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「Mind the gap」~2019.4.2 プレミアリーグ 第32節 アーセナル×ニューカッスル レビュー

前節のレビューはこちら。

ニューカッスルとの前回対戦のレビューはこちら。

スタメンはこちら。

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目次

【前半】
ニューカッスルに判断を強いる

 いつも記事を読んでくれている人はわかると思うけど、当noteの試合のレビューはいつもこっちのボール保持がどうこう、あっちが非保持でどうこうという小難しい話から始まる。そのためせっかくアクセスしてくれた読者の中でもそこで嫌になってしまう方もいるだろう。全然キャッチーじゃない入りというのは、その先を読む気を萎えさせるものだ。ハリーポッターシリーズとかも、はじめつまらないしね。ホグワーツに入るまで我慢して読み進めればいいんだけどね。まぁいつも出しているレビューがハリーポッターほど面白いかというとそういうわけではないんだけど。
 なにが言いたいかというと今回は「ビルドアップのかみ合わせの説明なんてめんどくさいよ!」というあなたに朗報!かみ合わせぴったり!まんま!説明する必要なし!共に3-4-3!

 というわけで非保持側は目の前の相手とマッチアップしていればよしというわかりやすい状況に。しかしながら、かみ合わせがハッキリしている状況は誰もが歓迎する形かと言ったらそうではない。特にボールを持つ側にとってあまり得策ではないケースが多い気がする。非保持側が判断に迷うシーンが少ないからだ。1on1絶対制すマンみたいな選手がいればそれでもいいのかもしれないけど。というわけでこの試合でボール保持側に回ることが多かったアーセナルがズレを作りにかかる。まず、それに取り掛かったのはエジルだ。中央でCH2枚がつかまっているため、ビルドアップの出口になりやすいのはサイド。そして、詰まりやすいのもサイド。サイドでWBが受けたときに中央にパスコースを作るべく降りてくる動きを入れる。

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 ボールの狩りどころとして先読みしやすいWBに対して、事前にパスコースを作るエジルの動き。WBが降りそうな位置にエジルが落ちることでフリーになることもあった。エジルが下がってボールを受けに来るというと、悪い印象が残っているアーセナルファンもいるかもしれないが、この試合ではラムジーが代わりに前に動くことで人が入れ替わりながらバランスを確保していた。逆サイドシャドーのイウォビも同じく降りてくる動きで相手に判断を強いる。これによってまずはアーセナルのCHをマンマークから引き離すことに成功。CHか自らのどっちかはフリーになるやろがい!っていうね。後ろへの警戒を強めさせることで中央でボールの出しどころになるゲンドゥージを敵のマンマークから解放した形だ。基本的にはアーセナルのシャドーのこの動きに対するニューカッスルの方針はステイすることが多く、陣形を維持することが多かった。

 この作戦のキーになるのはラカゼットだった。シャドー2枚の落ちていく動きが続けば、徐々に最終ラインから対面DFが撃退しに出てきてもおかしくない。そこで裏を狙う動きを見せたのがラカゼット。非保持側が最終ラインから迎撃に前に出ていくということは、スペースを空けること。そこを狙う動きをするのがラカゼット。これによってニューカッスルの最終ラインにも判断を強いていく形。この日は早い時間から最終ラインから裏へのパスもちょいちょい出てきていたのもこの狙いがあるのかなとか。ラカゼットの裏抜けによって、降りてくるエジルやイウォビに狙いを絞らせないようにしていた。

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 そんなラカゼットの裏抜けが最もうまく決まったのが先制点の得点シーンだった。ゲンドゥージ、ラムジーがそれぞれチャレンジングなパスをつないで、裏に抜けたラカゼットが作ったスペースを突いたのがラムジー。直前のゴールがファウルで取り消された中で、再度結果を出したのはさすがである。1列前でも働ける彼のセントラルハーフ起用は、降りてくるシャドーとの相性が良い。

 降りてくるエジルとイウォビ、裏を狙いラインを押し下げるラカゼット、そしてレイヤー間を移動するラムジーでギャップを作り続けるアーセナル。それに対してボール保持時にギャップを作るのに苦しんでいた印象なのがニューカッスル。ロンドンへのロングボールをメインに、シャドーやWBは裏に抜けたり工夫はしていたもののアーセナルを出し抜くシーンはそこまで多くなく、純粋な対人を挑み続ける形になっていたニューカッスル。前半唯一のシュートはロンドンがソクラティスとの競り合いを制して迎えた局面だった。

アーセナルのギャップ作り出し作戦
① エジルとイウォビが降りてボールを受ける
→ゲンドゥージをマンマークから自由に
② ラカゼットは裏を狙う
→ニューカッスルの最終ラインはシャドーについていきにくくなる
③ CHから1列前をうかがうラムジー
→えらい

