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「トゥヘルになったら本気出す」〜勝手にプレミア定点観測 24-25 序盤戦編 part3~

 ボトムハーフ編突入!ここまではこんな感じ!

目次

【11位】ブレントフォード

5勝1分5敗/勝ち点28/得点22 失点22

予定通りの別れと揺らぐ基盤

 アーセナルは序盤戦からやたらと対戦カードがハードだなと思っていたが、昨季の順位をベースにするとはじめ5試合の対戦相手の難易度は上から2番目らしい。アーセナルを凌ぐ今季のプレミアにおいて最もハードな序盤戦を迎えるチームとなったのはブレントフォードだ。 

 今季は大黒柱とのトニーのお別れという戦力的には大きな動きと序盤戦のハードモードが重なったにも関わらず、すでに5勝と成績的にはそれなりに順調。まぁ、個人のチョンボであれだけまとまった期間離脱した元エースは口を開けば「CL出たい」とか言っていたので、トーマス・フランクを始めとしてすでにお別れの心づもりはできていたのだろう。

 実際、トニー不在時のプランはすでに昨季の前半戦でシミュレーション済み。その1年前のシミュレーションではじき出された「ウィサとムベウモがフル稼働できれば何ら問題はない」という結論は今季もどうやら有効なようだ。

 右サイドを主戦場に得点からチャンスメイク、守備まですべてをこなすスーパーエースのムベウモはすでにビッグクラブとのリンクがささやかされているほどの活躍だ。地味ながらも確実にシュートを決め続け、いつの間にか二桁ゴールを決めているウィサはクリス・ウッドと並ぶ、プレミア二大いぶし銀ストライカーである。

 この2人によって生み出された得点はすでに15。パーマー&ジャクソン、サラー&ディアスがそれぞれ13得点なので、この2つのコンビを凌ぎプレミアでもっとも多くの得点を稼ぎ出しているデュオとなっている。

 前線から中盤はルイス-ポッターやダムズゴーといった若手が台頭。順調に若返りを図ることが出来ている。

 その一方でバックラインはやや懸念がある。昨季から続くSBが怪我人だらけ問題には依然として解決の目途は立たず。ヘンリーやヒッキーが帰ってこないままCBやWGをとりあえずこのポジションにあてがうというその日しのぎのやり繰りが続いている。

 さらには大黒柱であるピノックのパフォーマンスの低調さも目に付く。マークにはついているはずなのに競れなかったり、デュエルに簡単に負けてしまったりなど頼りにないシーンのオンパレード。撤退守備とハイラインの両面で今季は信頼を置くのがなかなか難しい出来になっている。

 というわけでチームとしてはやや前輪駆動気味。ここ数年間の安定した戦績の土台である守備の堅さが帰ってこないのは明らかな不安要素。前線のタレント陣に穴が空けば一気にクオリティが下がる可能性も否めない。序盤戦の嵐の日程を乗り越えてなお油断は禁物だ。

Pick up player:ブライアン・ムベウモ
 世間が注目するよりも早く目を付けていた選手というのは他チームでもかわいいもの。自分にとってムベウモはそのかわいい選手に当たる。今のスーパーエース的な立ち回りだけでなく、トニーというザ・ストライカーと相棒を組んだ実績はさらに規模の大きいクラブでのチャレンジを今後することになった際の大きなセールスポイントになるだろう。

今季の道のり

【12位】ボーンマス

4勝3分4敗/勝ち点15/得点15 失点15

大物食いの秘訣は?

 12位という順位は近年のプレミアリーグにおける躍進を考えれば特別高いわけではないし、4勝という勝利数も別に多いわけではない。それでも今季のボーンマスがここまでインパクトが抜群なのは4勝のうちの2勝をアーセナルとシティ相手に挙げているからだろう。

 まず、アーセナル戦においては相手のミス由来による退場者によって助けられた部分はあったものの、コンパクトな守備で11人の段階でもアーセナルを苦しめたのは事実。先制点の際のセットプレーのデザインは見事であり、あのゴールはアーセナルが11人だとしてもおそらく決まる類のものだったように思われる。

 時間軸的にはアーセナル戦の後となったシティ戦ではさらに破壊力の高いスタイルで躍動。カウンターを中心に多くの決定機を生みだし、王者から金星を挙げた。

 大物食いの要件の1つは充実したアタッカー陣だろう。ボールを収めるところから加速、そしてフィニッシュまで滞りなく完結させることが出来るセメンヨは完全に立場を確立。昨季の好調を維持して、完全に暴れまわっている。

 懸念とされていたソランケの穴は新加入のエヴァニウソンが問題なくフィット。ソランケのような強靭な体幹の強さはないが、左右に動きながら起点として走り回る献身性は装備。何よりもチャンスやパスミスを絶え間なく狙う抜け目のなさはソランケを凌ぐ。決定力に関しては1つ目のゴールが少し苦労した印象だが、それ以降は特段問題なくゴールを重ねている。

