MENU
カテゴリー

「我慢の中で幸せを見つける」~2020.2.16 プレミアリーグ 第26節 アーセナル×ニューカッスル レビュー

スタメンはこちら。

画像1

目次

【前半】
セバージョスの下ごしらえ

 ニューカッスルのフォーメーションは5-4-1。後ろに重たいフォーメーションの代表格といっていいものだが、この日のニューカッスルも例に漏れずに後ろ重心。アーセナルのビルドアップ隊は無条件で時間を与えられボールを持つことを許された感じがあった。

 そんなアーセナルの並びは4-2-3-1。いつものフォーメーションと同じだが、メンバーに多少入れ替えが発生している。ラカゼット、マルティネッリという好不調が分かれる前線のコンビ、そしてアルテタ就任後は攻守において中盤に欠かせない存在となっていたトレイラがベンチに。前線には代わりにエンケティア、ペペが。中盤にはリーグ戦では11/2のウルブス戦以来およそ3カ月半ぶりの出場となったセバージョスが入った。

 試合開始直後に目立ったのは久しぶりの先発となったセバージョス。アルテタからすると、ニューカッスルがアーセナルにボールを渡してくることを予測することはそこまで難しくないはず。トレイラではなくセバージョスを起用したのは、よりボール保持にフォーカスした役割を与えるためだろう。ジャカとの位置関係はトレイラがコンビを組んだ時と似たようなもの。ジャカが左サイドに落ちて、セバージョスが中央に居座る形である。

画像2

   立ち上がりの場面。セバージョスがニューカッスルのCHを1枚引き付けて、エジルへの楔を入れたシーンは、この中央に配置されたセバージョスの恩恵を感じた場面。ということで立ち上がりの感触は良好だった。が、アーセナルはすぐに停滞感を感じることになる。まずは中央攻撃。楔をうけるエジルは、当然後ろ向きや半身で受けることが多くなる。先ほどのシーンでもそうだが、エジルは楔を受けた後のターンがこの日はやや大回り。せっかくズレを作って受けても、ターンしている間にニューカッスルの中盤にプレスバックを許してしまっていた。エンケティアはそもそも中央でのポストでそこまで存在感を発揮できず。中央からの侵攻はいけそうでいけず、頻度もそこまで増えていかずという形の立ち上がりだった。

    サイド攻撃も微妙に立ち行かなかったこの日のアーセナル。右のペペは2,3人に囲まれるシーンが多く、なかなか対面相手に優位を発揮することができなかった。しかも、2,3人引き付けても他が空くというわけではなく、ニューカッスルの選手がわらわらいる状態。重心が低い分、ここは頑張るぜ!ということなのだろう。セバージョスから裏のベジェリンへのパスは時折通るものの、ここもチャンスにはならなかった。

   より、人が少ない状態で受けられたのは左サイド。右からサイドチェンジしてくる場面や左に流れるジャカがアルミロンをピン止めしたりなど、オーバメヤンやサカがサイドから仕掛けられる場面は多く、形も右サイドよりはよかった。しかし、この日はオーバメヤンとサカの連携がいつもより希薄。それぞれが単騎で仕掛けては失敗し、の繰り返しでなかなかシュートまでは持って行けたシーンは多くなかった。中央でもサイドでもセバージョスの起用により、いい形を作る下ごしらえはできていたものの、その先の工程で割と下ごしらえは無駄になってしまっているシーンは多かった。

画像3

   つなぐ工程でミスが出てくると、徐々にアバウトなボールが増えてくるアーセナル。ロングボールの質が高くないアーセナルにとって、後ろ重心でなおかつフィジカルに優れているニューカッスル相手にただただ長いボールを増やすだけでは彼らに楽をさせてしまうばかり。なのだが、ロングボールの数は徐々に増えていき、ボールを捨てて簡単にニューカッスルボールにしてしまう場面が増えてくる。すなわち、バーンリー戦の二の舞。低い位置でのつまらないロストも増えていき、徐々にペースはニューカッスルに。

 ニューカッスルの攻撃は非常にシンプル。ゴールキックは素直にジョエリントンに長いボールを当てていくし、カウンターはサン=マクシマンがとにかく運ぶ。彼らのフィジカルは決定的な場面をめちゃめちゃ量産するわけではないが、止めるには厄介。時にサン=マクシマンは止めるのが難しかった。ボールを持ちすぎていたおかげで助かった場面もあったけど。

 試合中盤にニューカッスルに傾きかけた流れが再度アーセナルに傾きだしてきたのは30分過ぎのこと。長いボールに逃げる傾向が強かったアーセナルだったが、徐々に中央に縦パスを入れるシーンが増えてくる。エジルは先ほどのターンの話や、その先のボールタッチのところで手間取る場面もあるが、間受けのスキルはさすがである。右のハーフスペースで受けた後、バターにナイフを入れるような滑らかさで左に展開する場面が増えていく。おかげでサカやオーバメヤンが左で勝負する形を作れた。エジルは30分過ぎから後半も含めて、左右のハーフスペースで非常に高い頻度で起点になり続けた。フィニッシュに絡む頻度は減っていても、依然としてつなぎでの貢献度は高い。