【後半】
手を替え品を替え

 後半にもう一度気合を入れてCHにマンマークを始めたニューカッスル。降りていくエジルに対してもついていく。前の3枚と中央の2枚はゲンドゥージの使いたい位置を圧縮。となると手詰まり!ではなく今度は位置取りを工夫したのはイウォビ。5バックに対してシャドーやサイドハーフが開くと相手のWBがピン止めできて、自軍のSBやWBが浮きやすい!っていうのは昨日の松本×川崎の阿部浩之と同じだ!というわけで、アーセナルファンの方には今季おなじみのイウォビとコラシナツのコンビでサイド攻略に挑む形がスタート。

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 コラシナツが自由を得始めると、ニューカッスルのシャドー(ペレス)も放っておくわけにはいかないので、徐々に中央部分の密度は低下。再びゲンドゥージがボールを持てるようになるまでにそこまで時間はかからなかった。

 正直、ここから先はあんまり話すことがない。ニューカッスルは選手交代で色を付けた程度であまり大きな作戦の変化は感じなかった。キソンヨンの投入で多少CHの攻撃的な色が強まったりとか、ほかに交代で入ったケネディや武藤も散発的に推進力は見せたりとかはしたものの試合の大勢に影響するレベルではなかった。
 アーセナルはイウォビ→オーバメヤンの交代でトップ下+2トップに移行。タスクを明確化してニューカッスルの最終ラインと2トップを直接駆け引きさせる形。セントラルとトップ下の1.5人分の働きをしていたラムジーがエルネニーと交代することで、ボランチの流動性も低下する形に。むしろ選手交代によってそれぞれの役割はシンプルになっていった印象だ。ラカゼットとオーバメヤンの連携で2点目を入れて勝負あり。およそ20年ぶりとなるリーグ戦ホーム10連勝を決めたアーセナル。CL権獲得に一歩前進だ。

まとめ

 苦手なアーセナル戦、苦手なアウェイゲームを落としたニューカッスル。噛み合うフォーメーションは特別アーセナル対策というわけではなく、ここ数試合続いているもののようだが、結果的に真っ向からぶつかってチャンスを作れず終わってしまった形。ロンドンへのロングボールのセカンドをひたすら拾いまくる!とか、シャドーやWBで相手を出し抜いたりでもしないと、チャンスを作るのは難しかっただろう。
    数少ないチャンスの中ではキソンヨンが打ったシュートのように、アーセナルの全体の重心を押し下げた結果、空きやすいバイタルを狙うというアプローチを再現性をもってできればよかったのかなとか。あそこは今季のアーセナル、結構空きやすいところなので。特にゲンドゥージが出てるときは。そういう意味ではケネディの推進力や、武藤の裏抜けで最終ラインを押し下げましょうという試みは悪くなかったけど、そこが単発で個人能力頼みになってしまって再現性が欠けていたのが、シュートが少なくなってしまった原因なのかなと思った。

 この記事のタイトルの「Mind the gap」は噛み合うフォーメーションの中でズレを作ったアーセナルの選手を称賛したいから。煽ってるわけではありません。ともあれ、流れの中でズレを作れたアーセナルと最後まで個人能力でぶつかったニューカッスルの差が最終的にスコアに現れたというのが個人的な感想だ。特にエジルは相手が捕まえづらいところに顔を出すのがうまかった。中央が詰まったところで今季中盤戦を支えたイウォビ+コラシナツコンビをチラ見せするなど、今季ここまでいろいろやってきたことをちりばめながら90分間ゲームをコントロールできたのは非常にポジティブ。この試合の指揮官と選手たちには素直に賛辞の言葉を贈りたい。

    懸念はラムジーへの依存度が高まっていること。来季退団が決まっている彼の重要度が高まっていることは今後の不安要素。ここに来て同じ境遇のウェルベックと契約延長交渉を始めるなど、結構首をかしげたくなるようなことが起きているのは事実で、フロントの中長期的なプランには個人的には不安を覚えているのが率直な感想だ。とはいえ、直近目標はCL出場権の獲得なのは疑いの余地がない。それに向けて、ニューカッスル戦で見せたパフォーマンスは説得力があるものだったのは間違いなくポジティブ。リーグ戦でここから迎えるのは苦手なアウェイが2つ。しかも難敵ワトフォードとエバートン。しかも間にはELナポリ戦が2試合。この4戦で今季の最終目標が決まるといってもいいくらい重要な4戦である。役者もそろい演出も様になってきたアーセナル、ここからがシーズン最後の大勝負だ。

試合結果
プレミアリーグ 第32節
アーセナル 2-0 ニューカッスル
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS: 30′ ラムジー, 83′ ラカゼット
審判: アンソニー・テイラー

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