 もう1つはバックライン。跳ね返しよりも目を引くのは保持で整える方。両CBを軸に安定したゲームコントロールが光る。特に組み立てに関しては左のCBであるセネシが秀逸な出来。シティとアーセナルのプレスを空転させる組み立てで相手の中盤の背後にパスを刺し続けている。

 では、なぜもっと上の順位ではないのか?それは爆発力がある一方で地道に戦う展開はあまり得意としていないからだ。サイドの攻撃は十分のクオリティではあるが、押し込む状況においてはもう少し高さが欲しいところはある。昨季見せたウナルを活用した2トップのオプションの存在感を高めれば解決に近づく可能性はある。

 守備においてはプレスの狙いどころが定まらないような展開が続いてしまうとリバプール戦のような一方的な流れになることもある。速い展開で緊張感のある流れの方が持ち味を出しやすいだろう。

 流麗なアタッカーを擁して躍進を見せているフォレストに比べるとより静的な局面での我慢が効かない印象。中位相手に対して地力で飲み込むような展開が続けば欧州カップ戦争いのダークホースになってもおかしくない存在ではある。

Pick up player:ルイス・クック
 構えることの多かったエディ・ハウ時代に比べると、ややプレス志向が強く相棒がクリスティになったイラオラ時代はより難しいかじ取りを求められている印象。にも関わらず大崩れがないのはクックのバランス感覚の賜物だろう。

今季の道のり

【13位】マンチェスター・ユナイテッド

4勝3分4敗/勝ち点15/得点12 失点12

アモリムに求めたいことは?

 FAカップというタイトルを手に延命に成功したテン・ハーグ。3季目となる今季はマズラヴィにデ・リフト、ザークツィーといかにもテン・ハーグらしい補強で昨季は綱渡りの運用となったバックラインを中心に刷新を図るシーズンとなった。

 補強自体の効果はそれなりにあったと思う。最もわかりやすかったのはマズラヴィだろう。これまでのテン・ハーグのユナイテッドの難点はSB、CBが大きく動きフリーになるコストをかける割にSBとCBにビルドアップの出口になるキャラクターが少なかったことにある。その点、局面を前に進めることが出来るマズラヴィの補強は非常に理にかなったもののように思う。

 CFに入ったザークツィーも中盤に降りる組み立てとフィニッシャーの役割を両立。開幕戦では劇的な白星の立役者となるなどいいスタートだった。

 だが、こうした改善はいずれも枝葉のもの。大枠を改善し、試合の展開を握るような覇王感のあるユナイテッドが戻ってくる気配はなかった。ブルーノを軸に組み立てる速攻が決まるかどうかにチームの得点力は大きく依存。その結果が12得点。リーグで下から4番目の得点数という数字となっている。

 速い展開が得意かといえばそういうわけでもなく守備に回った時は普通に相手に苦しめられている。気まぐれにかける前線のプレスの結果、中盤のカバー範囲が増大。ウガルテやデ・リフトでは無理が効かない範囲まで負荷は膨れ上がっている。

 中でもトッテナム戦は断トツで今季ワーストの出来。ホルダーに対して無警戒のまま簡単にボックス内に侵入を許し、弱みとなっているファーのクロスを中心に崩され続ける展開だった。ブルーノの退場の判定の正誤に関する議論で若干うやむやになった感はあるが、ビッグマッチに臨む姿勢が全く足りなかった試合だった。

 静的に振る舞えばチャンスの少ないスコアレス、動的成分が増しても明確に強みを押し出せるわけではない。そうしたどっちつかずの状況のまま、テン・ハーグはシーズン半ばでユナイテッドを去ることに。新オーナーに与えられた猶予のラインを越えてしまったということだろう。

 新監督のアモリムに求められることは攻守共に静的な展開から試合を支配し、得点につながるチャンスを作ることになるだろうか。今季絶好調のスポルティングのポゼッションはバックスを軸に外と中を使い分けながら相手の守備ブロックを揺さぶることに長けている。ブロック守備に関しても連携しながら負荷を下げて守れている。ユナイテッドを率いて、プレミアの舞台で同じことを再現できるかどうか。中断明けの再注目チームだ。

Pick up player:ラスムス・ホイルンド
 出遅れのシーズンとなったが、復帰戦からパフォーマンスは抜群。スポルティングに続き頼れる北欧の9番が君臨することが出来れば、アモリムにとっても心強いはずだ。

今季の道のり

【14位】ウェストハム

3勝3分5敗/勝ち点12/得点13 失点19

スタイル構築の岐路に立たされるシーズン

 堅実なサッカーで近年のウェストハムを象徴するスタイルを体現していたモイーズに別れを告げて、今季はロペテギを招聘。今まで硬質なイメージだったチームがちょっとボールを持ちたいな!と思った時にロペテギに飛びつくというのは割とあるあるのような気もするが、ウェストハムもこのあるあるにのっかり、思ったよりもうまくいかないなというレールに乗ってしまっている感のあるここまでである。