 配置的な変化でいえば、ペペが内側に絞るシーンが増えて、外をベジェリンに任せた傾向がやや見えたくらいだろうか。ペペ、エンケティア、オーバメヤンがナローに位置することでニューカッスルのDFラインは中央に圧縮される。アルミロンがやや外を放置気味だったこともあり、サカは外でより勝負がしやすくなった感があった。

画像4

 両サイドともサイドの人数がやや手薄になったこともあり、サイドからも中央からもよやくシュートにいけるようになったアーセナル。

 流れは両チームの間を行ったり来たりしたが、スコアは動かず。試合はスコアレスで前半を折り返す。

【後半】
2つのゴールが持つ意味の重さ

 後半頭も揺さぶりをかけるのはアーセナル。エンケティアの引く動きでニューカッスルのDFラインを乱す。そこに斜めに走りこんだのはオーバメヤン。得点にはならなかったが、エンケティアにとってオーバメヤンと連携を感じさせる崩しを披露できたのは好印象。前半の終盤もコンビネーションの中からシュートを打つなど一定のパフォーマンスを見せたと思う。ラカゼットと比べてどうか?といわれるとそれはまた別の話だけどね。

 そんな中でアーセナルに待望の先制点が入る。ペペのクロスからファーのオーバメヤンにピタリ。競り合いに勝ったオーバメヤンも素晴らしいが、ペペのクロスの質も高かった。ファーにピタリと合わせるクロスはもっとアーセナルの他の選手にも要求していきたいところ。ペペのアシストはアーセナルに今欲しいものをそのまま体現した形といっていいだろう。こういう遠いところを狙い撃ちする武器がなければ、近いところを無理やりこじ開けざるを得ない。

 まさしく「近いところを無理やりこじ開けた」のが2点目のシーンである。こちらの主役はサカ。前半は精度を欠くシーンがあったが、このシーンではピカイチ。文字通りニューカッスルの右サイドを切り裂いてペペにアシストを決める。1点目がアーセナルの目指すべき武器を使った得点ならば、2点目は今のアーセナルとして出来ることをやってこじ開けた得点。短い間に入った2得点はそれぞれに意味は違えども、なかなかに重みのある得点である。どちらの得点もエジルの間受けがそれまでの流れにあったことも付け加えておきたい。

 そこから試合が沈静化するまでには時間がかかった。ニューカッスルは相変わらずサン=マクシマンのドリブルを武器に攻め込んでいた。内側のレーンで時たまお手伝いするクラークにも手を焼いていた。アーセナルは低い位置でのロストも多く、ニューカッスルに多くのシュート機会を献上。それでも決められないニューカッスルのFW陣。そうこうしているうちにアーセナルが試合を決めてしまう。

 エジル、ラカゼットと共に得点が出ずに苦労していた選手たちがスコアを決めるのは非常にうれしい。地味に注目したいのが4点目のウィロックの働き。間で受けて、局面を前に進めるパスでペペのアシストのお膳立てをした。こうした動きをコンスタントに見せてレギュラー争いに名乗りをあげたいところである。

 試合は4-0で終了。エミレーツの観客には久しぶりのゴールショーとなった。

あとがき

■先制されると苦しい

 最終的には大量4失点を喫してしまったニューカッスル。前半の戦いぶりはアーセナル相手にとにかく守るということに主眼を置いているのであれば、悪くはないだろう。しかしながら、どうしても攻撃が相手のミス待ちになってしまうのがつらいところ。決定力抜群なアタッカー陣がいればそれでもいいのだろうが、ニューカッスルはFWよりDFの得点の方が多いチーム。スピードとパワーは悪くないが、少ないチャンスをモノにするクオリティがあるチームではない。

 そのため、アーセナルにこじあけられる展開になるとどうしようもない。アーセナルは現状ではまだPL屈指のボール保持の質のチームではないのだが、この相手にプレスのチャレンジをしていかないということは、ある程度の相手からはブルースの腹は「耐えること」で決まっているのだろう。ファンやオーナーがどこまでこのやり方で納得するかはわからないが、ひとまず今季は粘り強く残留を勝ち取りたいところである。

苦しいけれど幸せだった

 ヤキモキする序盤30分はアルテタ就任後最悪といってもいいくらいの出来だった。そこからなんとかカムバックしたというのが正直なところ。エジルやラカゼットに点が入っての4得点にクリーンシートは結果だけで見れば最高なのだが、課題は依然として多いままである。この試合ではそもそもきついプレスにさらされてビルドアップで試される部分は少なかった。それでも低い位置でのボールロストは目につくし、長いボールの精度はなかなか上がってこない。

 この試合ではセバージョスを起用したことで中盤のパスの配球に一定の緩急がもたらされていたが、守備面では後手に回って度重なるファウルを犯すなど、バランスを考えると大手を振って合格点!といえるかというと微妙なところである。もう少し守勢に回ることが多い相手だと厳しさを露呈する頻度は高くなるはずだ。

 ウインターブレイク明けは非常に気持ちのいい快勝で飾ったアーセナル。しかし、一方で問題には腰を据えて臨まなければいけないシーズンになりそうな試合でもあった。ファンは三足のわらじをヤキモキしながら戦っていくことを覚悟しつつ、今日のような幸せを拾えたならばじっくりかみしめたいところである。

試合結果
プレミアリーグ
第26節
アーセナル 4-0 ニューカッスル
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:54’ オーバメヤン, 57’ ペペ, 90’ エジル, 90+5’ ラカゼット
主審:リー・メイソン

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次