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「転ばぬ先の飛び道具」~2019.9.22 プレミアリーグ 第6節 チェルシー×リバプール レビュー

スタメンはこちら。

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目次

【前半】
プレスは攻略も中盤で捕獲

 直近でレビューを書いてみた両チームの対戦。バレンシア戦を見た感じだと、チェルシーは徐々にボール保持がスムーズになってきた感じ。菱形の形成というサッリが残した文化を大事にしている印象を持った。負けちゃったけど。先週のウルブス戦から3バックを採用していたけど、この試合では4バック。CBが2枚でもカンテがいるなら守れるもん!という所だろうか。

 開幕5戦全勝。プレミアは好調だったリバプールだが、CLの内容は少し気がかりだった。ボール保持を大事にしていることもあるだろうが、プレッシングは鳴りを潜めており、そのテンポが攻撃に感染しているような出来だった。

 というわけでこの試合はまずチェルシーのプレス回避がリバプール相手に通用するのかどうか。そして、CL明けの両チームがどのようなテンポで試合を運ぶのかが個人的に気になる部分だった。

 試合のテンポに関しての疑問はキックオフ早々に解消された感がある。選手の並び的にはばっちり噛み合う両チーム。非保持側がプレスをどこまで強くかけるか?が試合のテンポを決定づける大きな因子だが、共に高い位置で相手を食い止めることを選択していた。それに対して、ボール保持側がどのように対抗したか。

 まずはチェルシー。いつものようにアンカーへのパスコースを寸断するような立ち位置を取るフィルミーノ。前進の手段としてまずはCBが深い位置を取りながらSBにつける形。並びはちょっと違う(ナポリはSBが深さを作っていた)けど、CLでナポリが見せたように深さを作りながら、リバプールのWGの守備の基準点をあやふやにしよう!というものだった。

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 深さを作りながらリバプールのプレス回避にチャレンジしたチェルシー。アンカーには直接ボールが入らなくても、横からボールを入れればいいじゃない。中盤にボールが入ってからは、素早く前進する。積極的に間に落ちてくるウィリアンが相手を連れ出したスペースを狙った動きを見せるチェルシー。ただし、高い位置でDFが当たる形でリバプールもそれに応戦する。ダイクやロバートソンがボールを奪いそのままカウンター!という形も見られた。

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 チェルシーはハイプレスは回避したものの、ハイラインごと回避できたかは微妙なところ。コバチッチがダブルタッチで対面の相手を交わしたところからできた好機が序盤のハイライトだった。

【前半】-(2)
困る前に飛び道具で打開

 それに対してリバプールの前進。彼らもまたダイレクトに!という形だった。前線はサラーが低い位置まで自由に動く。彼が空けたスペースをヘンダーソンが裏に抜けて、チェルシーの最終ラインを破ったのは4分のこと。

 サラーとは逆にマネは高い位置で待機。若干2トップっぽくなって長いボールや裏抜けのボールを受ける的になっていた。ウルブス戦のチェルシーは引いて受ける動きに対してCBが強めに当たるアクションが多かったので、リバプールとしてはそこからカウンターにつなげられる展開を警戒した可能性もある。

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 ナポリ戦で気になったのはマネの不調。ややボールタッチが心もとない印象を受けた。この試合でも若干本調子とは言えないかなと。ネーションズカップの疲れがあるのだろうか。13分にゴール前でFKを獲得したシーンも好調時だったら、シュートまで持って行けたような。ファウルを取ったのは素晴らしいし、その前にマネに出したファビーニョも良かったけども。

 それでも、そこから先制点を決めるからリバプールは強い。アーノルドのFKでリバプールが先制する。困ったときのセットプレーは大事。というか困る前のセットプレーの方が正しいかも。

 この日のリバプールがナポリ戦と一味違ったのは、中盤より後ろが相手を捕まえる鋭さ。出足良く中盤が相手を捕まえる。プレスは交わされても中盤で捕獲。チェルシーもすでに書いたようになるべく相手を早めに捕まえる動きを継続。試合の展開としては先制点が入った後でも、アップテンポを維持したまま試合を思うように進めていった。

 なんとか流れを引き戻したいチェルシー。クリステンセン→エイブラハムへのスルー一本で迎えた決定機はエイブラハムが珍しく決めきれず。27分にはアスピリクエタがネットを揺らすもVARの介入によりオフサイドに判定が修正。セットプレーの流れから、ウィリアンの侵入に対してリバプールのインサイドハーフの対応が遅れたところから後手になった形。ゴールにはならなかったけど、共通理解を感じたいい崩しだった。

 しかし、結果を得るのはまたしてもリバプールの方。しかもまたセットプレー。チェルシーとしてはゴール取り消し直後ということで、ダメージがでかめのやつである。1点目と同じく、少しボールを動かしてズレを作ってのFKがきっかけとなっていた。キッカーの利き足が変わる分、少しチェルシーの守備陣は対応が困った形だろうか。練習したやつかなぁ。CL戦いながらそんな時間あるんだろうか。

 困る前に2回のセットプレーで試合を動かしたのがリバプールだとしたら、試合を動かす前に2回困ってしまう羽目になったのがこの日のチェルシー。15分に負傷交代したエメルソンに加えて、40分にはクリステンセンが負傷交代。この試合単体で見てももちろん痛いし、あまり層が厚くないDFラインに2人負傷者が出たのは、この先を見据えても非常に痛い。

 組み合ったシチュエーションでは両チームともに見ごたえはあったものの、もたらされたものは片や2つの得点、片や2人の負傷者と対照的なものになった。試合は0-2。2点のリードで試合はハーフタイムを迎える。

