターの脇は空きやすいし、対面の相手がアンヘリーニョならフィジカル面ではオーリエが上。機会自体が少ないので、どこまで狙いかは分からないが、オーリエをターゲットした長いボールはちらほら見られた。

    ライプツィヒは前半の途中からアンヘリーニョが内側のレーンを使うようになる。ヴェルナーが大外を意識することで、今度はオーリエの意識を外に広げる作戦か。ザビッツァーが少し前に出てオーリエが外に向かう分。ケアが甘くなったハーフスペースを使うシーンなどもあった。

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    ボール保持で理詰めでゴールに迫るライプツィヒに、散発的だが決定機がないわけではないロングカウンターで対抗するスパーズ。試合はスコアレスでハーフタイムを迎える。

【後半】
PKシーンは軽率だけど…

    後半はスパーズのボール保持のシーンから始まる。デイビスが3バックの一角のような位置に入り、オーリエが高い位置に上がる3バック可変(モウリーニョが就任当初によくやっていたやつ)が、前半よりも顕著になった気がする。

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   ライプツィヒの3枚の前線の守備はフラットな3というよりは、前2枚(ヴェルナー、シック)+中盤を監視する1枚(エンクンク)という構成だったので、3枚でも数的には有利。

    前半にも述べたとおり、スパーズが横に揺さぶると、ライプツィヒは中盤の2枚のスライドが間に合わない。後半最初の決定機であるオーリエ→ルーカスのクロスはこの横の揺さぶりを使ったものである。

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    最終ラインに負傷者が多いライプツィヒ。こういったクロスを受け続けるのは得策ではないとナーゲルスマンは考えたのかもしれない。オーリエにはアンヘリーニョが捕まえに行くなど、素早く前かがりにシフトするライプツィヒ。スパーズがまったりボール持つのを早々に阻害しにかかる。ナーゲルスマンは打ち手が早い。

    徐々にボールを取り返すライプツィヒ。スパーズはアリとベルフワインの位置を入れ替え。これに伴い、ライプツィヒ最終ラインへのSHからのチェックを解禁したので、おそらくアリの方がベルフワインよりもプレスに出ていくかの判断に優れていると考えたのだろう。

    CHもハーフスペースへの楔をする動きが目立ち出したスパーズ。縦に速いライプツィヒの攻撃に対して比較的手は打ったと思う。

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    それでもライプツィヒは幅を使った攻撃で上回ってくる。押し込まれてライプツィヒの最終ラインにプレッシャーがかからなくなったスパーズ 。右→左に展開すると、やや左に流れてきたシックへの楔から一気に加速。再び右に展開したところでデイビスがPKを献上する。

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    デイビスのチャレンジ自体は軽率だが、一連の流れはライプツィヒの掌の上にあったように思う。シックのポストを阻害したいウィンクスは逆サイドに引っ張られていたし、オーリエはきっちりヴェルナーによって大外にピン止め。加えてPK献上の瞬間にはデイビスが倒したライマー以外にも、右サイドにはライプツィヒの選手が2人フリーでいたことを考えれば、うまくライプツィヒがボールを動かした賜物と言っていいPKだろう。これが貴重なアウェーゴールにつながった。

 反撃に出なくてはいけないスパーズ。エンドンベレとラメラを投入する。これに伴いロ・チェルソは右サイドに移動。スパーズの右サイドはオーリエが大外を使うため、内に絞った位置で攻撃にアクセントつけられるロ・チェルソが適任と考えたのだろう。実際にある程度効果は出ていた。いい位置でFKを得ていたし。エンドンベレは対面相手を剥がすドリブルで中盤から空いてブロックに穴をあける役割ではないだろうか。

 それに対抗するライプツィヒ。エンクンク→ハイダラの交代で5-3-2に移行。これでライプツィヒは内に絞るSHと外に開くSBの両方のケアが可能になる。フレッシュなハイダラが入ったことでスリーセンターはスライドを強化。ライプツィヒはボールサイドにプレッシャーを強めにかけるようになってきた。

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 スパーズは個々のドリブルチャレンジでこじ開けようと試みるが、徐々にライプツィヒが中央をクローズ。最後はヴェルナーも下がり気味の5-4-1になってドリブルでのチャンスメイクには複数人突破が必須の様相になってしまった。関係ないけど、最後の最後に俺の好きなフォルスベリのエレガントなボールタッチが見れて満足だったぜ。

 結局、ライプツィヒがゲームクローズに成功。2ndレグに向けてわずかなアドバンテージを得た。

あとがき

■そりゃそうだ、仕方ない

    どうしようもねぇよ!というのがモウリーニョの本音かもしれない。立ち上がりの4-4-2の配置はあまりに無防備だった感はあるが、その後の修正はそこまで悪くはない。しかしながら、ケインに続いてソンが離脱した攻撃陣に従来の迫力は出てこないのは否めない。ベルフワインは頑張ってはいると思うが、それはそれ。数年にわたりチームの柱として君臨してきた存在感を加入数週間の選手に求めるのが間違いだ。

   記者会見でのモウリーニョの言葉に嘘はないだろう。困難な状況だが、ベストは尽くす。2ndレグまでにほんの少しでもチーム状態が良くなっているようただただ祈るばかりだ。

理路整然、修正を重ね粛々と最善手

    アウェイで先勝したライプツィヒ。PKのみで流れの中からの点はなかったが、スパーズ相手に90分間チャンスを作り続けたことは間違いない。勝利は妥当だろう。

    印象的だったのは試合の中で形を変えながら、修正を続けるナーゲルスマン。プレスの強弱や、配置の変換での水漏れの修正。攻め手のバリエーションも豊富で変化をつけられていた。本文中では触れられなかったが、素早い反応で大きなピンチを食い止めたGKのグラーチの存在も大きかった。

    気になるのは理不尽さがないことだろうか。理詰めでチャンスメイクを数多くするものの、流れの中からの得点はなし。理不尽な個人技を持つ選手はあまりいないように見受けられる。もちろんそれでも十分な完成度なのだが、ここはCL。世界一理不尽な舞台である。その中で理詰めでどこまで進めるか。昨年のアヤックスとは全く毛色は違うチームだが、どこまで上に進めるか非常に気になるチームだ。

試合結果
UEFA Champions League 
Round 16 1st leg
トッテナム 0-1 ライプツィヒ
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
RBL: 58′ ヴェルナー(PK)
主審: ジュネイト・チャキル

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