 4-1-4-1をベースにアンカー役のギド・ロドリゲスがサリーして最終ラインに入ることが組み立ての基本。相手のプレス隊の脇からCBがボールを運ぶところを出発点にしたいという感じなのだろう。ただ、わざわざ中盤をいじってまで解放するほど両方のCBが効いているかというと微妙なところ。

 MF、特にパケタはフリーダムなポジションで高い位置で我慢するわけでもなくややどっちつかず感も見られるように。後方からボールを動かすという点に関してはコンセプト先行で、なかなか実効性の高いプランになっていないというのが現状だ。

 結局攻撃の出口となるのはボーウェン、アントニオ、途中から入ってくることが多いさマーフィルなどの個性派のアタッカー。フュルクルクが負傷してしまったというイレギュラーはあるが、なかなか苦しんでいる感は否めない。

 攻撃に停滞感があるというだけなら我慢をすればいいかもしれないが、懸念となっているのは守備の強度も落ちていること。19失点は昇格組を除くとウルブスとブレントフォードに次いで多い数字。もっとも、昨季もこのチームは74失点を喫しているので特段に数値が悪くなったというよりは再建できていないという見立てが強いかもしれない。

 CBが狭い範囲を守り、時には5バックもいとわないというのがウェストハムのこれまでの守備の流儀。ただ、直近ではそれも通用しなくなっている。フォレスト戦では5バックを強いたにも関わらず、ハーフスペース突撃に対するリアクションが遅れてしまい、ここから失点を喫している。枚数を集めても堅さを担保するのは難しい状況だ。

 まずはどこで勝負するチームなのかの方向性を打ち出すことが重要。ロペテギを連れてきたという文脈を大事にするのであれば、保持で可変をするバリューを還元できるかどうかがポイントになるだろう。

 保持への転換が新しい時代への生みの苦しみになるのか、それとも頓挫するのか。スタイルの礎を決めるうえでウェストハムは重要なシーズンを迎えている。

Pick up player:ジャロッド・ボーウェン
 苦しいシーズンではあるがボーウェンはマイペース。堅実に得点を重ねながらなんとかチームを押し上げていく。

今季の道のり

【15位】レスター

2勝4分5敗/勝ち点10/得点14 失点21

勝負強さは向いてきた中での粘り腰勝負

 チャンピオンシップを悠々と制し、見事に1シーズンでのプレミア帰還を果たしたレスター。昇格の立役者であるマレスカと共に残留のミッションに臨みたかったところだろうが、チェルシーに引っ張られてしまったので終了。プレミアでの指導経験のあるクーパーを招いて昇格初年度に臨むことになった。

 大枠の方向性としては想定通りかなという印象。ボールをつなぎながら前に進んでいくというスタンスを踏襲しつつ、守備では前からの積極策に出て行く一方で、早すぎる展開を制御しきれずに爆散してしまう試合もしばしば。今季ここまでのレスターを一言で述べよといわれたこう答えると思う。

 速い展開における攻撃のポテンシャルはそれなりにあると思う。トップに入ったヴァーディはさすがに往年の出来に比べると衰えが否めないところはある。

 だが、2列目の面々は躍動。左に入るマヴィディディは背負ったところからでも勝負をすることが出来る馬力を持っており、プレスを受けた状態においても運ぶことが出来る可能性を秘めているタレントだ。

 逆サイドのファタウはファイヤーフォーメーションの時はSBにも入ることが出来る幅取り役。追いかける立場となったサウサンプトン戦では対面のフレイザーをコテンパンにして、大逆転勝利の立役者となった。

 そんな両翼の2人を上回る決定的な働きを見せることが出来ているのはブオナノッテ。ライン間の住人となり、反転から一気に加速することで攻撃を仕上げるところまでもっていくことが出来る。やや狭すぎるのでは?というところからでもぶち抜くことが出来るのはさすがスペースを苦にしないブライトン産らしいパフォーマンスを見せている。たまにベンチ送りになっているのが個人的には信じられない出来である。

 前のタレントと比べると中盤よりも後ろはやや小粒。特にCB,CHは攻守に雑さが際立つ。主にファストブレイクに対応する時のプレー選択や、セットプレーでの相手のリスタートへの対応が甘く、シュートへの寄せが甘くなっては守護神のハーマンセンに怒鳴られる姿もしばしばという感じである。

 終盤でのゴールからしぶとく勝ち点を拾うなど、徐々に勝負強さは身に着けている様子。ただ、ユナイテッド戦のように手前で粘りが効かない展開になってしまうとどうにもならない。少なくとも1点差で終盤戦を迎えればどんな相手でもあるいは?という展開を起こせる力は持っているチームなだけに、そこにたどり着くまでの粘り腰が通用するかどうかが重要なポイントになるだろう。

Pick up player:マッズ・ハーマンセン
 ド派手なセービングと勇気ある足元のつなぎを併せ持つGK。たまにトンデモパスを付けているが、自分でセーブして事なきを得たりしている。肝の据わり方はこういうチーム向きだと思う。

今季の道のり

 つづく!

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