【後半】
カンテのゴールを引き出した殊勲者

 後半の口火を切ったのは先行しているリバプール。セットプレーの流れから大外に浮いたフィルミーノに決定機。さすがに三度、セットプレーからやられたら目も当てられないところだった。リバプールとしては試合を決定づける機会をケパに防がれた格好になった。

 50分過ぎまではリバプールが押し込む展開になっていったが、徐々にチェルシーのボール保持の時間が長くなっていく。大きく開いたCBからSBへの展開で幅を使って、ボールを前に進めるチェルシー。特にねらい目だったのはサラーの背後のスペースに陣取るマルコス・アロンソのところ。フリーで持ったマルコス・アロンソでリバプールの陣形を寄せた後に、逆サイドのアスピリクエタに展開という形が何回か見られるようになってきた。

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 さすがに、2点リードで迎えた後半ということでボールホルダーへのプレッシャーが弱くなってきたリバプール。後半頭の決定機を活かせなかったことや、後方の対人に自信があることを考えて、ペースを落とす決断をしたのだろうか。非保持の時のハイプレスが弱まってきたのはチェルシー側も同じ。試合は徐々にトランジッションの局面が減っていく展開にシフトしていく。

 このまま試合の強度を落としつつ終わってしまえばまさしく完勝!リバプールの思うつぼだったのだが、試合はここからもう一展開。

 リバプールを相手に得点をするためには、まずファン・ダイクをどうすっ飛ばすかを考えなくてはいけない。ファン・ダイクをどのように釣りだすか?がリバプール攻略のための命題になる。24分のエイブラハムのシーンように一気に裏抜けできれば問題は一気に解決するのだが、オフサイドトラップをかけるのがうまいリバプールに対して、ああいったことが起きるのはレアケース。たいていはまじめにどうファン・ダイクを動かすかを考えなくてはいけない。

 そう考えた時に前半に決定機を逸したエイブラハムは追撃弾の黒子として大きな働きを見せたということができるだろう。カンテの侵入に対して、右サイドに流れる動きを見せる。ファン・ダイクがこの動きについていったことで、わずかに最後のカンテへのプレッシャーが届かなくなってしまった。カットインと美しいミドルを復帰戦で見せたカンテはもちろん称賛されるべきだが、「ファン・ダイク釣りだし」において貢献したエイブラハムの働きも称賛したい。

 このゴールを受けて、マネに代わってミルナーを投入するクロップ。左WGにはワイナルドゥムが入った。ファビーニョもカンテのゴールを境に最終ラインのサポートに入る場面が増えてきたことからも、リバプールとしては受けに回る場面が増えることを許容する采配といえるだろう。

 というわけでここからはチェルシーが押し込みつつ、リバプールがカウンターで一刺しを狙う展開に。カンテがサラーのカウンターを止めて、ウィリアンがドリブルで運び出すという亜流の2バックでもう一度攻めに出る姿はロックだった。そして左サイドからは延々とクロスを上げ続けるマルコス・アロンソ。クロップの采配になんで?と思うことはあまりないんだけど、サラーの裏はかなり長い時間アロンソに使われていたので、ここの修正をゴメスを投入した後半追加タイムまで施さないことは結構気になったりはした。やはり3点目重視だったのだろうか。

 チェルシーとしては押し込んではいたものの、終盤の決定機への道筋はマルコス・アロンソのクロスによるところが多かった。ここにゴメス投入によりアーノルドがぶち当てられたことで最後の最後に蓋をされてしまった形。追いつくならば、ゴメス投入までにケリをつけたかったところだった。

 試合は1-2。アウェイのリバプールが勝利を収めた。

あとがき

■エネルギーが限られている中で

 CLをともに敗戦したチーム同士の対戦ということで勝利は何よりも価値がある。最後は押し込まれたものの、リバプールは限られた体力の中で見事に勝利を挙げたといえるだろう。試合がスコアレスのまま後半まで進んでしまったと仮定すれば、かなり試合の展開は難しくなったはず。裏を返せば、困る前にセットプレーで重ねて点を取っておけたのはチームとしての力を感じる部分。

 シーズンにおいて、100%のパフォーマンスを発揮できない試合は当然やってくる。そういった時に身を助けるのがスーパーゴールとセットプレー。この試合でリバプールを助けたのは後者である。転ばぬ先のセットプレーとでも言えばいいだろうか。平場で圧倒できないながらも、難所で先手を取ったまま逃げ切ったのは、悲願のプレミア制覇に向けて大きな成果といえそうだ。

■ビルドアップの質はライバルより上

 一方でホームで連敗を喫したチェルシー。未だにリーグ戦ではホーム勝ちなしである。勝ち負けで言うならば、エイブラハムのシーンではゴールがマストだったのは、リバプールとの地力の差を考えれば仕方のないところだ。しかしながら、2人の負傷者を出しながらもリバプール相手に押し込んだ形を作ったのは見事。ビルドアップのスムーズさはCL出場権を争うライバルたちの中では断トツといってよさそう。既存戦力を活かす以外選択肢がなかったこともあり、配置にこだわるサッリの遺産はうまくいかされているように思える。

 カンテの復帰もチームを攻守において一段上に引き上げてくれそう。エイブラハムとマウントなど得点者が偏っていること、若手が通年で活躍できるかどうか、層に不安がある最終ラインに負傷者が続出していることなど、気になる部分はないことはない。しかし、この日リバプール相手に見せたパフォーマンスは自信にはなるはず。開幕前は不安が先立つ船出になったランパード政権。不安がぬぐわれたわけではないが、期待もある。ひとまずはプレミアを戦う準備が徐々に整ってきているとみていいだろう。

試合結果
プレミアリーグ 第6節
チェルシー 1-2 リバプール
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE: 71′ カンテ
LIV: 14′ アーノルド, 30′ フィルミーノ
主審: マイケル・オリバー

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